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時にはアンニュイ

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第二章

「何かね」
「明るくないんだ」
「気分がね」
 それこそだった、お昼も。
「落ち着いているんじゃなくて」
「けだるい?」
「そうなの、穏やかでもなくて」
「けだるいんだ」
「そうなの、だから今日はね」
「バーでのデートがしたかったんだ」
「そうなの、いつもと違って」
 私はモスコミュールを飲みつつ彼に話した。
「そんな気持ちなの」
「君がそんな気持ちになるなんてね」
「意外かしら」
「うん、意外だよ」
 その通りだとだ、彼は私に答えた。
「それはね」
「やっぱりそうなのね」
「けれどね」
「けれど?」
「それもあるかな」
 こうもだ、彼は私に言った。
「誰だってどんな時もあるし」
「私にしてもけだるい時が」
「僕だって落ち込むしね」
「私だって落ち込むわよ」
「そうだろ、だからね」
 それでというのだった。
「それもありかな」
「そうなのね」
「そう、あるよ」
 そうだというのだ。
「考えてみたらね」
「そう言うのね」
「そう、じゃあ今日はね」
「こうして」
「そう、飲むわ」
 こう言うのだった、そしてだった。
 私はカクテルをまた一口飲んでだ、彼に言った。
「今日はここでね」
「一緒に飲もう」
「心ゆくまでね」
 私から彼に言ってだ、実際に。
 二人で一緒に飲んだ、バーで静かに。そしてバーを出た時は。
 私は彼にだ、こう言った。
「足がね」
「ふらついてるとか」
「ちょっとね、けれどね」
「今日はだね」
「自分の部屋に帰って休むわ」
「けだるいから」
「それでシャワーを浴びて」
 そしてとだ、彼に話した。
「休むわ」
「僕の部屋には来ないんだね」
「あなたの部屋に行ったらいつも賑やかでしょ」
「そうだね、いつもはね」
「けれどそのいつもの気持ちじゃないから」
 今日はだ。
「それはいいわ」
「そうなのね」
「そう、いいから」
 だからとだ、彼にまた言った。そして。
 彼は私の部屋まで送ってくれた、その紳士さに心から感謝してお礼を言ってだ、扉を開けてから彼の方を振り向いて言葉を返した。
「明日からはね」
「いつもの賑やかな君にだね」
「戻るわ、多分ね」
「多分なんだ」
「どうなるかわからないから」
 気分のことだけはだ、だからこう彼に言葉を返したのだ。 
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