普通だった少年の憑依&転移転生物語
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【ハリー・ポッター】編
160 “賢者の石”
SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー
「“賢者の石”といえば〝錬金術〟の到達点よ。ほら──ここ」
図書館。ハーマイオニーが1冊の本を持ってきて、その本を俺達にも見易い様に開いた。そして、ハーマイオニーの指がなぞっていく文字列を目で追っていく。
――――――――――――――
錬金術とは“賢者の石”と云われる恐るべき力を持つ伝説の物質を創造することにかかわる古代の学問であった。
この“賢者の石”は、いかなる金属をも黄金に変える力があり、また、飲めば不老不死になる〝命の水〟の源である。
“賢者の石”については何世紀にもわたって多くの報告がなされてきたが、現存する唯一の〝石〟は著名な錬金術師であり、オペラ愛好家であるニコラス・フラメル氏が所有している。フラメル氏は665歳の誕生日を迎え、デボン州ペレネレ夫人(658歳)と静かに暮らしている。
――――――――――――――
「……これはダンブルドア以下ホグワーツの教授の方々が隠しているのは“賢者の石”とみて間違いなさそうね」
ハーマイオニーは、本をぱたり──またはばたり、と閉じながら締める。……一瞬俺達三人に沈黙が降りかかり、そんな沈黙に堪えきれなかったらしいアニーが改めて切り出す。
「二人からして誰が怪しいと思う?」
「クィレルかな」
「私は──誰とも言えないわ」
「ロンはどうしてクィレルなの? ……あの先生、こういったらなんだけど──吃ってばかりでピクシー妖精一匹殺せない様に見えるよ?」
クィレルは生徒から≪吃りのクィレル≫と揶揄されているだけあって──悪いか良いかの判断は微妙につかないが、ある意味〝“賢者の石”を盗むなんて大それた事が出来るはずがない〟──と云う意味に於いては信頼出来る。
「根拠は一応あるが説明しにくい。……これはちょっと見てもらったほうが早いな」
そうアニーとハーマイオニーに言いながらポケット──と思わせて〝倉庫〟に手を突っ込んで、1つの古びれた羊皮紙──“忍びの地図”を取りだし、二人の前で広げてみせる。
「「………?」」
二人はいきなりの俺の謎の所作に疑問符を頭上で踊らせる。……俺はそんな二人に構う事なく次の動作に移る。……杖を取りだし、その羊皮紙──“忍びの地図”へととある魔法を掛ける。
「〝われ、ここに誓う。われ、よからぬことをたくらむ者なり〟」
「すごい…」
「これは…」
杖を振って1秒かそこら後にすっ、と浮かび上がる【ホグワーツ魔法魔術学校】の地図を見て、アニーとハーマイオニーは二者二様のリアクションをとる。……アニーが〝感嘆〟でハーマイオニーが〝思案〟だ。
「……これ、一体どこで手に入れたの?」
「フレッドとジョージから借りて、〝ちょちょいのちょい〟って、複製したんだけど──まぁ、この“忍びの地図”の入手ルートなんかはさておいて」
ハーマイオニーはすぐ思案顔から切り替え、俺の目を真っ直ぐ見ながら〝嘘は言わせないわ〟とでも言いたげに真正面からそう訊いてきた。……ハーマイオニーに嘘は吐きたくないので、〝誤魔化し〟を混ぜつつ、この“忍びの地図”の入手ルートを簡潔に語る。
……ちなみに、〝ちょちょいのちょい〟の部分は〝“私のかわりはいくらでも(マイオルタナティヴ”で〝保険〟を作った〟──となり、手元に100ガリオンほど有れば良いだけの俺は、地図のレンタル料としてフレッドとジョージには幾ばくかの金貨を渡したりもした。
閑話休題。
「……あれ…? でも、ロン、この足跡が人の歩いた奇跡だとしても人が歩くスピードが皆おかしくないかしら? ……何かずっと遅い…?」
「この〝別荘〟の中では経過時間が24倍だから、相対的に外の経過時間は24分の1になるんだよ」
ハーマイオニーの疑問にアニーが答えているの傍目に、“忍びの地図”の中から[クィリナス・クィレル]と書かれている箇所を探すこと数十秒。
クィレル──だけではなく、この地図に載っている人物はアニーも言っていた様に〝いつもの25分の1程度〟にまでその歩みを遅くしているので、クィレルの名前も割かし──等倍で歩かれている時よりは直ぐに見つかった。
「お、在った在った」
「[クィリナス・クィレル]に──」
「[トム・マールヴォロ・リドル]…?」
二人は〝トム・マールヴォロ・リドルって誰やねん〟とな風に首を傾げている。……しかしお辞儀さん(ヴォルデモート)の学生時代の名前をバラすのはまだ早いので、アニーとハーマイオニーの疑問の焦点をずらしなが続ける。
「……二つの名前がずっと一緒にあるなんておかしいだろう? それでクィレルの名前をつぶさに追っていたから判った事なんだが──クィレルの野郎、ちょくちょく4階の〝あの廊下〟に足を運んでるっぽいんだよ」
