Three Roses
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第五話 ロートリンゲン家その十
「王国が滅びても帝国は敵がいます」
「即ちそれは」
「新教でして」
そしてというのだ。
「そして我が国も」
「我が国自体も」
「王国の次の敵となりますので」
それ故にというのだ。
「王国は滅ぼすべきではありません」
「滅ぼせる状況でも」
「それはなりません、帝国もそう考えているでしょう」
「だからこその婚姻ですか」
「ロートリンゲン家との縁戚は結んでも」
大公はさらに言った。
「取り込まれてはなりません」
「帝国も王国を滅ぼしたくないですが」
「王国が滅べば我が国となるのはわかっているのです」
帝国の敵もというのだ。
「そのことも頭にあり」
「我が国と婚姻を結ぶのですか」
「そうです、あの国は戦いは好みません」
いいか悪いかは別にしてというのだ。
「あの国が武力に訴えるのは最後の最後です」
「まずは、ですね」
「婚姻ですね」
「そうです、あの国はです」
まさにというのだ。
「そうした家なので」
「取り込まれないことはですね」
「注意していきましょう」
「わかりました」
王は叔父である大公の言葉に頷いた、そうしてだった。
この国のあり方を真剣に考えそのうえで大公の補佐を受けて政治を進めていった、それをマリー達が助けていっていた。
王の政治は善政と言ってよかった、新教と旧教は融和し農民や市民は泰平を謳歌しその権利を保障され拡大されていっていった。
貴族達も落ち着いた時代の中で俸禄を貰い領地からそちらに富を移そうとしていた、国は新しい時代に入ろうとしていた。
しかしその中でだ、マイラは司教に言われていた。
「今の状況はです」
「我が国のですね」
「決していいものではありません」
「旧教が抑えられていますね」
「はい」
司教はマイラに確かな声で答えた。
「ですから」
「新教の下に政治が行われていますが」
「これ自体がです」
そもそもというのだ。
「あってはならないことですから」
「それは正すべきですね」
「左様です、しかし」
「はい、これよりです」
マイラは微笑んだ、見れば彼女は婚礼の服に身を包んでいる。これから式に赴こうとしているのは明らかだ。
「私は夫を迎えますね」
「そうです、ロートリンゲン家の方を」
まさにこの者をというのだ。
「お迎えします」
「そうですね」
「マイラ様にとってこの上ない助けとなります」
「ロートリンゲン家ですか」
「そして法皇庁です」
旧教の総本山もというのだ。
「即ち教会も」
「それでは」
「はい、マイラ様はです」
彼女はまさにというのだ。
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