シークレットゲーム ~Not Realistic~
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異常者
それは、遡る事悠奈が目を覚ます約1時間。
目を閉じていた刀真は、ゆっくりと目を開けた。
「……」
目を開けた刀真はゆっくりと音も無く立ち上がる。
そして、暗闇の中、黒い影だけがゆっくりと動き、限りなく無音のまま、この小屋から抜け出していたのだった。
~???~
その場所には大きなモニターが備え付けられ、映像を24時間連続で流し続けている。
今は深夜だが、それは勿論暗視カメラにもなっており、昼間に比べて鮮度自体は落ちるが顔判別は十分に出来る精度であり 家が一軒軽く買える程の最高級のカメラなのだ。それが、無数に仕掛けられており、島中を監視している。いや、違う。リアルタイムで鑑賞出来るようにしているのだ。
「ふふふ……、いつ彼は動くのかしら?」
「さぁ……、いつもスタイルが変わってくるからね~」
「好戦的なプレイヤーがいてくれて、セカンドに変われば見物じゃないか? そこから、彼がどう動くのか……」
「ま、オッズは偏ってしまうが、彼が出てるだけでプレミアものだからな……」
「彼の伝説を覆す者は、現れないのかねぇ……。今回は子共ばかりだが、曲者はいるしな。まぁ、無理だと思うが」
―――つまり、一挙一動を見放せない、と言う事。
観客達は、興奮した様子だ。ここは巨大なカジノ。
そして、鑑賞しているのは現在の≪ゲーム≫が行われている場所だった。
「おっ……! ついに動くのか?」
「動くのは闇夜から……。考えられる展開だが、まだわからないよな?」
「ふふふ、でも すっごくゾクゾクしちゃうわ!」
ゆっくりと動き出す≪彼≫を見てより興奮の渦に包まれたようだ。
~ゲーム会場 コントロールルーム~
ゲームを管理し、自在に操る事が出来る唯一の人間。
それが、ゲームマスターと呼ばれる存在である。
ゲームマスターは、島の全てのシステムを操る事が出来る場所で監視し、ゲームを調整し続けているのだ。絶対にプレイヤーが手を出せない場所で。
「客の食いつきは上々だな。……あの男が動き出したんだ。間違いない」
カジノとの交信をOFFにしている為、今の声を向こうの客に聞かれる心配は無い。
だが、モニターだけは取り付けられているから 姿はモニターの端で小さく映されて入るだろうが、特に問題は無いし、気にした事も特に無かった。
「さぁ……、今回はちゃんと見てるぜ。……死神。お前は一体何をしている? ……なぜ、いなくなる。……なぜ、無数に設置している監視カメラを掻い潜れると言うんだ?」
死神の行動を、見逃さない。決して。
口ではそう言っていたが、後半には、なぜ追いきれないのかをまるで、本人に問いかけるように……口に出していた。
それは、彼のせいではない。
数多のゲームで数多くのゲームマスターが、≪彼≫の動向を追っていたが……。誰も、彼が≪動く≫時、追いきれないのだ。まるで、全ての監視カメラが見えているように。……位置が初めからわかっているかのように。故に、組織は新規でゲームを行う時、必ずカメラの位置を変更させ、よりカムフラージュ技術を駆使している。
だが、それでもカメラを破壊されてしまう可能性はある。
破壊等の行為が過剰に行われると言うのなら、権限を使いそれを阻止する事も出来るのだ。
それなのに、追いかける事が出来ないのだ。これまでも。――――これからも。
それは数十分後の事だった。
「ッ!! ば、馬鹿な!! 見失った!?」
男が勢い良く椅子から立ち上がった。
余裕をもって、まだ監視出来ていた。無数の眼は、ずっと男を追い続けていた。さっきまで、完璧に姿を捉えていた筈なのに、突如として消えてしまったのだ。
まるで、煙の様に―――。
特に怪しい行動をしていたわけでもない。
