普通だった少年の憑依&転移転生物語
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【ハリー・ポッター】編
159 うっかりハグリッド
SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー
「さて、行こうかね」
「ええ、行きましょう」
「うん、行こう」
クリスマス休暇が終わって初めての休日の昼下がり。俺とアニーとハーマイオニーはハグリッドの小屋に向かっていた。
……ちなみに、予めアニーにはハグリッドへの先触れを認めてもらっているので、俺やハーマイオニーが小屋にお邪魔してもおかしくない事になっている。
(さて、どう話すかね…)
―そろそろ三頭犬についての情報も集まってきたから、ハグリッドのところに行って、正攻法──真正面から訊いてみるさ―
―……そこら辺は──まぁ、どうにかなると思う。……ハグリッドはまぁ、〝それなり〟におっちょこちょいだからな。……それこそ多分アニーとハーマイオニーが考えている以上にはな―
……などと、アニーとハーマイオニーへは豪語してみたが、策らしい策なんてあるわけではない。
(ま、なる様になるか)
ハグリッドの小屋の前まで来た。最早逃げ場ないのでいつもの様に脳内にて現実逃避して──これまたいつもの様に、流れ(いきあたりばったり)に身を任せる事にした。
お土産──もとい、ケーキを片手に持ったアニーが小屋をノックすると、直ぐにハグリッドが出てくる。
「よく来たな」
「お邪魔するね、ハグリッド。はい、これケーキ。クリスマスのお返しにもね」
「ありがとう、アニー。……どれ、いつもみたく茶でもご馳走しよう。……三人とも中にお入り」
ハグリッドに促され、小屋の中に入る。そして三人して流れる様に椅子へと座り、ハグリッドが紅茶を淹れてきてくれるのを待つ。……何となしに小屋内を見回していると、こう言ってはハグリッドに失礼だが、ハグリッドの小屋──またはハグリッドには似つかわしくない物を見付ける。
机の隅には乱雑に本が積まれていて──手に取って本の題名を見れば、積まれていた本の殆どが生物に関するもので──ある意味生き物好きな〝ハグリッドらしい〟と云えるものだった。
そんなこんなでハグリッドに対して申し訳ない気持ちになっていると、ハグリッドもお茶の準備を終えたらしく──トレイに4つのカップを乗せてやって来る。
「どれどれ──お、こいつは美味ぇな」
「ボク、ハーマイオニー、ロンの三人で作った力作だよ」
「ありがとう、三人とも」
「いつものお礼よ、ハグリッド」
「まぁ、ハグリッドには良くしてもらってるし──双子もそれなりに迷惑掛けてるみたいだしな」
フレッドとジョージに関しては悪いとは思っていたので、ハーマイオニーが戻ってきた日に、〝三人でハグリッドに某かの贈り物しよう〟と提案してみた。
……云うまでもなく、ケーキを作ったのは〝あったりなかったり部屋〟である。
閑話休題。
、……ちなみに、この1週間で初めて【レーベンスシュルト城】──アニー曰くの〝別荘〟に入ったハーマイオニーは暫く愕然としていた。……ハーマイオニーもまた〝時間を延ばす〟と云う発想には至らなかったらしい。
また閑話休題。
話の内容は、実は今まで殆ど話した事がなかった家族の事へと誘導していく。
最初はハグリッドにグロウプと云うまんま巨人の異父兄弟が居ると云う話にはじまり、アニーのダーズリー家でのちょっとした愚痴、ハーマイオニーの歯医者を営んでいる両親はホグワーツからの手紙が来たときは喜んでいたと云う話を聞いているうちに、俺の兄弟の話になる。
「ところでロンや、お前さんの兄さん達──ビル・ウィーズリーやチャーリー・ウィーズリーは元気にしてるか?」
「ああ。今日もルーマニアで楽しくドラゴンと戯れていることだろうね。……ビルも手紙を読む限り、エジプトで巧くやってるみたい」
俺もホグワーツに来てから──と云うよりは梟を持つようになってからビルやチャーリー──上の方の兄さん達とはちょくちょく手紙を交わし合う様になった。
〝ドラゴン好き〟が起因して、俺に対して感じるところがあるのかは判らないが、取り分けチャーリーとは仲が良かったりする。
ドライグを宿していて──更にはドライグと一緒に2回ほど転生している俺はドライグと共に肉体の〝分解〟と〝再構成〟を行われていて、最早〝人型のドライグ〟とも云ってもまったく差し支えがない。……氣なんかは、もう殆どドライグと同調している。
……なので血液などの体液はその組成こそ人間の〝それ〟ではあるが、魔力等の超常的なエネルギー──言い換えるとするなら、内包している〝神秘〟は嘸やのものである。
「ドラゴンか…。……実は──ちゅーかもう言ったとは思うが、俺はドラゴンが飼いたくてな…」
「……でも、ドラゴンって、飼うのかなり難しいんじゃないの?」
(ナイスアシスト、アニー)
