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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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我が身を滅ぼすために

 
前書き
今回のお話もほとんど原作と変わらないな・・・てか冥府の門(タルタロス)編はやりたいことやっちゃったから、この先はあまり変化ないかもです。
シリルをいじれればいじるかもですけどね。 

 
第三者side

「この感情は、再び忘れなければならない。貴様らの存在と共に」

その言葉と共にプレッシャーを跳ね上げていくマルド・ギール。彼の高まっていく呪力に、大地が大きく震えていた。

「なんだ?」
「プレッシャーが・・・」
「不気味な力を感じる」

ナツ、グラシアン、ローグは怒りを露にしている敵を見据え、険しい表情を浮かべている。
四人の竜に睨まれているマルド・ギール。彼は腕を振り上げていくと、震動が収まっていく。

「ようやく本気になったようだな」
「出し惜しみしやがって」
「来るぞ!!」

戦闘体勢に入った三大竜。その刹那、マルド・ギールの左腕が光り輝く。

ドゴォッ

それと同時に、地面から今までの荊よりも遥かに太いそれが姿を現し、四人を飲み込んでいく。

「くそがっ!!」

ガードをしているものの、攻撃のすべてを弾き切れていないナツたち。ナツは地面から空へと伸びていく荊にしがみつくと、その力を利用して上空へと上っていく。

天高く、マルド・ギールやスティングたちを見通せる位置までやって来たナツ。彼は足に炎を纏わせると、荊を踏み台にしてマルド・ギールの真上にやって来る。

「うおおおおおおおっ!!」

足に纏っていた火竜の炎。それを全身に広げていったナツは、頭から敵へと突進する。

「っ!!うおっ!!」

ナツの全体重を乗せた一撃。しかしそれは、マルド・ギールに片手で弾き飛ばされてしまう。

「ナツさん!!」

吹き飛んでいく火竜(サラマンダー)を心配している三大竜。その竜の子たちにマルド・ギールは手を向けると、彼らの左胸に赤いバラが出現した。

ドガァンッ

「「「うわぁっ!!」」」

いきなり胸につけられたバラが何なのかわかっていなかった三大竜。それはマルド・ギールの呪法により生成された爆弾であり、彼の合図で爆発したそれに三人は後方へと押されていた。

「マジか・・・」
「こいつ・・・」
「強い」

背中から崩れ落ちそうになっている三人。しかし、彼らとは別の方向から、荊を足場にして一人の男が椅子に腰かける男に迫っていた。

「火竜の・・・劍角!!」

全身を炎で覆い頭突きを喰らわせたナツ。しかし、マルド・ギールの表情は一切崩れることはなかった。

「効かんな」
「と!!」

頭を敵に押し付けたまま顔を地面に向け、頬を膨らませていく。

「咆哮!!」

炎の力で椅子に腰かける男を空中へと押し上げたナツ。彼の視線は、地上にいる三人に向けられていた。

「スティング!!ローグ!!グラシアン!!」
「ナツさんがアシストを!!」
「強敵と認めたのだろう」
「やっとその気になってくれたか」

一度は断られた共闘。しかし、それをナツ自ら行動に移してくれたことにスティングは笑みを浮かべ、後方に腕を引く。
スティングを中心にローグとグラシアンがサイドに集結し、それぞれの腕に魔力を纏わせていく。
別々になっていた三頭の魔力。それは次第に交わっていき、息の合ったコンビネーションで同時にそれを前に突き出す。

