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覇道を捨てて

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第二章

「それでは何の意味もないじゃないですか」
「何言ってるんですか。金や銀が手に入るんですよ」
「それに宝石が」
「それでどうして無意味なんですか」
「だからです」
 詩人はにこりと笑って話しました。
「そんなものは戦争をしないで簡単に手に入りますよ」
「えっ、まさか」
「金や銀や宝石が簡単に手に入るって」
「まさかそんな」
「戦争をしないで手に入るって」
「そうです。とても簡単に手に入ります」
 詩人は笑顔でエルフ達にお話します。
「そうなります」
「まさか。そんな」
「詐欺とかそういう話じゃないでしょうね」
「私達を騙して何かを手に入れるつもりじゃ」
「何かよからぬことを考えているんじゃ」
 エルフ達は詩人の言葉がとても信じられませんでした。そしてです。
 その中でも特にです。女王様はです。その奇麗な細い眉を顰めさせて言いました。
「そんなことは有り得ません」
「戦争をせずに望みのものが手に入ることがですか」
「何かを得る為に血や汗を流すものです」
 この考えはエルフにもあるのでした。そうした意味では女王様の今の言葉は正しいです。ですが詩人はその女王様の言葉にこう付け加えたのでした。
「いえ、それ以上に知恵です」
「知恵!?」
「それと愛です」
 次にはこの言葉を出してみせたのでした。
「知恵と愛は時として血と汗に勝ります」
「それは一体」
「そうです。まずは戦の用意を止めて下さい」
 にこやかに笑ってです。詩人は女王様に言いました。
「そして宴の用意を」
「宴!?」
「そうです。その用意をです」
 してくれと言ってです。そして。
 詩人は返す刀の感じで。こうも言ったのです。
「そして今からです」
「今からとは?」
「ドワーフの国に行って来ますので」
 そうするというのです。今度はです。
「そうしますので」
「私達の相手の国に?」
「そのドワーフの国に?」
「そうされるのですか」
「おそらく彼等も同じことを考えています」
 エルフの宮殿の豊かな緑とそこに差し込む爽やかな日差し、そして国全体にある清らかな水と様々な果物を思い出しながらです。詩人は言います。
「この国の豊かなものを攻め取りたいと考えているでしょう」
「そのことは既に調べています」
 そうしたとです。女王様が玉座から詩人に答えます。
「彼等も。我が国を狙っています」
「貴女達と同じくですね」
「だからこそです」
 強い声で。女王様はまた詩人に答えました。
「私達は彼等と戦争をしなければならないのです」
「自分達を守る為にも」
「その通りです。自分達を守るのは自分達だけです」
 女王様はまた正しいことを言いました。
「血と汗で」
「しかしここであえて私は申し上げるのです」
「知恵と愛がですか」
「時として血と汗に勝るのです」
「だからドワーフの国にも行かれるのですか」
「はい」
 その通りだと詩人はにこやかな笑顔で答えました。そうしてです。
 あらためてです。女王様に言いました。
「では今からドワーフの国に行って来ます」
「そしてですか」
「エルフの方々の望まれるものを。宴と共に手に入れられる様にします」
 こう言ってでした。詩人は今度は地下のドワーフの国に行きました。全てが金や銀、宝石で眩く照らされているドワーフの国ではその髭のドワーフ達が手に斧や鎚を持っています。
 そして重厚な鎧兜で武装してです。今にもエルフの国に攻め上がらんとしています。
 その彼等にもです。詩人はこう言ったのです。 
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