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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
  なのはA's ~永遠の夢、有限の現~


なのはとフェイトが、闇の書と化したはやてと交戦を始めて三分。
にもかかわらず、二人の息は上がっていた。

たった今空間魔法「デアボリック・エミッション」をバリアで防いでここまで回避してきたのだ。
今いるのは闇の書からは見えない、死角になっているビルの影だ。

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・だ、大丈夫?フェイトちゃん」

「なのは・・・大丈夫・・・・だけど・・・っ!!」

ズォオッ!!

瞬間、世界が結界に包まれる。

「私たちだけに狙いを絞ってきたね・・・」

「なんとかしないと・・・・」

「なのは!」
「フェイト!!」

と、そこでユーノとアルフが合流する。

「この結界は・・・」

「たぶん、私たちだけを狙ってるんだ」

「いま、クロノが解決法を探している」

「舜もこっちに来てるみたいだけど、まだわからないね」

「じゃあ・・・それまでは私たちが!!」

「「「うん!!!」」」

彼らが来てくれればきっと何とかなる。
そう信じて、彼らは闇の書に向かって飛んでいった。


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ガキィ!!!ガァン!!!

金色の刃と黒い翼が応酬する。


フェイトと闇の書がぶつかっているのだ。
さらにその隙を見てユーノとアルフがチェーンバインドを仕掛けるが、まるで糸を千切るかのようにブチブチと引きちぎられてしまう。

「ッ!?」

「フェイトちゃん!!」

相手の動きが止まると踏んで攻撃に向かったフェイトが急ブレーキをかけ、無防備になってしまうのを、なのはの砲撃で注意を逸らして助ける。
戦闘になってない。

これでは壁打ちと同じだ。
相手にまともに効いた攻撃など一切ありはしない。

フェイトとなのはの挟み込みでの砲撃ですらも、彼女は防いでしまう。


「断て」

その一言から出現したバリアで、両側から迫りくる砲撃を微動だにせず受け止める闇の書。

「穿て、ブラッディダガー」

しかも、その砲撃を受け止めた状態のまま、血のように赤い短剣による攻撃に移る。
その軌道は直線的で、カクカクと折れ曲がりながら砲撃を回りこんで目で追えぬ速さでなのはとフェイトに直撃した。
それは刺突による攻撃ではなく、あくまで魔力での攻撃だったのか、着弾と共に爆発し、爆煙で二人を包んだ。

だが、その煙から出てくる二人に大きな怪我はない。
ただ、その衝撃に顔を歪ませた。

『そこまで大がかりな攻撃はまだないからなんとか行けるかもしれないけど・・・・』

『このままじゃジリ貧に・・・・こっちの魔力が先になくなっちゃう!!!!』


無事な二人を見て、業を煮やしたのか。
闇の書は片手を上げ、宣告した。

「咎人たちに、破滅の光を」

魔力が集束していく。
なのはの最大魔法が使用されようとしていた。


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「よっし!!今行くぞ!!なのは、フェイトォ!!!!」

蒔風が開翼して闇の書へと一直線に飛んでいく。
タイミングとしては、ついさっきなのは達がブラッディダガーの攻撃にこらえた直後だ。

「蒔風君参上・・・ってあれ?なんでみんな離れてんの!?」

なのは達は何かに追われているような緊張の面持ちで闇の書から急激に離れていった。


「・・・・・・まあいいや!!!めんどくさいことは後回し!!とりあえず、おとなしく-----ぅうおい!?」

蒔風が闇の書の目前、五十メートルで気付いた。
集束された魔力。桜色の魔力光。そして魔法陣。あれは・・・・

「スターライトブレイカー!?いっぺんなのはが蒐集されたからか!?魔力は使い果たしてても情報は残ってたか!!」

蒔風が分析し急ブレーキをかけ、その場から離脱しようとする。
だがすでに集まった魔力は直径五メートルほどにまで溜まっており・・・

「スターライト・・・・」

「いい!?やっべやっべ!!もう一回言っとこうか?やっべ!!ちょい待ち待って待ちやがれって三段活用!?」

もはや回避不能な状態である。
なればこそ、腹をくくって「星」を冠するその砲撃を、撃ち滅ぼすのみ!!
少年の拳は威力もさながら、そのことに特化した名を持つ拳!!!