「「「聖幻影竜閃牙!!」」」

付き合いの長い彼らだからこその合体魔法(ユニゾンレイド)。それは逃げ場のない敵へと一直線に向かっていく。

「光と闇か。それに幻も加わってより輝きを増している。美しいものだ。しかし」

マルド・ギールは体の前で両手を持ってくると、三大竜の合体魔法(ユニゾンレイド)は彼のそれに吸い込まれていく。

「我が中に消えよ」
「ウソだろ!?」
「俺たちの魔法を・・・」
「吸収した!?」

彼の中に吸い込まれ姿を消してしまう魔法。それには放った竜たちも驚いていることしかできない。

「と!!雷炎竜の撃鉄!!」

何事もなかったかのような佇まいのマルド・ギールに、その上からナツが雷を帯びた炎の腕で殴り付ける。

「フッ」
「!!」

完全に頭を捕らえた一撃。それなのに、マルド・ギールはニヤリと笑みを浮かべナツを横目で見ると、体を光らせ炎の竜を地面に叩き落とす。

「グッ!!」

背中から落ち転がっていくナツ。それに対しマルド・ギールは、自分とともに打ち上げられた椅子が地面に着地した後、それに悠々と座り、肘をついて足を組む。

「それが限界なら、諦めた方がいい。マルド・ギールは、まだ本気(エーテリアスフォーム)を出していないのだよ」
「!!」

痛めた腕を抑えるナツに見下した視線でそう告げるマルド・ギール。絶対的な力を持つ悪魔を前に、四人のドラゴンたちには焦りが見え始めていた。





















その頃、フェイス発動を食い止めるべくルーシィたちと合流していたウェンディたち。彼女たちはマスターからの念話に思わず固まっていた。

「ルーメン・イストワール?」
「なんですか?それは」

聞いたこともない単語にオウム返しするルーシィとウェンディ。彼女たちの問いに、水晶の中に入っているメイビスの前に立っているマカロフは静かに答える。

『詳しく説明しとる暇はない。今すぐにギルドに戻ってこい』
「今すぐって・・・マスター?」
「けど、ギルドは粉々に・・・」
「よせよ」

妖精の尻尾(フェアリーテイル)はセイラに操られたエルフマンによって爆破されてしまい、今はその形を留めていない。それに責任を感じているのか、大柄の男は顔をうつ向け暗い顔をしている。

『ギルドの地下じゃ。急げ!!』

イマイチ状況を飲み込めていないウェンディたち。マカロフに呼び掛けられた妖精たちは、それぞれの顔を見合わせていた。

「なんだかわからないけど、とにかく急ご!!」
「そうですね!!」

ルーシィとウェンディがマカロフの指示に従い、全員で行動をしようとする。だが、

「俺は残る」

エルフマンが突然そんなことを言い出した。

「エルフ兄ちゃん!?」
「なんで!?」
「・・・」

彼の頭の中には一つの記憶が蘇っていた。それは、自分がギルドを爆破してしまったということ。その責任を感じている彼は、ギルドに戻ることはできないと考えているようである。

『ギルドの破壊は、お主のせいではなかろう』
「そ・・・そうだぜ!!マスターの言う通りだ!!」
「エルフ兄ちゃん・・・」
「俺だって、レビィを人質に取られてたらきっと・・・」
「それでも・・・俺は・・・」

仲間たちの呼び掛けにも首を縦に振らないエルフマン。マカロフは彼に無理にギルドに戻って来させるのも気が引けると考え、それを伝えようとした。だが、

「お前、バカなんじゃねぇの?」

たった一人の青年がその考えを打ち砕く。

「カミューニさん!!」
「あんた、何言ってるの!?」
「言っていいことと悪いことがあるよ~!!」

ラクサスを背負ったままのカミューニ。彼は全員に背を向けている大男を無理矢理自分たちの方を向かせると、その胸ぐらを掴む。

「現実から目を反らすのか!?逃げんのか!?ふざけんなよ!!漢だったら、自分がやったことを受け止めて、その借りを返すもんだろうが!!」

かつてやってはいけないことをした者だからこそ、エルフマンの想いはわかっている。だが、彼は決して逃げなかった。むしろ、その過ちを償っていくために、彼は前に進んでいるのである。

『どうする?エルフマン』
「・・・行くさ。それがけじめっていうならな」

暗く落ち込んでいるだけだったエルフマン。しかし、カミューニの言葉を聞いた彼は、現実に向き合い、自分のやったことを受け止めようと決意する。

「そうか」

その彼の表情を見て、カミューニは口角を上げる。

「じゃあこいつも持っててくれ、責任とって」
「「「「「押し付けたかっただけかよ!!」」」」」

背丈は同じくらいなのだが、カミューニはラクサスに比べると幾分か細い。もちろん筋肉質な体型なのだが、長時間自分よりも重たい人間を持っていると疲れてしまうため、ラクサスより遥かに大きいエルフマンに押し付けたかったのである。

「あぁ、任せろ!!」
「エルフ兄ちゃん・・・騙されてるって気付いて・・・」

しかしエルフマンは自分が押し付けられていることに気付いていない。むしろ仲間を託された彼は、やる気満々の様子でラクサスを担いでいる。

『主も来い』
「!!」

その様子を一番後ろから見守っていたドランバルト。その男にマカロフは個人念話を送る

『俺はギルドの一員じゃねぇぞ』
『主の力が必要になる』
『俺の?』

なぜギルドのメンバーではない自分が呼ばれたのか理解できていないドランバルト。それに答えたマカロフの言葉でも、まだ理解が追い付いていないようである。

『事が全て無事に片付いたならば、ギルド全員の記憶から、ルーメン・イストワールを消してもらう』
『それは、俺自身の記憶も消せってことかよ』
『だが、主は必ずそうする』

