FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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イシュガルに舞う
前書き
漫画ではいよいよインベルが動き出しそうですね。
個人的にインベルはめちゃくちゃ強い裏ボスなのではないかと思っています。
やっぱりグレイとやり合うのかな?その辺も期待して待ってよっと。
シリルたちがマルド・ギールを倒す少し前。とあるギルドの戦艦では、独特な容姿の男がギルドのメンバーに指示を出していた。
「メェーン」
青い天馬が保有する魔導爆撃挺クリスティーナ改。その操縦室の中央に立つのは、ギルドのエース、一夜・ヴァンダレイ・寿。
「君たち、状況を報告してくれたまえ」
「一夜さん、浮上OKです」
「前方にも以上ありません、師匠」
「妖精の尻尾からの念話、一時保存しましたよ」
司令塔である一夜にヒビキ、タクト、イヴが答えていく。実は彼らは先ほど、ウォーレンからの念話を受け、フェイス破壊のために動き出したものたちなのである。
「先輩、俺たちどうすれば・・・」
「うむ。その内容を、そのまま通信用魔水晶でありったけのギルドに送信したまえ」
「なるほど!!さすが一夜さん!!」
5㎞四方にしか届かせることのできないウォーレンの念話。おまけに、妖精の尻尾はギルドの爆破により通信用魔水晶も失ってしまった。そんなとき、天馬のクリスティーナから呼び掛ければと思いつき、彼らに助けを求めたのである。
「そして通信の最後にこう付け加えるのだ。大陸の荒廃、この一戦にありと。これより!!我ら青い天馬は、フェイス破壊に向かう!!」
「「「「「オウッ!!」」」」」
できるだけ多くのギルドにこの非常事態を伝えていく青い天馬の面々。そして、彼らは大陸の魔力消滅を防ぐため、その場所から一番近いフェイスへと向かったのであった。
「一体・・・あれは何なんだ!?」
「でけぇ!!」
「何かの顔・・・か?」
地面から人の何倍もの大きさのフェイスが出現したとあって、街の住民たちは混乱している。その人混みの中を、数人の女性たちが駆け抜け、彼らの視線の先にある白き遺産へと向かう。
「このデッカイのがフェイスなの?カグラちゃん」
「ちょっと多すぎじゃない!?」
フェイスの足下に集結したのは、フィオーレ有数の剣士としてその名を世に知らしめるカグラ率いる人魚の踵。その中で、フェイスを見上げているミリアーナとソフィアがそう言う。
「あれが魔力を消滅させるなんて・・・」
「今は考えるより動くのが先だ。なんとしてもフェイスを破壊する」
慌て気味のミリアーナとは正反対に、普段と全く変わらない冷静な雰囲気のカグラ。彼女の頭の中には、目の前の兵器を破壊すること以外何もない。
「破壊するっていったって・・・」
「かなり大きいし、めっちゃいっぱいあるじゃん!!」
「考えるな、行動あるのみだ」
「うん!!」
「それとソフィアは手を離せ」
「はい・・・」
弱気なミリアーナとソフィアに渇を入れるカグラ。ついでに、何気なく胸を触ってきた少女の手を捻り、お楽しみを阻止された銀髪の少女は、しょんぼりと項垂れていた。
「参るぞ!!」
「「「「「オウッ!!」」」」」
カグラを中心にフェイスへと突撃する人魚たち。しかし、その攻撃は白き遺産を破壊するに至ることはなかった。
カグラたちがフェイスへと挑むのと時を同じくして、聖十大魔道を擁するこのギルドも、一機のフェイスの元へと集まっていた。
タッタッタッタッタッ
腕を組み、巨大な兵器を見据えている氷の魔導士とその仲間であるメンバーたち。その元に、軽快な足取りでやってくる少女と少年の姿を見て、オーバ・ババサーマが口を開く。
「街の人たちの避難、終わったようだね」
「しかし、おぞましい光景だ」
街の至るところにその姿を現した魔導パルス爆弾。それの破壊に伴い、残骸等の直撃を避けるため、マーガレットの街に住む人たちは、安全な場所へと避難していた。
