歌集｢春雪花｣

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　月影を

　　探せし雨空

　　　小夜も更け

　在らざる光に

　　　手を伸ばしける

　彼を想い月を探しても…空は梅雨の雨雲に覆われ､薄明かりさえ見えない…｡

　まるで未来なぞ無いと言うように…ただ闇だけが寂しげに漂う…｡

　夜も更けて…彼への想いは募るばかりなのに､月は一向にその姿を見せる気配はない…｡

　幸福になぞなれもしない…分かり切った虚しさは､心を蝕んでゆく…｡

　あるはずのない光…見えることのない姿…｡

　淋しさゆえに…そっと､手を伸ばした…｡

　露の空の

　　雨ぞそぼ降る

　　　侘しさに

　恋しと云えぬ

　　　　この身恨めし

　梅雨の真っ直中…雨の降ったり止んだりを繰り返す空…｡

　夜には月も星も隠され､音のない雨が降れば…なんとも言えず寂しくなり､彼のことを想わずにはいられない…｡

　会いたい…そうは思っても､それを伝えることは出来ない…｡
　恋しい…想いは募っても､口に出せる筈もない…｡

　こんな我が身を…呪わずにはいられない…｡

　特に…こんな音のない雨の降る夜には…｡

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