遊戯王EXA - elysion cross anothers -
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TRICLE STARGAZER
TRSG-JP002《決戦の終わりと始まりと》
前書き
【セイクリッド】
この世界においては伝説と呼ばれるカードカテゴリーです。
その内、エクシーズ以外のモンスターは全て効果が判明しており、アカデミアの試験問題にも出題されています。紫音が効果を知っていたのはそのためです。
しかし、エクシーズモンスターについては依然として何一つ効果・召喚条件が判明していません。そのため、対になる【ヴェルズ】と共に教授達が日夜研究を重ねています。
―――― Turn.2 End Phase ――――
1st/Shion Yukikaze
◇LP/4000 HAND/3
◇《黒い旋風》continuous
◇set card/mo-0,ma-0
2nd/Saya Amakawa
◇LP/4000 HAND/0
◇《セイクリッド・プレアデス》ATK/2500
◇《セイクリッドの星痕》continuous
◇《セイクリッドの星痕》continuous
◇set card/mo-0,ma-1
……やられた。彼女の手札に《オネスト》なんていなかった。初めから、目的は「私に伏せカードを使わせる」ことだったんだ。
もし"月影のカルート"の効果を使い《セイクリッド・オメガ》を返り討ちにしていたら、効果で特殊召喚した《BF-大旆のヴァーユ》を《セイクリッド・プレアデス》の効果で……あ、そのときは《ブレイクスルー・スキル》でどうにかなってた。
もし素直に戦闘破壊されていたら、召喚権が足りなくて《セイクリッド・プレアデス》は場に出て来なかった。
私の場にセットされていたのは《次元幽閉》と《ブレイクスルー・スキル》。"オメガ"の効果さえ知っていれば、こんなことにはならなかった。だけど、エクシーズモンスターを囮に伏せカードを全部使わせて、さらにもう1体のエクシーズモンスターを場に出すなんて……!
"セイクリッド"のエクシーズモンスターが入った伝説のデッキ【真・セイクリッド】。遊人だったら決勝で戦いたいとか言いそうだけど……
「私のターン、ドロー!」
……ごめん、遊人。このデュエル、絶対に勝ちたい!
Turn.3 Player/Shion Yukikaze
1st/Shion Yukikaze
LP/4000 HAND/3→4
2nd/Saya Amakawa
LP/4000 HAND/0
「《闇の誘惑》を発動! デッキからカードを2枚ドローして、その後手札の闇属性モンスター1体をゲームから除外する!」
私が引いたカードは、闇属性専用のドローカード。2枚ドローした後に闇属性モンスターを手札から除外する、手札交換系カード。手札に闇属性モンスターが無ければ全て捨てることになるけど、私のデッキは闇属性鳥獣族の【BF】。気にする必要はほとんどない。
「《BF-東雲のコチ》を除外! そして、もう一度《BF-蒼炎のシュラ》を召喚!」
私の場に再び現れる"シュラ"。さっきは飛ばされたけど、2度目はもうない!
BF-蒼炎のシュラ
☆4 ATK/1800
「そして、《黒い旋風》の効果を―――」
「させるかっての! 《セイクリッド・プレアデス》の効果をチェーン発動!」
嘘でしょ!? あいつ、相手ターンでも使えるの!?
「《黒い旋風》は効果処理時点での召喚されたモンスターの攻撃力を参照するカード。つまり、処理時点で召喚されたモンスターがフィールドにいなければ効果は不発になる!」
セイクリッド・プレアデス
★5/1→0 ATK/2500
「もう一度"蒼炎のシュラ"を飛ばすわ、原初に帰す星々の輝跡!!」
さっきの時と同じように、白騎士が剣を振り上げる。……やるつもりじゃなかったけど、使うしかない!
「それにチェーンして、墓地の《ブレイクスルー・スキル》の効果を発動!」
「な、墓地からトラップ!?」
あ、それ久しぶりに聞いたかも。
「《ブレイクスルー・スキル》は、自分のターンにこのカードを墓地から除外することでもう一度発動できるの。《セイクリッド・プレアデス》の効果を無効にするわ!」
私の場に、もう一度《エヴォルカイザー・ドルカ》が現れる。0と1で出来た結界を張って、白騎士の放った衝撃波を防ぎきった。
「……マジで?」
「召喚された"シュラ"の攻撃力は1800。《黒い旋風》の効果で、攻撃力1300の《BF-疾風のゲイル》を手札に加えるわ!」
手札に"ゲイル"が加わり、これで私の手札は4枚。セットカードが怖いけど、もし召喚反応系なら"プレアデス"の効果じゃなくてそっちを使ってるはず。
「そして、フィールドに"BF"がいるとき、"疾風のゲイル"は特殊召喚できるわ! 来て、"ゲイル"!」
私の場に舞い降りる、緑色の羽毛と紺色の翼をもった小さな鳥"ゲイル"。この前制限カードにされちゃったけど、それだけこの子が強いって証拠よね!
