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破壊ノ魔王

作者:紅蓮刃
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一章
  29


赤い髪の女性、リオ・アカツキは試験を終えてふらりと町を歩いていた。やるだけのことはやった。あとは明日の次の試験を待つだけ。しかし、筆記首席のシルクという子供には興味があった。自分より上だったものなのだからそれは当然のことである。

リオはひとり高い建物の屋上に上がり、最後の飛空挺を待つ。他の選手の技術は自らより劣っていたが、それでも墜ち人であるために、合格することは難しい。
しかし最後の選手も劣っているならば、自分の合格もありえるかもしれない。なぜなら、あまりにも不当な評価をすれば、ここにいる大勢の見物客たちが納得しないからだ。そこで墜ち人であるからだなどと、軍の関係者が言えるはずもないし、飛空艇を見にきた彼らはそれが墜ち人であることをしらない

リオにとってはシルクの技術にかかっていたのだ。僅差ではなにかしら理由のつけれるシルクに票があがる。すべての試験において圧倒的でないと自分の合格はありえない

そう思っていた

そしてスタートの合図がかかる。リオは睨み付けるようにゲートを見つめる
しかし、そのような時間はないに等しかった
大爆発でもおきたかのような爆音とともに、目を疑うスピードで空へ躍り出る飛空艇。見物客を見下すかのようにふっと柔らかく止まったかと思えば、猛烈としかいいようのない演技がはじまった
リオは初めての感覚を味わっていた
飛空艇に嘲笑われている、と




はじめて飛空艇にのるってのもあって
試験だけど、僕の心はワクワクして踊っていた

謝ります
ごめんなさい


「ぎぃやあああああああああああ!!!!」


何このスピード!何この横G!??
シートベルトがなかったら絶対死んでる!身体中叩きつけられて血まみれになってる!
楽しみとか思ってごめんなさい。ほんとごめんなさい
ほら、試験官だって飛空艇慣れしてるはずなのに顔真っ青ですよ。笑ってるのゼロだけだって

あ、ていうか。今まで見た中で一番たのしそだねー


「あ?いい面してんなー、ガキ」


皮肉たっぷりにゼロは笑った


「ぜ、ゼロの方こそ……って、止まった?」

「止まるかって。ブレーキつなげてねーし」


……ん?


「……じゃあ、いまって……」

「エンジンオフ」


へー
この高い空で

……………へー


「へぇ!?????」

「舌かむなよ!」


真下に落下
エンジンきってるんだからもはや墜落
初めて知ったよ、直滑降ってめちゃこわいね
平気な顔して、煙草吸いながら片手運転

まー…

大丈夫なのはわかってたよ、ゼロがやってるんだからね
でも、そこまで地面スレスレじゃないとだめかな?
そんなの審査員も観客も見えないから。あの街は浮いてるんだし


「さて、そろそろ時間か?試験官」

「ふぇ???」


なんとも情けない声をだすベテラン試験官


「あ、そ、そーっすねぇー…帰還準備を………」


もう顔真っ青だよ。大丈夫?
ぼくはだめだ。祭りだからって騒いで食べるんじゃなかった。もうやばい。やばい……


「ガキもヤバイ面してるし、急いで戻らねーとな」


ゼロは悪魔の笑みを浮かべた

もうほんと勘弁して。お願いだからゆっくり飛んで
そんなドリフトするみたいなターン要らないから
逆さまになって飛ぶとか嫌がらせでしかないから


あぁ

もう

ムリ………



 
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