夏の詩
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第五章
5.緑の光
夜になっても暑い 夏の夜はそれだけだととても嫌なものだ
けれど外に出ると そこにあるのは暑さだけじゃなかった
周りに何かが漂ってきた それは光だった
淡い緑の光だった 蛍の光が僕の周りに来た
その光を見て僕は思った この光を見ていると
暑い嫌な夜でもこれだけで有り難いものになる ただの虫の光なのに
右に左に漂う無数の光の中で 濃紫の夜の中の淡い緑の光を見て
この世にいる気がしなくなった 別の世界にいる様に思えてきた
真夏の夜の夢 この世とは別の世界の住人の世界
蛍の舞は僕にそれを見せてくれる 光を漂わせて
僕はその光を見て別の世界に入りたいと思った そうして
蛍を一匹捕まえようと思った けれど蛍はこの世にはないので
手をするりと抜けて飛んでいった 緑の光はこの世のものではなかった
夏の詩 完
2012・7・13
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