FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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蛇姫の鱗
日常編
ようこそラミアへ
前書き
いよいよインベル始動ですね。フルネームまで明らかになって・・・やっと戦闘に加わってくれるみたいです。
グレイもようやくvs.12だし、どうなることやら・・・
「どーゆーことだよマスター!!」
「ふざけんなっ!!」
「明日からどうやってメシ食っていけばいいんだ!?」
「勝手に決めるな!!」
あまりにも突然に発表されたギルドの解散。当然、それを聞いた皆さんは怒り狂っている。
「妖精の尻尾は解散させる。これからは己が信じる道を己が足で進め。以上じゃ」
そんな中、マスターだけは冷静なまま、淡々とそう告げる。しかし、それを聞いたギルドの皆さんはさらに熱くなっていた。
「納得いかねーぞマスター!!」
「妖精の尻尾こそが俺の歩く道なんだ!!」
「やめてーならアンタが勝手に出ていけよ!!」
「俺はやめねーぞ!!妖精の尻尾はここにある!!」
「おおっ!!」
背を向けこの場から立ち去ろうとするマスターに批難の声がぶつけられる。すると、それを聞いたマスターが鋭い眼光でこちらを睨み付けた。
「今この時をもって妖精の尻尾は解散じゃ!!今後二度とその名を口に出すことは許さん!!」
「「「「「・・・」」」」」
強い口調で宣言されたギルドの解散令。彼のその他を圧倒する力強さに、反論していたギルドの皆さんも言葉を返すことができずにいた。
「妖精の尻尾の解散は変わらん。皆、己が信じる道を歩んで行け」
それだけ言い残し、俺たちの前から姿を消したマスター。残された俺たちは、想像することもできなかった現実に、ただただ立ち尽くしていることしかできない。
「ったく、わかったよ」
どれだけの時間が流れたのであろうか、静まり返っていたその中で、一人の青年が口を開く。
「じじぃがそう言うなら、従うしかねぇな」
そう言ったのはマスターの孫である雷の滅竜魔導士ラクサスさん。彼の方に、全員の視線が集まる。
「いくぞ、オメェら」
背中を向け、ギルドがあったこの場所から離れていくラクサスさん。その行動に、彼を慕う三人の魔導士たちも理解が追い付いていない。
「待てよラクサス!!」
「お前・・・本気なのか?」
「こんなの納得できるわけないでしょ!?」
何の前触れもなく解散すると言われても、フリードさんたちは納得ができない。例え自分たちが親衛している彼の言葉でも、この場から離れるなどできるわけがないのだ。
「俺だって納得なんかしちゃいねぇさ。だが、マスターがそう言うなら、従うしかねぇんじゃねぇの?」
普段はマスターなどと絶対に呼ばないラクサスさん。しかし、彼はマスターの言葉から何かを感じ取ったのか、最高責任者である彼の指示を優先することに決めたらしい。
彼のその言葉でフリードさんたちは納得したのか、立ち去っていく彼の後をついていく。
「まぁ、あいつの言う通りかもな」
ラクサスさんの背中が見えなくなると、ボサボサの髪の毛をかきむしりながら、ガジルさんが相棒のリリーを連れて立ち去っていく。
「ちょっとガジル!!」
そんな二人の背中を追いかけていくレビィさん。彼は歩き去る彼らに追い付くと、何やら言い合いながら離れていく。
「仕方ない・・・か」
「グタグタ言っててもな・・・」
「しゃあねぇか」
ラクサスさん、ガジルさんと立て続けにこの場から去ってしまったことで、次々とそれに釣られていくように散っていく皆さん。
「え!?ちょっ・・・」
「み・・・皆さん!?」