BF-疾風のゲイル
☆3T ATK/1300
「《BF-疾風のゲイル》の効果発動! 1ターンに1度、相手モンスターの攻守を半分にする!」
ゲイルが上空に羽ばたいて、騎士に向けて竜巻を叩きつける。黒い渦がぶつけられ、光の剣は輝きを失った。
セイクリッド・プレアデス
★5/0 ATK/2500→1250
「バトルフェイズ!《BF-蒼炎のシュラ》で《セイクリッド・プレアデス》を攻撃!ブラック・フレイム!」
"シュラ"が両手に蒼い炎を灯し、それを騎士に投げつけた。炎の珠は白騎士の目の前で爆発し、一瞬でその体を焼きつくす。
「くうっ……!」
Saya LP/4000- 550=3450
そしてその焼け跡から、1体の小さな鳥が飛び出した。
「"シュラ"が相手モンスターを戦闘破壊したとき、デッキから攻撃力1500以下の"BF"を特殊召喚出来るわ。《大旆のヴァーユ》を特殊召喚!」
飛び出して来たのは、学ランを来た鶏のようなモンスター。今日が初陣になる、私の新しい仲間!
BF-大旆のヴァーユ
☆1T ATK/800
「そして、"ヴァーユ"と"ゲイル"でダイレクトアタック!」
そして、流れるように"ヴァーユ"と"ゲイル"の追撃が入って……あれ、これ入ったら残り1350? じゃあ、通れば"カルート"使って……!
「……悪いけど、それくらったら私死ぬのよね」
たった今焼け死んだはずの騎士が、主を護らんと再び立ち塞がる。うう、これ通ったら終わってたのに……。
「私の伏せていたカードは《エクシーズ・リボーン》。自分の墓地のエクシーズモンスターを蘇生し、その後モンスターの素材になる通常罠。この効果で《セイクリッド・プレアデス》を蘇生したわ」
セイクリッド・プレアデス
★5/1 ATK/2500
「そして、"セイクリッド"のエクシーズモンスターが特殊召喚されたとき、《セイクリッドの星痕》の効果が発動。2枚の"星痕"があるから2枚ドロー」
そう言って、彼女が2枚のカードをドローした。……あれ、相手ターンでも使えるんだ。
「……"ヴァーユ"の攻撃を中断! "ゲイル"で《セイクリッド・プレアデス》を攻撃!」
「くっ、やっぱり攻撃してくるわよね……!」
「当然よ!」
《BF-疾風のゲイル》は攻撃力1300。ここに《BF-月影のカルート》を合わせれば2700、彼女の手札に《オネスト》がない限り、攻撃力2500の《セイクリッド・プレアデス》を倒すことが出来る。
普通ならばそんなこと《セイクリッド・プレアデス》の効果で攻撃モンスターを飛ばされて終わるんだけど、《BF-疾風のゲイル》には自分フィールドに他の"BF"がいれば手札から特殊召喚出来る効果を持っている。つまり《セイクリッド・プレアデス》の効果が事実上の無駄撃ちになる。
つまり、天河さんにとっては鬱陶しい2択「《セイクリッド・プレアデス》の効果を使う」「私に《BF-月影のカルート》を使わせる」のどちらかを選択しなければならなくなった。
こんな状況で、攻撃しないわけないじゃない!
「……《セイクリッド・プレアデス》の効果発動! 《BF-疾風のゲイル》を飛ばすわ!」
セイクリッド・プレアデス
★5/1→0 ATK/2500
「原初に帰す星々の輝跡!」
白騎士が再び手に持つ剣を振りかざす。放たれた光の剣閃は、"ゲイル"を黒い竜巻ごと飲み込みかき消した。
「……メインフェイズ2に入るわ。レベル4《BF-蒼炎のシュラ》にレベル1《BF-大旆のヴァーユ》をチューニング!」
黒き疾風に導かれ、大いなる翼が舞い降りる!
