FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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ENDの書
前書き
シリルとレオンでポインコCM
レオン「なぁ、ポテトまだぁ?」
シリル「もうすぐだよ」
レオン「ポテトまだぁ!?」
シリル「もうすぐだって」
レオン「あ・・・」シリルのアホ毛が目に入る。
シリル(嫌な予感・・・)
レオン「ポテトぉ!!」ガブッ
シリル「ぎゃあああああああ!!」
シェリウェン「「着いたよ」」
ポインコって可愛いよね、わからない人は調べてください。
数多く街の中に立っているフェイス。それを破壊するべく行動をしていた女剣士は、額に汗を浮かべ、膝をついていた。
「おのれ・・・ビクともしない・・・魔力ももう限界か」
忌々しそうにフェイスを睨み付けるカグラ。彼女の後ろでも、仲間たちが苦しそうにしている。
「もう動けない。もうダメ・・・」
「体に力が入らないよぉ・・・」
「だからって人にしがみつくな!!」
両手を膝につき呼吸を乱すミリアーナと、普段通りの流れでアラーニャやリズリーといったメンバーに抱き付き、振り払われているソフィア。
「カグラちゃん、あれ見て。何かくるよ?」
不意に空を見上げたミリアーナ。そんな彼女の目に、近づいてくる巨大な影が映る。
「あれは・・・」
「どこかで見たような・・・」
カグラとソフィアも空を見上げる。そこにいたのは、天空の滅竜魔導士ウェンディの育ての親であるグランディーネだった。彼女は体を回転させ加速すると、目の前のフェイスを瞬く間に破壊していく。
「「「なっ・・・」」」
意図も容易くフェイスを粉砕するドラゴン。その姿に、カグラたちは言葉を失っている。
「なんだったんだろ?あれ。デッカイネコネコ?」
「んな訳ないじゃん!!」
「もしかして・・・ドラゴン?」
人魚の踵がある街のフェイスを破壊し終え、その場を後にするグランディーネ。カグラたちは、その姿をただ見送ることしかできなかった。
ドゴォンッ
けたたましく鳴り響く爆発音。その正体は、旋回だけで幾多もあるフェイスを破壊しているヴァッサボーネの姿だった。
「これは夢か!?現実か!?なんたる威力!!なんたる破壊力!!ドラゴン・・・救世主なのか?」
聖十大魔道の称号を持つその男は、かつて敵として戦った種族のその力を再び目の当たりにし、驚きを隠せずにいた。
「わぁ!!すごい!!」
「間を通り抜けただけなのに・・・」
「フェイスをこうも簡単に・・・」
ジュラと同様に驚愕しているラウルとシェリアとリオン。自分たちでは傷すらつけることのできなかったそれを容易く破壊するかつての世界の支配者に、ただただ感心するしかない。
「そっか・・・衝撃波で壊せばもっとたくさん壊せたのか・・・」
ドラゴンの動きを見てそう言葉を漏らしたのは氷の神。彼は、力任せにフェイスを破壊していた自分と違い、効率よく行動しているドラゴンを見て、感嘆の声をあげる。
「焦って頭固くなってたな・・・」
まだまだ自分は甘いのだと認識させられた少年は、頭を掻き、離れていくシリルの父を見送る。そして、ドラゴンたちの活躍により、大陸にあった三千機のフェイスは、すべてが破壊されたのであった。
シリルside
イシュガルの空を舞っていたドラゴン。彼らの姿が見えなくなった頃、激しく揺れていた大地が静かになっていた。
「ENDの復活は阻止された。我々の勝利だ」
ナツさんのお父さん・・・イグニールのその声で喜びを露にする。冥府の門の全員を倒し、さらにはフェイス計画も阻止した俺たち。それは、完全勝利といって相応しいだろう。
「敗北・・・」
一時は勝利を確信していたマルド・ギール。しかし、フェイスを破壊されたことでENDの復活が絶望的になった彼は、ショックで顔色が白くなっていた。
「バイスロギアは・・・生きていたのか?」
「ハルジールもスキアドラムも、メタリカーナもグランディーネも、ヴァッサボーネも皆、滅竜魔導士の体内にいた。秘術によって体内にて眠っていた、というべきか」
以前スティングさんやグラシアンさん、ローグさんたちは自分を育てた親を殺したと話していたのを覚えている。でも、実際はそうじゃなくて、彼らの体内に入っていたということなのか。
「本の男と戦っている時、突然立てなくなった・・・」
「あの・・・動悸が起こった時に、体内から目覚めた?」
「それまではずっと俺たちの体の中で眠っていたのか」
アクノロギアがやって来た時、俺もウェンディも起き上がることができなくなっていた。でも、同じ滅竜魔導士であるはずのラクサスさんだけは異変がなかった。
俺やウェンディはヴァッサボーネやグランディーネに魔法を教えてもらったけど、ラクサスさんは体内に滅竜魔法の魔水晶を埋め込んだ第二世代だから、何も起こらなかったのか。
「そうだ!!そういやそれ聞いてなかったぞ!!なんで体ん中にいたんだよ!!俺は食った覚えはないぞ!!」
すると、ナツさんが全員が感じていた疑問を問う。突然俺たちの前からいなくなったということは、眠っている最中にでも体の中に入ったのだろうか?でも、何のために?