「ブレイカー・・・」

バゴォウ!!!!!

その膨大な魔力による砲撃が周囲を包んでいく。
そしてそれが蒔風に到達する。


「しゃぁーーーねーーーーなぁーーーーーーー!!!!!!打・滅・星!!!!!」


ドゴゴゴゴゴガン!!!!!

その拳を次々に叩きこむ蒔風。
その名の通り、この拳は「星」を「打」って「滅」ぼすもの。

星に関する名のつく技、概念は、この拳の前には無と消える。
しかし


「こいつっ・・・・・質量がでか過ぎるッ!!!!」

蒔風が何度も何度も撃ち続けるが、その身体は徐々に後退して行っている。
しかし、それは確実に受け止めていた。
本来なら既に結界内を覆い尽くしているはずの魔力が、蒔風一人に食い止められていた。

空中からだんだんと降ろされていく蒔風が、ついに地面に降りる。
しかし、その勢いは止まらない!!!

「ぐ・・・・おおおおおおおお!!!!!」

グォッ・・・・ブワァッサ!!!!!

蒔風の翼がより一層大きく開かれ、全力での力の行使を始める。
その過剰な力の余波が翼から放出され、銀白の羽根がキラキラと輝いてその場に舞う。

(チックショウ!!!筋量が絶対的に足りねえ!!!この体さえ何とかなりゃア、こんなもんとうに追い返してんのによ!!!!)

バゴォン!!!!

蒔風の渾身の一撃で、少しだけ砲撃を押し返す。
だが、それはすぐに戻ってくる。
なまじ勢いがついた分、さっきよりも強烈に!!!!


しかし、この少年はあとには退かない。
息を吸い込み、両腕を引く。

そして溜めこんだ息を一斉に吐き出し、戻って来る殲滅の光にその両拳を叩き込んだ!!!!!

「打滅星・双拳爆砲!!!!!!!」


バッグォアッ!!!!!


両拳が同時にそれとぶつかる。
その瞬間に、天地を轟かせる轟音が周囲に響き渡る。
その音の衝撃に、結界内のビルすべての窓ガラスが砕け散り、小さい建物などは瓦解してしまった。


「ごおおおおおおおおおおおおおおおおああああああああああああああああああ!!!!!!」

蒔風の足がめり込み、アスファルトに二本の溝を作り出しながら、砲撃は蒔風の身体を押しやっていく。
凄まじいほその瓦礫と煙を上げながら、蒔風が地面を抉っていった。

ズッ、ゴッゴン!!!!


そしてついに砲撃が止む。
蒔風が砂埃な中から両腕をパッパッ、と振って出てきた。

「うげぇ・・・・広範囲魔法でSLB撃ちやがって・・・・受け止める側にもなれよ・・・・」

その拳は皮がむけ、血が滴り落ちていた。

「舜君!!」「舜!!」

そこになのはとフェイトがやってくる。
どうやら後方にいたようで、そこから誰かが転送されていった。

「あれ?誰かいたのか?」

「あ、うん・・・」

「えっとね・・・・アリサちゃんとすずかちゃんが・・・・」

「ヴェ?そりはマジでぃすか!?」

「あ、あはは~」

「バレタの?」

「うん」

「俺は?」

「翼くらいは見られたかな?顔はわからないけど」

「あっちゃ~~~。説明めんどいぞ~~~~」

「うん・・・でも今は」

「そうだな」


蒔風たちが振り返る。
と、そこに闇の書がふわりと飛んできた。

「主は嘆き、悲しんでいる。我が主の望みは、このような絶望しかない世界が、悪い夢であってほしいということ。私はそれを成し遂げる。そのためには・・・」

そういって闇の書がすっ、と三人に手を向ける。

「主に永遠に続く安らかな夢の眠りを。そして騎士たちを傷つけた者には」

メキッ!!