ただ、山道を歩いていた、それだけだ。カメラとカメラのエリア切れ目に差し掛かった所で……、突然姿を現さなくなった。周囲の全カメラを、捜索モードに切り替え見続けるが……、何故だか捉える事が出来ないのだ。
「夢中になりすぎるのは、感心しないな……」
「っっ!!」
あの男を探そうと躍起になっていたその時だった。
「彼を追い続けるなとは言わないがな。……無理だよ。数多の強者が、マスターが追いきれなかったのじゃから……。そこが良い。ゲームとは常に変化を繰り返すものだ」
コントロールルームに響き渡る声。
それは、部屋にあるスピーカーから聞こえてくるのだ。声の主は組織の幹部の1人の声。
「は……。そうでしたね。申し訳ございません。つい取り乱してしまいました。」
男はそう答えて、再びモニターをチェックする。
確かに、あの男は追えなくなったが、その為に他のプレイヤーを見ないわけにはいかないのだ。今後のゲームプランを考えていかなければならないのだから。
「いやいや。私は、君のそう言うところも気に入っているのだよ。……だが、本当に面白いものだ。あの様な男が現れるとはな。このゲームの歴史は長い。……彼の様にただ強いプレイヤーならば、他にもいたが。……彼の様に≪生きる≫プレイヤーはいなかったと言っていい」
そう言って、低く笑い声が響き渡る。そして、幹部の男は、過去を思い出していた。
なぜ、そんな異様な男、異質な男がいて笑えるのだろうか?
なぜ、死なない男、≪死神≫とまで言われた男をこのまま野放しにしているのだろうか?
悉く組織の刺客を打ち破っているとは言え、大規模な部隊を投入するれば、或いは彼をしとめられるかもしれない。
だが……、それはあくまでしなかった。なぜなら、観客の1人、また1人が、彼のファン……虜になってしまっていたからだ。その為、大規模な事はせずに、生きる彼を活かす様にしたのだ。
……或いは高難易度のPDAを与える。
……或いはプレイヤー全員がリピーターであり、軍隊上がりの戦闘のエキスパート達だけで行ったり。
様々な方法で彼を篩いにかけた。
その結果は……、想像を遥かに超えていた。
「ふふふ……彼ならば、我々の知らないゲームを見せてくれるだろうと思えたのだよ。何を隠そう、私も彼のファンでね。……今回の他のプレイヤーも一癖も二癖もある連中だ。……いよいよもって、楽しみだ」
喜々と語るその声にゲームマスターである男は戸惑っていた。
立場・権限共に自分より遥かに高い為、上司と言っていい存在だ。だが、その声がするのは極端に少なく、これほどまで話をするのも珍しいのだから。
「は! これからのゲームの行く末を存分にお楽しみ下さい。彼は例外としても、ゲームが動けば彼も動かずにはいられない。……即ち我々、いや、私の指し手の力量次第で、盛り上がるかどうかは決まります」
「ふむ。確かにそれはあるな……。今回は特別なものだ。だから通常には存在しないカードを切ったのだから。期待しているぞ?」
そう言うと、男の声は途絶えた。
どうやら、向こうが交信を切ったようだった。
「ふぅ……。」
男はため息を1つ吐き、コントロールパネルに向きつつも椅子に深く座り込んで楽な姿勢をとっていた。滅多に話さない相手だからこそ、余計な神経を使ってしまったのだろうと分析は出来る。
「アイツを見失ったのは、俺のミス……とは違うか。……過去、誰一人として御しきれなかったのだから、………存在そのものがイレギュラーな男だ。あまり、気にしないでおこうか」
そう言うと、男は再びモニターに目を向けた。
どうやら、他のプレイヤーにも動きがあったようだ。あの男が消え、そして2人が消え……もう1人も姿をくらませた。周りは騒然となってしまっている。
その上、別のプレイヤーが近づいてきているのだから。
「ここからが、混沌……。盛り上がるところか?」
軽く舌なめずりをし、今後の展開を予想しつつ、誘導方法を模索している時だった。
