| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

真田十勇士

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

巻ノ四十七 瀬戸内その十

「御前さん達は酔わぬ」
「そこまで身体は弱くない」
「だからか」
「酔わぬ」
「そうだというのだな」
「ああ、いい身体をしてるさ」
 見ただけでもわかるまでにというのだ。
「船酔いどこの鍛錬を積んできていないってことだ」
「ならよいがな」
「ではこのままか」
「昼も夜も海を進み」
「そうしてか」
「博多に向かう」
「そうするんだな」
「そうだ、急ぐからな」
 その船足はというのだ。
「すぐに着くさ」
「うむ、わかった」
「それではな」
「博多まで頼む」
「宜しくな」
 十勇士達もそれぞれ言う、そして。
 彼等も景色を見た、そこで言うことは。
「よいのう、海は」
「全くだ」
「普段山ばかり見ておるがな」
「海もよい」
「実には」
「奇麗なものだ」
 こう言うのだった。
「大坂でも駿河でも相模でも北陸でも見たが」
「結構見ているじゃねえか」
「いや、普段は上田におる」
 信濃の、というのだ。
「だからな」
「馴染みはないっていうんだ」
「御主達の様に海の中で生きている訳ではない」
「そういうことか」
「うむ、ただ水練はしておる」 
 そちらの修行はというのだ。
「泳げる時は毎日な」
「泳いでるんだな」
「春から秋までな」
「それはいい、ただ冬はな」
「水には入られぬな」
「それはここでも同じさ」
 この瀬戸内でもというのだ。
「冬に海に入ったら死ぬぜ」
「凍え死ぬな」
「心の臓が止まってな」
 その凍えのせいでだ、心の臓が止まってしまうのだ。そうなってしまってはもう死ぬしかないということである。
「そうなってしまうからな」
「では冬に海で戦があればな」
「海に落ちるなよ」
「他の季節の時以上に」
「本当に死ぬからな」
 だからというのだ。
「それだけでな」
「わかった、では気をつけておく」
「そうしなよ」
「わかった、拙者は海での戦は知らんが」
「海の戦はかなり違うぜ」
 陸のそれとは、というのだ。
「船と船で戦うからな」
「そこが全く違うな」
「だからわし等もいる」
 水軍の者達がというのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