花火の下で
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2部分:第二章
第二章
そしてだった。彼は京にこうも言った。
「いいか、花火な」
「その花火をですね」
「見てこい、いいな」
「わかりました。じゃあ」
「ああ。しかし御前もあれだな」
新道は京のだ。その精悍な顔を見て笑顔になって言った。
京は真ん中で左右に分けた黒髪に白いバンダナをしている。背は一八〇はありかなり逞しい身体つきをしている。実は空手をしているのだ。
学生時代は空手部で全国大会まで言った。その彼を見て言うのだった。
「空手以外にもスキーも好きなんだな」
「ええ、大好きですよ」
実際にそうだとだ。京が笑顔で答える。
「スノーボードよりもですね」
「スキーなんだな」
「俺はそっちです」
「矢吹の奴はスノーボードで御前はそっちか」
「あとホッケーも好きですよ」
京はウィンタースポーツが好きだ。それで言うのだった。
「そういうのも」
「そうか。じゃあスキーだからな」
「怪我ですね」
「ああ、怪我には注意しろよ」
そこは釘を刺す新道だった。
「よくな」
「はい、わかってますよ」
笑顔でだ。京も応えてだ。そのうえでだった。
彼女の井藤幸とだ。二人でだ。長野のそのスキー場に向かった。
幸は茶色の髪をショートにした目の大きな女の子だ。はっきりとしていて少し吊り目だ。唇は小さく紅で頬はすっきりとしている。
歳は京と同じで学生時代からの付き合いだ。その彼女が深夜バスの中で隣にいる京に言ったのである。
「長野に着いたらすぐによね」
「ああ、滑ろうな」
実に楽しそうに応える京だった。その幸の方を見て。
外は真夜中だ。灯りだけが見える。その灯りも横目で見て話すのである。
「思う存分な」
「それでよね」
「夜か」
「夜、花火よね」
「俺の会社で作ってる花火だよ」
それがだ。派手に打ち上げられるというのだ。
「もう凄いからな」
「京いつも言ってるわよね。京の会社の花火は凄いって」
「奇麗だぜ。赤に青にな」
花火の色から話す京だった。
「花が。本当に夜空に咲いてな」
「それを見るのよね」
「そうだよ。昼はスキーで」
そして夜はだ。
「夜はでかい花火だよ」
「じゃあその花火見ましょう」
幸もだ。楽しみにしている笑顔で京に応える。
「二人でね」
「そうしようか。それにな」
「それに?」
「長野だからな」
京は今度はだ。彼等が行く長野のことを話すのだった。
「長野っていったらな」
「お蕎麦に林檎よね」
「それも食うよな」
京はそちらについても楽しげに話す。
「やっぱりな」
「勿論よ。長野っていったらお蕎麦に林檎じゃない」
幸もだ。その二つについては目をきらきらと輝かせて言う。
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