「こんなでかいもん、俺一人でどうしろって言うんだよ!!」
「キレんなよ。お前一人なんて誰もいってねぇし」
何やら勘違いをしているトビーにユウカが冷静に突っ込む。その姿に、そんな状況じゃないとはわかっているものの、ラウルが失笑していたのは仕方がないことなのかもしれない。
「デカイからってビビってんじゃないよ!!回すよ」
「回すならフェイス回してよ、オババ様」
「レオンそういうのいいから」
若干冷静さを欠いているトビーに怒った様子のオーバがそう言う。そんな彼女にレオンがしれっとケンカを売ってみるが、シェリアに一蹴されたので意識をフェイスへと戻す。
「下がっていろ、俺がやる」
蛇姫の鱗のエースであるリオンが両手を合わせ、魔力を高めていく。
「待て!!」
しかし、後ろから威厳を感じるほどの力強い声が聞こえ、彼は魔法の体勢を解除し、そちらへと視線を向ける。
「一夜殿の知らせによれば、その数は無数。一機のみに時間はかけられん!!急ぐのだ!!」
「はい!!」
大陸全土にそびえ立つ三千機のフェイス。一人一人時間をかけて試しながら攻撃している暇はないとジュラが指摘し、全員がその意見に賛同する。
「聖十大魔道の名にかけて、魔力の消滅などさせはせぬ。皆で一斉に行くぞ!!」
ジュラの声を聞き、一斉に魔力を限界まで高めていく蛇姫の鱗の魔導士たち。
「みんな!!気合いを入れろ!!」
リオンのその声と共に、魔導士たちはフェイスへと一斉に飛びかかった。
ドゴォンッ
次々にフェイスに攻撃が当たり、周囲に爆音が響き渡る。
「ドリルンロックフォーユー!!」
「プラントマジック!!」
「ウオオオオオオッ」
手数で至るところに立っているフェイスに攻撃を加えているのはワイルドさが売りの男たち、四つ首の番犬。
「魔力が消えちゃ、酒も不味くて飲めやしねぇ!!野郎共いくぜ!!酔・劈掛掌!!」
「「「「「ワイルド!?フォー!!」」」」」
熱い男たちの魂の攻撃。その力は凄まじいものだったが、圧倒的強度を誇るフェイスには、傷一つついていなかった。
「クソッ!!一筋縄ではいかねぇってか!!」
悔しさを滲み出させるバッカス。その場にいる番犬たちも、フェイスのあまりの頑丈さに動揺を隠しきれなかった。
ジエンマを撃破し過去の自分たちとの決別を果たした三大竜が所属する剣咬の虎がある街。そこでは、ルーファスとオルガ、ユキノといった主力メンバーを筆頭に、ギルド全員がフェイスの元へと走っていた。
「お願いします!!」
「任せてくれ」
フェイスの元へとたどり着き、その正面で停止したルーファス。彼は目の前の破壊すべきものを見据えると、額に指を当てる。
「記憶造形・・・荒ブル風牙ノ社!!」
腕を振るい、無数の竜巻を発生させるルーファス。その彼に続こうと、巨体を持った男が黒き雷を両手に集めていく。
「雷神の荷電粒子砲。うおらぁぁぁ!!」
雄叫びと共に打ち出された雷撃。それは、ルーファスの魔法と混じり合いフェイスに激突する。しかし、実力者二人の攻撃も、フェイスの前では無力と変わらなかった。
「びくともしないな」
「諦めないでください!!もう一度!!」
次々と攻撃を繰り出し、フェイスを破壊しようと奮闘する魔導士たち。他にも、青い天馬から連絡を受けたギルドの面々が次々にフェイスへと挑んでいく。しかし、誰一人としてその脅威の兵器を破壊するどころか、傷をつけることすらできていなかった。この男を除いては。
シェリアside
ドンッ
耳を塞ぎたくなるほどの大きな音と同時に、真っ白な顔を持った塔が崩れ落ちる。残骸となって落ちてくるフェイスの真下にいる金髪の少年を守ろうと、ジュラさんやリオンが魔法を繰り出す。
「いいぞ、レオン」
「あぁ・・・うん・・・」
よほど疲労しているのか、膝に手をついて肩を上下に動かし呼吸しているレオンにリオンが声をかける。少年は答えるのもやっとのようで、返事が適当になっているのは誰から見ても明らかだった。
「レオン!!まだいける?」
「行かなきゃダメなんだろ?」