みるみるいなくなっていく妖精の紋章を刻んだ仲間たち。その光景を見て慌てる俺とウェンディの頭に、ポンッと手を置くものが現れる。
「じーさんなりに何か考えがあるんだろ」
「ジュビアもそうだと思います」
俺の頭に手を置いていたのはグレイさん。彼とジュビアさんが、冷静さを欠く俺たちにそう言う。
「じゃあな、シリル、ウェンディ」
「元気でね、二人とも」
「「あ・・・」」
手を振り、腕を組んで街を後にするグレイさんとジュビアさん。最後までこの場所に最後まで残っていたのは、俺とウェンディ、シャルル、セシリー、そして、涙を流しギルドの解散を悲しんでいるルーシィさんだけだった。
「な・・・なんで?」
「こんなのって・・・」
いまだに受け入れられない現実に唖然とする俺と涙を流すウェンディ。せっかくこれからもっともっと強くなろうと思っていた矢先の出来事、俺はどうすればいいのか、わからずにいた。
「ルーシィさん」
「・・・ごめん、一人にさせて」
唯一残っていた金髪の女性に声をかける。彼女は顔をうつ向かせると、小さくそう言い残し、自宅がある方向へと歩いていってしまった。
「なんで・・・なんでみんな平気なの・・・?」
「落ち着きなさい、ウェンディ」
「元気出して~」
崩れ落ち、目から零れ落ちる雫を拭うウェンディ。そんな彼女を白い猫と茶色の猫が慰めている。
(これ・・・どうすればいいのかな?)
泣きじゃくる少女を見て、ようやく思考できるレベルまで落ち着きを取り戻してきた頭を回転させていく。
唐突に告げられたギルドの解散・・・正直なことを言うと、いまだにその現実を受け入れられないでいる。でも、自分の頬を引っ張ると普通に痛みを感じるので、きっと夢ではないのだろう。
夢ならすぐにでも覚めてほしい・・・でも、これが現実だというのなら、受け入れなければならないのだろう。
『お前たちの未来は始まったばかりじゃ』
不意に思い出したある人物の顔。俺たちが最初に所属していたギルド、化猫の宿マスター、ローバウルの姿だった。
(また・・・って感じだな)
あの時もこんな気持ちだった。仲間を失い、居場所を失った七年前のあの日。たぶん・・・ウェンディたちの頭の中では、その時の出来事も蘇ってしまっているのではないのだろうか?
「ふぅ・・・」
一度小さく息をつき、これからのことを考えてみる。たぶんウェンディの住んでいるフェアリーヒルズも、どんどん人がいなくなっていくと思う。それだと、ウェンディも居づらくなってしまうことだろう。
じゃあ、うちで一緒に暮らす?いや・・・それもいいけど・・・どうせだったら・・・
「ウェンディ、シャルル、セシリー」
「ふぇ?」
「どうしたの?シリル」
「何かあったの~?」
一つの案が思い付き、三人の名前を呼ぶ。まだ泣き止む様子のなかったウェンディと彼女を慰めていたシャルルとセシリーも、一斉にこちらに視線を向ける。
「久々に、あそこに行ってみない?」
そう言って藍髪の少女に手を差し出す。俺がどこのことを言っているのかわかっていないようにも見えたが、少女は小さくうなずくと、その手を握り締めた。
「わぁ!!懐かしい!!」
ギルド解散の次の日、俺たちはかつて所属していたギルド、化猫の宿があった場所へとやって来ている。
ここにつくとすぐに落ち込んでいたウェンディも元気を取り戻していた。
「見てみてシリル!!懐かしいのがあるよ!!」
「懐かしい?」
草木がボーボーと生えているかつての街を抜けていき、ギルドへとたどり着いた俺たち。すると、ウェンディは何かを発見したらしく、興奮しながら俺のことを呼んでいる。
「ほらここ!!」
「ん?」
