Three Roses
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第六話 婚姻政策その七
「じっくりそうしていこう」
「はい、王はどう考えても先は短いです」
「そして大公もというのなら」
「今から」
帝国の者達は太子を軸に動きだしていた、その動きは影の様であり誰にも気付かせないものであった。
そしてだ、太子はその中で側近達にこうも言った。
「私の妻だが」
「マイラ様ですか」
「あの方ですか」
「あの方についてもですね」
「思われることがありますか」
「そうだ、信仰があることはいいが」
旧教のそれがだ、太子はそれはいいとした。
しかしだ、こうも言うのだった。
「だがそれが強過ぎる」
「旧教への信仰があまりにも強い」
「それがかえって危うい」
「そうだというのですね」
「そうだ、確かに旧教への信仰が強いことはいい」
太子はこのこと自体は否定しなかった、やはり旧教の守護者である帝国の後継者として当然のことである。
しかしだ、彼はこうも考えていて言うのだった。
「だがそれが強過ぎるとな」
「どうしてもですね」
「視野が狭くなる」
「新教徒も新教徒で国の役に立ちます」
「それをないがしろにしますと」
「国を過つ」
「そうなりますね」
側近達もこう言っていく。
「だからですね」
「マイラ様のそのお考えはですね」
「それは危ういとですね」
「太子も思われていますね」
「異端審問の者達も近付けようとしている」
太子はマイラのこのことも言った。
「それも危うい」
「彼等は狂犬です」
側近の一人がだ、彼等について眉を曇らせてこう言った。
「最早」
「そうだ、異端と称して誰にでも噛み付いてだ」
「惨たらしい拷問を行い生きたまま火刑台に送っていく」
「そうしたことを常とするからだ」
「何としてもですね」
「力を持たせてはいけない」
必ず、という言葉だった。
「あの者達にはな」
「我々の考えなぞ無視して新教徒達を攻撃します」
「無辜の民達まで」
「民から税を得ているというのに」
「特に豊かな民を狙うので」
異端の財産は処刑した後は異端審問官達の懐に入るからだ、彼等はそれも狙って異端狩りを行っているのだ。
「ですからあの者達は近付けたくないですね」
「帝国にも王国にもいますが」
「そして厄介者となっています」
「その者達を近付けるとなると」
「異端は問題だがそれは国が行う」
彼等の取り締まりはいうのだ。
「法皇庁、そして彼等の名を借りるか下にいるあの者達はな」
「間違ってもですね」
「傍に置いてはいけないですね」
「何としても」
「そうしないといけないですが」
「妃は違う」
マイラ、彼女はというのだ。
「彼等を近付けようとしている、それも問題だ」
「ではここではです」
「お妃様にお話しましょう」
「そしてあの者達を退け」
「まともに政治を行いましょう」
「そうでなければな、異端審問は退けたい」
何としてもとだ、太子は言った。
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