なぜマカロフがそんなことを言えるのか、ドランバルトにはわからなかった。

「急ぎましょ!!」
「そうね」

ドランバルトとマカロフが念話をしていることなど知りもしないルーシィたちは、すでに妖精の尻尾(フェアリーテイル)に向かう用意が整っていた。

「ドランバルトさん?」
「あ・・・あぁ」

ウェンディに声をかけられ、意識をそちらに向けるドランバルト。

(なんなんだ、ルーメン・イストワールってのは)

マカロフがギルドの仲間たちの記憶を消してでも隠し通そうとするもの。それが何なのか、彼には見当もつかなかった。
























「っ・・・」
「強ぇな」
「四人がかりでこれか」
「厳しいな」

こちらはマルド・ギールに立ち向かっているナツと三大竜。彼らは予想以上の強敵に顔をしかめている。

「ナツさん、大丈夫か?」
「当たり前だ!!こんなもんかすり傷にもならねぇっての」
「そりゃあよかった」
「まだいけるようだな」

互いの体調を確認しあい、まだまだ戦えることを認識する彼ら。その中でも、ナツは一際やる気に満ち溢れていた。

「おうよ、勝負だからな。俺が先にあいつを倒す」
「「「まだ覚えてたのかよ!!」」」
「お前らに負けてたまるかっての!!」

自分たちのアシストをしてくれたことで、ナツはどちらが相手を先に倒すのかという勝負を忘れていると思っていた三大竜は思わずそう突っ込んだ。それにナツは当たり前といった表情で答える。

「フッ」

その姿を鼻で笑うマルド・ギール。彼は念話を使用し、十鬼門で唯一生き延びているキョウカにそれを送る。

『キョウカ、まだか?早くフェイスを起動させろ』

エルザと交戦中のキョウカ。彼女は今、フェイス発動の魔水晶(ラクリマ)と生体リンクをし、目の前の敵を圧倒していた。
生体リンクした理由は、フェイスの発動を早めるため。その思惑通りキョウカはみるみるカウントダウンを減らしているが、エルザをいたぶることに悦を感じており、マルド・ギールの声に返事が返ってこない。

「はぁ、やれやれ。マルド・ギールの声を忘れるほど、夢中になっているな。だが、仕事はしているみたいだ」

呆れたようにため息をついた後、役割を果たしているために見逃そうと考えたマルド・ギール。そんな彼に、スティングはある疑問を投げ掛ける。

「あんた、大陸中の魔力を消して、何がしてぇんだ?」
「おや、言ってなかったかな?」

大陸の魔力を消滅させる兵器フェイス。それを使用しようと動いている冥府の門(タルタロス)の行動が、スティングたちには理解できていなかった。

「魔力が消えることで、ENDの封印が解かれるのだよ」
「あの本か」

ナツの育ての親であるイグニールが破壊できなかった悪魔、END。マルド・ギールが大事に抱えていた本が、そのENDなのである。

「今はあのような姿だが、ENDは冥府の門(タルタロス)のマスターにして、ゼレフ書最強の悪魔。ENDが復活することで、我々はゼレフの元にいける」
「何言ってんだ?」
「意味わかんねぇ」
「解せんな。行きたければ、お前一人でもいけばいいだろう」

マルド・ギールの話を聞き、ローグがもっともな意見を述べる。彼の言う通り、ゼレフの元に行きたければ自由にいけばいい。だが、それをしないのにはきちんとした理由があった。

「ドラゴンの子と言っても所詮は人間。理解するのは難しいか」
「っんだとコラ」

一度笑みを見せた後、四人を挑発するような発言をするマルド・ギール。彼は続けて言葉を紡ぐ。

「ゼレフがなぜ、我々を創造したのか、考えてみたことはあるかね?」

マルド・ギールが何を言っているのかわからず、次に続く言葉を待つ四人。それに対し、マルド・ギールは変わらぬ態度で話を続ける。

「我が部下たちは、誰一人として気付いていないがね。我々エーテリアスには、ゼレフの元に帰るという強い脅迫観念のようなものがある。
遺伝子レベルの命令なのだ。『ゼレフの元に帰る』『ゼレフに会いたい』『ゼレフのため』これらの感情・・・これはすべて一つの真実に帰結する」