悪を退ける白き剣よ、夜空を翔る風になれ!
☆4+☆1=☆5
シンクロ召喚! 舞い上がれ、煌めく天剣!
「《BF-煌星のグラム》、降臨!」
私のフィールドに黒い竜巻が巻きおこる。その中から、銀色の鎧を纏った黒翼の武士が現れた。背中だけでなく、両腕と両足にも一回り小さい翼がはえている。
BF-煌星のグラム
☆5 ATK/2200
「《BF-煌星のグラム》がシンクロ召喚に成功したとき、手札からレベル4以下の"BF"を特殊召喚できるわ! 来て、《BF-精鋭のゼピュロス》!」
"グラム"が剣をかざすと、それをつたって黒い風が吹く。黒い風は一点で強く巻きあがり、やがて発生したつむじ風から新たな鳥人が飛び出した。
BF-精鋭のゼピュロス
☆4 ATK/1600
「最後に、手札の《BF-疾風のゲイル》を特殊召喚! "ゲイル"の効果で、もう一度"プレアデス"の攻守を半分にするわ!」
ゲイルが再び羽ばたいて、騎士に向けて黒い風を叩きつけた。旋風をぶつけられ、光の騎士は膝をつく。
セイクリッド・プレアデス
★5/0 ATK/2500→1250
「カードを1枚セットして、ターンエンド!」
―――― Turn.3 End Phase ――――
1st/Shion Yukikaze
◇LP/4000 HAND/1
◇《BF-煌星のグラム》ATK/2200
◇《BF-疾風のゲイル》ATK/1300
◇《BF-精鋭のゼピュロス》ATK/1600
◇《黒い旋風》continuous
◇set card/mo-0,ma-1
2nd/Saya Amakawa
◇LP/1350 HAND/2
◇《セイクリッド・プレアデス》ATK/1250
◇《セイクリッドの星痕》continuous
◇《セイクリッドの星痕》continuous
◇set card/mo-0,ma-0
私のセットしたカードは、2枚目の《ゴッドバードアタック》。鳥獣族モンスターをリリースすることでフィールドのカードを2枚破壊する罠カード。
"セイクリッド"の特殊召喚に合わせてこのカードを使い、《セイクリッドの星痕》を破壊すれば……いや、そんなことしても場を整えられたら意味がない。とりあえずは相手の行動をどこで止めればいいかを考えないと……!
「私のターン、ドロー!」
Turn.4 Player/Saya Amakawa
1st/Shion Yukikaze
LP/4000 HAND/1
2nd/Saya Amakawa
LP/1350 HAND/2→3
「……いける、かしら?」
目の前の彼女がそう呟いた。……と、同時。
「……え!?」
私のセットしていたカードが、撃ち抜かれた。
チェーンして使うべく、慌ててデュエルディスクを操作する。だけど、いくらボタンを押してもセットカードは反応しない。そのまま《ゴッドバードアタック》は消えてしまった。
「《ナイト・ショット》。フィールドにセットされたカード1枚を破壊する通常魔法。そして……」
「破壊対象になったカードは、《ナイト・ショット》にチェーンできない……!」
「Exactry! ……って、それ《ゴッドバードアタック》じゃない!? うわ、今これ引かなかったら死んでたわね……」
って、デッキトップ《ナイト・ショット》だったの!? なんて引きしてるのよ……!
「さて、私にはまだ"星痕"の効果が残ってる。だけど、この2枚次第では詰む」
膝をついていた星騎士が、剣を杖にして立ち上がる。……天河さん、何をしようとしているの?
「だけど、この世界に運命なんてない。あるのは偶然と気まぐれのみ。人はそれを奇跡と呼ぶし、それが都合良く噛み合えば運命と呼ぶ。運命を始めから決められたことと言う人もいるけど……私達に決められた未来がないからこそ、この世界は楽しいのよね」
溢れ出す、星の光。少女を取り巻く煌めきが足元に星の紋章を描いた。
「これから起こる奇跡は、私達に何を見せてくれるのかしらね!」
少女の黒かった髪は、光と共にその色を金色へと変えた。その瞳は深い蒼、両の瞳に金色の星痕が刻まれる。
少女に呼応するように、白銀の騎士はその体を黄金の光へと変えて………
「"セイクリッド"ランク5《セイクリッド・プレアデス》、オーバーレイ再構築!」
我刻みしは聖なる剣、悪しき骸への裁きの光!
