Three Roses
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第六話 婚姻政策その九
「そして乳自体もです」
「飲むべきですね」
「むしろ水や酒以上に」
「そうして身体を養うべきですか」
「王は長く生きられて下さい」
心からの、それも誰よりも強く願っている言葉だった。
「ですから」
「わかりました、それでは」
「はい、その様に」
「これからは乳をよく飲む様にします」
大公の心からの言葉を聞いたものだった。
「そしてそのうえで」
「長くですね」
「生きてそして」
「お子をですね」
「もうけます」
「お願いします、では」
「はい、身体を大事にしていきます」
王は大公に約束してだった、実際に卓の上のものを全て食べた。そのうえで夜は妃と床を共にしていた。だが。
太子は王のその顔を見てだ、側近達に彼等だけが集まった中でこうしたことを言った。
「どう思うか」
「はい、やはりです」
「お顔の色が悪いです」
「さらにやつれてこられていますね」
「これまで以上に」
「あれではです」
「そうだな」
微笑まず深刻な劇の仮面の様な表情でだ、太子も言う。
「これではな」
「やはりですね」
「あの方は長くないですね」
「おそらくお子をもうけられないまま」
「近いうちに」
「うむ、ではことを進めていこう」
彼等の考えをとだ、太子は言った。
「このままな」
「島国、半島そして北の王国にも」
「三国に対してもですね」
「そしてこの国でも」
「我々の考え通りに」
「近頃帝国は戦が絶えない」
祖国のことをだ、太子はまた言った。
「異教徒とのな」
「その状況で王国と戦いますと」
「挟み撃ちになりますね」
「王国もそれを狙っていますし」
「ならば」
「我々はこの国と周辺諸国を全て王国に向けてだ」
それも一つにしたうえでだ。
「王国を動けない様にしなければならない」
「異教徒達は強いです」
「鉄砲や大砲が異常に多いです」
「そして軍も規模も違います」
「まさに桁一つ」
「そうだ、奴等は陸でも海でも強い」
その両方でというのだ。
「だからこそだ」
「帝国だけでも手に余っていますから」
「王国にはですね」
「流石にですね」
「この国をぶつけて牽制するしかないですね」
「だからだ、我々はこの国において動かねばならない」
帝国、そして帝室の為にというのだ。
「ロートリンゲン家の者としてな」
「そして何よりも帝国の為」
「是非にですね」
「帝室は僕だ」
太子は言い切った。
「神、そして国と民のな」
「その全ての為に尽くす」
「それが帝室ですね」
「私も然しだ、だからこそだ」
太子はそのやや下顎が出ているが面長で端整な顔で言った、癖のある顔立ちであるが気品と風格は備わっている。
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