英雄伝説~菫の軌跡~(零篇)
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第76話
同日、23:30―――
~東クロスベル街道~
マフィア達が待ち受けている中、ロイド達を乗せた車はマフィア達の銃撃をものともせずマフィア達の防衛線を無理矢理突破した。
「ヒュウ!」
「課長……やりますね!」
「まさかあんな簡単に突破できてしまうなんて……」
「………ちょっと驚きです。」
「うふふ、もしかして”こんな時の為”にレン達に隠れて練習していたのかしら?」
簡単にマフィア達の防衛線を突破したセルゲイの運転技術にロイド達がそれぞれ感心している中、レンはからかいの表情で呟いた。
「ま、半年くらい乗ってなかったが何とかなるもんだな。よし、このまま飛ばしてアルモリア古道に出るぞ。」
「お願いします……!」
「このまま妨害もなく到着できるといいのだけど………」
セルゲイの言葉にロイドが頷き、ルフィナが真剣な表情で考え込んだその時
「……グルルル………」
何かの気配に気づいたツァイトが後方を睨んで唸り声を上げていた。
「ツァイト?」
「なんだ、何かあんのか?」
ツァイトの様子にロイドとランディは不思議そうな表情で首を傾げ
「……ま、そう簡単に到着できるなんて甘いって事やな。」
「……予想していたよりも早かったな。」
ある事に気づいたゼノは疲れた表情で呟き、レオニダスは重々しい様子を纏って呟いた。
「!後方から車両が接近……!警備隊の新型車両です……!」
「なに……!?」
ツァイトが睨む方向を見つめて自分達の車を追ってきている警備隊の新型車両に気づいたティオは警告し、警告を聞いたセルゲイは驚いた。警備隊の新型車両はロイド達が乗る車を破壊する為にミサイルを放ったが、セルゲイはミサイルをギリギリまで引き付けて急ハンドルで大きく横にそれて回避した。ミサイルで破壊する事が不可能と悟った警備隊の新型車両はロイド達が乗る車の側面へと移動してガトリングガンを連射した。ガトリングガンの弾丸の威力は凄まじく、防弾性の車の屋根に穴を空けた。
「うおっ……!」
「きゃあっ……!」
「……マズイです……」
「とんでもねぇモン持ち出しやがって……!」
「それだけヨアヒムも必死と言う事でしょうね………!」
ガトリングガンの銃弾を受けた時の衝撃にロイドとエリィは思わず声を上げ、ティオは不安そうな表情をし、ランディとレンは厳しい表情で呟いた。
「とにかく振り切るしかない………!お前ら、しっかり掴まって―――――」
そしてセルゲイがロイド達に声をかけたその時銃弾がガラスを襲った!
「がっ………!」
ガラスを貫いた銃弾の一つが足に命中したセルゲイは呻き声を上げた。
「か、課長!?」
「だ、大丈夫ですか………!?」
「し、心配ない……カスリ傷だ………!」
ロイドとエリィの心配に対してセルゲイは痛みに耐えながら答え
「し、しかし…………」
「止血しねぇとヤバイぞ!?」
セルゲイの足から流れ続けている血に気づいたロイドはセルゲイの答えに迷い、ランディは忠告した。
「!後方からもう一台車両が接近……!」
「そ、そんな………」
「このまま振り切るより迎撃した方がいいわね………」
「ええ……私もそう思うわ。」
「―――となると早速俺達の出番やな。レオ、いつでも戦えるように準備しとくか。」
「ああ。」
後ろから更に警備隊の車両が来たことに気づいたティオの忠告を聞いたエリィは不安そうな表情をし、レンとルフィナは厳しい表情をし、ゼノとレオニダスは互いに視線を交わした後戦闘準備に入ろうとした。
「課長……もう停車してください!早く止血しないと……!」
「いいからしっかり掴まっていろ………!お前ら若い連中の道を拓くのが俺達オヤジどもの役目だ……絶対に送り届けてやる………!」
そしてロイドの頼みに対してセルゲイは痛みに耐えながら必要なく、ロイド達を必ず送り届ける事を答えた。
「か、課長……」
「この隠れ熱血オヤジが………」
「さすがはガイお兄さんの上司を務めているだけはあるわね………」
セルゲイのかたくなな様子にロイドは驚き、ランディとレンは呆れた表情で呟いた。
「あ…………―――もう一台の車両は、新型車両ではありません!ノエルさんの警備隊車両です!」
「あ………」
一方後方から近づいて来る新たな警備隊の車両が操られた警備隊の車両ではなく、ノエルの警備隊車両である事に気づいたティオは明るい表情で答え、それを聞いたロイドは明るい表情で呆けた声を出した。ノエルが運転する車は一番近い新型車両に横から体当たりをして道路の段差も利用して転倒させて残り一台の新型車両に向かった。ノエルの車両が自分達にとって”敵”の車両である事に気づいた新型車両はノエルの車両にガトリングガンを連射したが、装甲車であるノエルの車両はビクともせず、新型車両に体当たりをして新型車両と互角の押し合いをしていた。
「ノエル曹長………!」
「来てくれたのね……!」
「さすが警備隊若手のホープだぜ……!」
予想外の応援の登場にロイド達が明るい表情をしていると車に備え付けてある無線に通信が入った。
「―――聞こえますか!ノエル・シーカーです!」
「ああ、聞こえている!」
「ソーニャの秘蔵っ子か………正直助かったぞ………!」
