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英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)

作者:sorano
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第6話

その後ロイド達はアルタイル市に戻った。



~アルタイル市~



「―――それではダドリーさん。2人の護送はよろしくお願いします。」

「ああ、任せておけ。―――ケビン神父。礼を言わせてもらおう。まあ、本当なら事前に警察(わたしたち)に連絡して欲しかったが。」

車の前にいるダドリーはロイドの言葉に頷いた後ケビンに視線を向け

「いや~、そうしたいのは山々やったんですけど。何分、騎士団(ウチら)にとってはクロスベルは鬼門でして……」

視線を向けられたケビンは苦笑しながら答えた。

「クロスベル教区の責任者、エラルダ大司教の意向か。」

「そうか、前にマーブル先生とティオが言ってた法術の専門家って……」

ダドリーの言葉からある事を思い出したロイドはケビンを見つめ

「ああ、オレらの事やろね。まあ色々あって、大司教さんにはえらい嫌われてしまっててな。クロスベルでの星杯騎士団の活動について一切禁じられてしまってるんや。」

「エラルダ大司教ですか……私も会ったことがありますけどすごく厳格そうな人ですよね。」

「厳格も厳格。あんなガンコな人見たことないわ。ま、オレらも色々やっとるから彼みたいな真っ当な人から見たら我慢ならんのかもしれへんけど。」

ノエルの言葉を聞いたケビンは溜息を吐いた後複雑そうな表情をし

「い、色々って……」

「………………」

(クク、特にケビンの場合は普通の人間からしたらただの殺戮者だから、ケビンは一番嫌われていそうだの。)

ケビンの言葉を聞いたロイドは戸惑い、セリカは真剣な表情で黙ってケビンを見つめ、ハイシェラは不敵な笑みを浮かべていた。

「まあ、”古代遺物”に関わる事件は奇麗事だけでは済まないという事だ。―――ケビン神父。とにかく今回は助けられた。改めて礼を言わせてくれ。」

「はは、アリオスさんには前にデカイ借りがありますしな。本当なら、例の教団の件も含めてオレも付いて行きたいトコですけど。ま、大司教を刺激したくないですし何かわかったら教えてください。」

「ああ、ギルドを通じてそちらに連絡させてもらおう。―――ロイド、ノエル曹長も今回はよくやってくれた。」

ケビンの言葉に頷いたアリオスはロイドとノエルに視線を向けて微笑み

「あはは、正直あんまりお役に立てませんでしたけど。」

微笑まれたノエルは苦笑しながら答えた。

「いや、曹長は本当に助けになってくれたよ。……俺の方こそ、やっぱりまだまだ未熟ですね。本当なら、逮捕まえきちんと皆さんを引っ張らなくてはならなかったのに…………」

「ふむ……」

「フン、自惚れるな。支援課による逮捕というのがあくまで建前であるというのはお前も弁えていたはずだ。その上で、自分が本当に役に立たなかったと思うのか?」

溜息を吐いたロイドの様子をアリオスは考え込みながら見つめ、ダドリーは鼻を鳴らして言った後ロイドを睨んで尋ね

「そ、それは……」

尋ねられたロイドは戸惑った。

「自戒もいいが、客観的な自己評価と状況判断は上級捜査官には必須だ。研修とはいえ、一課に居たからにはその辺りはわきまえておくがいい。」

「ダドリーさん……」

「ふふっ……本当に素直じゃないですね。」

「フッ、よくやったの一言くらい言ってやればいいものを。」

ダドリーの言葉を聞いたロイドは口元に笑みを浮かべ、ノエルは微笑み、アリオスは静かな笑みを浮かべて呟き

「ええい、うるさい。―――とにかくバニングス。これで一課の研修も終了だ。今回の事件で学んだ事と合わせて新たなスタートに活かすがいい。」

ダドリーは苦々しい表情をした後ロイドを励まし

「はい……ありがとうございます!」

ダドリーの励ましにロイドは明るい表情で頷いた。

「それでは俺達は一足先に行かせてもらおう。また協力するような事があればよろしく頼むぞ。」

「ええ、こちらこそ!」

「お疲れ様です!」

「そんじゃ、お元気~!」

そしてダドリーとアリオスは車に乗り込んで去って行った。



「いや~、君らも幸運やね。所属は違っても、いい先輩に恵まれてるみたいやないか。」

「ええ、本当にそう思います。」

「そうですね……セルゲイ課長もそうですし。」

ケビンの言葉にロイドとノエルは頷き

「……そういえば……ケビンさんってもしかしてティオやセリカさん達と一緒に”影の国”っていう所を探索した人ですか?ティオ達が持っている写真に写っていた神父の方に似ていますし……」

