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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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【ハリー・ポッター】編
  158 クリスマス休暇


SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー

俺、アニー、フレッド、ジョージの4人で〝禁じられた廊下〟に行って、フラッフィー(暫定)──あの三頭犬を見なかった事にして数日。

そろそろ帰省したハーマイオニーも戻ってくるだろう頃。……今日も今日とて〝“逆転時計(タイムターナー)”がある、魔法の練習が出来る程度の広さの〝あったりなかったり部屋〟〟に入る直前、ふとアニーが提案してくる。

「……ねぇ、ロン。ウルトラCを思いついたんだけど」

「どうしたんだ?」

「〝“ダイオラマ魔法球”がある部屋〟にしよう。……よくよく考えたら“逆転時計(タイムターナー)”を使い回すより、ずっと効率が良いと思う」

「“ダイオラマ魔法球”──聞くかぎりジオラマの事か?」

「ああ──そういや、ロン──〝真人君〟は300年以上生きてるんだっけか…。……それなら記憶も磨耗するか…」

聞き覚えのない単語(ワード)に、詳しい話をアニーに聞き返す。……するとアニーは納得したかの様に頷く。

「“ダイオラマ魔法球”って云うのはね──」

今回は〝あったりなかったり部屋〟の設定をアニーに頼み、〝倍率24倍の“ダイオラマ魔法球”が置いてある部屋〟にしたので今日からの魔法の訓練の効率が“逆転時計(タイムターナー)”を使ってのそれより、ずっと良くなった。

……その分、身体的な成長(ろうか)が加速されるので、利用は計画的にしなければならないが…。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

試しに入ってみた“ダイオラマ魔法球”。〝あったりなかったり部屋〟はアニーの想像を上手いこと汲んだようで、〝魔法球〟の中には【レーベンスシュルト城】だったか──風光明媚な城があり至極快適だった。

「ぶっちゃけ〝禁じられた廊下〟にケルベロスが居るの、知ってたでしょ──っ」


――“鳥よ(エイビス)”…“襲え(オパグノ)”──“麻痺せよ(ステューピファイ)”


アニーは会話しながらも鳥を襲わせてくる。

「……っと──ぶっちゃければそうなるな…。……正直学年末のテストまでにはあそこに行っておきたかった。……そういう意味に()いてはフレッドとジョージの提案は渡りに舟だった」


――“錯乱せよ(コンファンド)”──“護れ(プロテゴ)”

――“動きよ止まれ(アレスト・モメンタム)”

――“妨害せよ(インペディメンタ)”──“木よ(アーブス)”…“肥大せよ(エンゴージオ)”…“木よ動け(モビリアーブス)”


「む…多いよ…」


――“縮め(レデュシオ)”…“燃えよ(インセンディオ)”


アニーの鳥を〝錯乱〟させ、〝時止め〟を〝妨害〟して──魔法で〝木〟を呼び出し、3メートルくらいまでに〝肥大化〟させてアニーへと〝樹木操作〟で向かわせる。……アニーは文句をいいながらも木を腰元くらいまで〝縮小〟させ、一気に〝燃やす〟。


――“縛れ(インカーセラス)”

――“裂けよ(ディフィンド)”


ロープで〝捕縛〟しようとしてみるもロープはあえなく切り〝裂か〟れる。

「……うし」

〝そこまで〟とばかりに、頷きながら杖を下ろす。……しかしアニーは俺の一挙手一投足を注視したま杖を下ろさない。……その理由は恐らくだが、ちょっと前まで油断したところに〝武装解除〟を撃ち込んだ所為だと思っている。

俺が杖を腰元にマウントしたところで、アニーは漸く杖を下ろす。

「多分これだけ出来れば、スタートダッシュ的な意味合いじゃ大丈夫だろう」

「本当?」

「まぁな。〝無言呪文〟を、ああも連発出来るのは最上級生にもそうそう居ないと思う」

「……これで〝普通の決闘(サシ)〟での戦い方で教えられる事は大体無くなかったな」

「ありがとうございました」

アニーは一礼して、話を変えてくる。……〝三頭犬(フラッフィー)〟の事だろうとあたりをつける。……そして、その予想は当たっていた。

「……ところでさっき話してた〝ケルベロス〟の話に戻るんだけど、あの〝ケルベロス〟の足元には扉があったよね。……あ、そういう事ね。ロンはボクに〝あの扉〟を見せたかったのか」

「Exactly(その通りにございます)──いやはや、アニー相手だと無駄に話を拡げなくていいから気楽だ」

「……で、これは答えなくてくれなくてもいいけど、あの犬が守っている──〝隠したいモノ〟は何?」

意外にも直截(ちょくせつ)そうアニーが()いてくるとは思いもよらなかったので、どこまで話すが迷ってしまう。……ハグリッドを売ることにした。

「それを口頭で答えるのは簡単だが──ちょっとしたゲームにしてみよう」

俺からの提案にアニーは頭上でクエスチョンマークを三つほど踊らせる。……“みぞの鏡”がある以上、クィレルに“賢者の石”を奪取される可能性は〝万に一つ〟程度しかないが、ある程度の情報は開陳する事に。

「さて、問題。この【ホグワーツ魔法魔術学校】で、一番生き物が好きなのは?」

「……それはもちろんルビウス・ハグリッド──え、じゃあもしかしてあの〝ケルベロス〟ってハグリッドの? ……あの〝ケルベロス〟が〝隠したいモノ〟を守っているして──でもあの犬だけじゃ防御が薄すぎる」

(おおぅ…)