天に祀られし希望の龍よ、運命を砕く奇跡となれ!
★5> Re-Birth >★6
氾濫せよ、救済の光! "覚星転界"!!
「《セイクリッド・トレミスM7》、光臨!」
彼女のフィールドに、金色の翼龍が舞い降りる。機械のような体を持ちながら優しい光を放つその姿に、私は思わず息を飲んだ。
セイクリッド・トレミスM7
★6 ATK/2700
「これが、伝説の神龍……!」
「え、伝説なの? ……まあいいわ、とりあえず"星痕"で2枚ドローするわね」
あの伝説のエクシーズモンスターもまた、"セイクリッド"に含まれている。つまり《セイクリッドの星痕》の効果の発動トリガー。
天河さんが2枚のカードをドローして、これで手札は4枚。さっきまで0枚だったのに、ここまで手札を増やすなんて……!
「……行ける、かな?」
そう言って、天河さんは1枚のカードに手を掛けた。
「《増援》を発動、デッキから2枚目の《セイクリッド・ポルクス》を手札に加え召喚。そして、手札から《セイクリッド・ハワー》を召喚!」
彼女の場に、2つの紋章が描かれる。1つは双子座、現れたのはさっきと同じ半鎧の剣士。もう1つは蛇使い座、現れたのは蛇を模した杖を持つ魔法使い。
セイクリッド・ポルクス
☆4 ATK/1700
セイクリッド・ハワー
☆2 ATK/ 900
「そのモンスター……やばいっ!?」
「《セイクリッド・ハワー》の効果発動! このモンスターをリリースして、手札か墓地から"セイクリッド"を特殊召喚するわ! 戻ってきなさい、《セイクリッド・カウスト》!」
魔法使いが杖を構えると、その先端に光が灯った。その杖の先端で、魔法使いが星座の紋章を描く。
描かれたのは、射手座。さっきも見た半人半馬が、もう一度その弓を構えた。
セイクリッド・カウスト
☆4 ATK/1800
「そして《セイクリッド・カウスト》の効果を発動! "ポルクス"と"カウスト"のレベルを4から5へ!」
セイクリッド・ポルクス
☆4→5 ATK/1700
セイクリッド・カウスト
☆4→5 ATK/1800
これで彼女の場にはレベル5が2体。またランク5のエクシーズモンスターが来る……!
「レベル5《セイクリッド・ポルクス》《セイクリッド・カウスト》の2体をオーバーレイ!」
我刻みしは聖なる剣、悪しき骸への裁きの光!
平穏を護る始まりの主よ、混沌を正す光となれ!
☆5×☆5=★5
エクシーズ召喚! 断罪せよ、開闢の剣!
「《始祖の守護者ティラス》、光臨!」
再び結び付く5対の星。そこから光が溢れ、天に向けて放たれた。ここ室内だけど。
そして、天から黄金の翼をもった純白の天使が舞い降りた。ここ室内だけど。
始祖の守護者ティラス
★5/2 ATK/2600
「バトルフェイズ! 《セイクリッド・トレミスM7》で《BF-疾風のゲイル》を攻撃!」
伝説の龍が、天空へと舞い昇る。その口が開き、その中に星の光が集められていく。
「悠久守護す星龍の咆哮!!」
集められた輝きが、流星群の如く降り注ぐ。星光は私の場にいた"ゲイル"を瞬く間に飲み込んで、眩い光と共に私にも襲いかかってきた……!
「―――っ!!」
Shion LP/4000-1400=2600
「続けて《始祖の守護者ティラス》で《BF-精鋭のゼピュロス》を攻撃! 語り継がれし創世記!」
……来た!
「ダメージ計算時、《BF-月影のカルート》の効果発動! このカードを手札から墓地に送ることで、戦闘中している"BF"の攻撃力を1400ポイント上げる! 迎え撃って、"ゼピュロス"!」
BF-精鋭のゼピュロス
☆4 ATK/1600→3000
より強力な風を纏い、"ゼピュロス"が守護天使を迎え撃とうとして……しかし、その天使はそこにいなかった。
「……ねえ、"優先権"って知ってる?」
……? ユウセンケン?