「それには二つの理由があった。一つはこやつ・・・アクノロギアのように滅竜魔導士の完全なる竜化を防ぐため」
そう言われ、ドラゴンの墓場であったジルコニスの話を思い出す。アクノロギアは400年前の竜王祭で、ドラゴンから滅竜魔法を授けられた彼は、仲間であるはずのドラゴンたちもその手にかけ、血を浴びていくうちにドラゴンになってしまったと。
「そういや、ジルコニスってドラゴンが言ってた。そいつ元は人間だったんだってな!!」
「うむ。もう一つは・・・!?」
残る理由を話そうとしたイグニール。しかしその時、彼の前足によって押さえ付けられていたアクノロギアが、咆哮をあげながら起き上がったのだ。
「「くっ・・・」」
それにより周囲に突風が吹き付ける。あまりの強風に、俺やナツさんは顔を反らしていた。
オオオオオオオオオッ
「イグニール!!」
イグニールとアクノロギア、二頭のドラゴンは再び上空へと飛び上がっていく。
「こいつを片付けてからだ!!本を手に入れろ!!」
「イグニール!!」
息を吹き返したアクノロギアを見据えるナツさんのお父さん。空高くにいる彼らに、もう俺たちの手は届かない。
「今・・・」
「なんて?」
「本?」
イグニールがナツさんに言った言葉・・・それがどういうことなのかわからないグラシアンさんたち三大竜は、上空でぶつかり出した二頭のドラゴンを不思議そうな顔で見上げている。
「こいつのことだろ?」
そう言って一冊の本をみんなに見せるは氷の悪魔へと進化した青年。その手に握られていたのは、ENDと表紙に書かれた書だった。
「ENDの書」
「グレイ・・・」
本を片手に持つ黒髪の青年と桜髪の青年とが互いににらみ合う。一度落ち着いたかと思ったが、やはりこうなっちゃうのか・・・
「約束したんだ。必ずENDを倒すと」
「テメェ・・・」
父の願いを受け本を破壊しようとするものと、父からの依頼で本を手に入れようとするもの。両者の想いは食い違い、互いを敵のように見据えている。
「ナツさんもグレイさんもよしなって!!」
「これだから妖精の尻尾は」
一触即発の雰囲気の彼らを見て、スティングさんとローグさんは地に伏したままそう言う。俺は一体どうするべきなのか、悩んでしまい、ただアタフタしているしかできない。
「シリル」
「??」
そんな俺のことを、地に伏しているうちの一人、グラシアンさんが呼んでいる。正直今それどころではないのだが、もしかしたら何か二人を止める方法なのかもしれないと思い、近寄って耳を傾ける。
「シリル、俺の言う通りにしてくれ」
「え?は・・・はい!!」
本当に何か止める方法を思い付いていた様子の幻竜。俺はしゃがんで彼の案へと耳を貸す。
「ゴニョゴニョゴニョゴニョ」
「え?そんなので止めれます?」
「大丈夫、自信ある」
グラシアンさんの意見を聞いてみたが、正直そんなことで止められるような気はしない。でも、彼はよほど自信があるらしく、真っ直ぐな目でこちらを見ている。
「わかりました」
彼の目があまりに真剣だったため、思わず承諾してしまった。
それから俺はナツさんとグレイさん、二人が睨み合っている方を向き、二人の名前を叫ぶ。
「ナツさん!!グレイさん!!」
「「あ?」」
俺の声に気付きこちらを向く彼ら。次に続く言葉を発しようとしたとき・・・
カッ
グラシアンさんの目が紫の輝きを放った。
「ケンカしちゃダメですよ!!」
「「!!」」
グラシアンさんに言われたまま、そのまんまの言葉をナツさんとグレイさんに言う。すると、彼らはなぜか顔を真っ赤にして、俺の方を・・・正確にはお腹よりも下辺りを見ている。