「ふふっ、どういたしまして。―――もう一台もこちらが相手をしておきます!そのまま行ってください……!」
「おお………!」
「そちらも気を付けてくれ……!」
そしてロイド達を乗せた車はノエルが新型車両の相手をしている間にどんどんと離れて行った。その後は妨害もなくロイド達は無事に”古戦場”の遺跡の前に到着した。
~古戦場~
「古戦場………まさかここが………」
「”教団”の残党が潜む拠点だったなんて………」
車から仲間達と共に降りたロイドとエリィは真剣な表情で呟いた。するとその時
「来たわね………!」
なんとエステルとヨシュアが遺跡方面から走って近づいてきた。
「エステル、ヨシュア!」
「よう………!お疲れさんだったな!」
「そちらこそ………大変だったみたいですね。詳しい話は先程通信でアリオスさんから聞きました。」
「あたしたちも、さっきやっとそこの入口を開いたばかりよ。」
「あ………」
ヨシュアの後に答えたエステルの話を聞いたティオは呆けた声を出して仲間達と共に以前は閉じていたが今は開いている遺跡の門を見つめた。
「閉じていた扉が………」
「変な仕掛けがあって開くのに手間取っちゃった。でもこれで、連中の拠点に潜入することができるわ。」
「うふふ、どうせ仕掛けを解いたのはヨシュアでしょう?」
「うっさいわね!あんたは一々余計な一言が多いのよ!」
「今は口喧嘩をしている場合じゃないでしょう……」
小悪魔な笑みを浮かべて自分を見つめるレンをエステルは睨み、その様子をルフィナは呆れた表情で見つめて指摘した。
「………本当に助かったよ。俺達はこのまま、首謀者を逮捕しに行くけれど……君達の方はどうする?」
「モチ、手伝わせてもらうわ!そのためにここで待ってたんだし。」
「失踪者も救出する必要があるし、助太刀させてもらうよ。」
ロイドに訊ねられた二人はそれぞれロイド達と共に遺跡に向かう事を申し出た。
「………ありがとう。君達がいたら百人力だ。」
「ハハ、まさかこんな形で再会して、また嬢ちゃん達とも共闘する事になるとはな。正直驚いたで。」
「……”リベールの異変”以来だな、”剣聖”の子供達。」
エステル達の加勢にロイドが感謝の言葉を答えるとゼノとレオニダスはそれぞれエステルとヨシュアに声をかけ
「アハハ、あたしもアリオスさんから二人もロイド君達と一緒にこっちに向かっている話を聞いた時は驚いたわ。」
「今回もよろしくお願いします。”大陸最強”と名高い”西風の旅団”の猟兵であるお二人に加勢してもらえるなんて、心強いです。」
声をかけられたエステルは苦笑しながら答え、ヨシュアは二人に軽く頭を下げた。
「―――そうだ。君達に伝言があったんだ。」
そしてロイドは病院の研究棟でユウナから聞いた伝言を伝えた。
「そうか………」
「………やっぱり………」
「………………」
ユウナからの伝言を聞いた二人がそれぞれ血相を変えている中レンは目を伏せて黙り込んでいた。
「ユウナちゃんを捕まえる最後のチャンスをあげる………一体、どういう意味なのかしら?」
「うん………―――多分ユウナは、あたしたちがあの子の全てを受け止められるか試しているんだと思う。」
「そのためにはかつてあの子とレンを襲った悲劇の一端を担っていた人物………”彼”から全ての真実を聞きだす必要がありそうだ。」
「そうか………」
エリィの質問に答えた二人の話を聞いたロイドは真剣な表情で頷いた。
「………わたしも改めてあの人を問い詰めたいです。なぜ、あんな実験をしたのか………どうしてこの地に落ち延びて”グノーシス”を完成させたのか……そしてキーアの正体と、彼女に何をするつもりなのか………」
「…………………」
「レンちゃん…………」
ティオの説明を聞いて何も答えないレンの様子をルフィナは辛そうな表情で見つめていた。
「そうね………」
「締め上げることはどのみち確定みてぇだな。」
「ああ………確実に逮捕しよう。操られた警備隊を解放して、キーアの安全を確保するためにも。」
「………行くのか。」
ロイド達がヨアヒムを逮捕する事を改めて決意したその時応急処置を終えたセルゲイが足を引きずって車から現れた。
「課長………!」
「止血したばかりなんですからあまり動かないでください………!」
「クク、さすがにこの足でついていくつもりはねえさ……」
エリィの心配の言葉に苦笑して答えたセルゲイは車のタイヤ傍にもたれかかって座り込んでロイド達を見上げて口を開いた。
「………だがせめて、ここで見送るくらいはさせろ。一人前になりかけの部下どもを見送るくらいはな………」
「課長………」
「ったく……カッコつけすぎだぜ。」
「クク……それがオヤジの特権ってヤツだ。―――ロイド、エリィ、ティオ、ランディ……そしてレン。着任して4ヵ月あまり……お前らもそれなりに成長した。無事、この件にケリを付けたら晴れて一人前として認めてやる。だから……絶対に無事に戻って来い!
「はい……!」
「わかりました……!」
「了解です……!」
「イエス・サー!」
「わかったわ!」
そしてセルゲイの号令にロイド達は力強く頷き、セルゲイとツァイトに見守られてエステル達と共に遺跡―――”太陽の砦”に突入した――――!
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