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英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)

作者:sorano
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第29話

~夜・特務支援課~



「……そんな事が……」

「本当に……とんでもない連中みたいですね。」

「メンフィル帝国も危険視している訳だ……」

「下手をしたらギュランドロス達より危険な存在かもしれないわね……」

ロイド達の話を聞いたエリィは不安そうな表情をし、ノエルは溜息を吐き、リィンとエルファティシアは考え込んだ。

「まあ、お前が”闘神”ってのを継ぐって話はともかく……色々収穫はあったみたいだな?」

「ああ……連中が今、受けてるのは1億ミラ相当の契約……契約相手は、流れからしてエレボニア政府なのは間違いねぇだろ。」

セルゲイに尋ねられたランディは頷いて答え

「それと、明日から忙しくなりそうとか言ってたから……やっぱり通商会議の期間中に何かしでかすつもりみたいだね。」

ワジが話を続けた。

「フム、そうなるとその1億の契約の内容だが……――ロイド、どう思う?」

「……あ、はい。……これはカンですが……鉄血宰相は帝国内に、かなりの敵対勢力を持つと言われています。このクロスベルで、そうした勢力から宰相を守るというのはあり得るかと。」

「あ……!」

「……なるほど……そいつはアリそうだな。」

「フム………………」

セルゲイに尋ねられ、答えたロイドの推理を聞いたエリィは声を上げ、ランディは真剣な表情で頷き、ヴァイスは興味深そうな表情でロイドを見つめていた。

「クク……いい目の付け所だな。」

ロイドの推理を聞いたセルゲイは口元に笑みを浮かべ

「んー、でもそれだと逆に1億ミラは少し多すぎないかい?宰相だって自分の護衛は引き連れてくるんだろうし。」

ワジは考えながら呟き

「確かに……エレボニアにしてもカルバードにしてもかなりの護衛将校を同行させるそうですね。」

「メンフィルの方でも名のある将を同行させると俺の方も聞いた事がある。」

ノエルとリィンはワジの意見に頷いた。

「……もちろん、そういう表向きの護衛とは違うだろう。ただ、彼らの動向を見る限り様々な形でクロスベルという土地を把握しようとしているのは確かだ。」

「アルモリカ村、マインツ、そしてベルガード門での目撃情報がそれを物語っているかもしれないね。食糧調達や七耀石の売買というもっともらしい理由があったみたいだけど……」

「ああ、各地を訪れていた本当の目的は別にあったんだと思う。それこそ俺達や遊撃士と同じく、何かあっても即座に対応できるように。」

「確かに……そんな風には感じられたわね。」

「……………………」

ロイドの話にエリィは頷き、ランディは考え込んでいた。

「―――ま、現時点で推測できるのはここまでだろう。明日は各国首脳が来訪し、オルキスタワーの除幕式がある。ああ、ちなみにお前らにも現場に出て貰うぞ?」

「えっ…………」

「現場ということは……除幕式へ?」

セルゲイの話を聞いたロイドは驚き、エリィは尋ね

「どうやら”赤い星座”の方に目を奪われているみたいだからな。―――防諜(ぼうちょう)やテロ対策なんてのは本来、お前らの仕事じゃない。ここらで気分を切り替えてもうちょっと状況を俯瞰してみろ。」

