英雄伝説~光と闇の軌跡~(零篇)
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第74話
~月の僧院~
「ふう、やっと着いたか。しかし、前に来た時と比べるとやたらと薄暗い感じだな………」
「ええ………前に来た時はこんなモヤは出てなかったのに。」
件の遺跡に到着したロイドは遺跡から感じる気配に驚き、エリィは身体を震わせていた。
「「「……………………………」」」
一方セティ、エリナ、エルファティシアは警戒した様子で遺跡を見つめていた。
「で、この遺跡の中に幽霊が出るってわけだな?」
「ええ………幽霊というか得体の知れない魔獣ですけど。ティオちゃん………何か感じる?」
ランディに尋ねられたノエルは頷いた後ティオに尋ねた。
「………………………何か不思議な波動のようなものを感じます。ただの空気振動……?………それとも霊的なもの………?」
「不思議な波動………?」
ティオが呟いた言葉を聞いたノエルは不思議そうな表情をした。
「ええ、前に来た時には感じなかったんですけど……どうやら屋上に見えている鐘のあたりから感じられます。」
ティオの言葉を聞いたロイド達は遺跡の屋上にある鐘を見つめた。
「そういえば………この遺跡も、星見の塔みたいに屋上に鐘楼があるみたいね………」
「ああ、そうみたいだな。クロスベルの中央広場にあるのと同じような鐘みたいだけど………」
「ふむ………なんか関係あんのかねぇ。」
「……………………………今回は、一通り内部を探索するのが目的ですが………とりあえずの目標地点としてあの鐘楼まで行ってみませんか?ティオちゃんの言ってたことも確認してみたいですし。」
「ああ、異存はないよ。それじゃあ……さっそく中に入るとしようか。」
ノエルの提案に頷いたロイドは仲間達に言った。
「ふう………わかったわ。」
「了解です。」
「そんじゃま、幽霊ってのにご対面といますかね。」
「霊体か不死者か~………不死者はともかく、霊体は戦ったら面倒な相手なんだよね~。」
ロイドの言葉にエリィは溜息を吐いて頷き、ティオとランディは頷き、シャマーラは嫌そうな表情で呟いた。
「だ、だから幽霊じゃなくて得体の知れない魔獣だってば!ね、ねえノエルさん!?」
一方ランディとシャマーラの言葉を聞いたエリィは慌てた様子でノエルに尋ね
「え、ええまあ………」
尋ねられたノエルは苦笑しながら答えた。
「………残念ですが………どうやら本物の幽霊と対面しなければいけないようです。」
するとその時セティが真剣な表情で言った。
「ええっ!?」
「………どういう事だ?」
セティの言葉を聞いたエリィは驚いた後表情を青褪めさせ、ロイドは真剣な表情で尋ねた。
「その遺跡から霊体や不死者の気配が強く感じるわ。………間違いなくいるわね。」
「エ、エルファティシアさん。こんな時に冗談はや、止めて下さいよ………」
エルファティシアの言葉を聞いたエリィは身体を震わせながら言ったが
「………申し訳ありませんが本当の事です。天使の血を引く私はそういう気配―――”魔”や”死者”の気配を感じやすいですし、エルフ族の血を引くセティ姉様やエルフのエルファティシアさんも”魔”や”死者”の気配を感じやすいんです。なんでしたらメヒーシャさんにも聞いてみたらどうですか?」
「…………(メ、メヒーシャ!どうなの!?)……………」
「………(ルファ姉、エリナの言っている事は本当なのか?)…………」
エリナの言葉を聞いた表情を青褪めさせながらメヒーシャに念話を送り、さらにロイドもルファディエルに念話を送った。
(間違いなくいるぞ。それも一体や二体どころか多くの死者の気配を感じるな。)
(エリナの言う通り、その遺跡からはとてつもない数の死者の気配を感じるわ。………後は”魔”の気配も感じるわね。)
「……………………」
「(そうか……………)………ルファ姉もエリナと同じ答えで、その遺跡に幽霊の気配を感じるって言ってた。」
そしてエリィはメヒーシャの答えを聞いて固まり、ロイドは真剣な表情で仲間達に伝えた。
「………天使のルファディエル姐さん達が言うなら本当のようだな………問題は幽霊に武器が通じるのかどうかだな。」
「あたしが警備隊と入った時はサブマシンガンやグレネード、勿論スタンハルバードも効きませんでした………ただ、何故か必殺技は効いたんです。」
ロイドの言葉を聞いたランディは考え込み、ノエルは疲れた表情で説明した後、不思議そうな表情で説明を続けた。