翼を出して少年を次の場所へと連れていこうとするラウル。実は今、フェイスはレオンただ一人で破壊している状態になってるの。
最初の一機を幸先よく一撃で破壊したあたしたち。その後も順調に破壊してたんだけど、ある時気付いてしまったの。
全員で同時に攻撃していたはずなのに、一度だけタイミングが合わずレオンが先に一人で魔法をぶつけてしまった時、たった一人の攻撃でフェイスが崩れ落ちた。それを見てみんな気付いた。「俺たち意味なかったんじゃね?」と。
案の定あたしたちの攻撃は少しも役に立ってなかった。本当はレオンが一人で壊して一人で何とかしていただけだった。役に立っていないと思い込んだあたしたち。だけど、フェイスを破壊するということは、当然その瓦礫が地上に降ってくることになる。
それを避けるのは体力を大きく消耗するし、避けきれなければけがをしてしまう。そう思ったあたしたちは、フェイスの破壊はレオンに任せ、全力で彼が万全の状態でいられ続けるようにとサポートをすることにした。歯痒いけど、今はこれが一番理想の形だから、仕方ないよね。
「シェリア!!俺たちも行くぞ!!」
「あ!!うん!!」
ボーッとしていると、すでにみんな次の場所に向かっていたみたいで、リオンに呼ばれる。みんなの後をついていく時、先頭で同じくらいの背の丈の少年に運ばれる彼を見て、少し落ち込む。
小さい頃はあたしの方が強かったのに、今では手も届かないところにいってしまった少年。羨ましい気持ちもあるけど、何よりも悔しいと言う気持ちが先を行く。
「レオン!!」
「おい!!大丈夫か!?」
そんなことを考えていると、目の前が騒がしくなる。次のフェイスの元へとたどり着いた蛇姫の鱗。そこで降ろされたレオンが、突然倒れてしまったらしい。たぶん、一人でもう20機は破壊してたから、疲労が蓄積してたのかも。
「シェリア!!頼む!!」
「OK!!」
そうなった時に役に立つのはあたし!!自己回復の時は体力の回復はできないけど、他人を治癒する時は体力を回復させることもできるんだよねぇ。
「大丈夫?レオン」
「こんなことならちゃんと鍛えておくべきだったわ」
二年のブランクや一年の造形魔法の修得で体力面をほとんど鍛えられてないレオン。普段は対して本気を出さないから気にならないけど、今は全力投球・・・さすがに体力的に、厳しいところがあるのかもしれない。
「終わったよ、レオン」
「サンキューシェリア」
体力を戻し終えて彼から離れようとするあたし。でも、そんなあたしの手を後ろから少年が握り、引き寄せる。
「え?」
驚いて思わず振り返るあたし。すると、不意に体を引き寄せられ、ギュッと強く抱き締められる。
「「「「「!?」」」」」
彼が何をしているのかわからず目が点になっているリオンたち。だけど、レオンはそんなことなど気にすることなく、あたしを抱いている。
「ちょっ!!レオン!?/////」
大好きな彼に抱き寄せられ、嬉しい反面恥ずかしくて顔を真っ赤にしている。まさかこれ・・・無事に終わったら結婚しようとか“愛”の告白なんじゃ・・・
「柔らかくて落ち着く・・・マシュマロみたいだ」
「セクハラ!!」
「フギャッ!!」
彼の発言に怒って拳を顔に押し込む。レオンはお菓子が大好き。チョコバナナや飴などを常に食わえているけど、マシュマロやわたあめになるとその感触が好きで、手でよく触ってることがある。
今あたしのことを見て、なぜかマシュマロを思い出したらしくて、その感触が味わいたかったのか、抱きつくと言う行動に出たらしい。
「もう!!早くフェイス壊しなよ!!」
「うん、了解」
とりあえず元気が出たのか、いつも通りの様子でフェイスへと歩いていくレオン。彼が背を向けたところで、みんなからは見えないようにお腹をつまんでみる。
「ダイエットした方がいいのかな?」
最近成長期なのかご飯が美味しくて、ついつい食べ過ぎてしまう。レオンにマシュマロみたいなんて言われたら、なんか悔しい。なんであの子はいくら食べても太らないのかな?
