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英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)

作者:sorano
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第42話

~オルキスタワー~



「―――お待ちしていました。クロスベル警察、特務支援課の方々ですね?」

大統領がいる部屋に近づいたロイド達に共和国軍将校は尋ねた。

「……はい。こちらが大統領閣下の?」

「ええ、あなた方が来たら通すように言われています。どうぞ、中にお入りください。」

「それでは……」

「失礼します。」

(大陸最大の国家のひとつ、カルバードの首脳ですか……)

(さすがにちょいとばかり緊張してきたぜ……)

そしてロイド達は部屋に入った。

「―――失礼します、閣下。クロスベル警察、特務支援課、お招きにより参上しました。」

「おお、よく来てくれたなぁ。遠慮はいらんよ。さあ、座ってくれたまえ。」

「は、はい。」

「それではお言葉に甘えて……」

ロックスミス大統領に促されたロイド達はそれぞれソファーに座った。



「わっはっは、いきなり驚いただろう?いや~、こんな時でもないと時間が取れんと思ったもんでな。忙しいだろうにスマンなぁ。」

「い、いえ、そんな。」

「お気遣いいただき恐縮です。」

「たしか君は、マクダエル市長のお孫さんだったかな?確か前に、祝賀会か何かでお目にかかったことはないかね?」

「はい、祖父の付き添いで共和国を訪ねた折にお目にかかっています。一昨年のことになりますね。」

「おお、確かにそうだった。しかし、あのマクダエル市長が今は退かれて自治州議長とは……あのお年にして、あの情熱。まさに政治家の(かがみ)というものだ。……ああ、それと。……マクダエル市長や君もよい縁に恵まれたものだな。まさかあの”英雄王”と直接的な縁ができるとはね。君の姉君もさぞ、幸せに暮らしているだろうな。」

「ふふ、祖父が聞いたらきっと喜ぶと思います。それと閣下の予想通り、結婚後の姉はリウイ陛下と共に幸せな人生を送り、この前には子供が産まれた事を報告してくれました。」

笑顔で言ったロックスミス大統領の言葉を聞いたエリィは微笑みながら答え

「なんと!それはめでたい!”英雄王”と”聖皇妃”の血を引く子供となると将来はさぞ大物になるだろうな!」

エリィの話を聞いたロックスミス大統領は驚いた後笑顔で言った。

「フフ、ありがとうございます。機会があれば姉やリウイ陛下に閣下のお言葉、伝えさせて頂きます。ところで閣下―――今日はどのような御用で?」

ロックスミス大統領の言葉を聞いたエリィは微笑んだ後、不安そうな表情で尋ねた。

「ハハハ、君達の話はキリカ君から聞いていたのでな。”黒の競売会”の顛末も、痛快だったそうじゃないかね?こう言っちゃなんだが前のハルトマンという議長は鼻持ちならない男だったからな。その失脚のきっかけを作った功労者たちの顔触れは一度見ておきたかったんだ。」

「きょ、恐縮です。」

「ま、どっちかというと勝手に自滅しただけみたいッスけど。」

「……そうですね。あんな教団と関わっていた時点でアウトではないかと……」

「そうそう、それとその教団だ。”D∴G教団”―――大陸各地で悪さしていたが、最大の被害者は我が国でな。連中に止めを刺してくれた事も改めて礼を言いたかったのだよ!」

「い、いえ……当然の事をしただけですから。それに自分達の貢献などほんの些細なもので―――」

真剣な表情で言ったロックスミス大統領の言葉を聞いたロイドは謙遜した態度で説明しかけたその時

「わっはっはっ、謙遜は止めたまえ。何でも警備隊すら操られていた危機的状況だったそうじゃないか?そんな中、1人の少女を守って邪悪な教団に立ち向かった……いやはや、中々出来る事じゃない!」

ロックスミス大統領は笑いながら感心していた。



「いや……本当に恐縮です。」

「過分なお言葉、痛み入ります。」

「実際、あの事件が下手に転んだら大変なことになっていただろう。IBCも邪悪な教団に占拠され、国際貿易と金融がストップする……―――そうすれば共和国経済にも深刻なダメージだったに違いない。」

「……!」

「………それは。」

「ふーむ、そうなると君達には勲章でも贈らないと格好がつかんかもしれんなぁ。よし、帰ったらすぐにでも豪勢なのを手配させてもらおう!」

「い、いや……!ちょっとお待ちください。」

「自治州での事件なのに共和国政府から勲章をもらうのはちょっとおかしいような……」

「マクダエルのじーさまからも既に表彰状を貰ってるしなぁ。」

ロックスミス大統領の提案を聞いたロイドは慌て、ティオはジト目で言い、ランディは疲れた表情で答えた。

「なに、何もおかしい事はない。―――クロスベルの問題は即ち、宗主国である我が国の問題だからなぁ。」

「……っ……」

「……………」

「……閣下……」

そしてロックスミス大統領の言葉を聞いたロイドとリィンは真剣な表情をし、エリィは不安そうな表情で見つめた。

「ハッハッハッ。そんな顔をするもんじゃない。”鉄血宰相”や”聖魔皇女”にも呼ばれておるのだろう?もう少し話したい所だがそろそろ行くといいだろう。―――ああ、勲章は必ず手配するから楽しみに待っててくれたまえよ?」

その後ロイド達は部屋を出た。



「―――お疲れ様でした。オズボーン宰相とリフィア皇女のお部屋は反対側になると思います。」

「……あ、どうも。」

「わざわざありがとうございます。」

「いえ、それでは。」

ロイド達に助言した将校は部屋の中に入った。

「はは、人当たりはいいけどさすが大国のトップだねぇ。とんでもない大狸じゃないか。」

「ワジ君……滅多なことを言わないの。」

「もし、聞かれていたらとんでもない事になっていたかもしれないぞ。」

笑いながら言ったワジの言葉を聞いたノエルとリィンは疲れた表情で指摘した。

「でも、結構露骨でしたよね。わたしたちを威圧するのが目的ではなさそうですが……」

「多分、体裁を整えるのが目的だったんだと思うわ……共和国の大統領が、教団事件の解決に貢献した私達に勲章を贈るという体裁が……」

「クロスベルの事件は自分達にとっての事件……つまり宗主国としての領有権を改めて強調してきたのか……」

「おいおい……そのために呼んだのかよ。大国のトップってのはやっぱりとんでもねぇな。」

ティオの疑問に答えたエリィとロイドの説明を聞いたランディは溜息を吐いた後真剣な表情になった。

「ま、自治州議会の議員とは明らかに格が違いそうだね。」

「……宰相や皇女の方はどんな話があるんでしょう?」

「……わからない。とにかく肚をくくっておこう。」

その後ロイド達は次にリフィア皇女がいる部屋に向かった………… 
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