『オレの声が―――聞こえているかい? ……運営さん。』
また、突然だった。
先ほどの上司の声同様に。1つ、違うのは 声の出所である。
声が……聞こえてきたのは、島の監視カメラの集音マイクからである。
その声が聞こえた瞬間、カジノの側のスピーカーから、一気にどよめきが巻き起こっていた。
「っ!?」
流石に戸惑いを隠せなかった。二度目は無い、とついさっき頭の中で戒めていたのだが、それでも嘲笑うかの様に、覚悟が掻き消えたのだ。
だが、いつまでも出ないわけにはいかない。
相手はプレイヤーであり、質問であれば応答する事は周知させてあるのだから。ゲームの範囲内であれば答える義務はあるのだから。
「はい。なんでしょうか」
限りなく動揺を押し殺し、冷静を装って対応をした。
……出来たであろうと判断した。
時刻は6:30。
この中央管理施設に現れた者がいたのだった。
そして場面は再び変わる。
遡る事数分前の事。
悠奈は、フィールドのエリアを駆け巡っていた。
少しずつ、捜索範囲を削りつつ、残してきた2人と1時間以内で合流できるように範囲を考えていた。
それだけの判断は出来るが……、決して冷静だとはいえないのだ。
「何で……こうなるのよ。あの時だって……、あの時だって……、英吾さんが……」
それは、考えたくないのに……頭の中を過ぎってしまう過去の記憶。……過去の悪夢である。
悠奈にとっては、忘れたい程苦しく、そして 決して忘れてはならない記憶。だが、直ぐに考えるのをやめて、走りながら頬を二度、三度と叩いた。
「だめ……、こんな時こそ冷静にならなきゃ。……絶対に探し当てる。そして、問い詰めてやらなきゃならないんだから」
思考を乱すわけにはいかない。
確かに探さなければならないのは事実だが、周囲への気が散漫になるのはもっと危険だ。まだ見ぬ危険なプレイヤーの存在が、拍車をかけるから。だから、悠奈は 改めて集中しつつ、考える。
「後、まだ、見てなくて、……短時間に行ける場所。………あそこ!」
悠奈は、PDAを操作しつつ、頭の中でルートを描いた。
僅かの時間で行ける場所であり、……人がいる可能性もある場所。
そして、その場所へは直ぐに到着した。
「中央、管理施設……」
悠奈は小さく呟く。
大きな建物であり、探すとなれば時間も要する為、後にしていたが もう後は此処しか調べられない。
修平達と合流してから、他の場所を探せばいいのだから。悠奈は、もう既に見えている管理施設を目指して走り出した。移動の最中も痕跡を探しているが、無意味だと直ぐにやめていた。彼の様な目を持っているわけでもないし、彼が残すようにも思えないのだから。
入り口の扉を音を殺しつつ開け、足音もなるべく殺しながら早足で奥へと向かった。
そして、もう数m先の角を曲がった先が、例の説明会があった部屋だ。その周り角を曲がろうとしたその時。
「あっ!!」
「……ん?」
突如、人影が見えてぶつかりそうになった。
……曲がり角でばったり出会うなんて、……まるで、何か学園系のシチュエーション?所謂、恋愛のような展開? ここから先は甘酸っぱいワールドが展開。
血なまぐさい戦いが終わって、恋愛物の物語が始まる―――――。
「って、なわけあるか!」
悠奈は、ぶつかる寸前で、無理矢理身体を捻りつつ接触をしないようにした。……が、バランスを崩し転倒しかけてしまったが、倒れる事は無かった。
「――っと。……何をそんなに急いでいるんだ? 悠奈」
悠奈の手を掴み、倒れる前に引っ張り支えたからだ。
そう、曲がり角で出会った人影。……この男こそ、刀真。悠奈が懸命に探していた男だった。
「何って!? 本気で言ってんの!?? 突然アンタがいなくなってたから、探しに来たんじゃない!」
悠奈は、掴んでくれた手を、思いっきり引き寄せて 顔を刀真に近づけつつ至近距離で睨みつけた。