「シェリア痩せたらなくなっちゃうよ?」
「ありがと、ラウル」
いつの間にか猫の姿に戻っているラウルがそう言ってくれて、嬉しくて彼の頭を撫でる。ラウルは優しいなぁ、レオンもこれくらい優しいといいのに。
「おまけに鈍感だし」
そう言ってオレンジの猫を抱き締め想い人に視線を送る。あたしの気持ちにちっとも気付かない天才児は、気合いを入れ、フェイスをまたも打ち砕いていた。
シリルside
悪魔から人間の姿へとなって地上に落下するマルド・ギール。それを見て俺とグレイさんは、半身の悪魔化とドラゴンフォースを解除する。
「やったな・・・」
「終わりましたね」
「いや・・・まだだ。ENDを破壊しなきゃ俺は・・・」
地面に倒れたまま達成感に浸っているナツさん。俺もようやく終わったと思っていたが、グレイさんにそう言われ大事なことを思い出した。
「そうだった。あの本、取ってこいってイグニールに言われたんだった」
傷だらけの体に力を入れ、なんとかかんとか立ち上がるナツさん。彼の視線の先には、一冊の本を持ったグレイさんが立っている。
「悪いが破壊する」
「ふざけんなよ、てめぇ」
「ふざけてんのはどっちだよ。こいつが冥府の門を作った。そして、ゼレフ書の悪魔の頂点にいる奴だ。破壊できるうちに破壊しておくべきだろ」
お父さんの依頼で本を取ってこいと言われたナツさん。対してグレイさんも、お父さんの意志を継ぎ、ENDを倒すと誓った以上、引くわけには行かないといった感じらしい。
「イグニールと約束したんだ。その本をよこせ」
「断る」
互いに譲ることのできない想い。二人はすぐにでもケンカを始めそうな勢いで睨み合っていたため、間に入ってそれを止めようと考える。
「ふ・・・二人とも落ち着きましょうよ!!そんなことで揉めてちゃ――――」
そこまで言うと、突然大地が震動し始めたことに気付き、驚いて言葉を止める。
「なんだ?これは」
「地震?」
「いや・・・まさか・・・フェイス?」
最初のフェイス発動の直前にも似たような震動があった。これはもしかしたら、それと同じで、新たなフェイスが発動しようとしている前触れなのかもしれない。
第三者side
「きゃっ!!」
「ルーシィ!!」
突然足がおぼつかなくなり、倒れるルーシィ。前を行くリサーナが声をかけるが、金髪の少女はなかなか起き上がれずにいる。
「なんか・・・力が抜けて・・・」
異変が襲ってきたのはルーシィだけではない。ジェットやウォーレン、ドロイ、エルフマンといった面々も、体から妙に力が抜けて行く現象に襲われていた。
ポフンッ
「きゃっ!!」
その中で一番の被害を被っているのは、彼女なのかもしれない。冥府の門に捕らえられていたリサーナは、服の代わりにアニマルソウルを使っていたのだが、魔力が失われつつあることで、それが解け始めているのだ。
「ちょっ!!やだ!!アニマルソウルが解けたら私・・・」
「ええっと・・・」
あられもない彼女の姿に目を点にしているルーシィ。なんとか体を隠しているリサーナたちをマジマジと見ているウォーレンたちを、エルフマンが一掃しているのは言うまでもなかった。
「これ着てろ、みっともねぇ」
「あ・・・ありがとう・・・」
そんな彼女を見かねたカミューニが着ていた上着を彼女へと渡す。
「そっちは?」
「全然ダメ・・・起き上がれない・・・」
倒れたままのルーシィに声をかける。ルーシィは彼にそう答えるだけで、いっこうに立ち上がることができずにいた。
「エーテルナノが薄くなってる。これがフェイス発動の・・・」
ドランバルトが漂う空気の変化を感じ取りそう言う。間に合わなかったことにガックリと来ているシャルルとセシリーは、浮かない顔をしていた。
「この感じ・・・」
そんな中、天空の巫女だけは、遠くを見つめ、他のものとは違う何かを感じ取っていた。
「これは、まだ始まりにすぎん」
地面に仰向けになっているマルド・ギール。不意に口を開いた彼の方に、シリルたちは耳を傾ける。