「永遠の闇を」

ドゴゴン!!!

アスファルトが砕け、その下から茶色の龍のような巨大蟲が触手と共に飛び出してきた。
かつてシグナムたちが蒐集した巨大生物だ。
それが三人に迫り、絡みつき、その体を締め付けようとせまる。


「ダァアッ!!!!!!!!」


ダゴン!!!!!


しかし、蒔風が地面を踏みぬき、振動が一体を揺らす。
その衝撃に本体の蟲も、触手も、ぐったりと倒れてしまう。


「夢の中でだと?そんな甘いことを、このオレが許せるとでも?バカなこと言ってんなよ!!人は誰でも生きてる限り、傷付き、絶望し、別れに涙を流していく。ああ、確かにはやてに振りかかったことは悲劇だ。それは悲しむべきことだ。慈しんでやるべきことだ!!だけどな、それから眼を逸らしていくなんてことは俺は認められない。はやてが目を逸らして、夢の中ににげちまったら、ヴィータやシグナム達の頑張りが全部なかったことになっちまうじゃねえかよ!!!!あいつら何のために必死になったのかわかんなくなっちまうじゃねえかよ!!!誰もが直面し、乗り越えていくことをお前だけ都合よく避けるなんてことは許さない!!!乗り越えて、強く生きろよ!!逃げるなんて軟弱な生き方は認められない。そんな生き方は誰も救われない!!!!俺の友人はな!!誰もが救われてなきゃいけねえんだよ!!!!!!」


だがその叫びに闇の書は諦めた口調で言い返す。

「そのようなことは知らない。私はただ主の願いをかなえるだけ」

「願いを叶えるだけ!?そんな願いを叶えて……それで、はやてちゃんは本当に喜ぶの!? 心を閉ざして・・・何も考えずに、主の願いを叶えるための道具でいて、あなたは、それでいいの!?」

なのはが叫ぶ。
なるほど、それは正論だ。

だが、悲しいことに彼女には、それだけの時間がなかった。
自己が芽生えるだけの十分な時間がなかったのだ。

いや、自己はきっとあるのだろう。
その証拠に、その瞳からは涙が流れていた。

しかし彼女はまだ、自己を認識することが出来ていなかった。


「我は魔道書、ただの道具だ・・・」

「だけど、言葉を使えるでしょ!心があるでしょ!?そうでなきゃおかしいよ、ホントに心が無いなら・・・泣いたりなんか、しないよ!!」

「この涙は主の涙、私は道具だ、悲しみなど・・・無い・・・」

その言葉に、フェイトが感情を爆発させる。
それはきっと、かつての自分の姿をそこに見たからだろうか。

「悲しみなど無い?そんな言葉を、そんな悲しい顔で言ったって……誰が信じるもんか!! 」

その言葉を蒔風がつなぐ。


「お前に心がないのなら、お前のその「主の為」と言う願いはなんだ!!!ここまで俺たちに執着して、それでもお前が俺たちを潰そうとしているのは、それがお前の願いだからだろ!?主のために願うその心が、ただのプログラムなわけないだろ!!!!」

