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歌集「春雪花」

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 姿なく

  声もなかりき

   君追いし

 夜も更けにければ

     何に頼らむ



 ここに彼はいない…その姿を見ることも、その声を聞くことも叶わない…。

 それでも…彼を追い求め、恋い焦がれ…この虚しい場所で生きている…。

 なぜ生きなくてはならないのだろう…そんなことを思い窓から外を見れば、夜も更けて寂しさの増すだけの世界になっていた…。


 そんな世界で…私は一体、何に頼って生きれば良いものか…。



 淋しさを

  覗けき夜の

    切なさを

 なお増しにける

    夜半の月かな



 夜が迫れば…その闇から淋しさがこちらを覗き見ているようで…。

 彼を想い、彼だけを想い…ただ切ないだけの夜の闇…。

 見上げれば…大地を照らしきれぬ月影が、雲の切れ間から見えていた…。

 その光は柔らかく…優しく…。

 だが…心を癒すこともなく、ただただ…切なさを増すばかり…。


 彼は今、誰といるのだろう…?




 
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