SAO--鼠と鴉と撫子と
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5,森の中の死闘
前書き
初めての試みでヤヨイ視点で書いてみました。
読みにくかったら申し訳ない。
<ヤヨイ視点>
空を裂く音を聞いた瞬間、私は右へと飛んだ。
元いた場所にはこれがゲームなのかと疑いなるほど緻密に描かれた蔦が一直線に伸びている。
あそこにいれば、私はアレに絡め取られ、死んでいたのかもしれない。
この世界での私の生命力はあと7割といったところか。
三割が死んでいると考えると、未だかつて無い危機的状況な気もしてくるが、体の方は五体満足でそんな意識には1%もならなかった。これなら日頃の訓練は命を半分以上削っているに違いない。
再度、鞭を振るう植物のお化けの攻撃をすり抜け、まずは横薙ぎに一閃。
スパリと切れた切り口には赤い線が入った空洞で正直リアルな切り口ではなく、私がいかに残虐な行為をしているかを忘れさせてくれる。
返す刀で袈裟斬りを仕掛けたら、お化けは断末魔の叫びを上げ、光の粒となって爆散した。
「ふぅ」
この森に逃げ込んでから、七度目の戦闘。
極限の訓練は何度も乗り越えた私でも、命がけの実戦は一度しかない。
かたかた、と鳴く愛刀は私の気持ちの分身なのだろう。
「……怖いなぁ、この世界は」
口にしてみたら、あっけない。
私は、臆病で、怖がりで、それを悟られまいと無理をしていただけなのだ。
ガサガサという物音が左手からする。
手元に残っているポーションも最後の1つだけだ。
そろそろ、意地を張っていないで帰るべきなのかもしれない。
でも、それでもやっぱり帰るのは嫌。せめてこのレベルというやつをもう一つ上げれば彼にも勝てるのだろうか。
もう私は誰にも負けてはならないのだ。強く、強く、誰にも負けない強さが欲しい。
私の前に現れたのは、先ほどと同じ植物と蔓のお化け。少し違っているのはその体の中心に大きな実がついていることだ。
モーションにも慣れたし、多少の違いは個体差だろう。
何も気にせず、私は慣れ始めた戦闘を開始した。。。
<クロウ視点>
必死で森の中へと突き進んだところで、レイズさんに合流した。
疲労の色こそ見えるが、HPゲージはほぼ減っていない。
「っヤヨイさんは!!?」
「……中みたいだが、たった今まで、リトルネペントに捕まってて入れなかッ……」
ガサガサという音とともに新手のリトルネペントがニ体POPしてくる。引いている暇もない。強行突破するしか無いだろう。
「アルゴ、レベリングしてるか?」
「こいつらくらいなら問題ないナ、一匹は任せロ」
「頼む。レイズさんは弾いたら鞭を弾いたらスイッチして下さい。弱点は頭の近くの茎です」
「やってみるよ」
アルゴは瞬間的に投げ針を投剣基本スキル「シングルシュート」で放ち一体のタゲを取ると、素早く離れていく。こちらもレイズさんが両手剣でしっかりと攻撃を防ぎながら、機会を伺った。
「…ハァァ」
両手剣基本スキル「スラッシュ」を放ち、リトルネペントを軽く浮かせた。チャンスはここしかねぇ。
「ッスイッチ!!」
叫びながら頭から倒れるようなフォームで走りだす。ソードスキルの立ち上がりを感じた俺は狙いを定め、短剣の突進系ソードスキル「ウインドダイブ」を放った。
スキルの名の通り、一陣の風となった俺は一直線にリトルネペントの喉元へと突き刺さる。
弱点を一撃でついた攻撃でリトルネペントのゲージをレッドまで追い込むが、予想通り、まだ死んではいない。
スキル後の硬直を埋めるように俺は突き刺したナイフを引き抜き、同時に全力で投擲する。
「いっけェェェェ」
ゼロ距離から放たれた凶弾は巻き直しのように弱点を貫き、ポリゴン片が爆散した。
アルゴの方を見れば、まだ戦闘は継続中だが、無数の投げ針が辺りに散らばっていた。タゲ取りを優先していたようだがネペントは黄色ゲージ。加勢すればすぐに決着はつくだろう。
「よし、アルゴ。スイッチいくぞ」
そう叫んで駆け出そうとしたところで、リトルネペントが急に体の向きを変えた。俺がタゲを取ってしまったのかと一瞬思ったが、俺を通り過ぎ、細く頼りない足を必死に動かして、森の中へと走っていった。
「ここのMOBって逃げる設定とかあったのか?」
「いや、聞いたこと無いナ。初耳ダ」
アルゴの耳にも入っていない行動パターンなんてあり得ないだろう。俺もβテストの時はイベントクリアの為に散々この森で狩っていたが、こんなイレギュラーに出くわしたことはない。あったイレギュラーといえば……
「「マサカ」」
どうやら情報屋の方も同じ結論に至ったようだ。
もしも、この中の誰かが<実付き>と無知のまま戦っていたとしたら……そしてそんなことをしそうな阿呆な初心者が一ヶ月間、生き残っているはずがない。
「あの馬鹿女。なんでこんな時にレアモンスター引くんだよ」
森の中に走っていったリトルネペントを追って、俺も森の中に突っ込んだ。
居た。
リトルネペントを追って一分。ようやく俺は騒ぎの中へと到着した。
十数体のリトルネペントに囲まれているのは、予想通りの大和撫子だった。
刀は見るからに刃が欠け、HPゲージを半分以上まで削られている。
いや、この状況で数十秒とはいえ、初心者がよく生き残ったもんだ。
「ヤヨイ!!!」
叫びながらも咄嗟に「シングルシュート」を放って追ってきたリトルネペントを屠る。予備の短剣をすぐにオブジェクト化してそのままガムシャラに中へと突入した。
「ッッッ」
たどり着いた時には、息を呑む声が横から聞こえた。顔を思いっきりひっぱたいてやりたいが、今はそんなことに時間を割いている暇はない。
「クロウ君、どうしてここ・・・」
「後だ!!とにかく頭数を減らすことだけ考えろ」
まだ転移結晶なんて高級品は手に入っていないし、どうにかして切り抜けなければならない。
森の中で、俺は命を燃やし、咆哮した。
後書き
読んでいただきありがとうございます。
補足をするのであれば、短剣の扱いですね。
個人的には投剣スキルと短剣スキルは両方出来ないと誰も使わないのではないかと思い、今回の形となりました。
リーチ短いのが片手剣より不利、得意のスピードも細剣があるので、それくらい出来ないと武器としてのメリットがありませんし。
あ、筋力値とかの要求値もありますけど、そこら辺の詳細が確認していないので。。
スキルは2つほど、オリジナルで出してます。
シリカが出てくるタイミングのスキル、全部中級なので初級は自作。
けど、これからプログレッシブとかで出てくるのかなぁ。。。
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