興奮している悠奈とまるで正反対なのが刀真だ。軽くため息をしつつ悠奈を見た。
「……少しは落ち着け。……確かに、黙って出て行ったのは謝る。軽率だった、と言えるだろう。……だが、オレは 行動を縛るような契約をお前と交わした覚えも無いんだぞ。……オレにはオレの目的があると言っただろう?」
「ッ! そ、それはそうだけど……」
「それに、本気で、お前たちの元から出て行くのなら。それを置いて出て行くわけ無いだろ」
刀真は悠奈が持っているものを指差しそう言う。
悠奈が手に持っているのは、上着。……目の前の彼が寝ている彼女にかけてあげた服だ。
そして、その服は服に似合わず、重量感があった。
「あ……」
「お前たちがオレをどう思っているのかは知らん。……が、オレでも武装はする。銃を残したまま出て行くのは愚の骨頂だ」
「ま、まあそうね」
悠奈は納得しつつそう返した。
だが、思わず顔を赤くさせてしまいそうになっていた。なぜなら、無意識に彼の服を握ったまま飛び出てしまったからだ。まるで、大事にしているように。
刀真はそんな事はまるで知らないと言わんばかりに、服を受け取ると腕を通し、羽織る。
深い意味も無いようでただ休めるようにと気遣ってくれただけらしい。
つまり、ムードもへったくれもない、と言う事。と言うか、期待する方が馬鹿を見ると言うものだ。
「と、とにかく! こっちはこっちで大変なのよ! アンタはいなくなるし、他にも!」
「……成程、オレが出て行った後、か。詳しく訊こう」
刀真は悠奈に説明を受けて、状況を理解した。
出て行ったのは3人。恐らくは自分が出て行った後に、だろう。少し出るのを遅らせればその行為を止められたのだろうと、考えもしたが直ぐにそれを止めた。
「……成る程。大祐は確かに問題ありだな。早く探す事にこした事は無い」
「そうでしょ。まり子とアイツなんて、険悪だったし 初音も心配だから」
「……ああ」
刀真はそう言い悠奈も頷いた。
大祐と言う男については、簡単であるが、考察はしている。
会えて言うなら、《刹那的な快楽主義者》であろう事。
あの凄惨たる死体の山を見ているのにも関わらず、首輪に手をかけようとしていた。そして、こんな異常空間だと言うのに、初音を連れて行こうとしているその行動。2人きりにしたら、どうなるのか簡単に想像が付きそうだ。だが、声に出しては決して言わない。ただ、悪戯に不安感を煽るだけだから。悠奈は、全員を生還の為に行動をしているのだから。
そして、管理塔を出て暫くした時の事。
「それで、刀真の目的は何なのかしら?」
悠奈は、余裕を少しだが取り戻しているようだ。一番先に刀真を見つけられた事が起因だろう。
「ん?」
「私も話したし、出来れば聞きたいんだけど」
悠奈はそう聞いていた。
確か、以前に言っていた『オレの目的にアンタの命は関係無い』
つまりは、殺人はしないが、このゲームに目的があるのは確かなようだ。
それがなんなのかはわからないが。
「む……、話すのはアレだな。引っかかるから言えないな」
「え? 何?」
「……つまり、言わないんじゃなく言えないそれがギリギリで言える事だな。あくまでオレ達は、今回が初のプレイヤーなんだから」
「っとと、そう言うこと、わかったわ」
悠奈は軽く手を挙げてそれ以上言わなかった。
悠奈もその事は直ぐに理解出来たのだ。
自分にも届いているルールの1つ。自分自身がリピーターである事は話さない事。それは、リピーターと言う事だけじゃなく、ゲームに関する情報も話せないのだ。相手がリピーターであり、リピーター同士なら問題ないとも思えるが、それをジャッジするのは運営であり、自分達じゃないのだから。
「ゴメン。良いわ。その答えを聞ける時が、一番最悪な時なんだから。ずっと知らないおくから」
悠奈はそう言うと、再び前を向いていた。刀真も頷くと、2人は走る速度を上げた
その時だ。
“ダァンダァンッ!! ギュイィィィィ!!!”