そう言って彼女が指さしたのは、壁につけられたいくつもの傷。それを見た俺やセシリーたちは懐かしい気持ちになっていた。
「あら、これまだあったのね」
「懐かしい~!!」
「うん、本当にね」
その傷の正体、それは小さい頃に行っていた身長を測っていた際に目印としてつけたものだった。
「ねぇねぇ!!久しぶりに測ってみない?」
「あら、いいんじゃない?」
「僕たちが測ってあげるよ~!!」
妖精の尻尾に行っておよそ一年。それだけ経てば、きっと身長も伸びているはず。どれぐらい成長したのか、ちょっと気になるな。
「俺も測って!!」
「いいわよ」
「まずウェンディからね~!!」
「うん!!お願いね!!」
壁に背中を付け背筋を伸ばすウェンディ。その彼女の身長を測るため、どこからか鉛筆と木の板を持ってきたシャルルとセシリーが頭の先にそれを当て、壁に目印をつけていた。
五分後・・・
ズゥ~ン・・・
大盛り上がりだった先程とは打って変わり、床に手をつき暗さを隠すこともしない俺とウェンディ。そんな俺たちを見て、シャルルはため息をつき、セシリーは必死に笑いを堪えていた。
「元気出しなさいよ、ウェンディ、シリル」
「そ~そ~wwそこまでなることないじゃ~ん(笑)」
要所要所で悪意を感じるセシリーの言葉。でも、それも仕方のないことだ。もし俺が彼女の立場なら同じようなリアクションをしているだろう。
「私たち・・・妖精の尻尾にいる間、少しも背伸びてなかったんだね」
「うっ!!」
orz状態のウェンディにそう言われ思わずグサッてきた。日課のように測って目印をつけていた壁。以前と同じようにそこに背をつけてみたら、なんと最後に測った時と少しも変わっていなかったのである。
非情な現実を突きつけられた二人の竜は、こうやって落ち込んでいるわけでありまして・・・
「まだこれからでしょ!!うだうだしないの!!」
「もしかしたら伸び切っ――――」
「黙りなさい」
「うぐっ!!」
最悪の予想を語ろうとしたセシリーの口を押さえ付けるシャルル。ただ、一緒に鼻も押さえていたため、セシリーは苦しそうにしている。
ザッ
「「!!」」
なかなか立ち直れずにいると、外から草を踏みながら何かがこちらにやって来ている音がする。それを聞いた俺とウェンディは、すぐに立ち上がり身構える。
「誰か来てる」
「二人・・・ううん、三人かな?」
「「え?」」
足音的にやって来ているのは三人。ただ、俺たち滅竜魔導士と違い、特別耳がいいわけではないシャルルとセシリーにはその音が聞こえていないということは、まだ距離があるということなのだろうか。
「きっと私たちが身長伸びてなかったからバカにしにきたんだ」
「許さない・・・返り討ちにしてやる」
「そんなわけないでしょ!?」
「被害妄想激しすぎ~!!」
先程の身長のことばかりが頭を過りそんな妄想が浮かび上がってくる。わかってる、そんなことをする人なんかいないことくらい。むしろこのことを知られたら恥ずかしいに決まってるじゃん。
ザッザッザッ
近付いてくる足音。俺とウェンディはドアの横に張り付くと、視線を交わし、扉を開いて奇襲を仕掛ける。
「やあああああっ!!」
「はあああああっ!!」
勢いよく放った飛び蹴り。しかしその攻撃は、
パシッ
一人には受け止められ、
「キャッ!!」
一人にはあっさりと交わされてしまった。
「お前ら・・・何してんの?」
俺の蹴りをあっさりと受け止め、宙吊り状態にしている人物。その声に聞き覚えのあった俺は彼の顔を見上げてみる。
「レオン!!」
俺を掴んでいる人物、それは蛇姫の鱗のレオンだった。
「ウェンディ!!いきなり蹴ろうとしないでよ!!」
「びっくりしたよ!!」
「ご・・・ごめん!!敵かと思っちゃって・・・」