「霊体には物理攻撃は効かないからね~。攻撃を通すにはあたしやエリナ、セティ姉さんが持っているような武器―――魔力や闘気がこもった武器でないと無理だよ。」
「―――となると武器での攻撃を主とする方々は必然と必殺技でなければ攻撃は通さないという事ですね。」
そしてシャマーラの説明を聞いたティオは静かな表情で言い
「後は霊体や不死者は総じて光と炎の魔術を弱点とし、逆に暗黒の魔術には強い耐性を持っているわ。こちらの世界の属性でいうと光は空、暗黒は時だから、時属性のアーツは止めた方がいいわ。」
「………なるほど、わかった。エリィ、今ならまだ間に合うけど………」
シャマーラ達の説明を聞いて頷いたロイドは表情を青褪めさせているエリィに視線を向けて言ったが
「し、心配は無用よ!私は光の魔術を使えるんだし、それにゆ、幽霊が弱点としている存在のメヒーシャだっているんだから大丈夫よ!」
エリィは身体を震わせ、表情を引き攣らせながら言った。
(そんなに怖いんだったら無理しなきゃいいのに………)
そしてエリィの様子を見たロイドは苦笑していた。その後ロイド達は遺跡の中に入り、礼拝堂らしき場所に到着した。
「ここは………」
「ど、どうやら礼拝堂みたいだけど………」
「………古い記録によると中世の僧院跡みたいですね。―――”月の僧院”。あの”星見の塔”や古戦場の奥にある城砦と同時代のものらしいですけど。」
「ということは………500年くらい前の遺跡ね。激しい戦乱の時代でもあった頃だけど………」
ノエルの説明を聞いたエリィが考え込んだその時、鐘の音が聞こえ始めた!
「こ、これは………」
「鐘の音……!?」
「………!来ます………!」
鐘の音に驚いているロイド達に何かに気付いたティオは警告した。するとロイド達の目の前に数体のローブを身に纏い、全身が骸骨になっている幽霊らしき存在や人の顔らしき部分を無数に付けた巨大な何かの塊が現れた!
「なっ………!?」
「キャアアアアアッ!ぼ、亡霊………!?」
目の前に現れた謎の敵達を見たロイドは驚き、エリィは悲鳴を上げた後信じられない表情で見つめ
「やっぱり出た………!」
「なっ………”死魂霊”!?」
「それに”魂の狩人”もいるわ!全員、気を付けなさい!」
「ビビッてるヒマはねえ!来るぞ!」
ノエルは声を上げ、セティは驚き、エルファティシアとランディは警告した。そしてロイド達は戦闘を開始した!
「せい、や、はっ!……なっ!?」
「チッ!やっぱり攻撃がすり抜けるぜ!」
亡霊達にトンファーやスタンハルバードで攻撃したロイドとランディは攻撃がすり抜けた事に驚いたり、舌打ちをした。
「オオオオオ………」
一方亡霊達は魔術―――闇弾を放ち
「この………!」
ノエルはサブマシンガンを連射して撃ち落し
「分析を開始します……………弱点属性は空!地属性は10%を下回り、時を除いた他の属性も100%を下回っています!時属性に関しては吸収となっているので絶対に時属性で攻撃しないで下さい!さらに物理攻撃は一切通しません!武器で攻撃する際は魔力や闘気が籠った武器で攻撃するか、必殺技で攻撃してください!エニグマ駆動………」
(ロイド、私が授けたその銃なら幽霊に効くわ!)
ティオはクラフト―――アナライザーを使った後ロイド達に助言し、ルファディエルは念話でロイドに助言した。
「(わかった!)………喰らえっ!」
助言を聞いたロイドはトンファーを仕舞って、双聖銃を構えて攻撃した。するとロイドが放った光の銃弾を受けた亡霊達はダメージを受けたかのように怯んだ。
「フルブラッシュ!!」
「はぁぁ………サラマンダー!!」
さらにシャマーラとランディは衝撃波を敵達に向けて放った!衝撃波を受けた敵達だったがあまりダメージは受けた様子はなくロイド達に襲い掛かった!
「クッ………」
「チッ!」
「っと!」
攻撃に気付いたロイド達はそれぞれ回避し
「光よ………我が槍に集え!天流槍!!」
エリナは槍から光の魔力を宿した衝撃波を放つクラフト―――天流槍を放った!すると1体の亡霊は光の衝撃波を受けて不気味な光を放ちながら消滅し
「エニグマ駆動!ダークマター!!」
「光よ!光霞!!」
「光の精霊よ、力を!槌の光霞!!」
「オオオオ………」
ティオとエリィ、セティが放った弱点のアーツや魔術を受けて嘆くような声をあげながら先に消滅した亡霊のように光を放ちながら消滅した。
「オオオオ―――!」
しかし”魂の狩人”だけは生き残っており、ロイド達に突進して攻撃して来た!
