とある地下の暗密組織(フォートレス)
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第2話
ep.012 『darkside person`s』
夢絶が室内で雨を降らせているとき、また違う場所。そこは少し湿気の多いくらい場所。
近隣の建物とは違う高めのビル。それ自体、ここには少ない希少価値ともいえる。そんな建物の最上階、階層で言うと10階ほどの位置にあたるところの大きなバルコニーで葉巻を吸う中年が一人。
「どうやい? 久しぶりの第0学区は?」
右手の二本指で葉巻を一度口から離し、煙を吹かしながら中年が言う。
少年。年齢は容姿から見て20ぐらい。
「お前は、馬鹿で面倒くさい親のいる故郷に帰ったとき、どんな気持ちだ?」
その少年が言う。他のどんな人間とも違う雰囲気を周囲に漂わせる。冷たく悲しい悲劇の主人公、そして冷徹で無慈悲な最悪の強敵。
「質問に質問で返さんとんてがまい。お前さんのやりたい事は分かってますがな。」
再度、葉巻を銜え、
「もっ一回、あの夢絶と戦う気なんしゃろ?」
少年は何も言わない。
中年が続け、
「今度で3度目、でっかな? もうそろそろ最後にしてもらってもそろしょかなぁ?」
常夜の空を見上げながら、
「我々地下の人間としても、そろ危ないんしゃわい。」
「もう、俺の肉体的にも1,2度しか殺り合えない。それに、もし二度目になったら、死ぬ確率もあると聞いた。」
少年は、開けたその自らの手を見ながら言う。
「んまぁにゃっ、今回俺らの時間を稼いでくれりゃあそれでいい。あんたもそれでかまにゃんのやろ?」
手を握り、
「ああ、とりあえずはお前らを助けてやる。お前らのしたいことなどは全くに理解できないが、まあその気も無いことだし、良い。だから、お前らは俺とジェネスの戦いを干渉するなよ。」
中年は少年を見ながら、少年は目を伏せ下を向きながら。
「もしかしたら後世にまで伝わるかぁわからん試合に、水差すようなことはしまんにゃわい。それに、我も教査会の一員でっせ。宗教の神様同士のぶつかり合い、外野から見んわきゃなしゃろうに。」
「好きにしろ。」
少年が扉の方へ。
「だが、邪魔などをしたら、お前を俺が撃ち殺す。」
扉を出た。
残るは中年、また空を見上げている。本当に真っ黒く街並みもどこか汚い。
下を見降ろす。
「んな事すん暇あれりゃ、アンゲルはんにド突かれまっは。」
また煙を吐きながらそう言った。
また違う場所。
地下に降りるために設置されているいくつも存在しているエレベーターの一つ。
「これから地下を殲滅する。」
黒いスーツを着た集団が言う。
「・・・・・、準備はいいな?」
人数は4,5人。真っ黒色の皮グローブに拳銃を握る。エレベーターが地下に向けて半分を切った。
「池野・・・・・・、操作・・・・・・・・・・・・・・。」
その集団の中で一番扉に近い位置、おそらくはリーダーのようなポジションを持っているであろう人物がポツリと呟いた。
彼らは地下で活動していた暗殺組織である『アナコンダ』。約3年前に当時の『池野 操作』という1人の人物に解散にまで追いやられた。
彼はその時のリーダーである。恨みを持ってこの第0学区に戻ってきたという訳である。
彼が刻まれた額から頬まである左目の傷を抑えながら言う。
「あの時の屈辱・・・・・・・・、ハラス・・・・・・・・・・・。」
その刻まれ開かなくなった目が疼く。池野 操作に味わされたこの傷と同じものを彼に、更にはもう片目にも同じ傷を、と。
「あの時の復讐を完遂し、殺し屋としての品位を取り戻し・・・・、お前の今いる場所さえすべて消してやる・・・・・・・・・・・。」
それ以上は彼は何も言わない。ただ、数十秒の沈黙。地下に蔓延る鉄の臭い。と言っても、鉄ではない。
第0学区、腐敗区。
腐敗した死体が転がり、汚臭を振り撒く。崩れたビルのがれき後などに見える血痕ももはや黒く固まりきり、町の一部と化している。
ここが腐敗区と呼ばれる前、地上との戦争の後が唯一くっきりと残っている場所である。堕ち論他の場所の全ては復興している。区の境を見ればそれは一目瞭然である。
扉が開く。
小声。
「お前ら、ここが腐敗区だ。空気も人間も建物も、全てが腐敗しきった現在進行形でまだ腐っていっている場所だ。学園都市も第0学区も、ここを一切元に戻そうとしやがらねぇ。」
彼は殺す。自信を、感情を、記憶を。ただ、憎しみだけを心で生かしている。池野 操作、彼に対してだけ。
「俺らにはもってこいな隠れ蓑だ。これで殺せる、・・・・・・・全部。」
先程よりは大きな声。憎しみは徐々に力を増している。そして彼は知っている。池野 操作の弱点を。情報屋から聞き入れている。
「よし、あとは全員集まるまでここで・・・・・。」
「お前ら。・・・・・・・・、食事。開始。」
大蛇は沼に踏み入り、沼の蛙を平らげ始める。
後書き
今回は少し少ないですかね。まあ、このお話を更に分かりやすくかみ砕いた表現をしてくださっている方がおりますので、そちらも見ていただけると幸いです。
というか、自分のストーリーで展開を知っているのにも関わらず、『更新してる!』と読者として拝見させて頂いてます。
(自分が話し進めないといけないことに気付いてますよ。そうしないと向こうの方が続きかけないことも知ってますよ。展開が難しいんですよ。)
ちなみに、僕の書き方は前回からの続きをアニメーションとして想像しながら書いております。だから、展開が色々湧いて来るんですが、伏線とか入れたいですし、難しいです。小説家さんってすごい!
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