真田十勇士

「しかしな」
「それでもですな」
「大友家はですな」
「この家は」
「そうじゃ、守ることは出来る」
　それは間違いないというのだ。
「この城、そして立花山城で守れば」
「その時は」
「そうなりますな」
　こう言ってだ、そしてであった。
　主従は足を進めた、その彼等を城から観ている者がいた。
　中年の見事な背丈の男だ、濃い髭を生やしている。
　その彼が幸村達を見てだ、周りの者達に言った。
「いい顔をしているな」
「あれが、ですな」
「若殿が言われていた御仁ですな」
「真田家のご次男」
「真田幸村殿ですな」
「うむ、倅の言う通りだ」
　男は幸村達を見つつこうも言った。
「ただ腕が立つだけではない」
「心も備えている」
「そうした方ですな」
「あの者ならば」
　まさにというのだ。
「確かに天下一の武士になれるな」
「それは若殿では」
「若殿がなられるのでは」
「倅かあの者のどちらかだ」
　宗茂か幸村のというのだ。
「天下一の武士になるか、もっとも天下は広い」
「若殿やあの御仁だけでなく」
「他にもですか」
「人がいる」
「天下には」
「そうじゃ、上杉家には直江景勝殿がおる」
　この者の名も出した。
「他にも天下に人がおる、だからな」
「かなりですな」
「誰が天下一の武士になるかはわからない」
「そうなのですか」
「そうじゃ、誰が天下一の武士になるかを見たかったが」
　ここでだ、男はこうも言った。
「それは適わぬな」
「ではやはり」
「殿はこの城においてですか」
「敵を迎え撃ち」
「そのうえで」
「死ぬ」
　男は周りの者達にはっきりと言い切った。