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英雄伝説~光と闇の軌跡~(零篇)

作者:sorano
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第113話

~太陽の砦~



「どうだ………ティオ?」

”太陽の砦”の入口付近まで走って移動したロイドは立ち止まり、振り向いてティオに尋ね

「………悪い予感が的中です。時・空・幻………上位三属性が働いています。”砦”や”僧院”と同じですね。」

尋ねられたティオは考え込んだ後真剣な表情で答えた。

「そう、やっぱり………どうやらこの先は一筋縄では行かないみたいね。」

「って事は、あの得体の知れない化物や悪魔どもが徘徊してるってことか。やれやれ、ゾッとしない話だぜ。」

ティオの答えを聞いたエリィは頷いた後真剣な表情で言い、ランディは疲れた表情で言った後目を細めた。

「……あたし達も”影の国”を探索した時、同じような状況になったわ。」

「正直、どんな魔物が現れても不思議じゃないだろう。万全の体制で臨んだ方がいい。」

「そうだね………中にはミント達の姿を化けて襲い掛かって来る魔物もいたよ。」

エステル、ヨシュア、ミントは自分達の体験談を話し

「ですが、考え方を変えれば普段効果がない属性に弱点があるという事………そこを付いていけば……」

「どのような魔物が現れても普段と変わらず戦えます。」

「その為には未知の魔物と戦う時はバトルスコープやティオの”アナライザー”で弱点や耐性属性を調べる事を忘れない事ね。」

エクリアとフェミリンス、レンは助言した。

「そうか………わかった。当然、敵による待ち伏せもあるはずだ………みんな、気を引き締めて行こう!」

エステル達の話に頷いたロイドは静かな口調で言った後エリィ達を見つめて号令をかけ

「「「ええ!」」」

「おおっ!」

「「はい………!」」

「「うんっ!」」

「ああ………!」

ロイドの号令にエリィ達はそれぞれ力強く頷き、遺跡内を進み始めた。その後探索の最中に襲い掛かって来る魔獣達を撃退し、仕掛けを解いたロイド達が先に進んで行くと”D∴G教団”の紋章が描かれた壁の前に来た。



「あ………!」

「あれは………!」

「”僧院”の礼拝堂の奥にあった紋章と同じ………!

紋章が描かれた壁を見つけたティオとロイド、エリィは声を上げた後仲間達と共に紋章が描かれてある壁に近づいた。

「これって………例の”教団”の紋章よね?6年前の事件の資料にあったものとは少し違うけど……」

「確か資料だとあの目?に翼のようなものが付いていたよね?」

紋章を見たエステルは真剣な表情で呟き、ミントは疑問に思った事を口にし

「ああ………ヨアヒムの野郎が置いて行ったファイルの表紙とも少し違うな。確か翼が付いてた気がするが………」

ランディは2人の言葉に頷いた後目を細めた。

「多分、こちらは簡略化された”教団”の紋章なんでしょう。ひょっとしたら、現在の紋章の原型になったものかもしれません。それがこの場にあるという事は……」

ランディの疑問にヨシュアは自分の推測を話し

「………”教団”のルーツは500年以上昔に(さかのぼ)る……しかも、このクロスベルが発祥の地かもしれないってことか。」

ロイドが話の続きを口にした。

「ああ、君達が発見した”僧院”の紋章もしかり………500年前の戦乱の時代、この地の有力者を取り込んで勢力を拡大したのかもしれない。」

「なんてこと……」

「いずれきちんとした歴史を紐解く必要がありそうだな……」

そしてヨシュアの推測を聞いたエリィは疲れた表情で溜息を吐き、ロイドは考え込んだ。

「!みなさん、気を付けてください!」

「”魔”に属する者達が来ますわよ!」

その時エクリアとフェミリンスが警告した。するとロイド達の目の前に魔法陣が現れた後、そこから今までに見た事のない巨大な悪魔が2体現れた!