〝あーでもない〟〝こーでもない〟──とアニーは次々に〝正解〟への推論を重ねているのを見ながら嘆息。……【ハリー・ポッター】は児童書なのだが〝転生者(イレギュラー)〟が二人も混じっていると、中々にシビアになるのだという事を、アニーから突きつけらる。

……ならびに、【ゼロの使い魔】や【ソードアート・オンライン】の世界で、俺が〝円〟に与えていたのはこんな感覚だったのだと云う事がなんとなく判った。

「……と云うことは、教師も何人か〝防衛〟に参加していて──あの〝扉〟の向こうには他の先生の試練があるのかな…?」

「あるだろうな。……まぁ詳しい話はハグリッドに訊いてみないとだがな」

「いくらハグリッドでも口を滑らせないと思うけどねぇ…」

【レーベンスシュルト城】を囲んでいる海を眺めながら、俺とアニーはお互いに肩を竦めた。

「……もしかしてロンの知識では防衛は──」

「一応成功した。……〝主人公〟が止めた」

「〝主人公〟って確かボクと同じ年で、しかも今のボクよりも魔法の手腕的には劣ってるんだよね? ……そんなのに破られる防衛網──ちょっと(まず)くない?」

「言えてるな」

はは、と、思わず渇いた笑いが漏れる。

「ちなみにロンの所見では、介入はどうするべきだと思う?」

「介入するべきだろうな。……〝それ〟が万が一にも(やっこ)さんに渡ったら、割りとマジで世界がヤバい」

「じゃあ介入しようか」

……ハーマイオニーが戻ってくる前日の事だった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

新学期が始まる当日、ハーマイオニーが戻ってきて1日が経過した。

……皆が皆、クリスマス休暇の話で盛り上がっている最中(さなか)、俺は【ギリシャの怪物たち~バジリスクからセイレーンまで~】、アニーは【多頭種の上手いあしらい方】を読み(ふけ)っていると、そこへハーマイオニーがやって来る。

「アニー、ロン、おはよう。……何の本を読んでるの? 何々──【ギリシャの怪物たち~バジリスクからラミアまで~】…? ロン、貴方、珍しい本を読んでるわね」

「ハーマイオニー、おはよう」

「久しぶり、ハーマイオニー。……ちょっとギリシャ系の生き物で調べたい事があったからな」

「へぇ、そう? ……アニーのは【多頭種の上手いあしらい方】…?」

ハーマイオニーは俺とアニーが読んでいる【ギリシャの怪物たち~バジリスクからラミアまで~】と【多頭種の上手いあしらい方】を見ては〝わけが判らないよ〟とでも言いたげに、俺らの近くの席に腰を掛け並べられているシリアルを自分の皿に取り分けていく。

「……確か課題に、そんなのは無かったわよね…? クリスマス休暇、私の居ない間に何か在ったの…?」

目配せしてくるアニー。恐らくは〝ハーマイオニーを巻き込んでいいかどうか〟だろう。……俺はアニーに頷いてみせると、俺の〝了承〟につられたのか、アニーもまた頷いた。

「あのねハーマイオニー」

………。

……。

…。

一通り三頭犬(ケルベロス)に出会う事となった経緯をハーマイオニーに説明すると、ハーマイオニーは呆れた様な顔で口を開いた。

「……減点は?」

「されてないよ。……便利だよね、“透明マント”」

ハーマイオニーのある意味予想出来ていた疑問にアニーは短く答える。

「ギリギリスリザリンと対抗出来ている現時点から変に減点されたくない私としては、あなた達に規則を破ってもらいたくないのだけど…」

そこまでハーマイオニーは言うと、「ロンが居るから無いとは思うけど、あなた達に〝もしも〟の事があったら嫌なのもあるわ」──と、ぷい、と顔を逸らして続ける。ゴニョゴニョと、くもぐった心配の声だったが、俺とアニーを気に掛けてくれているのが判った。

「……で、これからどうするつもり?」

「そろそろ三頭犬についての情報も集まってきたから、ハグリッドのところに行って、正攻法──真正面から訊いてみるさ」

「……それは別に良いけど、ハグリッドもそうそう口を滑らせるのかな…?」

「……そこら辺は──まぁ、どうにかなると思う。……ハグリッドはまぁ、〝それなり〟におっちょこちょいだからな。……それこそ多分アニーとハーマイオニーが考えている以上にはな」

「そうなると良いけどね」

肩を竦めながら語る俺に呆れながらハーマイオニーは言う。……アニーは俺に勝算が有るのだろうと思ったのか、静観している。……そこで改めてハーマイオニーに訊いてみる。

「……で、ハーマイオニーは一枚噛むのか?」

「……ダンブルドア先生は確か〝今年いっぱいは〝4階の右側の廊下〟に入ってはいけない〟──と仰っていたわね。……訊きたいんだけど、二人は三頭犬の対処法は判った?」

「〝服従の呪文〟とか音楽を聴かせるとかな。……なんなら〝縮小呪文〟でハグリッドのところのファング並に縮めてやって扉を潜ってもいいな」

俺がそう答えるとハーマイオニーは神妙な顔付きで何かを考え始めた。

「……一年生のロンでもいくつもの対処法を思い付いている…。……その〝防衛網〟とやらがハグリッドだけじゃないにしても、少し気になるわね。……私も〝その何か〟について調べるのを参加させてもらってもいいかしら?」

「「もちろん」」

()くしてハーマイオニーも〝少年少女探偵団(仮)〟に入団する事に。……まだまだ寒さが抜けていない──とある朝の出来事である。

SIDE END 
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