「クッ!?」
「チッ、まだ生き残っていやがったか!」
「”魂の狩人”は霊体の塊だからね!中々倒れないよ!」
敵の攻撃をロイドとランディは表情を歪めながら回避し、シャマーラは説明しながら回避をしていた。するとその時
「オオオオオ――――――!!」
「グッ!?」
「クソ………身体が……!」
「動かない………!」
”魂の狩人”は呪いを込めた叫びで一時的に敵の動きを止めるクラフト―――威圧の叫び声でロイド達の動きを止め、そして襲い掛かろうとした。するとその時!
「光の精霊よ!世を彷徨いし哀れなる魂に救いを!贖罪の聖炎!!」
「オオオオオオオオオオ――――ッ!?」
エルファティシアが放った高位の光の魔術が命中し、敵は叫び声を上げ、光の炎に焼かれながら消滅した!
「ふう………何とか終わったか………エリィ、大丈夫か?」
戦闘が終わった事を確認したロイドは仲間達と共に武器を仕舞った後エリィを心配した。
「え、ええ、何とか………そ、そそそ、それよりも今のはっ!?」
ロイドに心配されたエリィは頷いた後身体を震わせ
「モロに亡霊だったな………気色悪い光と一緒に消えていきやがったし……」
ランディは溜息を吐いた後考え込み
「それと………やはり上位三属性がはっきりと働いていましたね。どうやら、何らかの理由でこの遺跡は”霊的な場”になっているのかもしれません。」
ティオは説明を補足した。
「霊的な場か………」
「そういえば………さっき、屋上の鐘が鳴ってましたけど………まさか鳴らしていたのはゆうれ―――」
そしてある事に気付いたノエルは答えを言いかけようとしたが
「ストップ、ノエルさん!た、たぶん風で鳴っただけよ!ええ、そうに決まってるわ!」
「お嬢、必死だなぁ。」
エリィが必死の表情で制止し、その様子を見たランディは溜息を吐いた。
「気持ちはわからなくないけど………いずれにせよ、今の戦力なら何とか探索する事は出来そうだ。曹長、このまま先に進むかい?」
「ええ――――お願いします!」
そしてロイドに確認されたノエルは力強く頷いた。
「ううっ……行くしかないみたいね。」
「まあ、こちらの攻撃が通じるだけマジではないかと。」
「やれやれ………とんだホラーハウス巡りになりそうな気がしてきたぜ。」
ノエルの答えを聞いたエリィは表情を青褪めさせ、ティオは静かに呟き、ランディは目を細めて呟いた。するとその時
「!皆さん、気を付けてください!」
「また来ます!」
「今度はさっきより数が多いわよ!」
何かを感じたエリナ、セティ、エルファティシアが警告した!すると先程現れた亡霊達が倍以上の数でロイド達を取り囲んだ!
「なっ!?」
「ま、また出た………!」
その事に気付いたロイドとノエルは驚き
「オオオオオオ………」
「キャアアアアアアアッ!ゾ、ゾンビ!?」
「チッ、囲まれたか!」
エリィは亡霊の集団の中にいる腐敗した肉体を持つ人の姿をした魔物を見つけて悲鳴を上げ、ランディは舌打ちをした。するとその時!
「貴方達の居場所はここじゃありません!光よ!迷いし魂達に救済を!贖罪の光霞!!」
聞き覚えのない少女の声が聞こえた後、強烈な光の爆発がロイド達の背後にいた亡霊達に襲い掛かり、亡霊達を消滅させた!
「え………」
その事に気付いたロイドが呆けたその時、ロイド達の頭上から槍の切っ先の周囲に一対の白き翼が付いている白銀の槍に乗った神々しい雰囲気を纏わせ、白銀を基調とした服を身につけている少女が降りて来た!
「え!?あ、貴女は………!」
少女を見たティオが驚いたその時!
「我と共にありし聖槍よ……天に昇りて煉獄を照らす光の柱と化せ………」
少女は詠唱を開始して、自分の周囲にすざましい聖気を纏った槍を無数に召喚し
「走れ!空の聖槍!!」
詠唱を終えて無数の”聖槍”を少女の全方位にいる亡霊や不死者達に解き放った!
「オオオオオオオオオオオオ―――――――――ッ!?」
そして無数の”聖槍”に貫かれた敵達は”聖槍”達が解き放つ聖なる光の柱と光の爆発に呑みこまれ、叫び声を上げながら消滅した………!
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