英雄伝説~光と闇の軌跡~(零篇)
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第61話
その後ホテルに到着し、受付に空き部屋がないか聞いたロイド達だったが空き部屋はない事を伝えられ、肩を落としている所になんとフォーマルな姿のワジが現れ、さらにワジは自分が宿泊している部屋を提供すると申し出たので、ロイド達はワジの好意に甘えて、ワジが宿泊している部屋に入った。
~ミシェラム~
「フフ、しかし君達もなかなか優雅じゃないか。記念祭の最終日に休みをもらってミシェラムで豪遊とはねぇ。」
「あー………まあ、骨休みって所さ。それより、ワジ。君のその格好は……」
静かな笑みを浮かべながら言ったワジの話を聞いたロイドは苦笑した後、いつもと違い、フォーマルな格好をしているワジを見て尋ねた。
「フフ、イカスだろう?僕の副業の制服みたいなもんさ。」
「ふ、副業……?」
「それってどういう………」
ワジの言葉を聞いたロイドは戸惑い、エリィは表情を厳しくしてワジを見つめた。
「上流階級という冷たい世界で愛を見失ってしまった麗しくも寂しいご婦人たち………そんな彼女達に一時の夢を見せてあげる仕事さ。」
「なっ!?」
「えっ!?」
「そ、それってもしかして………」
「嘘!?」
ワジの説明を聞いたロイドとセティは驚き、エリィとシャマーラは信じられない表情をし
「いわゆる『ホスト』さんですか。」
ティオはジト目でワジを見つめて言い
「……お金の為にそんな事をするなんて……見損ないましたよ。」
「おいおい!なんてうらやましい―――もとい、ケシカランことを!」
エリナとランディはワジを睨んだ。
「フフ、別にミラに困ってやってるわけじゃないけどね。いつもしつこく誘われるから仕方なく付き合ってあげてるんだ。まあ、慈善事業ってやつ?」
「なんて言い草だ………」
「そういうすげないところにコロッといっちまうマダムが多いってことかよ……」
「はあ……正直、感心はできないわね。」
そして微笑みながら説明したワジの話を聞いたロイド、ランディ、エリィは呆れて溜息を吐いた。
「それではワジさんはホストのお仕事でここに?」
「ああ、いわゆるエスコート役ってやつさ。とあるご婦人に同伴してちょっとワケありのパーティに出るつもりなんだけどね。」
「え………」
「それって……」
ワジの説明を聞いたロイドとエリィはそれぞれ表情を厳しくした。
「ふふ……成る程ね。」
一方ロイド達の様子を見て何かに気付いたワジは静かな笑みを浮かべた。
「成る程って……何の話だ?」
ワジの言葉を聞いたロイドは仲間達と共に慌てた。
「”黒の競売会”………大方、その名前を知って調べに来たって所だろう?」
「っ……………」
「はあ………バレバレみたいだな。」
「という事は、あなたが出る訳ありのパーティーというのも………」
「ああ、その競売会さ。去年も別のマダムの付き添いで行ったから、2回目になるかな。」
「そうだったのですか………」
「まさかこんな身近な所に知っている人がいるなんて、思わなかったよね~……」
エリィの疑問に答えたワジの話を聞いたセティとシャマーラは溜息を吐いた。
「でも君達、その競売会を摘発するつもりなのかい?さすがに無茶だと思うけど。」
「いや……悔しいけど元より摘発するつもりはないさ。ただ、知っておきたかったんだ。クロスベルの歪みを象徴したような豪華絢爛な裏の社交パーティー……俺達が乗り越えるべき”壁”がどの程度のものであるのかを。」
意外そうな表情で尋ねて来たワジにロイドは溜息を吐いた後、真剣な表情で答えた。
「ロイド………」
「フフ………なるほどね。その意気込みは買うけどあいにく”競売会”には招待カードがないと入れないよ。毎年、違った薔薇のデザインで通しナンバーも入っているから偽造することも難しい………どうしようもないと思うんだけどねぇ。」
「それなんだけど……実は、カードは持っているんだ。」
口元に笑みを浮かべて自分達を見つめるワジにロイドは懐から薔薇のカードを出して見せた。
「へえ………どうやって手に入れたかを聞くのは野暮ってもんかな?」
カードを見たワジは感心した後、微笑みながらロイド達に尋ねた。
「ああ、事情があってね。」