なかなか真実にたどり着かないマルド・ギールの話を、ナツたちはただ黙って聞いている。

「ゼレフは不老不死になった自らを呪い、死にたいと願った。その行き着いた先が、自分を殺せる存在の創造。
ゼレフを殺すために生まれしもの、それが、ゼレフ書の悪魔」

ようやく語られた真実。それを聞いたナツは驚き、ただ呆然としている。

「ENDは、その最高傑作だった。だが、何があったのか再びこうして本の中に封じられてしまった。この魔力溢れるアースランドにおいて、絶対に解かれることのない封印によって。
しかし、その封印もフェイスによって、大陸中の魔力が失われる時に解け、ENDは復活する」

椅子からゆっくりと立ち上がり、四人の竜の元へと歩み寄ってくるマルド・ギール。彼は四人の真正面にまで来ると、そこに立ち止まる。

「そしてゼレフを倒す。それが我々の願いであり、ゼレフの願いでもある」

自分たちの目的を話し終えたマルド・ギールは、不敵な笑みを浮かべていた。だが、それを聞いたスティングたちは苛立っているように見える。

「ゼレフを倒すための戦い?」
「そんなよくわかんねぇことに、人間を巻き込みやがって!!」

彼らの怒りはもっともなこと。だが、マルド・ギールは相手が理解できないことなどわかりきっていたからか、鼻で笑いながら地面から荊を数本生成する。

「君たちは目的地まで向かうとき、道端の雑草をわざわざ避けて歩くかね?」
「てめぇ・・・」
「いや、避けろよ」

自分たちを雑草と同じ扱いにするマルド・ギールをきつく睨み付けるスティングと冷たい視線を送るグラシアン。そんな彼らに、目に止まらぬほどの速さでマルド・ギールの荊が絡み付いてきた。

「「「うわぁぁぁぁ!!」」」
「スティング!!ローグ!!グラシアン!!うわっ!!」

一瞬のうちに後方に飛ばされたスティングたちに視線を向けたナツ。だが、敵はその一瞬の隙を見落とさず、ナツも同じようにホールドする。

「ナツさん!!」
「くっ・・・」
「動けねぇ・・・」

自分たちの体ほどの太さのある荊に縛られ、苦痛に顔を歪める三大竜。彼らの視線の先にいるナツに、巨大な蕾が出現する。

「なんだこれは!?」

人一人を軽く飲み込めるほどの大きさの蕾。ナツはそれを前に驚愕している。

「冥府に咲く、監獄の花」

悪魔はそう言って手を動かすと、目の前の竜目掛け、一直線にそれが向かっていく。

「クソッ・・・」
「抜けられねぇ・・・」
「ナツさん!!避けろ!!」

ナツを助けようにも動くことのできないスティングは、声を張り上げることしかできない。だが、ナツも彼らと同様に捕まってしまっており、逃げることはできそうにない。

「この・・・」

懸命に荊から逃げようともがくナツ。しかしそれは人間の力では逃れることなどできず、彼の目の前に巨大な花は迫ってきていた。
ナツが押し潰される。そう思った瞬間、その場に立っていることもままならないほどの強風が吹き、水と風の魔力が、彼らを捕らえる荊を粉々に切り裂いた。

「水と・・・風?」

どこからその攻撃がやってきたのかわからぬナツと、突然自らの呪法を防がれ目を見開くマルド・ギール。しかも彼の左腕は、いつの間にか薄い桃色の氷によって凍らされていた。

パサッ

次々に何かが起こり、事態を理解しきれないナツに、ドラゴンの鱗のような模様の白いマフラーがかけられる。

「これ・・・俺のマフラー・・・」
「拾ったんです」
「大事なもんなら、もう離しちゃいけねぇ」

そう言ってナツの隣に現れたのは、水色の髪をした小さな竜と、黒い髪をした上半身裸の男だった。

「グレイ・・・シリル・・・」
「グレイさん!!」
「シリル!!」
「この魔力・・・」

思わぬ増援に喜びを見せるスティングとグラシアン。そんな中、白き竜に肩を借りている影の竜は、二人の魔力がいつもと違うことを感じていた。

「まさか・・・今のはお前らが・・・」

一瞬のうちに大量の荊を切り裂いたシリル。敵が気付く猶予すら与えずその腕を凍らせたグレイ。それには、ナツと三大竜を圧倒していた男も動揺を隠しきれずにいた。

「貴様ら・・・何者だ?」
「お前を倒すためにここに来た」
滅悪魔導士(デビルスレイヤー)です」

そう言って敵に腕を見せるグレイとシリル。そこには黒い不思議な模様が描かれていた。
悪魔を滅する魔を手に入れた造形魔導士と滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)。ここから、人類の反撃が始まる。









 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
次はスティングたちの戦いがメインになると思います。 
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