「何見てるんです・・・」
彼らがなんでそんなところで視線を止め、顔を赤くしているのかわからず俺もそちらを見てみる。すると、すぐにその理由がわかった。
薄いピンク色をした素材で作られた、胸元に複数の白いボタンがついている、ケガした患者さんをお世話する人が着る服・・・ナース服になっていた。それも超丈が短いスカートの。
「ちょっ/////!!」
その裾を押さえた後すぐに振り返り、この服になった原因の人物の方を向く。
「何やってるんですか!?」
「ウガッ!!」
スカートを押さえたままグラシアンさんの顎を蹴りあげる。攻撃を彼が受けると、魔法の維持ができなくなったのか、元の男物の服へと戻っていく。
「いや・・・可愛いは正義ってソフィアが言ってたから・・・」
「「「「「なんであいつから影響受けた!?」」」」」
彼の発言にこの場にいる全員の声が重なった。しかし、ローグさんとスティングさんは説得力の欠片もない。なぜなら彼らは、血が流れる鼻を押さえ、チラチラと俺の方を向いていたのだから。
「しかし・・・」
「シリルは黒か・・・」
「意外だったな・・・」
「てっきり白とかなのかと・・・」
「何の感想言ってんだあんたら!!」
確かに黒だったけども!!ボクパンだから!!如何わしい下着なんか穿いてないから!!妙な談義をしないでくださいよ!!
「ほら、丸く納まっただろ?」
「否定はしませんけど・・・」
ドヤ顔のグラシアンさん。ナツさんとグレイさんの重たい雰囲気は落ち着いたけど、それと引き換えに色々と失ってしまった気もするのは気のせいかな?
ヒュンッ
俺が激しく落ち込んでいると、顔を火照らせながら俺から視線を外していたグレイさんの手から、ENDの書が消える。
「!?消えた」
「グレイ!!」
「俺じゃねぇ!!」
今の混乱の隙にグレイさんが本を破壊したと思ったナツさんが睨み付けるが、当の本人もなぜ本が消えたのかわからず怒鳴り返している。
「この本は僕のものだ」
すると、背後から聞き覚えのある声が聞こえ、全員がそちらを向く。そして、その姿を見て、全員の目が大きく開いた。
「返してもらうよ」
黒い髪をし、黒の衣装に身を包んだ青年。天狼島で遭遇したその人物は、分厚い本をその手に持ち、こちらに歩み寄って来ていた。
「大事な本なんだ」
ENDやマルド・ギール、冥府の門の悪魔たちを作り上げた存在・・・ゼレフが立っていた。
「ゼレフ」
「こいつが・・・」
ゼレフを初めて見たスティングさんやローグさん、グラシアンさんは彼を見てただ言葉を失っている。ゼレフはそんな彼らに目もくれず、一人の悪魔の元へと歩いていく。
「マルド・ギール。君はよくやったよ。ENDが甦るまであと一歩だった」
マスターであるENDが不在の中、実質的な冥府の門の指揮官となっていたマルド・ギール。圧倒的な力を持ち、俺たちを見下し続けていた彼も、創造主の前では威厳も何も感じられないほど怯えきった表情をしている。
「もう眠るといい」
彼の前に立ち、以前見たのと変わらぬ寂しげな目のままそう告げるゼレフ。それを聞いたマルド・ギールは、恐怖している。
「マルド・ギールは・・・あなたの望みを・・・叶えることは・・・」
「君には無理だ」
手を伸ばし、懇願するようなマルド・ギール。ゼレフはそれに対し冷たくそういい放つと、指をパチンッと鳴らす。
それと同時に、目に涙を浮かべていた悪魔は、本へとその姿を変えてしまった。
「「「「「「!!」」」」」」