一方向こう側では、頭を隠してしゃがむことでウェンディの攻撃を避けたシェリアと彼の横に立っていたラウルがプンプンと頬を膨らませており、ウェンディは手を合わせて謝罪している。
「なんでここにいるの?」
地面に無事に降ろしてもらった俺は目の前の少年たちに問いかける。ここは俺たちの思い出の地であるが、すでに廃村と化しておりやって来る人はいないはず。それなのに、なんでレオンたちがこんなところにいるのか、少々疑問を感じていた。
「マグリノアに行ったら誰もいなくて・・・」
「街の人に聞いたら二人がどこか行ったって教えてもらったから、調べてここまで来たんだ」
どうやら俺たちに用事だったらしく、わざわざここまで探しに来てくれたらしい。でもよくここがわかったな、化猫の宿は無名のギルドだったから、この場所も知ってる人は少ないはずだけど。
「それで?何の用事?」
考えても仕方がないと思い、彼らにそう質問してみる。
「えぇっと・・・」
「妖精の尻尾が解散したって聞いたから」
「「「「!!」」」」
言いにくそうにしていたシェリアとは正反対にズバッといい放つレオン。忘れかけていた話題を掘り起こされ、俺やウェンディの表情が強張っている。
「ちょっとレオン!!」
「もっと気を使ってよ!!」
「変に気を使うよりこっちの方がいいだろ?」
無神経な少年にシェリアとラウルが注意するが、肝心の彼は全く悪びれているようには見えない。変に気を使われるのも辛いが、逆にそこまで直球だとどうすればいいのかわからないから困る・・・
「それで?」
「なんでここに来たの~?」
固まっていた俺とウェンディに変わり、シャルルとセシリーがさらなる疑問をぶつける。それを受けレオンの頬を引っ張っていたシェリアが手を離しこちらを向く。
「ギルドなくなっちゃうと仕事できなくなっちゃうでしょ?だからさぁ・・・」
ゆっくりと手を差し伸べる天空の少女。彼女はこの上ない笑顔で俺たち四人の顔を見つめる。
「うちにおいでよ、ウェンディ、シリル」
「「「「え!?」」」」
ニコッとして彼女たちが所属するギルド、蛇姫の鱗へと勧誘してくるシェリア。その後ろでレオンが彼女に引っ張られた頬を擦っているのが視界に入り気になってしまう。
「もちろんシャルルとセシリーも来るよね?」
「ジュラさんが評議院に連れて行かれちゃったから、四人が来てくれるなら大歓迎だよ」
ジュラさんが連れて行かれたって言われ、彼が悪いことでもしたのかと思ったが、よく聞いてみるとジュラさんが評議院の一員として連れていかれたらしい。しかし、今はそんなことよりも、彼らの提案が何よりも嬉しい。
「本当にいいの!?」
「うん!!もちろんだよ!!」
俺の問いに笑顔で答えるシェリア。彼女が冗談を言ってるわけがないと確信を持った俺は、思わず笑顔になった。
「やった!!ウェンディ!!レオンたちと一緒だよ!!」
そう言って隣に立つ少女の手を取ろうとする。しかし・・・
パシッ
俺の手をウェンディは振り払ってしまった。
「え?」
「どうしたの?ウェンディ」
「んん??」
なぜ彼女がそんな行動をしたのかわからず呆気に取られる俺たち。そんな中、ウェンディは顔をうつ向け小さく呟く。
「行かない」
「「「「「え?」」」」」
「私、行かない」
急にそんなことを言い出した天竜。それがどういうことなのかわけがわからない俺たちは顔を見合わせる。
「なんで?ウェンディ」
「私・・・化猫の宿も妖精の尻尾解散しちゃった・・・私が入ると・・・そのギルドがなくなっちゃうの・・・」
初めて所属したギルドも、エルザさんたちに誘われて入ったギルドも解散してしまった。ウェンディはそれを、自分のせいだと思い込み、シェリアたちの誘いを断ろうとしているのである。