「……なるほど……」

「ハハ……耳に痛ぇ突込みだな。」

セルゲイの話を聞いたロイドは頷き、ランディは苦笑した。



「えっと、除幕式ということは警備に参加するという事ですか?」

「ま、名目上はそうだがそれより除幕式の様子を観察することに専念しておけ。通商会議が始まる時の空気……首脳どものオーラなんかをな。また違った視野が持てるはずだ。」

「……了解しました。」

「フフ、それじゃあ特等席から鑑賞させてもらおうかな。」

セルゲイの言葉にロイドは頷き、ワジは静かな笑みを浮かべていた。

「そういえば、ヴァイス。先程聞きそびれましたけど、貴方は”赤い星座”の件、どう思っていますか?貴方もロイドやセルゲイと同意見ですか?」

「いや…………俺はもっと違う事を予想している。」

その時アルに尋ねられたヴァイスは静かな笑みを浮かべて答え

「え………」

「ど、どういう事ですか!?」

「…………局長。一体何を予想しているんですか……?」

ヴァイスの答えを聞いたロイドとノエルは驚き、セルゲイは目を細めて尋ねた。

「…………俺の予想では……”赤い星座”を利用したエレボニアによるクロスベルの支配だ。」

そしてヴァイスは不敵な笑みを浮かべて答え

「なっ!?」

「い、一体どういう推理をしたんですか……!?」

「「……………………」」

ヴァイスの答えを聞いたロイドは驚き、エリィは真剣な表情で尋ね、セルゲイとエルファティシアは目を細めて黙り込んでいた。

「現在のクロスベルの状況や…………”鉄血宰相”の状況……そしてこのクロスベルを支配したい側として考えたら、結構簡単に答えが出て来るぞ?」

「クロスベルを支配したい側として………………」

「………………駄目です。考えても全然わからないです。」

「………………………………局長。話してもらっていいですか?」

ヴァイスの話を聞いたノエルは複雑そうな表情で考え込み、リィンは考え込んだ後溜息を吐き、ロイドは真剣な表情でヴァイスを見つめて言った。



「まずはクロスベルの状況についてだが……”不戦条約”が締結されるまでクロスベルの帰属をめぐってエレボニアとカルバードは緊張状態であった。これは知っているな?」

「え、ええ……」

「そして”鉄血宰相”…………かの宰相の革新的な政治によって宰相を敵対勢力は多い。そしてロイド。お前はそんな者達から身を守る為に”赤い星座”を雇ったと言ったが……俺の予想ではもっと違う事の為に奴等を使うつもりだと思っている。」

「違う事…………」

「それがクロスベルを支配する為の目的ですか?」

ヴァイスの話を聞いたロイドは考え込み、エリィは尋ね

「ああ。……―――ルファディエル。お前ならここまで言えばわかるだろう?」

尋ねられたヴァイスは頷いた後口元に笑みを浮かべてロイドを見つめて言った。するとその時ルファディエルがロイドの傍に現れ

「ええ。…………そこまで予想しているとはさすがはクロスベルをいつか支配すると豪語しているだけはあるわね?」

現れたルファディエルは頷いた後口元に笑みを浮かべてヴァイスを見つめ

「フッ。”この程度”王として……そして隙あらば他国に攻め入る元帥の立場であった者として考えれば割とすぐに思いつくぞ?」

見つめられたヴァイスは静かな笑みを浮かべて答えた。

「……ルファディエル姐さん、局長。もったいぶらないで俺達にも教えて貰ってもいいッスか?」

その時、ランディは目を細めてヴァイスやルファディエルに視線を向けて尋ねた。

「いいだろう。まず肝心の”赤い星座”の役割だが…………」

「”鉄血宰相”の命を狙う敵対勢力。通商会議の際に暗殺を仕掛けて来る彼らの”殲滅”が恐らく”赤い星座”の役割ね。」

「”殲滅”…………」

「………………」

ルファディエルの話を聞いたロイドは考え込み、ランディは黙り込み

「そしてその”殲滅”を口実とし、クロスベルの防衛力があまりにも低すぎる事を指摘し………クロスベルの警備隊や警察の解散を指示、そして自国―――エレボニア帝国軍の駐留させる事だ。」

「なっ!?」

「それは……!」

「自国の軍を駐留…………実質的な支配かよ。」

「……………………」

そして不敵な笑みを浮かべて説明するヴァイスの話を聞いたロイドは驚き、エリィとランディは厳しい表情をし、セルゲイは目を細めて黙り込み

「なるほどね……それなら1億ミラという大金も納得できるかもしれないね……」

「ああ……喉元から欲しかったこのクロスベル自治州を支配できるんだ。エレボニアからしたらクロスベルと1億ミラ、どちらを優先するか考えたら答えは明白だ。」

「しょ、正直信じられないやり方です…………もし”赤い星座”が”鉄血宰相”の敵対勢力を”殲滅”―――殺害したら、さすがに他国の非難が集まると思いますし……」

ワジは静かな表情で頷き、リィンも頷いたが、ノエルは信じられない表情をした後呟いた。するとその時

「…………例え、その事を指摘されたとしても『自分の身を守る為に雇った』という口実でも作るでしょうね。」

エルファティシアが真剣な表情で答え

「そして”赤い星座”にはエレボニア政府の権限で”鉄血宰相”の敵対勢力の殲滅許可でも出して、クロスベル側からの反論を封じるのでしょうね。」

アルが話の続きをした。

「あ…………」

「……………………」

2人の話を聞いたノエルは呆け、エリィは複雑そうな表情で黙り込んでいた。

「―――そういう意味ではカルバードも同じ考えをしているかもしれないわよ?あの国の大統領―――ロックスミス大統領も”鉄血宰相”と同じように多くの敵対勢力がいるのだから。」

「あ……!」

「遊撃士協会で聞いた情報――――カルバード政府と黒月の長老が何らかの取引を行ったっていう話か……!」

そしてルファディエルが呟いた言葉を聞いたロイドとランディは声を上げ

「…………確かにそれも考えられるな…………もし、それが実現しちまったら下手をすれば互いの国が自国の軍の駐留を主張し合って、”不戦条約”が結ばれる前のクロスベルに戻っちまうな…………」