抵抗することもできず本へと戻されるゼレフ書の悪魔。ゼレフはそんな彼に背を向けると、マルド・ギールの本は火に包まれ、一瞬のうちに燃え尽きてしまった。
「お前・・・自分の作った悪魔なんだろ!?」
「燃やすなんてひどいですよ!!」
あまりの仕打ちに敵であったグレイさんと俺も彼に同情する。ゼレフはその声を聞き、静かにこちらに振り返る。
「そうだね。もういらないからね」
いつも通りのようにも見えるし、悲しそうな表情にも見える黒魔導士。そんな彼に、スティングさんやグラシアンさんは、歯を剥き出しにして怒りを感じている。
「僕は今日君と決着を付けるつもりでいたんだ」
「あぁ?」
突然ナツさんにそんなことを言い出したゼレフ。ナツさんは彼が何を言いたいのかわからず、目を細めている。
「だがアクノロギアという邪魔が入った。彼がもう一度歴史を終わらせるのか、奇跡を起こすのか・・・僕にはわからない」
「何言ってやがる」
上空でぶつかり合うアクノロギアとイグニールを見上げそう言うゼレフに、ナツさんは意味がわからずさらに目を鋭くさせる。黒魔導士はナツさんに視線を戻すと、彼のことをじっと見つめている。
「もしもこの絶望的な状況を生き残れたら・・・その時は・・・
僕がさらなる絶望を与えよう」
瞳を赤くして淡々とそう告げるゼレフ。ナツさん、グレイさん、俺は彼としばし睨み合っていると、彼は不意に背を向けて歩き出してしまう。そして、強い風が吹き、砂煙が俺たちの間に割り込むと、それが晴れた時には、ゼレフの姿はどこにもなかった。
「あの野郎・・・本を持っていきやがった」
破壊しようとしていた本を奪われてしまい、拳を握り震わせる氷の魔導士。
「ゼレフ・・・」
その場にいるすべての人間がいなくなった黒魔導士のことを思い出し、奥歯を強く噛み締める。
「イグニール!?」
立ち去った青年がいなくなった方を見つめていると、突然ナツさんが辺りをキョロキョロとして、父の名前を呼ぶ。
ダッ
「ナツ!!」
「ナツさん!!」
どこかに向かって走り出すナツさん。その方角には、アクノロギアに踏み潰されているイグニールの姿があった。
「あいつ・・・助けにでも行くつもりか?」
「いや・・・」
ナツさんが何かを叫びながらイグニールの元へ走っているけど、その唇の動きから予測するに、たぶん止められているのを無視しているように見える。
ナツさんが二頭の元に向かっていると、イグニールとアクノロギア、共に上空へと高く飛び上がっていく。
相手に向かって突進していく炎竜王と暗黒の翼。彼らが交わりあったその瞬間、思わず思考が停止した。
黒い鱗で覆われた左腕を食いちぎったイグニール。しかし、そのドラゴンの体を、アクノロギアは大きく・・・腹の真ん中から切り裂いていた。
「「あっ・・・」」
食わえていた敵の腕を落とし、地上に落下していくイグニール。アクノロギアは、その敵の真上へとやってくる。
大きく口を開き、大量の魔力を溜めていく黒き翼。それは地面に落ちた炎の竜に、躊躇うことなくブレスを放つ。
かつて一つの島をその一撃で消し去った強烈な攻撃。それは、ドラゴン同士の戦いの目の前までやって来ていたナツさんの目と鼻の先まで凹ませるほどの破壊力であった。
「イグニールゥ!!」
抉られた大地。そこに響いたのは、炎の竜の子の悲鳴にも似た絶叫だった。
後書き
いかがだったでしょうか。
もう冥府の門編も残すとこ一話です。たぶん・・・
次はドラゴンたちとのお別れです。
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