歌集「春雪花」
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露去りて
仰ぎし空の
蒼くとも
君なかりせば
褪せて見えにし
梅雨の鬱々とした空は消え、本格的に夏がやってきた…。
見上げた空には燦々と陽が降り注ぎ、透る青はどこまでも続く…。
しかし…そんな夏の手の届きそうな青空を眺めても、私は全く心揺さぶられることはなく…。
彼がいないのであれば…然して意味はない。ただ流れゆくだけの事象…。
恋しいゆえに…全ては褪せてしまうのだ…。
久方の
光り清けき
月影も
眺むは淋し
君想いなば
梅雨明けの晴れ渡る夜空…月明かりも眩しく、清々しい月夜を独り眺める…。
月明かりの中…思うのは彼のことばかり…。
今…忙しいのだろうか…?
今…誰といるのだろうか…?
きっと…私のことなぞ思いだしもすまい…。
彼は遠すぎて…月を眺めればなお、その距離に落胆し…会えない淋しさだけが私を取り巻く…。
我が儘なのだ…所詮は一方通行でしかないこの恋は…。
この纏わりつくような淋しさは…彼を想うゆえの…。
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