「出たか………!」

「そ、そんな………この”悪魔”達は……!」

悪魔達を見たロイドは声を上げ、ミントは信じられない表情をし

「聖典に記された七十七の悪魔にして、煉獄を守る門番………”暴虐”のロストフルムと”深淵”のアスタルテ!」

「やはりこの一帯が異界化しているようですね………!」

「どうして”影の国”の悪魔………それも聖典に記されているような高位の悪魔が………!」

ヨシュアとエクリアは厳しい表情で声を上げ、ティオは信じられない表情で叫んだ。

「気を付けろ!今まで戦った悪魔とは”格”が違うぞ!」

そしてロストフルムとアスタルテの強さを感じ取ったランディは警告した。



「こんな所で足を止められる訳にはいかないわ!ミント、一気に決めるわよ!アスタルテは任せたわ!」

「うん!」

その時エステルはミントに呼びかけた後、一人でロストフルムに向かい、呼びかけられたミントも一人でアスタルテに向かった。

「なっ!?2人とも、1人で相手するのは危険だ、戻れ!」

それを見たロイドが驚いて警告したその時!

「ハァァァァァ………!グオオオオオオオオオオオ―――――――ッ!!」

ミントは走りながら自分の全身に魔力を溜めて白銀の竜に変身し

最終伝説時空破壊撃(ラストレジェンドスペースデストロイ)――――――――――――ッ!!」

口から膨大な魔力が込められたエネルギーのドラゴンブレスを放った!

「―――――――――――!!??」

ミントが放ったドラゴンブレスをその身に受けたアスタルテは断末魔を上げながら消滅すると共に後ろの壁を粉々に破壊した!

「――――フェミリンス!サティアさん!力を貸して!!」

「ええ!」

一方ロストフルムに向かったエステルは叫び、エステルの叫びに答えたフェミリンスはエステルに自分の神力の一部を放ち

「その身に刻みなさい!!」

自分に秘められる力を解放し、セリカのような夕焼け色の髪の色とフェミリンスと同じ金色の瞳になったエステルは全身から膨大な”神気”をさらけ出しながら鞘から”影の国”でサティアより託された”正義の大女神”の神剣――――”天秤の十字架(ラクスリブラクルース)”を抜き

「これで終わらせる………!」

ロストフルムに強襲して斬撃を連続で放った!神剣に込められし膨大な神力の斬撃を受けたロストフルムは大ダメージを受けると共に怯んだ。

「たぁっ!!」

斬撃を放ち終わったエステルは跳躍すると共にロストフルムの身体の一部を斬った。するとロストフルムの周囲の空間が歪んだ後、そこから膨大な聖気が込められた巨大な槍が3本現れてロストフルムを貫いた!一方跳躍したエステルは背に3対の巨大な光の翼を具現化させた後、天井で棒――――”影の国”で契約した”姫神フェミリンス”が宿る棒―――”姫棍フェミリンス”を天へと掲げた!

「浄化と!」

「裁きの!」

「「神槍よ、今顕れよ!!」

棒を天へと掲げたエステルはフェミリンスと共に叫んだ。すると掲げられた棒はなんと膨大な聖気が込められた巨大な槍に変化すると共に天井を貫き、神槍となった棒をエステルは両手に持って敵に向けて突撃した!

「「神技!ニーベルン・ヴァレスティ!!」」

神槍と共に突撃したエステルは神槍をロストフルムの身体の中心に刺し

「行っけ――――――――ッ!!」

大声で叫ぶと共に神槍を輝かせ、周囲に激しい地震を起こすと共に室内全体を輝かすと同時にすざましい轟音が鳴り響く光の大爆発を起こした!

「―――――――――――――――――!!??」

光の大爆発に呑みこまれたロストフルムは断末魔を上げながら塵も残さず消滅し、光の大爆発がなくなるとエステルが持っていた神槍は棒に戻り、さらに翼も一対の光の翼になり、元の髪と瞳の色に戻ったエステルは翼をはばたかせながら地面に着地し、翼を消した。



「うふふ、せっかくレンの強さを見せてあげようと思ったのに2人に出番を取られちゃったわ♪」

「………お見事です、お二方とも。特にエステルさんは”神”の力を2柱を宿しながら暴走もせず、制御して使いこなしているなんて………私から見ても凄いとしか言いようがありません。(やはり、空の女神(エイドス)の末裔である事が関係しているのかしら………?)」

