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善意の裏

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第二章

「どうだろうか」
「有り難きお言葉。それではです」
「今より我等は友人同士ですね」
「アメリカ合衆国とハワイ王国は友人です」
「強い絆で結ばれた」
「そうだ。当然ハワイ人とアメリカ人もだ」
 人の間でもそうだと。王は満面の笑顔で玉座から言った。
「永遠の友人だ」
「ではこれからも末永くお願いします」
「友として」
 アメリカ人達も笑顔で王に応える。こうしてだった。
 ハワイ王国はアメリカ合衆国と強い同盟関係、まさに友と友の関係になった。統一されて余計にだ。
 王はアメリカ人を信頼しその優れた人材を次々に迎え入れた。
 その人材は多岐に渡っていた。
「軍事だけでなく建築や医学、経済にですか」
「そして農業や漁業にもですか」
「そうだ。顧問を迎え入れる」
 アメリカからそうするとだ。王は玉座から大臣達に話した。
「友人達をな」
「そうですね。それがいいですね」
 大臣の一人が明るい顔で王の言葉に頷いた。
「アメリカの技術は素晴らしいです」
「統治機構も何もかもな」
「我が国とは比べものになりません。それにです」
「文化も素晴らしい」
 王は屈託なものさえない笑顔で述べた。
「余は先日アメリカ人達にパーティーというものに招待された」
「パーティーですか」
「それは一体」
「多くの者が集り山の様な馳走に酒を楽しみアメリカの素晴らしい音楽で踊る」
 それがだ。パーティーだというのだ。
「しかもあちらの礼服を着てだ」
「では王もですか」
「アメリカの礼服を着られたのですか」
「あの国の服を」
「あの服はいい」
 アメリカの服についてもだ。王は笑顔で語る。
「格好がいいうえに動きやすい」
「そのうえでパーティーに出られた」
「そうされたのですか」
「そうだ。そなた達もパーティーに参加するのだ」
 アメリカ人の主催するだ。それにだというのだ。
「彼等は喜んで迎え入れてくれるぞ」
「そうですね。彼等は友人ですし」
「彼等と共にパーティーを楽しみましょう」
「そしてアメリカの服を着ましょう」
「アメリカの音楽で踊り」
 彼等は完全にアメリカに魅了されていた。そうしてだった。
 実際にパーティーに参加してアメリカの服を着て踊った。アメリカの御馳走にアメリカの酒も飲んだ。彼等はアメリカそのものに浸っていった。
 アメリカ人の顧問達はさらに増えてだ。国の至るところにいた。彼等は熱心にハワイ人達を指導してハワイを発展させていっていた。そしてだ。
 ハワイに家族を呼びアメリカの家を建てた。その数は増える一方だった。
 王も代が変わっていく。大王から二世、三世となっていく。その王にだ。
 周りにいるアメリカ人達がだ。こう言うのだった。
「議会を開きです」
「そしてアメリカの優れたシステムをさらに取り入れましょう」
「そして顧問のさらなる受け入れです」
「それを行いましょう」
「そ、そうだな」
 王はだ。彼等の言葉に玉座から応えた。見れば玉座はアメリカ人達に囲まれている。生粋のハワイ人達もいるがかなり少なくなっている。
 そしてアメリカ人達がだ。王に口々に言うのだった。
「軍港も整えてです」
「そこにアメリカ軍を入れましょう」
「そうすればハワイはアメリカ軍が守ってくれるようになります」
「ハワイにとってもいいことです」
「いや、軍は」
 ここでだ。若い王、アメリカの服を着ている王は微妙な顔になった。
 そしてその顔でだ。アメリカ人達にこう言った。
「それはだ」
「それは?」
「それはといいますと」
「ハワイの軍で守るべきではないのか」
 王としてだ。顧問の彼等にこう言ったのである。
「やはりな」
「いえ、ハワイ王国軍は少ないので」
「数が少ないです」
「しかも装備が弱いです」
「ですから止めましょう」
 王の考えはだ。顧問達によって否定された。
「やはりアメリカ軍です」
「アメリカ軍は友人としてハワイ王国を守ります」
「ですからお任せ下さい」
「我が国に」
「わ、わかった」
 戸惑いながらもだ。王は顧問達に答えた。そしてだ。 
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