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ブブ

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第四章

「そんな感じですけれど」
「はい、教会です」
 ガイドは秋本にはっきりと答えた。
「キリスト教の」
「やっぱりそうですか」
「ただ、この国のこの地域の文化が入っていまして」
「教会でもですか」
「日本や他の国にある教会とは違います」
「そうなんですね」
「外観もミサも」 
 そうしたことがというのだ。
「少し違います」
「ジブチの文化が入っていますか」
「そうです」
「それと何か人多いですね」
 教会を見続けてだ、車田はガイドにこうも言った。
「教会に」
「ああ、結婚式ですね」
「それをやってますか」
「はい、そうです」
「だから人が多いんですね」
「そうですね」
「あの娘は」
 ここでだ、車田は白い服を着た若い男の横にいて周りから笑顔で祝福を受けている黒人の小柄な少女を見た。その少女はというと。
 白の足が完全に隠れるまでの貫頭衣の上に赤と青、黄色に白のストライブの模様が入った上着を肩から身体の上、腰を覆う様に着ている。腕と首には金色のブレスレットやネックレスがエジプトのそれを思わせるデザインで幾つもある。腰のベルトは銀色だ。頭も金色の髪飾りで女王の様に飾り目の辺りにまでアーチ状にかかっている。そして頭には鳥の羽根まであり手足に模様が描かれている。
「ヘナといいまして」
「ヘナ?」
「あの手足の模様です」
 ガイドは車田にこのことから話した。
「この国の風俗です」
「魔除けとかですか」
「まあそんな意味がありますね」
「そうですか」
「アフリカじゃ結構ありますね」
 そうした模様はというのだ、手足に描く。
「そうですよね」
「ええ、確かに」
 秋本がガイドに答えた。
「ありますね」
「ジブチにもありまして」
「あの娘も描いてるんですね」
「自分の身体に」
「成程」
「それであの服は」
 車田は少女の服を見てガイドに尋ねた。
「白い奇麗な服ですね」
「お姫様が着るみたいな」
 秋本はこう表現した、その服を。
「エジプトの女王かな」
「あれはブブです」
 ガイドは二人に対して服の名前も答えた。
「我が国の民族衣装です」
「ジブチのですか」
「それなんですか」
「最近は結婚式ではドレス借りる娘も多いですが」
 ウェディングドレス、それをというのだ。
「あの娘は伝統を守ってますね」
「それでブブという服を着てですか」
「結婚式に出てるんですか」
「あの娘が新婦です」
 主役の一人だというのだ。
「それはわかりますね」
「はい、まだ子供の名残ありますけれど」
「そうですよね」
「皆に祝福されてますね」
「それは俺達もわかります」
 二人でガイドに答えた。
「その晴れ着で、ですか」
「ブブっていう服を着てるんですね」
「そうです、この国は暑いので」
 熱いと言ってもいい、日差しも気温もかなりだ。二人も他の参加者もその暑さには知っていたとはいえ現在形で苦戦している。 
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