「ん?ああ………そういや君らの部署にはティオちゃんがおったな……」

ロイドに尋ねられたケビンは不思議そうな表情をした後すぐに察して納得した様子になった。

「ええ。……まあ、エステル達が話してくれるまでいつも話をはぐらかしていましたけどね……」

「ハハ、そりゃ、しゃあないわ。…………ちなみにティオちゃん、元気にしてるんか?」

「はい。……あ、そういえば……以前ティオが言ってた”守護騎士(ドミニオン)”ってケビン神父の事なんですか?以前、その”守護騎士(ドミニオン)”という方と共にティオが行動していた時があると聞いた事がありますし……同じ”影の国”の件に関わっているケビン神父かと思っているんですが…………」

「げ。ティオちゃん、”守護騎士(ドミニオン)”の事まで話したんかい…………残念ながらオレは違うよ。オレなんかぺーぺーの新米騎士やで。」

ロイドの話を聞いたケビンは表情を引き攣らせ、溜息を吐いた後気を取り直して答え

「……………………」

(クク…………)

「「フフ…………」」

ケビンの答えを聞いたセリカは静かな笑み浮かべ、ハイシェラは不敵な笑みを浮かべ、リタとレシェンテは微笑んでいた。



「新米の方なのにさっきみたいなあんな凄い事ができるんですか…………」

「まあな。それで君らはどうするん?このまま列車でクロスベルに戻るつもりか?」

驚いているノエルに答えたケビンはロイド達に尋ね

「ええ、そうするつもりです。そうだ……ケビン神父、この後の予定は?クロスベルまで一駅ですし……よかったら寄っていただいてお礼をさせて欲しいんですけど。」

「いや~、ありがたいけどこれから待ち合わせがあってな。本当なら、例の教団についても詳しい話を聞きたいんやけど……」

尋ねられたケビンは申し訳なさそうな様子で答えた後複雑そうな表情で呟き

「D∴G教団、ですか……」

「やっぱり教会の方でも何か掴んでいるんですか?」

ケビンの言葉を聞いたロイドとノエルは厳しい表情になった。

「いや~、それが全く。オレらが教団と関わったのは4年くらい前の事件が最後やね。」

「4年前……」

「各国の軍やギルドが協力した一斉制圧・摘発作戦の後ですよね?」

「ああ、あれから取りこぼされたロッジの一つを制圧したんや。……ここだけの話、教団の中でも最悪と言えるようなロッジでな。正直、人体実験がマシに思えるほどイカれた儀式をしてた連中やった。」

「……そうですか。」

「本当に……最低の連中だったんですね。」

ケビンの説明を聞いたロイドは頷き、ノエルは疲れた表情で溜息を吐いた。

「ま、実はそん時にアリオスさんにえらい助けられてしまってな。デカイ借りを作ったままやったから今回、お手伝いできて助かったわ。」

「そうだったんですか……でも、おかげで犯人を生かしたまま捕まえることができました。ありがとうございます。……本当に助かりました。」

「いやいや。さっきの眼鏡の人も言ってたけど何とかなったのは君のお蔭やで。」

「俺の、ですか?」

「ああ、あの兄さんがギリギリのところで保ったのは君の言葉があったからやろ。そうでなかったらオレが処置してもたぶん助けられなかったはずや。」

「そう、でしょうか……」

ケビンに言われたロイドは口元に笑みを浮かべ

「ええ、きっとそうですよ!ロイドさんが必死に語りかけたから彼も自分を取り戻せたみたいだし!」

ノエルはケビンの言葉に頷いて言った。

「曹長……」

「ハハ……『特務支援課』やったっけ?また機会があったら詳しい話でも聞かせてや。これで教団の件も一通りケリが付いたはずやけどまた何かあるかもしれへんしな。」

「はは、わかりました。……それじゃあ俺達はこのあたりで失礼します。そうだ。セリカさん達はどうするんですか?ケビン神父とお知り合いなら積もる話があるかもしれないでしょうし……」

