提督がワンピースの世界に着任しました
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第14話 世界の歴史が集まる島
天龍からオハラと呼ばれる島について、報告を受けて翌日。すぐさま、そのオハラという島に行くことを決めた俺は、艦娘達と一緒にオハラに向けて出発していた。
今回の遠征は、事前に目的地を定めてルートも判明しているために、駆逐艦と軽巡洋艦をメインとして、機動性を重視しながら燃料を節約できる艦娘を編成した。
具体的な編成について説明すると、軽巡洋艦でありながら低燃費な天龍を旗艦にして、訓練や偵察任務など徐々にだけれど色々と経験を積ませていた最初期の駆逐艦である吹雪、そして新しく建造された新造艦である夕立、舞風という4人の艦娘達を編成した。
遠征の目的地は、オハラと呼ばれる島にある図書館。この図書館に有る情報を手に入れる事が、今回の遠征の目的だった。
神威鎮守府からオハラまでは、どうやら最低でも往復に2日という日数が掛るという事なので、前回の海軍と遭遇した遠征の時と同じように、提督が日を跨いで鎮守府を留守にしてしまう事になる。
なるべくなら提督である俺は、鎮守府を留守にしたくない。けれど、オハラの図書館の報告を受けた時に、何故か自分自身でソコに訪れないと駄目だと直感的に感じていた。
鎮守府の守りも、長門や北上、妙高に加賀と非常に強力な艦娘達に任せたので、しばらくは大丈夫だろうと彼女たちを信頼して出発した。
***
オハラという島は、島の中央に見上げるぐらい大きな樹が有るのが有名なのだという。更に評判となっているのが、その大樹の中に有る図書館。全世界中から本や資料が集められて、その図書館に保管されているという。
そして、その保管されている資料を用いて歴史の研究をしている学者達も居るらしく、オハラに行けば分からない事は無い、と言われる程らしい。
オハラにあるという図書館なら、自分達のルーツ、俺は何故この世界に居るのか、艦娘という存在が何故ワンピースという異世界に存在しているのか、自分たちは何を成し遂げなければならないのか、等など気になっている疑問の答えを知るための、調べる手がかりになるだろうと思う。
自分たちが居た人食い島と呼ばれている奇妙な島、そんな島に存在している神威鎮守府のことについて、自分は何故あの島で立っていたのか。
あの後も周辺の島を艦娘達に調べてもらっていたけれど、結局は島に関して伝わるという伝承の話ぐらいの情報しか見つからず、神威鎮守府の正体については不明のままだった。
しかし今度こそは、世界的にも有名だという図書館らしいので、何か新しく知れる事が有るかもしれないという大きな期待があった。
「あそこにある、あの大きな樹が、その有名な図書館なのか?」
オハラという島に上陸する前、海上からでも見えてしまうぐらいに大きな樹。
一見すると山のようにも見える巨大なソレは、下半分に目を向けると一本の樹の幹だと分かり、ようやく一本の大きな樹が生えているのだと理解できる。その樹の根本に、図書館への入り口が有るという。
隣を歩く天龍に、大樹を指さして聞いてみると、俺と同じように巨大な樹を観察し続けていた彼女がすかさず答えてくれた。
「そうみたいだぜ、提督。話しによれば、島のどこからでも見えるぐらいの大きな樹の中に、図書館とか、歴史の研究所が有るって聞いてる」
確かにあれほどなら、島のどこに居たとしても見失うことも無いだろ、という大きな目印に向かって、俺は艦娘達を後ろに引き連れ歩いて図書館の入り口を目指す。
丁度、石畳の道が大樹の根本のある方向に敷き詰められていたので、その道を辿って歩いて行くと、確かに樹の根元まで続いていた。そして、その石畳の終点には樹の内側に入れるような、木製の扉を発見した。
「失礼します」
一応失礼にならないように扉をノックをして、反応を伺いながら早速中に入る。すると、入ったいきなりの正面に本がぎっしりと敷き詰められた本棚が数多く見えた。そして、次に少しカビっぽい古い本独特の匂いが、強烈に鼻を刺激してきた。
「コレは、すごいな」
樹の中に入って見てみると、正面だけでなく、左右や後ろにもグルリと本棚が一杯だった。あれだけ大きい樹の中はくり抜かれていて、そこに本棚が樹の内側に沿って隙間なく配置されているようだった。
樹の中なのに、図書館の中は暗いという事は全く無くて、外から陽の光を上手く取り込んでいるのか、中は想像していたよりもずっと明るくて、並べられた本棚や背表紙もしっかりと見ることが出来た。その本棚に収まっている本も、隙間なくビッシリとしているのが見えて、膨大な量の本が置かれていることがひと目で把握てきた。
「本が一杯っぽい!」
「壁一面、本棚ですね」
「中もちゃんと明るくて、楽しい雰囲気です!」
「ちょっと、埃っぽいな」
俺の後ろについて入ってきた夕立、吹雪、舞風に天龍の4人がそれぞれが初めて見たという反応と、感想を口に出している。
「ようこそ、オハラ図書館へ! 君たちは初めてこの図書館へ来たみたいだけれど、何の用だい?」
俺達が大量の本棚という見慣れない景色に気を取られていたその時に、老人に声を掛けられた。声のする方へ目を向けると、特徴的な髪型をした老人がすぐ側に立ってニコニコと笑顔を浮かべていた。
その老人は、突然入って来た俺達に対して笑顔で対応しつつも、俺や後ろの艦娘達に目を向けて観察を続けているみたいだった。どうやら、少し老人に警戒されている様子だ。
「突然お邪魔してしまい、申し訳ありません。私は、大日本帝国海軍少将の平賀と申す者です。実は、調べたい事が有ってココに来ました。すると、分からないことは無いと教えてもらったから訪れました」
「初めまして、この図書館の館長を勤めておりますクローバーです。ようこそ我が図書館へ、平賀さん」
失礼にならないように細心の注意を払って言葉を選びながら挨拶をすると、艦娘達の観察をやめたクローバーさんは、俺としっかりと目を合わしてくれてから、挨拶を返された。まさかいきなり、図書館の館長が出てくるとは予想して居なかったので、老人の高い地位に少し動揺していた。
「なるほどなるほど」
クローバーさんは挨拶を終えると、立派な自分のヒゲを扱いて何やら考えていた。
「ところで、大日本帝国という国について。申し訳ないのですが聞いたことのない名前で。どのあたりに有る国なのか、教えていただけませんかな?」
「実は私たちは、人食い島と呼ばれている島に滞在していまして。その辺りの事について色々と話したく、この図書館を訪れたのです」
大日本帝国の事について指摘されて、どこから話すべきなのか、どうやって説明すれば良いのか悩んでしまう俺。とりあえず、現状から伝えてみると、キラリと目を輝かせるクローバーさん。
どうやら、人食い島の噂や伝承について知っているような、好奇心を刺激されて話の続きを聞きたい、というような反応だった。
「なるほど、あの島ですか……。どうやら、長い話になりそうですな。私は、この通り老人ですから、立っているだけで疲れてしまう。腰を下ろしてから、続きの話をしたいのですがよろしいですか?」
「お願いします」
「では、席に案内しましょう」
そう言って、歩き出したクローバーさん。俺はどう話そうかと考えながら、艦娘達と一緒にクローバーさんの後について歩いた。
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