真田十勇士

「それが為です」
「島津家は鉄砲も多い」
「それもあの家の強みです」
「隙がありませぬな」
「だからこそ我等もです」　
　大友家もというのだ、宗茂が仕えている。
「どうなるかわからぬ有様です」
「ですな」
「しかしです」
　ここでこう言った宗茂だった、見れば目は死んでいない。それどころか強い確かな光を放っている。
　そしてその光を放つ目を持つ顔でだ、こう言ったのだ。
「倒すことは出来ます」
「まずは島津家を調べ」
「そしてです」
「多くの兵で、ですな」
「そして島津家以上の数の鉄砲と将帥で攻めれば」
「勝てますな」
「天下人である関白様ならば」
　彼が自ら率いる将兵達ならばというのだ。
「勝てます」
「間違いなく」
「如何に島津家が強くとも」
「大兵には勝てない」
「そうです」
　まさにというのだ。
「ですから」
「関白様が来られるまで」
「持ち堪えなければなりません」
「それでは」
「それがしもです」
　宗茂は幸村に澱みのない声で答えた。
「立花山城において敵を迎え撃ち」
「戦われ」
「少しでも時を稼ぎます」
「大友殿の為に」
「そうです」
　こう誓いの言葉を言うのだった。
「その所存です」
「そして」
「そうです、父上もです」
「岩屋城において」
「敵を迎え撃つ用意をされています」
「確かです」
　ここで幸村はこう言った。
「立花山城は二千若しくは三千の兵が籠城出来ますね」
「左様です」
　宗茂は確かな声で答えた。
「また堅城でもあります」
「そうですな、しかし」
「岩屋城はというのですね」
「とてもです」　
　それこそというのだった。
「それがしが聞いたところですが」
「小さな城です」
「そうですな」
「八百も籠城出来ません」
　宗茂の言葉だ。
「到底」
「ではです」
「岩屋城に島津の大軍が来れば」
「あの城はこの筑前を攻めるにはです」
　それこそというのだ。
「絶好の場所です」
「それがしもそう思います」
「では」
「はい、父上もご承知です」
「そのうえで籠城されるのですか」
「そして最後の最後までです」
　真剣な、必死で己の心を押し殺した顔と声でだった。宗茂は幸村に対して話した。
「戦われるおつもりです」
「ご主家を守られる為に」
「そうなのです」
「そうですか、そこまでされますか」
「そうです、私も同じなので」
「わかりました、では」
　幸村はここまで聞いてだ、宗茂に答えた。
「ご武運を」
「何としても時を稼ぎますので」
「さすればそれがしはです」
「島津家をですね」
「隅から隅まで調べ」
　そしてというのだ。