「この招待カードだけど………身元の特定はされないのかしら?会員限定で、登録されている人しか入ることはできないとか………」
「いや、それはないと思うよ。裏の社交界的な側面があるから新規の客を歓迎しているみたいなんだ。盗品を扱っている以上、あえて身元を特定されたくない有力者も多いみたいだしね。」
「ふむ、だったら何とかなるかもしれねぇな。そういや、1枚の招待カードで何人まで入れるもんなんだ?」
「………普通に考えれば、こういった社交界の招待カードで入れる人数は大体2人……多くても3人ぐらいだと思いますが………」
ワジの話を聞いて頷いたランディは疑問に思った事を口にし、セティは考えみながら呟いた。
「特に決まりはないみたいだけど………ただまあ、大抵は2人連れだね。7人連れで入るのは目立つからお勧めはできないよ。」
「なるほど……」
「……確かにそれは言えてるかもしれないわね。」
「ええ………家族で行ったとしても、せいぜい3人が限度ですよ。」
ワジの忠告を聞いたティオとエリィは頷き、エリナは頷いた後言った。
「それと、一応パーティーだからフォーマルな格好をした方がいいね。ま、僕みたいな格好をして悪目立ちするってのもアリだけど。」
「さすがにそれは遠慮しとくよ。―――なあ、エリィ。パーティー向けの服装だけどどこかで調達できる場所はないかな?」
「それなら、下のブティックがちょうどいいと思うわ。前に来た時に使った事があるし、私が立て替えておくから。」
「いや、それは………」
「あたし達もチキさんのお店で売った商品の儲けがあるから、よければあたし達が立て替えておくよ?」
エリィの申し出を聞いたロイドは戸惑い、シャマーラは申し出た。
「大丈夫よ、シャマーラちゃん。そのくらい私にさせて頂戴。それより問題は、潜入するメンバーでしょう?」
「ああ………そうだな。クジ引きかジャンケンで決めるってのもアレだしな………」
エリィの言葉に頷いたロイドが考えこんだその時
「おいおい、何言ってるんだ。少なくともお前は確定だろうが。」
「えっ………」
ランディが意外な事を口にし、ロイドを呆けさせた。
「今回の件、一番拘っていたのはロイドさんですし………わたしたちのリーダーですから行くのは当然ではないかと。」
「で、でも………」
「もう、ここは素直に引き受けておきなさい。見てみたいんでしょう?クロスベルの”歪み”の実態を。」
「―――わかった。引き受けさせてもらうよ。」
そしてエリィに諭されたロイドは頷いた。
「フフ、だったらもう一人、同伴する人間を決めるといい。一人で参加するっていうのはかえって目立つだろうからね。」
「そうだな、うーん……」
「私か、ティオちゃん、セティちゃん、シャマーラちゃん、エリナちゃん、そしてランディ。マフィアがいる事を踏まえて選んだ方がいいかもしれないわね。」
「残る5人は、会場の外でいざという時に備えて待機する。そんな役割分担でしょうか。」
「ま、どんな分担にするにしてもまずは下のブティックに行こうぜ。ドレスアップする時までに誰を連れていくか決めとけよ。」
「………ああ。そうさせてもらおうかな。」
「フフ、どんな服があるのか、今から楽しみになってきました。」
エリィ、ティオ、ランディに言われたロイドは頷き、セティは微笑んでいた。そしてロイド達が部屋を出ると何故かワジが付いてきた。
「――ちょっと待て。どうしてワジまで一緒に付いて来るんだ?」
部屋を出たロイドは自分達に付いてきたワジを見て尋ねた。
「フフ、せっかくだからコーディネイトの指南でもしてあげようと思ってね。マフィアのチェックを誤魔化すコツを教えてあげるよ。」
「うーん、まあそういう事なら。」
「何かあからさまに興味本位っぽいですけど。」
「ま、聞くだけ聞いてみようぜ。」
「それじゃあ下にあるブティックに行きましょう。」
その後ブティックに仲間達と共に行ったロイドは連れて行くメンバーをエリィにし、エリィと共にフォーマルな格好をした後、ワジの部屋でパーティーの開催時間まで待った。
~夜~
「……綺麗ですね……」
「ふふ、そうね……」
夜になるとミシェラムは花火を打ち上げ、その様子を部屋から見ていたティオとエリィはそれぞれの感想を言った。
「しかし夜には花火まで上げるなんてなぁ。記念祭だけの演出なのか?」
「いや、毎日ある演出らしいぜ?テーマパークの夜の部もこれからが本番ってところだろ。」
