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真田十勇士

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巻ノ五十一 豚鍋その一

                 巻ノ五十一  豚鍋
 慎重にだ、幸村達は大隅の方言を使って注文をした。そうしてだった。
 その豚料理を食べた、まずは豚肉を味噌漬けにしたものを焼いたものだ。その肉を食べてすぐにだった。
 清海は唸ってだ、こう言った。
「これは」
「美味いな」
「うむ」
「猪に似ておる」
 海野の言葉だ。そして幸村も言う。
「猪が穏やかになった」
「そうした味ですな」
「この味は」 
 その幸村に望月と由利が応えた、勿論彼等もその豚肉を食べている。
「猪の肉よりも柔らかく」
「そして匂いも穏やかですな」
「猪の肉はより固く匂いが強い」
 幸村はまた言った。
「それがまたよいことでもあるが」
「豚の方がですな」
「食べやすいですな」
 伊佐と穴山の言葉だ。
「むしろです」
「こちらの方が」
「そうじゃな」
 幸村は二人の言葉に頷く、そして。
 焼いたその肉の味を楽しみつつだ、こうも言った。
「鍋もあるからのう」
「豚鍋ですな」
「それもですな」
 猿飛と筧が応えた。
「いや、ではそちらもです」
「楽しみにしております」
「鍋もあるしじゃ」
 幸村は大隅の焼酎も飲んでいる、無論十勇士達も同じものを飲んでいる。
「酒もあるからな」
「この酒もですな」
「美味ですな」
 霧隠と根津も酒を楽しんでいる、他の者達も豚肉を食べながらそのうえで酒をそれぞれ飲んで楽しんでいる。
「どうもこの焼酎は」
「強いですな」
「うむ」
 主従は今は部屋の中にいる、だが幸村は小声で外に自分達の言葉が漏れない様に注意しながら答えた。
「他の国の焼酎よりもな」
「ですな、やはり」
「どうもこちらの酒は強い様で」
「美味いですが」
「これはすぐに酔いますな」
「しかも暑い」
 幸村は気候の話もした。
「それだけにな」
「これはですな」
「すぐに酔いますな」
「他の国で他の国の焼酎を飲んでいる時よりも」
「さらに」
「そうなる」
 間違いなくとだ、幸村はまた答えた。
 そしてだ、十勇士にこうしたことも言った。
「だから気をつけようぞ」
「下手に酔ってはですな」
「尻尾を出してしまいますな」
「だからですな」
「ここは気をつけてですな」
「そうじゃ、尻尾を出しては終わりじゃ」
 ここでもこう言うのだった。 
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