「……あれ、本当に知らないみたいね。優先権っていうのは、基本的にターンプレイヤーが持つ特権みたいなものよ。あらゆるタイミングにおいて、ターンプレイヤーは相手より先にカードを発動することが出来るの。優先権を持たないプレイヤーがカードを発動する場合は、持っている相手が優先権を行使してカードを使うか優先権を放棄するかして、自分にその権利が渡らないといけないのよ」
……え、えーっと?
「つまり、どういうこと?」
「……まあ、簡単に今この状況においてどうなるかを説明するとね」
そう言って、天河さんが手札のカードを手に……まさか!?
「今優先権を持っているのは私。ダメージ計算時、優先権を行使して《オネスト》を発動……ってことよ!」
突然の輝きに"ゼピュロス"の動きが止まる。煌めきを放つ守護天使の翼は2枚から6枚へと増え、その手に持つ剣と盾からも神々しい光が溢れていた……!
始祖の守護者ティラス
★5/2 ATK/2600→4200→5600
「楽しいデュエルだったわ。けど、そろそろ時間がないから私は抜ける。だから、二回戦にはあなたが進みなさい」
そう言って、天河さんの体が白い光に包まれていく。
「また会いましょう、雪風紫音!」
その言葉を最後に、私は七色の剣光に飲み込まれ……
Shion LP/2600-2600= 0
……ふさがれた視界の中、地面に落下したデュエルディスクの音だけが響き渡った。
―――― Turn.4 Battle Phase ――――
1st/Shion Yukikaze
◇LP/ 0 HAND/1
◇《BF-煌星のグラム》ATK/2200
◇《黒い旋風》continuous
◇set card/mo-0,ma-0
2nd/Saya Amakawa
◇LP/1350 HAND/1
◇《セイクリッド・トレミスM7》ATK/2700
◇《始祖の守護者ティラス》ATK/5600
◇《セイクリッドの星痕》continuous
◇《セイクリッドの星痕》continuous
◇set card/mo-0,ma-0
Saya WIN
― ― ― ― ― ― ― ―
「じゃあ、教えてあげようか。闇のゲーム、その本質を」
俺の目の前に再び現れた、命の恩人である黒髪の青年。悟ったような彼の言葉は、俺が知ろうともせず、しかし知るべきことを示すものだった。
「闇のゲームの……本質だと?」
「うん。たしか、この世界に本来は存在しないんだよね?」
「あ、ああ……」
たしかに、"遊戯王CONNECT"……いや、既に"ELYSION"になってるな。この世界には闇のゲームなど存在しない。その存在は転生してから初めて知ったんだ。
「うん、じゃあ間違いないかな。闇のゲームのもとになってるのは、こっちの世界の遊戯王だ」
「「なっ……!?」」
彼の発した言葉に、俺だけでなく夜神までもが過剰に反応した。
"こっちの世界"……つまり、俺達のいた世界以外にも遊戯王があるってことか!?
「そして、今ので確信ができた」
「確信……?」
「夜神さん、あなたの慕ってた水咲凍夜は……俺のいた世界からの転生者だ」
……は?
「え、おま、それ……どういうことだ?」
「思い出したくなかったけどね、でもこれが真実だ。彼はこの世界の原作なんて知らない。原作介入以前に、彼は転生者を無差別に殺す……よりも酷いな。魂を闇に喰わせて壊す、"滅魂者"だったんだよ」
「違います!」
「違わない。てか、黙ってて。まだ話の途中だよ」
否定しようとする夜神を制止し、彼は語り始めた。
「水咲凍夜とは、中学のときに同じ学校だったんだ。肌が他の人よりも白くて、目付きが悪かったのはこっちでも同じだったけど」
「じゃあ、どうして凍夜先輩を……!」
「俺は……いや、俺達は彼に何度も殺されかけたんだよ。彼の恋人を殺したという、無実の罪を着せられてね」
彼が語り始めたのは、水咲凍夜の過去……それも、俺の考えていた以上に非情なものだった。
「彼の恋人を殺したのは、確かに俺達のクラスにいたんだよ。だけど、それは事件といえるようなものじゃなくてね……」
「殺したのに、事件じゃないのか?」
「というか、殺したというよりも……彼女が庇って死んじゃったんだよ。実際、警察も事故として済ませちゃったし」
「なるほどな……それを水咲は赦せなかったってことか?」
「Exactry.」
俺の言った結論に、正解を示す返しが来た。しかし、それを認めないとばかりに夜神が反論する。
「赦せるわけないじゃないですか! 自分の大切な人を殺されて、それを復讐するなという方がおかしいじゃないですか!」
「なんで? 恋人が自分じゃない誰かを庇って死んで、それを寝取られたとか変なこと言ってたんだよ? その恋人に庇われた人だけじゃなくて、俺達まで悪役にしたんだよ?」
そもそも悪者にすること自体ありえないけど……そう彼は付け加えた。
「最後は、彼の暴行が警察に目撃されて……現行犯逮捕で彼は少年院送り。悪は消え去り、犠牲者は……いたけどみんなもう回復してるから実質無し。完璧なハッピーエンドだったよ」
……わからない。今語る彼が、被害者なのか加害者なのか。
もしこれが真実だとして、彼は何を思ってこの話をしているんだ?