「「………」」
唖然としているアニーとハーマイオニーを置いていく様に、更に「〝トム・マールヴォロ・リドル〟って、汚い告げ口屋みたいな名前だしな」と付け加える。
「……ダンブルドア校長に言うべき──いや、ダンブルドアはあえて泳がせている…?」
「多分そうだろうな」
アニーの考察は、恐らくだが正鵠を射ている。……ダンブルドアなら、闇の魔法使い(おじぎさんのすうはいしゃ)の一匹や二匹簡単に見抜けるだろうから。
……そして、ハーマイオニーが〝これからするべきだろう〟事を続ける。
「……だったら私達に出来るのは〝現状維持〟──と云うことね?」
「〝現状維持〟もそうだが、その頭に〝ハグリッドがクィレルにフラッフィーの出し抜き方をうっかり洩らさない事を祈りながら〟──と云うのが抜けているな」
HAHAHA、とハーマイオニーの意見に註釈を足す。……ハグリッドならきっとやってくれるだろうと望みを籠めて。
その後、ハーマイオニーから〝ハグリッドに〝忘却の呪文〟を掛けよう〟──などと、自棄っぱちな案も出たりしたが当然採用するわけにもいかず、取り敢えず〝ダンブルドアに改めてみよう〟と云うこととなり、その日は解散となった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
〝ダンブルドアに改めてみよう〟──そう言うだけなら簡単で、〝いざ会いに行こう〟と云う時、問題が発生した。恐ろしく多忙なご老体であるからして、ダンブルドアに会うとのも一苦労──と云うより、ダンブルドアは会えていない。
……ダンブルドアに会いに行くことを決めて2週間が経過していた。
「……二人に提案がある」
「何? 今、〝薬草学〟のレポートが忙しいの。これが終わってからで良いかしら?」
「ボクも〝変身術〟のレポートがもう少しで終わるから…」
〝あったりなかったり部屋〟──〝別荘〟が魔法の練習だけでなく、課題の処理にもかなり有効的使える事に気づいたハーマイオニーとアニーに〝ダンブルドアに会いに行く方法〟を提案しようとしたが、二人は課題に取り掛かっていて取り付く島もない。
(仕方ない…)
――“鳥よ(エイビス)”
既に課題を終えてしまっている俺は、魔法で作り出した鳥で空中戦をさせながら暇潰しをする事に。
………。
……。
…。
「終わったよロン──また無駄な事やってる…」
「待たせたわね」
「覚えていてくれて嬉しいよ」
――“消えよ(エバネスコ)”
鳥同士を“善行権”…主人公補正のスキルで主人公補正を持たせ、逆転して逆転されている泥仕合を見ること数十分。ハーマイオニーとアニーの課題が終わったのを確認して、鳥に掛けていた“善行権”を“無効脛”…スキルを無効化するスキルで打ち消し、〝消失呪文〟で鳥を消す。
「で、提案って何かしら」
「今夜寮を抜け出そう。……ダンブルドアに会いに行こう」
「どこに居るか判ったの」
「ああ。1週間前、“忍びの地図”を眺めている時に判ったことなんだが、深夜になるとダンブルドアが──何も無いはず部屋に、数分だけ居ることが判った。……ここ1週間確認してみたけどよくそこに居るみたいだ」
「ロンが言いたいのはそこに数日、忍び込むと云うこと?」
アニーの確認に首肯する。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
深夜。俺の先導で──〝退霊符〟でピーブズ避けをしながら〝いつもダンブルドアが現れる部屋〟に“透明マント”を三人で被って──ひそひそ声で忍び込む。……しかしそこには姿見──大きな鏡があるだけで、人っ子一人見当たらなかった。
……しかし、杖先の灯りに照らされた“忍びの地図”に寄ればダンブルドアはここに居る事になっている。
「……外れみたいね…」
「いや、ちょっと待った。……“人現れよ(ホメムナ・リベリオ)”」
がっくりしているハーマイオニーの肩を叩きながら、〝人間探知呪文〟を使う。……すると背後にダンブルドアの存在を探知する。ハーマイオニーは〝迂闊!〟とでも今にも言いそうだ。
「……その手が有ったわね。……迂闊だったわ」
「迂闊なのはワシのほうじゃよミス・グレンジャー──で良かったかな? ……何しろ、一年生に見付かるはずがないと決め付け慢心しておったのじゃからな」
背後に居たダンブルドアは肩を落として落ち込むハーマイオニーを慰める。……〝グレンジャー?〟──とイントネーション的に疑問符がついているのは、未だに俺達が“透明マント”を被っているからか。
「……取り敢えず別に減点などせぬから、そのマントをお脱ぎなさい」
「はい、先生」
アニーは持っていた“透明マント”をするり、と地面におく、……もちろん、見失ってしまわない様に銀色の面を上にしながら。
……その後はダンブルドアと色々な会話をした後は、寮に帰された。
SIDE END
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