「なんてこと…………」

「何でそこまでして、クロスベルを…………!」

セルゲイは重々しい様子を纏って頷き、エリィは表情を青ざめさせ、ノエルは怒りの表情で呟いた。



「……ま、これもあくまで俺の予想だ。あんまり深く考えすぎるなよ?セルゲイ、今日はもういいだろう?」

その時ヴァイスはロイド達に言った後セルゲイに尋ね

「え、ええ。お疲れ様でした。」

尋ねられたセルゲイは戸惑いながら頷いた。

「ああ。……さてと。明日も早い事だし、さっさと休むとするか。アル、エルファティシア、行くぞ。」

「フフ……休むと言いつつ、しっかり私達とも”する”つもりなのですね?」

「まあ、それがヴァイスハイトだしね♪」

そしてヴァイスに促されたアルとエルファティシアは微笑み

「きょ、局長…………」

「少しは私達がいる事を考えて発言して下さいよ……」

「お願いしますから、ちょっとは控えて下さい…………」

「畜生!わざと見せつけやがって!このハーレム局長め!爆発しろ!」

「フフ、僕達の部屋に聞こえない程度で楽しんでくれよ?」

「お、おいワジ!」

「ハッハッハッ!悔しかったら女性にモテるようにもっと女性の事を勉強しろ!」

3人の会話を聞いたロイドは脱力し、エリィとノエルは疲れた表情で溜息を吐き、ランディは悔しそうな表情でヴァイスを見つめ、ワジは静かな笑みを浮かべて言い、リィンは慌てた様子でワジを見つめて言った。そしてヴァイスは笑いながらアル達と共に部屋を出て行った。



「そ、それにしても局長もそうだけど、ルファ姉、とんでもない事を推測しているんだな……」

「普通なら絶対に考え付きませんよ、さっきみたいなとんでもない推理……」

ヴァイス達が部屋を出た後ロイドは苦笑しながらルファディエルを見つめ、ノエルは疲れた表情で溜息を吐いて言った。

「フフ、いつも言っているように私はさまざまな可能性を考えているわ…………あ、ロイド。私は今から出かけるから貴方は先に休んでいなさい。」

2人の言葉を聞いたルファディエルは微笑んだ後ロイドに言い

「え……こんな時間からどこに行くんだよ?」

ルファディエルの言葉を聞いたロイドは意外そうな表情で尋ね

「独自に付き合いがある”情報屋”に会いに行くのよ。」

「ええっ!?」

「い、いつの間にそんな方と知り合いに…………」

「さすがはルファディエル姐さんッスね♪」

「フフ、もしかして今の推理に関係しているのかい?」

ルファディエルの答えを聞いたロイドとエリィは驚き、ランディは嬉しそう表情でルファディエルを見つめ、ワジは静かな笑みを浮かべて尋ねたが

「さて……どうかしらね?」

ルファディエルは意味ありげな笑みを浮かべた後部屋を出た。

「い、一体今度は何を考えているんだ、ルファ姉……?(あの笑みは絶対何か考えている笑みだし…………)」

(くかかかっ!どんな楽しい事を考えてやがるんだ~?)

「クク、まあ奴の事だから間違いなく次の”相手”を嵌める策を練っていると思うぜ。」

ルファディエルが部屋を出た後ロイドは戸惑い、ギレゼルは笑い、セルゲイは口元に笑みを浮かべ

「次の”相手”って……今の推理を聞く限り”赤い星座”や”黒月”……いえ、下手をすればエレボニアやカルバード――――”国”じゃないですか!い、幾らなんでもそれはありえないと思うのですが……」

(……あの方なら”国”すらも嵌めるどころか滅ぼすような策を思いついてもおかしくはあるまい……)

エリィは驚きの表情で呟き、メヒーシャは納得した様子で呟き

「いや、わからないぞ?あのルファディエル姐さんの事だから俺達では想像も付かないようなとんでもない策を考えていそうだぜ?それこそ叔父貴やツァオ達を出し抜けるような。つーか、ルファディエル姐さんなら二大国をも嵌める策を考えているんじゃねえか?」

(クク……さ~て…………どんな面白く、そして黒い策になるのか、楽しみにさせてもらうよ?)

ランディは嬉しそう表情で呟き、エルンストは不敵な笑みを浮かべ

「しかもそこにあの局長達が加わればどうなるか…………フフ、彼らが何をするのか楽しみになってきたね。」

「わ、笑いごとじゃないよ、ワジ君……局長は司令達とも仲がいいから、下手したら司令達まで”何か”をするかもしれないし……」

「しかも局長の普段の言動やギュランドロス司令のIBCでの発言を考えると、下手をすれば二大国に戦争の勃発を誘導するような事をしてもおかしくないし……」

ランディの言葉に続いて言った後口元に笑みを浮かべたワジにノエルは溜息を吐いて指摘し、エリィは不安そうな表情で考え込み

「しかし、話には聞いていたけど、凄いな、ルファディエルさんの推理は……たったあれだけのキーワードからあんなとんでもない推理まで思いつくなんて……」

リィンは驚きの表情で呟いた。

「課長、今の局長達の推理、どうしましょう?」

「……俺の方からダドリーに知らせておく。局長やルファディエルの推理にもある程度説得力があるしな……お前達は明日に備えて休んでおけ。」

「わかりました。お疲れ様です。」



その後、ロイド達は明日に備えてそれぞれの身体を休ませた……………… 
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