「あなたにも心があるんだよ!?悲しいって言っていいんだよ!?あなたのマスターは、はやてちゃんはきっとそれに答えてくれる、優しい子だよ!?」

「だから、はやてを解放して……武装を解いて!お願い!! 」

さらになのは、フェイトが続き、説き伏せる。
しかし、彼女もはや止まれない。

その瞬間、周囲が崩壊を始める。
火柱が上がり、天が唸る。

その状況は世界の崩壊そのものだった。

「ッ!!闇の書による崩壊プログラムか!?」

「そうだ。私もじきに理性を失う。そうなれば主の願いは果たせない。そうなる前に・・・・主の願いを、叶えたい」


それは彼女のたった一つの願いだった。
永きにわたり道具と扱われてきた彼女の、最初の願いた。
故に彼女は何にも変えてそれを成し遂げるだろう。

その胸に宿る、主の願い。
自分はそれを叶えるしかできないプログラム。
そうすることでしか、主に仕えることができない悲しみ。

ああ・・・・と彼女は思う。
なぜ、こんな物になってしまったのか。
なぜ、こんな形でしか主に尽くせないのか。

しかしもう止まらない。
自分はもう、暴走するだろう。
もしこの呪縛から解き放たれ、主を真に救えればどれだけ幸せなことだろう。
それができるならば、私は私の意義を為せる。

しかし、残りの時間はあまりにも短い。
故に、このような粗末な形しかで貴女を救うことのできない私をお許し下さい。

私は・・・・・・


ついに出会えた真の主と認めるあなたの、真の願いを叶えられなかった。




「ハァッ!!」

闇の書が三人に砲撃を放つ。
それを蒔風が畳返しで防ぎ、爆発して爆煙が起こる。

そしてその中からフェイトが飛び出していった。


「言うことをッ、聞けェ!!この!!!駄々っ子!!!!」

バルディッシュを戦斧のアサルトにし、斬りかかる。


「お前も・・・安らかな闇の中に眠れ・・・・」

それをバリアで防いだ闇の書が、魔導書をフェイトに向ける。
するとフェイトの身体が光の粒子となって、本の中に消えてしまった。

《蒐集》

魔導書が宣告し、何が起こったのかを二人は理解した。


「フェイトちゃんが・・・・」

「蒐集された!?一度蒐集されてるから、本人もお手の物ってか?」

その二人に闇の書が言う。

「我が主もあの子も、覚めること無い眠りの内に終わり無き夢を見る。生と死の狭間の夢、それは永遠だ」

「永遠なんて、ないよ。みんな変わってく、変わっていかなきゃ、いけないんだ。私も……あなたも!」

「夢は終わりがあるからこそ夢なんだ。覚めない夢は悪夢に過ぎない。限りある命だからこそ、限界があるからこそ、そこに挑んで、それを乗り越え、そうやって人の人生は輝いていくんだ!!!お前のその永遠は停滞だよ。先に進まなくちゃ、その命は輝かないんだ!!!」


なのはと蒔風が闇の書へと言い返し、飛び出していく。

「おおおおおおおおおお!!!!!!」

蒔風が飛びかかる。
だが、それが到達する直前に、闇の書が砲撃を撃ちその動きを止めた。

ドパン!!

「ぐおっ!?ノーモーションで砲撃!?でもそれじゃあオレは倒せな・・・」

「お前も・・・・・悲しみの過去があるようだな」

「!?」

「お前も・・・永久に」

シュウウウウウウ

蒔風の身体が光の粒子となって魔導書に吸い込まれていく。

「ッ!?」

「銀白の翼人・・・か。翼人の色彩も増えたものだ」

「なに!?う、あああああああああ・・・・・」

そうして少年の姿も消える。


残されたのはなのは一人。

「お前も・・・幸せな夢の中で・・・・」

「私は、先に進むよ。それにみんなも、今に留まってるだけじゃない・・・未来に向かって、進んでるんだ!!フェイトちゃんも、舜君も、はやてちゃんも!!!!」


吸収された三人の友を救うため、魔法少女は単身で向かった。




「永遠」はただ聞こえのいいだけの言葉だ。
永遠なんてものは存在しない。

そこにあるのは、強固な人の想いだけだ。






to be continued
 
 

 
後書き

アリス
「次回、夢で逢えたら・・・・」

ではまた次回








じゃあ、いってらっしゃい、フェイト。
現実でも…こんなふうにいたかったな……


うわあああああああん(泣)(ノД`) 
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