「そうそう、少なくとも〝巨大な変わった生き物〟を飼った経験が必要だと思う」
心の中でアニーに礼を述べながら俺はハグリッドへと繋げる。
「それなら心配ありゃせん。……三頭犬を今も飼っちょるし、その辺りの経験に於いてはちぃとばっかし自信があるんだ」
「三頭犬──それって〝ケルベロス〟…? ……ハグリッド、〝ケルベロス〟なんかホグワーツで飼ってたの?」
「〝ケルベロス〟なんざぁ厳ついもんじゃねぇ。……俺のフラッフィーは音楽の一つでも聴かせりゃ〝ねんねんころり〟よ」
(拙くないか…)
仙術と〝見聞色〟で辺りに誰も──クィレルとかクィレルとかクィレルとかが潜んでいないのを確認しながら、ハグリッドの口が滑り過ぎない様にするために、ハグリッドから俺の身体を死角にして杖を準備しておく。
「……このホグワーツでフラッフィーを飼ってるのだって、ダンブルドアがニコラス・フラメルから預かった、賢者の──ぐっ!?」
「ハグリッド、ストップ」
――“舌縛り(ラングロック)”
聊か口を滑らし過ぎたので、急いでハグリッドを某・≪半純血のプリンス≫さんが開発した魔法で〝口封じ(魔法)〟をする。
いきなり喋れなくなったハグリッドは、一瞬だけ俺を睨め付けるが、次第に何を口走ろうとしていたか──何を口走っていたのかを思い出したのか、顔をマルフォイのように蒼白させる。
……ちなみに、≪半純血のプリンス≫さんの本はアニーに渡そうと思って〝あったりなかったり部屋〟で〝呼び寄せた〟ものだったが──実は“切り裂け(セクタムセンプラ)”以外にも幾つかの魔法が載っていた。
閑話休題。
「……危なかったわね」
「全くだよ…」
――“呪文よ終われ(フィニート・インカンターテム)”
アニーはハーマイオニーの焦り気味の声に賛同しながら〝舌縛り〟の呪いを解く。……ハグリッドは最早土偶の様だ。
「一応調べたが──小屋の周りには怪しい人物は居ないよ」
「済まねぇ、助かった…」
ようやっとハグリッドから出てきたのは感謝の言葉──そして…
「重ね重ね済まねぇが、今日はもう三人とも帰ってくれ。……ダンブルドアとニコラス・フラメルが隠してるモンについては詮索するな──いいな?」
ハグリッドは忘れていたかの「ニコラス・フラメルについてもだ」──と、ぶっきらぼうに呟きながら俺達を小屋から追い出す。……自責からか、かたかた、震えているハグリッドの巨体が厭に印象的だった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ハグリッドに小屋から追い出された俺、アニー、ハーマイオニーその足のまま──三人とも何も喋らず【レーベンスシュルト城】に来ていた。
「……取り敢えず、ハグリッドがうっかりこぼしてしまった情報から整理しましょう」
〝別荘〟に入って数秒。開口一番にハーマイオニーがそう口を開いた。……ハーマイオニーのその提案に諫言するところはないので、俺とアニーの二人はほぼ同時に頷く。
「そうだな、まず──あの三頭犬の名前は〝フラッフィー〟。音楽で眠る。……そこら辺はギリシャ神話のケルベロスと一緒だな」
「そのフラッフィーは、ダンブルドアがニコラス・フラメル某から預かった〝大事なモノ〟の番犬ね」
俺の言葉にハーマイオニーが註釈を入れる。
「……まぁ、ハグリッドの真似ってわけじゃないが──緑茶でも淹れるから、休憩でもしようか」
〝ハグリッドから〝ニコラス・フラメル〟の名前を聞きだす〟と云う俺の目的は果たせたので、そろそろここらで一息吐きたかった俺はアニーとハーマイオニーにそう提案する。
……これまでの〝魔法の訓練〟の合間にちょくちょくと緑茶を淹れているので、ハーマイオニーも──最初こそ顔を緑茶の苦さにしかめていたが、今となっては立派な〝緑茶博士〟になっている。……ハマったらしい。
閑話休題。
……更には、和菓子にも手を出しているらしく、イギリスには無いタイプの──〝あん〟特有の甘さにもハマったらしい。
また閑話休題。
更にハーマイオニーは役割分担をしていく。
「私、〝ニコラス・フラメル〟について調べてみるから、アニーは〝賢者〟で大事そうなものを調べて。……ロンはダンブルドアの交遊関係を浚ってちょうだい」
「了解」
「……判った」
俺とアニーはハーマイオニーの提案を了承する。……しかしアニーの様子がどうにもおかしい。
「……〝賢者〟〝賢者〟〝賢者〟──あ、“賢者の石”とか…? ……まさかね…?」
「それよ!」
何となしに呟かれたであろうアニーの言葉でハーマイオニーが跳ね上がる。
……この時、ふと、アニーの〝原作知識〟こそ封印のスキル…“寝室胎動”で〝封印〟したのだが、〝サブカル知識〟は封印していなかった事を思い出した。
その後、ハーマイオニーに図書館へと連れられたのは云うまでもない。
SIDE END
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