おぢばにおかえり
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第三十二話 あちこち回ってその四
「まあそれも似合いそうですけれどね」
「似合うかしら」
「似合いますよ、絶対にね」
太鼓判を押してきました。
「ですから。安心して下さい」
何を安心していいのかはわかりません。
「先輩なら何着ても似合いますから」
「忍者装束も?」
「くの一の服ですよ」
こっちでした。
「よかったら一度。どうですか?」
「だからそれは嫌なのよ」
顔を苦いものにさせて言い返します。
「それはね。だから太股見せるのは」
「どうしてもですか」
「そう、どうしても」
これは譲れません。何があっても。
「嫌だから。わかったわね」
「じゃあいいですけれど」
「大体コスプレとか好きじゃないし」
「僕大好きですけれど」
それで花魁さんになったんでしょうか。確かに一瞬物凄い奇麗な女の人が来られたんだって思いましたけれど。これは本当に思いました。
「だって何か楽しくなりません?」
「楽しく!?」
「そうですよ。普段の自分と変われるんですから」
何かこの東映さんがやっている場所で言うと物凄く会う言葉です。
「メイクアップしまして」
「セーラームーン!?」
「実写版に出ていた人達皆凄い奇麗になりましたね」
そこまでチェックしているみたいです。というか男の子でセーラームーン観るのも何だかと思いますけれど。それでも阿波野君ならと納得したりもします。どうもこの子の東映への愛情は半端ではありません。
「まあああいう感じで」
「それだったらタキシード仮面にでもなってみる?」
冗談で言いました。
「だったら」
「ああ、それもいいですよね」
しかも乗り気になってきました。
「ところで知ってます?」
「今度は何なの?」
「ほら、その実写版のセーラームーンで」
まだセーラームーンの話をします。
「タキシード仮面やってた人」
「渋江さんよね」
「はい。その人仮面ライダーやっておられたんですよ」
「確か響鬼だったかしら」
何故か仮面ライダーでは響鬼だけは観てはいません。最初観てこれって本当に仮面ライダー!?って思いましたし。というかバイクに乗らない仮面ライダーなんてはじめて見ました。
「それよね」
「僕あれ後半の方が好きなんですけれどね」
前半と後半があったんでしょうか。その辺りの事情がわかりませんけれど。
「それに出ていましたよ。ちゃんと変身して」
「ふうん、そうだったの」
「あれもこの映画村使って撮影していたような」
どうしてここで記憶があやふやになるんでしょうか。
「確か」
「確かって」
「響鬼あまり確かに観ていないんですよ」
「そうなの」
「ちょっと。抵抗がありまして」
話すその表情がいつもの能天気なものと変わって困ったようなものになっていました。
「それでなんですよ」
「抵抗あったの」
「仮面ライダーじゃない気がするんですよ」
「何か私と同じね」
「先輩もですか」
「あれは。仮面ライダーっていうにはちょっと」
こう思えて仕方ありません。鬼ですし。
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