提督がワンピースの世界に着任しました
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第15話 オハラの学者達
自分の事や艦娘達の事を調べるためにやって来た、オハラという島にある図書館。
世界中から文献資料が集められて保管されているというこの場所は、過去の事なら分からない事は無いと言われている程。
ここに来れば、神威鎮守府や人食い島の事について何か知れるのではないか、と期待して来てみると、いきなり図書館長に出迎えられて対応してもらうことになった。
クローバーと名乗ったその老人は、後頭部には羽根のように広げられた白い髪をしていて、頭頂部は刈り上げたように短くなっているという特徴的な髪型をしている。けれど、出迎えてくれた言葉と、柔和な表情で対応してくれたので、最初は好々爺然とした印象を受けた。
けれど注意深くその老人を見直してみると、俺達を観察する目の奥から何かを隠している雰囲気が読み取れて、老人といえども油断してはいけないというような俺の直感が働いた。
クローバーさんの歓迎の言葉に、俺はすぐさま失礼にならないように自己紹介を済ませてから、俺達の図書館への訪問の目的を簡単に伝えた。すると、クローバーさんの目が次の瞬間には一転して、とても興味深いというようなキラキラとした輝きが宿っていた。
それから、長い話になりそうだからと言いながら興味津々という感じて、図書館の奥に案内してもらい、そこで話し合いが行われる事になった。
***
「あそこに集まって議論を戦わせているのが、歴史学者のチーム。彼らはとても優秀で、過去の資料から色々と討論や研究を進めているが、今までに色々な歴史的発見をしておるんじゃ」
話し合いを行うための場所に向かう途中途中で、クローバーさんに図書館の中を色々と案内をしてもらいながら歩いていた。
先ほどクローバーさんが指し示した先には、Tシャツにジーンズや、アロハシャツに短パン、ビーチサンダルといったような様々にラフな格好をした2、30人ぐらいの老若男女がテーブルを囲んで話し合いをしていた。彼らが歴史を研究しているという学者たちなのだろうか。
多分、この図書館以外の場所で彼らを見たら、歴史の専門家で有ることは見抜けないだろうと思ってしまうような風体だった。
少し離れた場所を歩いていた俺の耳には、大声で討論しているのが確かに聞こえてきて来ていたけれど、彼らが話している内容については不可解であった。
「で、あっちに居るのが図書館に集められた資料を整理してくれている司書達じゃ。彼らのおかげで、図書館の中はいつも綺麗に過ごせておる」
歴史学者達が居る方向とは逆を指差すクローバーさん。その先には、歴史学者チームの雰囲気とは真逆というような、黒のスーツにキッチリと身を包んでいて、音を立てず静かにキビキビと動いている人達が居た。ルールや、秩序を必要以上に重んじるようなお堅い性格なのだろうと感じさせる様子があった。
「もう一つ、この図書館には考古学者のチームもあるんじゃが、今はこの図書館には居ないんじゃ。彼らはしばらく前に海に出て、遺産がある場所を巡っておる。彼らも考古学者として非常に優秀で、しばらくすれば彼らの手によって世界の謎がまた一つ解明されるじゃろう」
優秀な人達が集められて、歴史について日々いろいろな事を研究している施設だということが理解できた。ココならば、自分たちの情報の手がかりに期待できるかもしれない。
***
「さて、早速だがお主が名乗った大日本帝国という国について、そして人食い島について話を聞かせてもらえますかな?」
図書館の会議室に案内されて、クローバーさんに、俺、そして艦娘達4人全員がテーブルの席に座った瞬間だった。
クローバーさんは席に着くなり、早速本題に入って俺に話すように促してきた。かなり興味を持たれているようだったが、どこまで俺達の事を話すべきか、どう話しを進めて信用してもらい自分たちの調査に協力してもらえるか、慎重に考慮しながら俺は話しを始めた。
「まず、我々がどこからやって来たのかを話します」
そう前置きして、俺達が人食い島と呼ばれいてる島から来た事、今現在も人食い島と呼ばれているあの場所を拠点にして、生活しているという事を話した。俺の話に、クローバーさんは途中で相槌を入れながら真剣に聞いてくれていた。
「わしの知っている限りでは、あの人食い島と呼ばれている島に上陸して戻ってきた人間は過去に居ないはず。いくら過去の資料を遡って調べてみても、記録が残っていないから、あの島のことを知る糸口すら掴めない、謎のひとつだったんじゃ」
「そうなんですか」
クローバーさんの言葉によって、一つ希望が潰えた感じだった。その風貌から、豊富な知識を有していそうなクローバーさん、そして世界中から集まってきているという資料にもあるのに、過去のあの島の内部について一切の情報が残っていないらしい。
更に、クローバーさんは続けた。
「わしは、かつて考古学者として世界を巡ったことも有ってな。グラントラインにも入って航海した経験のある学者じゃ」
「グランドラインにですか。それはすごい」
「それで、考古学者としてわしが駆け出しの頃じゃった。人食い島について調べようとした事があってな。実際に現地調査しようと思って、島に近づいて行ったことがあった」
「それで?」
「それがじゃな、島に近づくにつれて原因の分からない不安がわしを襲ってきてのう。最初は気のせいだと思っていて、何としても謎を解決しようと人食い島を目視できる所まで行ったのじゃ。だが、段々と大きくなっていく原因不明な不安が遂に、この島に降りたら死んでしまうというような思考になって、わしは音を上げてしまった。すぐに人食い島に上陸するのをやめて、引き返してしまったんじゃ」
クローバーさんは、過去に人食い島について調べたことが有って、しかも島に上陸して調べようとした事もあるという。だが、結局めぼしい情報は手に入れることができず断念してしまったようだった。
しかし、島に近づくだけで不安な気持ちが湧いてくるというのは初めて聞いたし、何故そんな事になるのか原因もわからないので、かなり気味が悪い。俺達は、あの島で過ごしていて原因不明で気分が不安定になることなんて無かった。
「人食い島と呼ばれているあの島は、今のところ私たちには何の不都合も起きていないです。もし宜しければ、今のあの島に来てみて調べてみませんか?」
「おぉ、それは是非ともお願いしたい」
よく考えてみたら、俺や艦娘達があの島で平気に過ごせているのは違う世界の人間だからなのかもしれない、と思い至った。
それから、過去に島に近づくだけで不安な気持ちが湧いてきたという経験をしているクローバーさんが、今あの島に近づくいったとしたらどうなってしまうのか。当時と変わらず、同じように不安な気持ちが湧いてくるのかという検証をしてみたくなった。
そうクローバーさんに提案してみると、すぐさま了承するという答えが返ってきた。これで、あの島の謎を少しでも解析して、少しでも安全であることを確認できれば良いのだが……。
話し合いは次に、「大日本帝国」について移っていった。
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