真田十勇士
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巻ノ五十 島津家の領地その十一
「史記等でも食しておったな」
「異朝ではですな」
「古来よりですな」
「食しているのですな」
「本朝と違い」
「うむ、史記の話をするとな」
それはというと。
「鴻門の会でも食しておったな」
「ああ、あの時ですか」
「確か項羽と劉邦が会った時でしたな」
「そこで范増が劉邦を殺そうとしていましたな」
項羽の軍師であった者だ、天下の名軍師であったが後に項羽に疎まれ彼の下を去って憤死することになる。
「そういえば」
「その時にですか」
「豚の肉を食っていた」
「そうでしたか」
「うむ、確かそうだった」
こう言うのだった。
「あの時にな」
「そういえばですな」
「劉邦を助けに入った樊噲が助けた」
「その時ですな」
「生の豚肉を食しておったな」
その樊噲がというのだ。
「あの場面で」
「しかしです」
「ここの民達は焼いたり煮たりして食っています」
「味噌に漬けたものを焼いたものもありますが」
「そうしたものが」
「美味そうじゃな」
「あれもまた」
「食してみるか」
幸村も言う。
「豚の肉を」
「はい、では」
「これよりですな」
「豚肉を食いますか」
「我等も」
「それではな」
こう言ってだ、幸村は店に入ることにした。そうしてその豚肉を食するのだった。
巻ノ五十 完
216・3・21
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