聞こえてきたのはまるで、何かが破裂したかのような音と、何かのエンジンの駆動音だった。
「銃声だな。片方は。もう片方は……エンジン音」
「っ!! ええ、急ぐわよ!」
刀真の言葉、そして、過去に聞いた事のある音。
悠奈の表情は険しくなり、走る速度を上げ、刀真も音のする方へと向かっていった。
ある場所、その音が発生していた場所での事。
普通では見られない光景。……否、平常時で銃などは基本的には見られないだろうが、異常空間でも中々見られないであろう光景がそこにはあった。
片方の男が持っているのは拳銃。38口径の回転式拳銃 ニューナンブM60。
日本警察でも採用されている。
シングル・アクション ダブルアクション両用であり連射する事も出来るが6発しか装填出来ない。が、集弾率は高い為優秀な武器である。
だが、真に驚くのは男の方ではなく異常な装い。
……勿体つけるつもりは無いため、直ぐに言うが≪メイド服≫を身に纏っているのだ。
その手に持つのは大型のチェーンソー。
確かに、チェーンソーは当たれば殺傷能力は抜群。
刀は身体を開くイメージであれば、チェーンソーは傷を食い荒らすイメージ。
そんな事より、メイド服の女はそんな重量物を軽々と扱い、男の銃弾を弾いていた。並の動体視力と力では不可能な芸当だ。正確に弾道を読みつつ、手足の様にあの武器を取り扱わなければならないのだから。
「ッ!! 何よあれ!」
「驚いているのは、オレも同じ、だが、今は急いだ方がいい。あれじゃ死人がでるのも時間の問題だ」
驚いている悠奈を尻目に、刀真は懐の銃を手に素早くとった。
それは初日に手に入れたワルサーPPK。
「わ、わかった。……殺すのは駄目よ」
「わかってる。……そっちも当てるなよ」
「……うん」
悠奈は愚問だったと、直ぐに思い、刀真と共に銃口を向けた。狙うのは一点のみ。
「ッ!!」
銃弾が響いたと同時に、二発の銃弾がメイドのチェーンソーの刃に当たって火花を散らせていた。それでも、チェーンソーを放さなかったのは、大したものだ。
「(あれを軽々扱っているだけで相当だがな。……成程、あの時あの場所でいた者か)」
身に纏う雰囲気こそはあの時とは遥かに違うが、何故か、そうだろうと確信していた。
「ストップ!! そこのメイド、止まりなさい!」
「ッ……!!」
悠奈は、声を上げた。
その声にその場にいた修平が思わず叫ぶ。
「――悠奈!? それに刀真も!」
「よかった! 見つかったんですね!? それに来てくれたっ!」
「まぁ、これだけ銃声が聞こえてればね。他の3人を見つけられなかったのだけは残念だけど」
悠奈はそう返した。
だが、決してメイドから目は離さない。明らかに異質な空気を身に纏っているからだ。
「何も言わずに離れてたのは、悪かった。……が、それでこれはどう言う状況だ?」
刀真は銃をしまいつつそう聞く。
修平はその言葉に答えを返せれる訳でもない。自分でも判らないからだ。目の前の女性の事が特に。
「……あなた方。なぜ、私の邪魔をしたのですか?」
「へぇ……随分と物騒なメイドね? でも、先に言っとくけど私は銃を仕舞わないわよ? 妙な真似したら、あんたの手足をこの銃で打ち抜いてやるわよ」
「それはどうでしょう? あなたにそんな事が出来るとは思えませんが」
「ふぅん……、そう思うなら試してみる?」
悠奈とメイドの間で鋭い視線が交錯する。
刀真はただ、冷静にその女の事を見ていた。明らかに不利なのはあの女の方だ。近接戦闘で、銃に勝る事はあるとは言ったが、距離を取りつつ 銃を向けている状況では圧倒的に銃が有利だ。
だが、自信に満ちたあの表情を見ると強ち強がりでは無いとわかる。
この間を一気に詰め、刃を先に届かせる絶対の自信があるようだ。
「悪いが、悠奈と手を組んでてな。戦ると言うのなら、オレも相手になろう」
