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タクチータ

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第四章

「わしもかなりな」
「気にしてるのね」
「それだけは言うな」
「私は太っていても気にしていないわよ」
「男にとって髪の毛は別だ」
 これのことだけはというのだ。
「いいな、そこは」
「心が狭いわね」
「だからこれは別だ」
「やれやれね、とにかくね」
「ああ、タクチータだな」
「アクセサリーも全部買うから」
「わかってる、じゃあ行くか」
「そうするわよ」 
 こう話してだった、二人で一式買った。ジダンは買い終わってからタハミーネに対してこうしたことを言ったのだった。
「高かったな」
「予想以上に?」
「ああ、倍はかかったな」
「いいじゃない」
「金は貯めていたからな」
「この日に備えてね」
 それこそファランギースが産まれた時からだ。
「ギーヴが結婚する時と同じでね」
「あいつが結婚した時もな」
「お金がかかったでしょ」
「そういえばわし等の時もだったな」
「お金はかかるのよ」
 結婚についてもというのだ。
「絶対にね」
「わかっていてもな」
「高くなったっていうのね」
「ああ、本当にな。けれどな」
「これで買うものは買ったから」
「後は式だな」
「楽しみね」
 タハミーネは笑って夫に言った。
「これから」
「それはな、待ちに待った」
「そうよね、あの娘が産まれた時からの」
「その時が来るんだな」
「いよいよね」
「あいつには幸せになってもらう」
 絶対にとだ、ジダンは強い声で言った。
「若し相手があいつを泣かせるなら」
「それは言わない方がいいわよ」
「父親はか」
「そう、黙って立っているだけでいいのよ」
 父親はというのだ。
「いいわね」
「母親もだな」
「そうよ、親は迂闊に動くものじゃないわよ」
「黙って見守るか」
「変に動く親は馬鹿だって思われるわ」
 そうしたものだからというのだ。
「迂闊に動かないものよ」
「そうしないと駄目か」
「ええ、そうよ」
「わかった、じゃあな」
 ジダンも妻の言葉に頷いた、そのうえでこの日は家に帰った。そして他の式の準備も進めていった。
 式の日になるとだ、ジダンとタハミーネは二人の娘であるファランギースにタクチータを渡した、勿論アクセサリーもだ。
 全て与えて身に着けさせた、着替え終わった娘はというと。
 足は緑のサンダルで紫のくるぶしまで隠れる薄い生地の袖のないドレスを着ている。その下の」袖がやや広いブラウスの色は白だ。帯は赤で極めて長く黄色の縦縞の模様が一定のスペースで入っている。大きなヴェールは紫と薄紫の二色だ。
 胸元は金色のみらびやかなビーズをこれでもかと備え緑の宝石のスパンコールもある。手首にも同じ色のブレスレットが幾つもある。
 頭の飾りは金貨や銀貨でそれを冠の様に飾っていて手足には服に覆われていない場所を邪気から守る為の染料で描かれた紋様がある。
 琥珀の色の目に楚々とした白い顔と桃色の唇を持つ少女の顔はまだあどけなさが残るが非常に整っている。ヴェールからのぞく長い黒髪は艶めかしささえある。 
 その娘の姿を見てだ、ジダンは泣きそうな顔になって言った。
「いいな、本当に」
「そうね、私もそう思うわ」
 タハミーネも言う。
「奇麗ね」
「御前の若い頃、いや式の時の姿そのままだ」
 まさにとだ、妻に対して言った。 
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