「……つまり、恋人が死んで荒れた水咲が、あんた達のクラスを皆殺しにしようとして、返り討ちにされた。こういうことか?」
「うん、客観的に見ればそうなるのかな。……あれ、俺達が悪者みたいになっちゃった?」
……いや、強いて意味があるとするならば、それは……
「……遺言はそれでいいんですね、風見蓮」
……あるとすれば、それは水咲を慕う夜神の否定―――!
「あ、闇のゲームだ」
「まじかよ!?」
気づけば、周囲には再び黒炎の境界が引かれていた。俺を1度葬りかけた、闇のゲームのフィールドが―――!
「2回デュエルするのも面倒です。同時にかかってきてください」
夜神の怒気がこの空間中に響いているような感覚。光無き瞳に映された殺意に、俺は思わず後ずさってしまう。しかし対称的に、真横にいる青年は何事もないかのような表情でこう言った。
「望月君、これ俺一人でやっちゃっていい?」
「い、いやお前、夜神の話聞いてたよな?」
「うん、その上で。敵の話に乗ったら駄目だと思ってね」
……まあ確かに、相手の壇上で戦わないのは戦術として常識ともいえる。その点では理に適ってるけどな……。だがお前、デュエリストとしてその返しはどうなんだよ?
「……いや、俺にもやらせてくれ」
「望月君?」
「黒乃だ。お前は?」
「……あー。そういうことね、了解。俺の名前は蓮。準備はいいね、黒乃?」
「ああ、いつでも始められる」
そう言って、俺はデュエルディスクを展開した。夜神は既に展開している。蓮は……ペンダントを手に取り、空中へと放り投げた……?
「決闘展装、起動」
刹那、真紅のペンダントが緋光を放ちながら砕け散る。光は粒子となって彼を包み、やがてそれらは2枚の大きな水晶盤となって彼の周囲に滞空した。
「……な、なんだよそれ……」
「んー、詳しくは言えないかな。まあ、とりあえず"闇のゲームにおいてダメージを受けなくなる"とだけ覚えておいてくれれば」
「「はあ!?」」
とりあえずで説明された能力の異常さに、俺と夜神の声が重なる。いや、十分すぎるだろ。強すぎるだろ。
―――― Turn.0 Are you ready? ――――
1st/Sakura Yagami
◇LP/20000 HAND/5
◇set card/mo-0,ma-0
2nd-A/Kurono Mochiduki
◇LP/4000 HAND/5
◇set card/mo-0,ma-0
2nd-B/Ren Kazami
◇LP/4000 HAND/5
◇set card/mo-0,ma-0
「……蓮、2つ質問いいか?」
「ん? いいけど」
「1つ目……さりげなく流されたが、ソウルロスターって何だ?」
「……ああ、危うく説明忘れるところだった。闇のゲームってさ、負けたら闇に飲まれるでしょ?」
もはや当たり前と言えてしまうことが悲しいが、そんな彼の言葉に首肯する。
「あれさ、なんか飲まれても死ねないみたいなんだよね」
「……はあ!?」
「飲み込まれた者は、生きることも死ぬことも許されない世界で永遠に苦しみを味わい続ける。簡単に言っちゃえば、闇のゲームを行う対価として悪魔に敗者の魂を売りつけるんだよ」
「……マジでか?」
俺の反応に蓮はExactry.と返した。……これ、こいつの口癖みたいだな。
「もしそれが本当だとしたら……あいつらを転生させたのは、本当に神なのか?」
「違うね。悪魔、もしくは邪神の類……というか、ほとんどの場合は俺と同じ"生きている人間"が神を騙ってる」
「生きている、人間……」
「そう。この世界を小説や漫画として……二次創作として、この世界を作っている人間。尤も、この意味においては神を騙っても間違ってないのが悲しいね」
なるほど、確かに俺も死ぬ前は小説サイトで遊戯王の二次創作を読んでいたりしていた。だが、いざ自分がその台本の中にのみ存在するとなると……やっぱり複雑だ。
「……なるほどな。さて、もう1つだが……」
そう言って俺は、デュエルディスクに映された情報を改めて確認した。
……変わっていない。遺憾ながら、蓮は大変な設定をしてくれやがったらしい。
「なんで夜神の初期ライフが10000もあるんだよ!?」
「え、だって8000じゃ足りないでしょ?」
「負けちゃいけないデュエルでそんなことしてんじゃねぇよ!?」
こいつ、本当に俺の味方なんだよな……?