エステルとミントが大技を放って悪魔達を滅するとレンは口元に笑みを浮かべ、エクリアは2人を称賛した後考え込み

「……………………」

「す、凄すぎるわ………」

「おいおいおい………!どうなってんだよっ!?エステルちゃんには翼が生えるし、ミントちゃんは竜になるとか、ありえねぇだろっ!?」

ロイドは口をパクパクし、エリィは信じられない表情をし、ランディは驚きの表情で叫んだ。

「あ、そう言えば言ってなかったわね。ミントは本物の”竜”よ?」

ロイド達の様子を見たエステルはある事を思い出してミントの事を説明し

「へっ!?」

「ええっ!?」

「ハアッ!?」

エステルの説明を聞いたロイド達は驚いた後ミントに視線を向け

「うん、そうだよー。ミント、ツーヤちゃんと一緒で”竜”だよ♪ほら、これが証拠だよ。」

視線を向けられたミントは無邪気な笑顔を見せた後背中に白銀の翼を顕してロイド達に見せた。

「そ、そういえば………確か”黄金の百合”と”蒼黒の薔薇”―――ミントとルクセンベール卿は普段は人の姿をしているけど真の姿は”竜”だって聞いた事があったな………」

「ハアッ!?つーことはあの黒髪の美人のお姉さんも”竜”なのかよ!?」

「ま、まさか生きている内に”伝説の存在”である”竜”に3体も出会えるなんて、普通ならありえない体験よね………」

一方ある事を思い出したロイドは驚きの表情で呟き、ランディは驚いた後声を上げ、エリィは表情を引き攣らせた後苦笑し

「そうですか?既に”神殺し”のセリカさんや本物の”神”のフェミリンスさんやレシェンテさん、そしてあのリウイ陛下を始めとしたさまざまな”超越した存在”や普通なら絶対に会えないような存在にみなさんも出会っているのですから、今更”竜”と出会ったぐらいで驚くような事ではないと思いますが………(というかわたしやエステルさん達はあのエイドスの先祖や両親と出会っている上、エステルさんとミントさんには、まだとんでもない秘密が隠されていますしね………それらに比べたら大した事ではないと思いますし。)」

ティオは不思議そうな表情で指摘した。

「ハハ………け、けど人間のエステルに翼が生えて、凄い攻撃をしたけど………一体あれは何だったんだい?」

ティオの指摘にロイドは冷や汗をかいて苦笑した後ある事に気付いてエステルに尋ね

「前にも話したと思うけどエステルにはサティアさん――――”正義の大女神”の魂が眠っているからね。その身に眠る力をエステルは解放する事によってエステルは”女神”の力で翼を具現化する事ができ、加えてエステルと契約している”女神”のフェミリンスが力をエステルに貸す事によってさっきのような攻撃ができるんだ。」

エステルの代わりにヨシュアが説明した。

「………………………」

「で、出鱈目にも程があるだろう、エステルちゃん………」

「何ていうか……私達の常識が破壊されそうね……」

(というか”色々な意味”で常識外れすぎる存在のエステルさんに出会った時点で破壊されている事は確実かと………わたしなんか”影の国”で出会った人々によって自分の……というか世界の常識は完全に破壊されましたよ……)

説明を聞いたロイドは口をパクパクし、ランディは疲れた表情で溜息を吐き、エリィは表情を引き攣らせ、ティオは静かな表情になった後、どこか遠くを見つめるような目をした。