「魔法の消滅は、やがて無のエネルギーとなりENDが復活する。最強のエーテリアスが復活する時、人間には魔法という抗う術がなくなっている」
悔しさに顔を歪ませる魔導士たち。その表情を見て、戦いに敗北した冥府の王は、勝ち誇ったように笑みを浮かべていた。
「ちくしょおー!!!!」
悔しさを爆発させるナツ。その時、上空から二頭のドラゴンが、彼らの前へと落下してきた。
「何!?」
「アクノロギア!?」
その音に驚き全員がそちらを向く。そこには、アクノロギアを押さえつける炎の竜がおり、天を見上げその大きな口を開いた。
「諦めるな、人間たちよ」
「くっ・・・」
膝をつき、四つん這いになる金色の髪の少年。彼は白き巨塔を前に力尽き、立ち上がることすらできずにいる。
「レオン!!あぅ!!」
彼の元に駆け寄ろうとしたシェリア。しかし、彼女もまた、体に力が入らず、その場に倒れてしまう。
「どうなっているんだ、これは」
「体に力が入らねぇよ!!」
「そうは見えねぇぞ」
魔法が使えなくなったことにリオンとトビー、ユウカが動揺する。彼らの後ろにいるギルドのメンバーも、同様だった。
「無念・・・」
「間に合わなかったなんて・・・」
強い力を持っていながら、何もできなかったことに悔しさを覚え、顔をうつむけるジュラ。彼の隣にいるラウルも、翼が消え、地面に転落しながらそう言う。
「詰み・・・か」
絶大な力を持ちながら、目の前の障壁を越えられなかった自分に腹をたて、体をワナワナと震わせる氷の神。皆が諦め、絶望していたその時、一つの声が耳に届く。
『どけ』
「「「「「!?」」」」」
どこから聞こえてきたのかわからず、周囲を見回す蛇姫。その彼らの目の前にそびえ立つフェイスに、音速を凌駕する勢いで、巨大な影が突っ込んでいく。
ドゴォンッ
「「「「「!!!!????」」」」」
それは一瞬の出来事だった。巨大なそれがフェイスに直撃したかと思った瞬間、目の前に立っていた白き遺産は、まるでゴミのように崩れ落ち、地上に降り注いでいた。
「何!?今の!?」
「?・・・??」
姿を確認することすらできなかった巨体に、シェリアが驚き、レオンが何度も首をかしげる。彼らの目の前を通りすぎた水色のそれは、次々に周囲を点々としているフェイスを、体当たりで破壊していた。
「ヴァッサボーネ?」
空を見上げ、小さく呟く水竜。彼の友であるレオンたちの前を飛び去ったのは、少年の育ての親であるヴァッサボーネだったのだ。
「グランディーネ?」
それと時を同じくして、ある感覚を覚えていたウェンディ。彼女か覚えていた感覚とは、大好きな母がフェイスを破壊するために空を飛び回るというものだったのだ。
「メタリカーナ」
「死んだはずの、バイスロギアの気配を感じる」
「なんでハルジールがいるんだ・・・」
「スキアドラムもいるのか?」
ドラゴンに魔法を教えられた魔導士たちは、皆同じ感覚を覚えていた。自分を育て、777年7月7日に姿を消した彼ら。それなのに、今日この時、ずっと会いたかったその存在の気配を感じることができたのである。
「解放されしドラゴンが、イシュガルの空を舞っておる」
滅竜魔導士たちの体内から現れ、三千機ものフェイスを瞬く間に破壊していくドラゴン。
「こんな奇跡・・・」
「すごい・・・」
信じられないような出来事に口元を押さえる天竜と水竜。上空を舞う親の姿を見た彼女たちは、感動し、涙を浮かべていたのであった。
後書き
いかがだったでしょうか。
安定のレオンのチートに、ヴァッサボーネがやって来る。これは書いてる最中に思い付いて、勢いのままにやっちゃいました。
てかこの話書いてて、もう全部お前だけでいいんじゃないかな?って思ってしまった(笑)自分がやってるのに。
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