「ウェンディのせいじゃないよ!!」
「そうよ!!たまたま悪い時が重なっただけよ!!」
「そうだよ~!?」
俺たちはそんな彼女を慰めようと声をかける。しかし、彼女はよほど重く捉えてしまっているのか、一向に首を縦に振ろうとはしない。
「わかった。ウェンディが行かないなら俺も行かない」
「「「「「えぇ!?」」」」」
シェリアたちと一緒に行くことを拒むウェンディ。それならと俺がそう言うと、ウェンディもシェリアも、レオンを除いた全員が声をあげる。
「ダメだよ!!シリルはギルドに入った方がいいよ!!」
「ウェンディが行かないなら意味ないもん!!」
そもそも、化猫の宿が解散したのは俺に非がある。ウェンディに真実を告げなかった結果マスターが気を使って思念体を消滅させたんだし。疫病神は俺のような気がする。
「シェリア、どうしよう・・・」
「日を改めた方がいいかな?」
俺とウェンディが言い争っているのを見て、ラウルとシェリアはどうすればいいのかわからずにいた。
「レオン、今日はひとまず帰―――」
一度ギルドに帰って落ち着いたらもう一度誘いに来ようと考えたシェリアがレオンを見る。すると、少年はなぜか顔をうつ向け、プルプルと震えていた。
「レオン?」
「どうしたの?」
なぜ彼がそんな状態なのかわからないシェリアとラウルが彼の顔を覗き込む。すると、
「ぷ・・・プハハハハハハハ!!」
突然レオンが爆笑し始めた。突然笑い出したその声に驚き、ケンカに発展しかけていた俺とウェンディも彼の方を見る。
「ちょっとレオン!!空気読んでよ!!」
「そうだ――――」
ギュッ
「フギャッ!!」
大声で笑い出したレオンを注意しようとした二人。それなのに、レオンはラウルの尻尾を掴むと、それのせいで少年の姿から猫の姿へと戻ってしまっていた。
「ウェンディ、お前は自分が入ったらギルドが解散するって思ってんのか?」
「だって・・・化猫の宿も妖精の尻尾も、私が入ったら・・・」
涙を目に浮かべうつ向くウェンディ。そんな少女に、ラウルを抱えたレオンが歩み寄っていく。
「蛇姫の鱗が解散したら俺やシェリアに悪いって思ってるのか?」
「うん・・・」
小さくうなずいた天竜。俺も彼女の考えがわからなくはないので、下を向き、暗い表情をしている。
何も言えなくなり、押し黙っている俺とウェンディ。レオンはそれを見て、俺の顔にラウルを押し付けてくる。
「余計なお世話だ」
「「「「!?」」」」
顔にしがみつくラウルを剥がしながらレオンの方を見る。その彼の顔は、ニヤニヤと笑いを堪えているように見えた。
「今はギルドが解散して辛いのはわかる。でも、その考えはいただけないなぁ」
続けざまにウェンディにシャルルを、俺の顔にセシリーを押し付けてくる金色の少年。彼はこの場にいるエクシードを押し付けて満足したのか、ラウルを抱えて背を向ける。
「俺も今のウェンディみたいに、自分がいたらいけないって思ってた時期があった。それで家を飛び出して一人で旅して・・・でも、帰ってきた時気付いたんだ」
自分には才能がないと言われ、絶望し、自分の遥か先を行くシェリアの邪魔をしないようにと彼女の前から姿を消した。でも、その旅の中で魔法を習得し、大切な家族と奇跡的に再会を果たした彼は、抱えていた相棒を頭に乗っけてこちらに振り返る。
「みんなといられりゃ、大体なんとかなるってさ」
普段はあまり笑顔を見せないレオン。それなのに今は、心から今を楽しんでいるような、そんな笑みを見せている。
「辛けりゃみんなで分け合えばいい、楽しければみんなで分かち合えばいい。それができるのは、ギルドだけだろ?
