| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

歌集「春雪花」

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

244




 君ぞなく

  想ふあまりに

   溜め息を

 つきてやけふの

     片割れの月



 彼はいない…分かり切ったことを考え、虚しさと淋しさに堪え切れずに溜め息を洩らす…。

 私はいらない…彼にも、この世界にも…。

 毎日を坦々と生きることに疲れ、世に暇をもらうことも出来ずに生きるとは…。

 朝も夕もなく…ずっと彼の事を考え想う日々…見上げれば、雲間から半月が淡い光で照らしていた…。



 眺むれば

  待つも虚しき

   立ち葵

 流るる雲に

    影もなかりき



 通りすがり…ふと景色を眺めれば、少し先に立ち葵が咲いていた…。

 私の大好きな花の一つだが、なぜかどことなく…誰かを待っているように見え、自分と重ねて虚しく感じてしまった…。

 空には薄い雨雲…下に濃い影を落とすほどの光はなく、私の影もはっきりとは映らない。

 無論…愛しい彼の影なぞあるはずもなく、待つだけ無駄だと…その立ち葵へと呟いた…。




 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