一方ロイドは驚きの表情で呟いた後ランディに尋ね、尋ねられたランディは答えた。
「ねえねえ、エリナ、セティ姉さん!いつかあたし達も自分の手でユイドラにテーマパークを創ろうね!」
「シャマーラ………貴女、あれほどの施設を創るのに一体どれほどのお金や時間がかかると思っているのですか……それにあれほどの施設、私達3人だけではできませんよ?」
「フフ………それならユイドラに帰ったらお父さん達に提案して、みんなと一緒に創るのもいいですね。」
そして嬉しそうな表情で言ったシャマーラの言葉を聞いたエリナは呆れて指摘し、セティは微笑みながら言った。
「ナイトパレードにライトアップされた観覧車………フフ、女の子を口説くには絶好のシチュエーションだろうね。―――さてと。僕は一足先に行こうかな。」
一方ワジは微笑みながらランディの説明を補足した。
「そうか………どこかのご婦人と待ち合わせしてるんだったか。」
「フフ、まあね。」
ロイドに言われたワジは口元に笑みを浮かべて頷いた後、ロイド達に背を向け
「それでは女神の幸運を。君達がヘマしなければオークション会場で会おう。アディオス。」
ロイド達に伝えた後、部屋を出て行った。その後ロイド達も部屋を出て、オークション会場であるハルトマン議長邸に向かった。
~夜・ハルトマン議長邸~
「私の方は問題ないわ。そろそろ行きましょうか。」
胸元見せたドレスを見に纏ったエリィは自分の状態をチェックした後、スーツ姿のロイドに言い
「ああ……―――準備はOKだ。オークション会場に入ろう。」
「ええ、わかったわ。」
ロイドは頷いた後、ワジから渡された伊達眼鏡を取り出し、眼鏡をかけた。
「ロイドさん、エリィさん。………どうかお気を付けて。」
「打ち合わせ通り、俺達はこの辺りで待機してるぜ。何かあったらすぐにエニグマで連絡してこいよ。」
「……私達はいつでも脱出の準備が出来るようにしておきます。」
「気を付けて、2人とも!」
「……お二人が無事出れるように心から祈っています。」
そしてティオ達はそれぞれロイドとエリィに声をかけ
「ああ。そっちの方も気を付けて。」
「それじゃあ行ってくるわね。」
声をかけられたロイドとエリィは頷いた後、ハルトマン議長邸に向かった。ロイドとエリィが議長邸に向かうと、入り口付近にるマフィア達が道を阻んだ。
「ようこそ、”黒の競売会”へ。招待カードを見せていただきますか?」
「ああ、これでいいかな。」
マフィアに尋ねられたロイドはマフィアに金の薔薇が刻まれたカードを渡した。
「………確かに。念の為お名前を伺ってもよろしいですか?」
「えっと……………ガイ・バニングスだ。身分を明かす必要はないだろう?」
「ええ、それはもちろん。」
「そちらの方は……?」
ロイドの言葉にマフィアは頷き、もう片方もマフィアはエリィに視線を向けて尋ねたが
「ふふ、お疲れ様。私の方は事情があって身分を明かせないのだけど………こういう催しでもあるし、別に構わないのよね?」
「え、ええ、まあ。ですが一応、そちらのガイ様とのご関係を伺ってもよろしいですか?」
エリィに尋ね返されて戸惑った後、再び質問した。するとエリィはロイドの腕に抱き付いて自分の胸をロイドの腕に押し付け
「あら、恋人には見えない?ふふ………と言っても、まだお父様とお母様には内緒にしている関係なんだけど。」
マフィア達に微笑んだ後説明した。
(かかかっ!役得だな、ロイドよ!)
(フフ、演技か本音か………本当はどちらなのかしらね?)
エリィの行動を見たギレゼルは笑い、エリィの話を聞いたルファディエルは微笑んでいた。
「ゴメン、僕が君の身分に釣り合わないばっかりに………でも、きっと事業を成功させてご両親にお嬢さんをくださいって頼めるように頑張るから……!」
「ふふっ、期待してるわね。」
一方ロイドはエリィの嘘の話に合わせた。
「コホン……失礼しました。」
「それではガイ様、お連れ様。どうか存分に、今宵の競売会をお楽しみになってください。」
そしてマフィア達は道を開け、ロイド達は屋敷の中へと入って行った。
こうしてロイドとエリィは”黒の競売会”の潜入を開始した………!
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