「さすがにこのライフ差で負けたら、夜神さんも言い訳できないでしょ?」
「いや、それ以前の問題だろうが!」
「それに、水咲凍夜は3800の直撃で体が焼けて死んでるんだ。そう考えると彼女、ダメージ8000もいかないうちに死ぬんじゃないかな」
「……物理的にか」
「Exactry.」
駄目だこいつ、俺が思っている以上に外道だ……!
「まあ、夜神さんが水咲凍夜の敵を討つと言ったんだ。こちらからすれば、水咲凍夜に与え損なった罰の残りを彼女が受けてくれるわけだし……これぐらいのライフは無いとね」
「俺の命の恩人がマジで外道だった……」
「外道じゃなくて鬼畜ね。外道なのは転生者狩りの方だから」
「……鬼畜なのは認めるんだな」
「何を話し合ってるんですか、今更……」
しびれを切らしたのか、ここで夜神が口を挟んできた。
「ああ、勝ったときの決め台詞を何にしようか話し合ってた。だよね、黒乃」
「あ、ああ」
蓮に話を合わせようと相づちを打った瞬間、夜神の右手の甲に橙色の魔法陣が浮かびあがった。
「……嘘ですね。本当は何を話し合ってたんですか?」
「ああ、黒乃。あいつ、嘘発見器みたいな能力持ってるから気をつけてね」
「いや先に言えよ、そういう大事なことは!」
「というか、なんでその事を知っているんですか!」
「話さなければばれないから。デュエル中は必要なこと以外話さないようにして」
そう言って、蓮は夜神の方に向き直った。
「君に与えられたそのライフは、水咲が死ぬことで踏み倒した罰の総量。君が俺を殺すというのなら、まずはその罪を君が償え」
「罪、ですか。あなたは、転生者がこの世界に与える影響を知らないからそう言えるんですよ」
「君達は断罪者に相応しくない。少なくとも、望月黒乃を殺そうとしている現時点ではね」
……何故か俺の名前があげられた。
「罪人を裁くことに、罪が与えられることはないですよね? 私達は断罪者。この世界に蔓延する転生者を狩るために使わされた……はっ!?」
自分が言おうとしていたことを直前に否定されていたことに気がつき、夜神の顔が歪む。
「たった今言ったよね? 君達は転生者狩りに相応しくないと。望月黒乃の願いは、前世で心の支えとなった遊戯王CONNECTの主人公・桜井遊人の生き様をこの目で見たいというもの……現に彼は原作を尊重し、原作を破壊することを決してしなかった」
確かに、それは事実だ。それでも、結局原作は壊れてしまったのだが……。
……俺の転生した理由を知っていることについては触れないでおこう。
「転生者として、しかし常に脇役であり続ける道を選んだ彼は、君達の基準では裁けない。それを狩ろうとした水咲凍夜も、それを全面的に支持する君達も、転生者狩りにふさわしいはずがないよね?」
……って、脇役とか言うな! なんか悲しくなるだろ!
「彼が大罪は傲慢、そして汝が大罪は憤怒! 汝の怒り、その前提は否定されるべきことを知れ!」
「神の傲慢は威光であり、神の憤怒は神罰となります。神に叛いたその罪、先輩に代わり私が裁きます!」
「「デュエル!!」」
……やべえ、気づいたらデュエル始まってるし。
to be continued...
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