妖精の尻尾なら、それを一番よく知ってるはずだけどなぁ」
化猫の宿が解散した時、真っ先に声をかけてくれたのはエルザさんだった。そして、彼女たちに誘われ入ったギルドでたくさんの経験をした。
まるごと街が平行世界に飲み込まれたり、ギルドの聖地で死にかけてみたり、七年間凍結封印されてみたり、帰ってきたらギルドがフィオーレ一弱くなってたり・・・でも、そんな時に支えてくれたのは、仲間たちだった。
そして、再びフィオーレ一になった時や、冥府の門に勝利した時は、みんなでその勝利を喜んだ。おかげで、嬉しさが普通よりも増していたのは、言うまでもない。
「後は四人で決めなよ、俺たちはいつでも大歓迎だからさ」
レオンはそう言うと、何も言わずに待っていたシェリアに声をかけ、この場を後にする。
「ウェンディ!!シリル!!待ってるからねぇ!!」
シェリアは手を振りながらそう言うと、先を行く少年に追い付くために駆けていった。そして、この場に残されたのは、俺たち四人だけ。
「ウェンディ、どうするの?」
「ゆっくりでいいからね~」
まだ泣き止んでいない様子のウェンディにシャルルとセシリーが問いかける。俺は彼女がどう答えを出すのか、静かに待つ。
「私、シリルやシャルル、セシリーがいてくれると何でもすごく楽しかった。だからね・・・」
涙を拭い顔をあげる天竜。彼女は隣に立つ俺を、その大きな瞳でじっと見つめる。
「みんなと一緒に、ギルドに入りたい!!」
真っ直ぐな目で、自分の気持ちにウソをつくことなく正直な気持ちを述べたウェンディ。
「うん、俺もみんなと一緒がいい」
そんな彼女を、俺は優しく抱き締めたのであった。
それから数日後・・・
「オッ!!来た!!」
レオンたちが勧誘に来てから何日かたった頃、俺たちは蛇姫の鱗のあるマーガレットの街にやって来ていた。
ギルドに入ると決めてからすぐに向かわなかったのは、荷物の整理や、もう少し化猫の宿での思い出を探そうということになり、街の中を探索してたからだ。
「遅かったね!!」
「あんたたち、まさかずっと待ってたの?」
「そっちも暇すぎじゃない~?」
ギルドが見えてくると、扉の前で待っていたシェリアがギルドの中に入っていくと、ドドッとギルドの人たちが溢れ出てきた。なので、ラウルにからかわれたシャルルとセシリーが、嫌みっぽくそう言う。
「シェリアが毎日待ってたからさ」
「しょうがないから俺たちも待ってたわけだ」
「わ!!言わないでよ二人とも!!」
普段通りと無表情なレオンと無邪気なシェリアを我が子を見る目で見ていたリオンさん。他にも、トビーさんやユウカさんといった人たちが俺たちを迎え入れてくれる。
「来てくれて嬉しいよ、ウェンディ、シリル」
そう言って手を差し出すシェリア。しかし、その手を取る前に、あるお願いをしないとな。
「あの・・・ギルドに入る上で一つお願いがありまして・・・」
「なんだ?」
チラッとウェンディと視線を合わせ、小さくうなずいた後レオンたちの方を向き直る。
「妖精の尻尾が復活するまで・・・というのはダメでしょうか?」
仲間の大切な、ギルドの楽しさを教えてくれた妖精の尻尾。今はなくなってしまったけど、いつかきっと復活してくれる・・・そう信じている。
「なんだ、そんなことか」
「もちろんいいに決まってるじゃん!!」
「シリルたちがやりたいようにすればいいよ」
無理なお願い、そう思っていたのに、リオンさんたちは快く受け入れてくれる。その優しさは、前のギルドのそれを感じさせてくれるから不思議だ。
「んじゃ、改めて・・・」
「「「「「ようこそ!!蛇姫の鱗へ!!」」」」」
リオンさんとレオンが氷の造形でWELCOMES LAMIASCALEと文字を作り出す。そして俺たちは、差し出された手を握り、新たなスタートを切ったのだった。
後書き
いかがだったでしょうか。
久々に長かった・・・なかなか最後にたどり着けず途中で話を区切ろうか迷いました。でもやっぱり最初はこの形で締めたかったので頑張りました。
次からは蛇姫の鱗での日常編です。やりたいことはたくさんあるが、やる順番がまだ決まってないので、ゆっくりやっていきたいと思います。
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