魔法少女リリカルなのは 異形を率いる男
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10.決定的な変化
前書き
更新が遅れて申し訳ありません。
テストは今年中は無いのでもう遅れることは無いと思います。
今後ともよろしくお願いします。
休日のとあるサッカーコート。
そこには2種類のユニフォームを着た集団がいた。
年齢は同じ程度、チーム内での年齢のバラつきがあるが、それでも小学生程度の年齢の少年たちで構成されたチームが2つ。
優勢なのは、なのはの父親である高町士郎がコーチ兼オーナの「翠屋JFC」という名のチーム。
夜市やなのは達はそのチームの応援に来ていた。
そんなチームの中で一人、目立たないが故に違和感を感じるような人物が一人いた。
彼のしている事は単純に動く事で出来てしまう隙間を常に動きその部分を補い仲間の攻めやすい状況を作り出すこと。
そのため目立つことは殆ど無いが、チームの貢献度は最も高いとも言える。
その上、本来そこまでの事ができるなら普通に攻める事もできるだろう。いや実際出来るのかも知れない、だが彼はそれをせず愚直にもチームを支える事しかせず、自らは極力目立とうとする事はしない。
実力はあるが目立つ事は無く、常に誰かの陰に隠れるナンバー3それが彼を言い表す最適の言葉だろうか?
彼の名前は高橋一輝。
私立聖祥大付属小学校に在籍する夜市達のクラスメイトであり、前世の夜市を殺害した張本人であり、現在なぜか夜市が転生者である事を唯一知りながらも親友というポジションを獲得している性格的に謎の多い『元』殺人鬼。
なのはの父である高町士郎がこのチームのコーチであり彼がこのチームに所属してるため夜市はしていた趣味の様な仕事を手早く片付け応援をしに来ていた。
「みんなー!がんばってー!」
隣のなのは達が声を張り上げ、そんな応援をしている隣で夜市は彼の親友である一輝のプレイに疑問を持っていた。
夜市の知っている一輝は集団の中心にいる事が殆どのはずなのにも関わらず、今の一輝のプレイスタイルがあまりにもかけ離れていたからである。
一輝とは四歳の頃に道端でばったり会った時から現在に至るまでの5年の付き合いだが未だに性格的に分からない部分が大量に存在しているのが現状であり、5年間も付き合っているのだから殆ど把握している事が普通と言う事なのではなく、5年間付き合って、ようやく5割程度表面的な部分の性格を把握することができるというほど、謎の多い性格の持ち主なのである。
試合を見ながらそんなことを考えていた夜市だったが、試合を見ていてそんな考えは違っているということが分かった。
「やっぱあいつ、集団の中心だな……」
夜市の口からは自然にそんな言葉が口から出ていた。
何故かと言えば、試合の中では目立つことが無いが、一輝一人に絞って見ていると、一輝がチームの動きの起点になっていることに気が付いたからである。
意識しなければ分からない様なそんな気付き難い事だが、確かに一輝はチームの動きの起点となっていた。
一輝は点こそ入れていない。だがその動きがチーム全体の動きを左右している。一輝が攻めに出れば、自然にチームが攻めるようになる。守りに入れば守りの動きに変わっていく。
その上一輝自身が状況に合わせ適切に動いているため、面白いように試合展開が翠屋JFCに有利に動いていく。
相手チームも何とか抵抗しようとしていたが、そのまま押され、結局4対0の圧勝という結果に終わった。
「なんだかんだ言って結局、一輝って何でもできるんだよな」
そんな言葉が、試合後の会話に上がった。
「何でもはできないぞ。神様じゃないんだからな」
一輝はそう冗談交じりに言う。
だが、その言葉は神がいる事を実際に知っているためか、冗談交じりに言ったにも関わらず妙に現実味を帯びていた。
「確かに何でもできたら神様としか言いようがない……」
その言葉を言っていた夜市の意識は後半以降、別の事に向いていた。
その相手は一輝と同じチームに所属しているチームの中で最も目立っていた少年だった。
夜市の意識がその少年の方に行った理由は彼がなのはや夜市が探している代物である青い菱形の宝石の形をした膨大な魔力の塊ジュエルシードを手にしていた事にある。
「どうした?」
夜市の目線の先を見ながら一輝は尋ねる。
その声にはジュエルシードを見つけた様子は感じられない。
「あそこに居るお前のチームメイト。あいつがジュエルシードを持ってた」
その言葉を聞いた瞬間に一輝は何かを思い出したように「あ」と、言う声を上げ、心底居心地の悪い顔になった。
「何か知ってたのか……」
夜市は溜め息交じりにそう言った。
「いやさ、あいつっていい感じの関係になってる彼女がいるんだけど、試合前にそいつに今朝拾った綺麗な石……渡すって言ってた……」
「お前ってアニメは見てたんだよな?」
一輝は無言で頷いた。
「それでそこまで露骨なこと言ってて気付かなかったと、そう言う事か?」
「い…いや、そんな9年も昔のことを覚えていろという方が無茶なのでは……」
一輝自身は苦し紛れで言ったのかもしれないが、その言葉は意外にも正論に近いものだった。
「確かにそうだな。まあいいだろう」
夜市はそこで一旦、言葉を切り、
「で、どうすんだ?」
と、短く本題に入った。
「どうすんだも何も、どうしろと言うんですか?あいつにいきなり『それは危ない物だから渡してくれないか?』とでも言えと?」
一輝の言葉には諦めの様なものを夜市は感じた。
「何も対策、煉ってないんだな」
その言葉を言った後に夜市は深くため息をつき、ポケットからあるものを取り出した。
その手に握られていたものは青い菱形の宝石だった。
「それ……まさかジュエルシード何てオチじゃ無いだろうな」
「そんな訳無いだろ。ただ形だけ真似ただけの劣化コピーだよ」
軽い口調で夜市は言う。
「だけどそんな物、用意してどうする気だ?入れ替える事なんてできないだろう?」
「出来るんだよ、それが」
一輝の反応を楽しむように夜市は言う。
「まあ見てろって」
そう言い、夜市は席を立つ。
周りの席に居たほかのチームメイトはいつの間にか帰っていた。
夜市は出口に向かう足取りで少年の横を通る。
その体が横に並んだ瞬間、夜市の腕が少年のポケットに手が伸びる。その手には既に青い宝石が握られている。その手が少年のポケットに滑り込み、青い宝石を入れ替え出てくる。
少年はポケットの中に手が入り込んだにも関わらず、まったく気づいている様子は無かった。
そして夜市はそのままの足取りで店内から出て行った。
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