真田十勇士
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巻ノ五十 島津家の領地その五
「しかしじゃ」
「それでもですな」
「その筑前に集まっている島津の兵もですな」
「観ますな」
「そして将帥達も」
「四兄弟もな」
島津家を動かしている彼等もというのだ。
「見るぞ」
「はい、わかりました」
「それではですな」
「島津家のその者達も観て」
「そのうえで帰りますか」
「そうするとしよう、では日向を見回り」
そしてだった。
「大隅、薩摩じゃ」
「わかりました、では」
「そうした国々にも向かいましょう」
「そのうえでよく観ましょう」
「しかもじっくりと」
「そうしようぞ」
こう話してだ、一行はまずは日向を見回した。そしてそのうえでだった。
大隅に入った、すると。
その大隅の中を見回してだ、十勇士達はその土地を観て眉を曇らせた。そして幸村に口々に言うのだった。
「殿、この国はです」
「土地が随分と痩せていますな」
「これはまた」
「火山灰の土ばかりで」
「田を作るのに難儀しそうです」
「畑でもです」
「暮らしにくい場所ですな」
こう言うのだった、そして。
幸村もだ、大隅のその土地を観て言った。
「確かにな、これはな」
「はい、非常にですな」
「暮らしにくい場所ですな」
「これは貧しいですぞ」
「こうした土地ですと」
「田畑が少なくその分人も少ない」
幸村は大隅の中を見回しつつまた言った。
「これではな」
「はい、実にですな」
「貧しいですな」
「他の国に比べても」
「そうなりますな」
「うむ、これはよくない」
また言った幸村だった。
「道理で北に北に向かう筈じゃ」
「島津の軍勢が」
「豊かさを求めてですか」
「それで戦もしているのですな」
「あの様に」
「うむ、これではな」
まさにというのだ。
「戦をしてでもな」
「豊かになりたい」
「島津家には島津家の事情があるのですな」
「いや、こうした土地ですと」
「苦労しますな」
「あの山のせいじゃな」
幸村は彼等から見て南西の方に目をやった、そこには巨大な火山があった。その先からは白い煙が出ている。
「桜島じゃな」
「大きな火山ですな」
「それもやたら噴火する」
「今も白い煙を出していますし」
「あの山からですな」
「出た火山の灰がな」
まさにというのだ。
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