軽く手を振りつつ、刀真はメイドを見ていた。
まだ、銃を持っているわけではない。懐に仕舞ったままだ。
だが……、明らかに表情が変わった。余裕のある含み笑いをしていたのだが、それが一気に止んだのだ。
「ッ……。ちっ」
明らかに不快な表情を見せたのはメイド姿の女のほうだった。
何かを察知したのか……、少しずつ下がり距離を取っていた。
「待ってくれ! 2人とも! その人は多分オレ達の敵じゃない!」
もういつ戦闘になってもおかしくない状況で慌てて修平は叫びとめた。
「あら修平。こんな女を庇うの?」
悠奈の視線は鋭い。
なんであれ、誰であれ、人を殺そうとする者は自分の敵。そう決め、手足を打ち抜いて縛ってでも阻止すると強く自分自身で決めていたから。
「……オレ達が乱入したのは途中からだ。聞こう」
「ちょっと、刀真まで? 信じる、っていうの??」
悠奈は呆れるように言っていた。
こんな状況でも、そんな表情が出来る悠奈。目の前の女はやばいと感じるが、もっとやばい男を知っている為、悠奈にはまだ少しの余裕があったようだ。
「違うんだ悠奈、聞いてくれその人はオレ達を助けてくれたんだ」
「ほう……」
刀真は考える。
ならば、襲ってきたのは多分、あのリボルバーを持った男だろう。その男達を襲っていたのが目の前の女なのだから。
「ん? どういうこと?」
悠奈はわからず修平に聞いていた。銃口は逸らせずに。
「俺にもよくわからないが……、今のは全部事実だ。だから、その銃を降ろしてくれ」
「………修平が言いたい事は判った。……でもね」
悠奈はメイドの持つチェーンソーに視線を送った。
まだ、それは唸りを上げて起動しているのだ。この女が持つとそれも凶悪な兵器にさえ見えるのだから。相手が凶器を向けている以上、下げる訳にはいかないのは必然だ。
「悠奈、とりあえず銃を仕舞え。まずは、修平の話を聞こう」
「―――向こうが先に、あの物騒なのを止めたらね」
悠奈がそう言うと、殆ど同時に修平が口を開く。
「なぁ、あんたもチェーンソーを止めてくれ。2人はオレ達の仲間だ。あんたらが争う必要なんか無いんだ。」
「っ………。はい、畏まりました。修平様」
表情はさっきの様に変えはしないが、そう言うとメイドは一礼を修平にしてチェーンソーの駆動を停止させた。悠奈もそれを見て嘆息し、構えていた銃を降ろす。
それは、今後のゲーム展開を左右するかもしれない邂逅である。
メイドの名は《粕谷瞳》
そして、その対極にいるのは、悠奈と刀真。
瞳が視線を向けているのは―――悠奈ではなく、刀真。
瞳と刀真
《メイド》と《異端者》
《異常者》と《死神》
それは、今回のゲーム屈指のプレイヤー。強大な力量を持つ2人が対面した瞬間だった。
~プレイヤー・ナンバー~
No. 氏名 解除条件
□ ??? 上野まり子 ??????????
□ ??? 粕谷瞳 ??????????
メイド・チェーンソー
□ ??? 細谷春菜 ??????????
□ 4 藤田修平 ??????????
□ ??? 黒河正規 ??????????
□ ??? 吹石琴美 ??????????
□ 7 真島章則 ??????????
□ ??? ???? ??????????
□ ??? 蒔岡玲 ??????????
□ ??? 伊藤大祐 ??????????
□ J 藤堂悠奈 ??????????
更新:No.4と24時間行動を共にする。
□ ??? 阿刀田初音 ??????????
□ ??? 三ツ林司 ??????????
□ ??? ???? ??????????
□ XIV 日陰刀真 PDAを5台以上所持する。
更新:No.J、4と24時間行動を共にする。(離れる場合の制限は2時間以内とする)
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