「あはは。そんなに驚く事じゃないと思うんだけどな。あたしはあくまで他の人達の力を借りているだけだし。…………それよりさっきの攻撃のお蔭で道が開けたわ。」

「………どうやらこの先が真の意味での敵の拠点の中だと思いますわ。」

ロイド達の様子を見たエステルは苦笑した後表情を真剣にして、ミントのドラゴンブレスによって破壊され、通路が見える先に視線を向け、フェミリンスが説明を続け

「ああ………入ってみよう。」

2人の言葉に頷いたロイドは仲間達と共に通路に入り、先に進み続けた。少しの間進み続けると広い場所に出た。



「ここは………!?」

広い場所に出たロイドは遥か下まで続いている巨大な穴を見て驚いた。

「凄い………」

「地の底に続く縦穴………なんて大きさなのかしら。」

「これも数百年前に建造された物なのか……」

「もしかすれば”フェミリンス神殿”をも越える深さがありそうですね………」

「ここからの目測だと深さ500アージュって所か。やれやれ………こいつは骨が折れそうだぜ。」

一方同じように穴を見つめたエステルとエリィは驚き、ヨシュアとエクリアは真剣な表情で呟き、ランディは深さを推測した後溜息を吐き

「何だか”影の国”の”深淵”の”星層”と似た雰囲気だね………」

「クスクス。きっと今までとは比べものにならないくらいの強さの”魔物”達も徘徊しているでしょうね。」

「果てしなく長い道のりに加えて、多くの魔物達………加えて先程の悪魔達の事も考えると聖典に記されたような悪魔もどこかで待ち受けている可能性もあるでしょうから、敵将への道のりは険しいでしょうね。」

ミントは真剣な表情で呟き、レンは不敵な笑みを浮かべ、フェミリンスは静かな表情で語った。

「……………………………」

そしてティオは黙り込んだ後身体を震わせた。

「ティオ、どうした?」

「大丈夫?真っ青な顔をしてるわ。」

ティオの様子に気付き、仲間達と共にティオに視線を向けたロイドとエリィは声をかけ

「………問題ないです。ただ、昔いた場所のことを少し思い出してしまって………」

声をかけられたティオは表情を若干青褪めさせながら説明した。

「………………………」

ティの説明を聞いたレンは黙り込み

「昔いた場所………そうか。」

「共和国の西端にあったっていう教団の拠点(ロッジ)のことだな?」

ロイドは察した後頷き、ランディは真剣な表情で尋ねた。

「………はい。たぶん、この縦穴は”煉獄”に続く黄泉路を見立てて建造されたんだと思います。女神(エイドス)を否定する概念としての悪魔に近づき、利用するため………そして彼らに供物を奉げる”儀式”を執り行うために。」

「………最低の連中ね。」

「ハッ、道理で辛気臭い匂いがするわけだ。」

ティオの話を聞いたエリィは表情を歪めて呟き、ランディは怒りの表情で呟いた。



「………――――だったら俺達の仕事は一つだけだ。俺達の道を拓いてくれた人達のためにも。そして、俺達の帰りを待っているキーアのためにも………その辛気臭い幻想を叩き壊して………陽の光の下に引きずりだしてやる!もう誰も、辛くて哀しい思いをしなくて済むように………!」

一方ロイドは考え込んだ後決意の表情で言い

「………ロイドさん…………」

「………………………」

ロイドの言葉を聞いたティオは驚きの表情でロイドを見つめ、レンは静かな笑みを浮かべていた。

「ったく、熱血野郎と言いたいところだが………ま、今回ばかりはそいつに一枚乗せてもらうぜ。」

一方ランディは苦笑した後口元に笑みを浮かべて頷き

「ふふ、私も乗った。敵は、全てを陰から操っていた得体の知れない蜘蛛のような存在………でも、今の私達ならきっと届くことが出来るはずよ。」

「……はい。絶対に………負けません!」

「あたし達も力を貸すわ!」

「勿論ミントも!」

「全力で君達を支援する!」

「王であり……神である私もそのような外道……決して見逃せません。私も勿論力を貸します!」

「貴方達に力を貸すこと……それが大切な妹達を守る事なら喜んで力を貸しましょう!」

「レンも当然協力するわ………!」

ランディに続くようにエリィ達もそれぞれ力強く頷いた。

「よし、それじゃあ行こう。クロスベル警察・特務支援課所属、ロイド・バニングス以下4名―――」

「同じく遊撃士協会所属、エステル・ブライト以下4名―――」

「同じくメンフィル帝国軍所属、レン・H(ヘイワーズ)・マーシルン以下2名―――」

「これより事件解決のため強制潜入捜査を開始する………!」



こうしてロイド達は”太陽の砦”の遥か下を目指して、探索を開始した………!




 
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