ケビンの言葉に頷いたロイドはセリカ達に視線を向け

「俺達の方は特に用はないが…………」

視線を向けられたセリカはケビンに視線を向け

「あ~、もし時間があったらちょっとだけオレと付き合ってもらってもいいですか?せっかくセリカさん達と出会えたんですから、ちょっと頼みたい事がありまして…………」

「……わかった。そういう事だから俺達は後でクロスベルに戻る。」

申し訳なさそうな表情をした後真剣な表情になったケビンの言葉に頷いた後ロイド達に言い

「わかりました。セリカさん、レシェンテさん、リタちゃん。お疲れ様でした。」

「お疲れ様でした!」

「ああ!そちらこそお疲れさん!」

セリカの言葉に頷いたロイドはノエルと共にケビン達に見送られ、駅の中に入って行った。



「いや~、それにしてもセリカさん達を見てビックリしましたわ~。にしても何でこの世界にいるんですか?」

ロイド達が去った後ケビンは苦笑しながらセリカ達を見つめ

「……”D∴G教団”事件の時にエステルに人手が足りないからと手伝いを頼まれてな…………事件が解決した後も彼女から少しの間だけでいいからクロスベルの遊撃士達を手伝って欲しいと頼まれたからこうして今ここにいるんだ……」

「全く、セリカはエステルに甘すぎじゃ!確かにサティアの件があるから、お前がエステルに対して甘くなるのは仕方ないが限度というものがあるじゃろ!」

(クク、我としてはあの嬢ちゃんと付き合っている限り退屈はしないからいいだの。)

「クスクス…………」

ケビンに見つめられたセリカは静かな笑みを浮かべて答え、セリカの話を聞いていたレシェンテは呆れ、ハイシェラは不敵な笑みを浮かべ、リタは微笑んでいた。

「ハ、ハハ…………エステルちゃんの出鱈目さと顔の広さは相変わらずですな~。セリカさん達を呼ぶとか反則技としか言いようがないですやん。………まあ、そのお蔭でオレの方も今後の事を考えれば少しは安心できますねんけどな。」

セリカの話を聞いたケビンは苦笑した後、真剣な表情になって呟き

「今後の事だと?」

ケビンの言葉を聞いたセリカは眉を顰め

「そういえば……リースさんは一緒じゃないんですか?」

ある事が気になっていたリタはケビンに尋ね

「ああ、リースか?あいつやったら――――」

尋ねられたケビンが答えかけたその時

「―――ケビン。」

女性の声が聞こえ、声が聞こえた方向に振り向くと七耀教会のシスターがケビン達に近づいてきた。



「おお、遅かったやないか。……って、なんやその紙袋は?」

「そこの屋台で売ってたアルタイル名物の焼き栗。ホクホクしてて絶妙な甘さでいい仕事してる。」

「だからって紙袋いっぱい買うことないやろ……まったく、そんな調子でこれから大丈夫か?やっぱりオレも付いて…………」

シスターの言葉を聞いたケビンはシスターが持つ紙袋の中に入ってあるたくさんの焼き栗を見て呆れた後真剣な表情で言いかけたが

「……だめ。ケビンの悪名は知られ過ぎている。エラルダ大司教に潜入がバレたら火あぶりにされるかもしれない。」

シスターは溜息を吐いた後ジト目でケビンを見つめて言った。

「い、いくらなんでもそこまではされへやろ!?いや、でも典礼省のオーウェンの件があったか…………あの一件で封聖省への態度をますます硬化させたみたいやし。」

(オーウェン……あの”煉獄”の時に現れた…………)

シスターの言葉を聞いたケビンは慌てた後ある事を思い出して複雑そうな表情になり、リタは静かな表情でケビンを見つめていた。

「その点、私一人なら目くらましにはもってこい。それはケビンもわかっているでしょう?」

「ああもう……わかったわ!まったく総長もよりによって何でコイツを……」

「的確な人選。ケビンこそ、私がいない間、無茶はしないように。セサルさんとマーカスさんにあまり心配はかけないこと。」

「へーへー、わかったわ。……しかしリース。ホンマ、気をつけろや?お前がこれから向かう場所は正直、何が起きてもおかしくない。いざとなったらオレを呼ぶなり、切り札に頼るんやで?……それとセリカさん。頼みたいというのはリースの事なんです。しばらくリースはクロスベルに滞在しますんで、リースがヤバくなった時助けてくれないでしょうか?」

「そのぐらいなら別に構わないが…………」

「ありがとうございます。……ということやからオレや切り札にすぐ頼れない時はセリカさん達に頼るんやで?」

セリカの返事を聞いたケビンは頷いた後真剣な表情でシスター――――リースを見つめ

「それは心得ているけど……そんなに悪い状況?再会したばかりのセリカさん達にまで頼むなんて…………」

見つめられたリースはセリカ達に一瞬視線を向けた後すぐにケビンに視線を向けて真剣な表情で尋ね

「ああ………聖俗双方の意味合いでな。どうやら”連中”も密かに動き出しとるらしい。魔都クロスベル――――その名の通りになるかもしれん。」

尋ねられたケビンは重々しい様子を纏って呟いた…………………… 
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