普通だった少年の憑依&転移転生物語
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【ハリー・ポッター】編
151 ホグワーツ特急での再会
前書き
ここ一週間で話別評価の平均値が一気に0.07くらい増えてました。
なぁにこれぇ(白目)
SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー
1991年9月1日。ホグワーツへの出発日。
―ロン、行っちゃやだっ!―
そうゴネる妹のジネブラ──ジニーを母さんと一緒に宥めて〝ホグワーツ特急〟に乗った。……空いているコンパートメントを探しながら列車内をうろうろしていたら覚えのある──〝火〟そして〝八頭の蛟〟の気配があるコンパートメントに入った。
……入ったは良いが──俺の顔を見て数秒、いきなりそのコンパートメントの先客──円に抱きつかれた。……それも泣きながら。
……一応コンパートメントに入る前に“マヌーサ”を掛けてあったので、誰かの目線の件については大丈夫。
(……ん? ……もしかして…)
宥める様に円の頭を撫でていると、ふと前髪の切れ間から〝稲妻みたいな傷〟を発見した。……どうやらこの世界線では〝転生者=生き残った子(アニー・ポッター)〟と云う等式らしい。
「……落ち着いたか?」
「……うん…」
軈て円も落ち着いたのか、俺から離れて対面の座席に座っている。……今度は羞恥からか、俺とあまり目を合わせようとせず──顔が薄く朱に染まっているのは触れないでおく。
……蒸し返したらそれはそれで面白そうだが、流石にそこまで──世が世なら契った事もある女性を泣かせるほど鬼じゃあない。……〝時と場合〟くらいは選べる。
「詳しい話を聞かせてくれないか?」
………。
……。
…。
「その傷が…」
「……うん。これはボクが〝生き残った子(アニー・ポッター)〟だと云う証拠」
円から聞いた話を纏めてみれば──やはりと云うべきか、〝転生者=〝生き残った子(アニー・ポッター)〟〟と云う等式だったらしい。
「……じゃあ、〝アニー〟と呼んだ方が良さそうだな」
「うん。……今度は真人君──ロンの話を聞かせて?」
「了解」
………。
……。
…。
「……で、アニーに会ったってところだな」
「真人君が【東方Project】な世界線で〝現人神〟になって──300年以上生きてるとはね…。……〝人に歴史あり〟──ってこういう事を云うのかもね」
しみじみ、とそう締めるアニーに「そうかもな」と相槌を打つ。……時計を見る限り、10分程度は語っていたらしい。
アニーには【ゼロの使い魔】【東方Project】【ソードアート・オンライン】──そして【ハリー・ポッター】な世界線で、これまであった──出逢い方や最期の看取りなどを掻いつまんで語った。
「……あ──」
そこでいきなりアニーは口に手を当てる。目線の先には、小さめの鑑賞用ケースに入った鼠の姿が。
……その反応でアニーが何を気にしているのかは直ぐに判った気がした。
「……〝あのクソネズミが居るの忘れてた〟」
〝日本語〟に切り替えてそう──〝忸怩たる思い〟と云う表現が一番似合いそうな表情でアニーは吐き捨てる。
「……ああ、気にしなくて大丈夫だよ」
頭を抱えながらアニーに、俺は苦笑で返す。……アニーの云う〝糞鼠〟──〝アニー・ポッター〟の両親の敵である〝ピーター・ペティグリュー〟は連れて来ている。
……〝ケースに〝遮音〟の魔法が掛かっていなかったら〟、俺もまた──今現在あたふたしているアニー同様焦っていただろう。
「……善かれと思って、“サイレント”を掛けてあるから大丈夫」
「あぁ…良かった…」
この世界線に於いても、【日刊予言者新聞】を見る限りシリウス・ブラックはアズカバン──犯罪を犯した魔法使いをぶち込んでおく為の牢獄に収監されている。……罪状は〝12人もの〝非魔法使い(マグル)〟の虐殺〟と〝ピーター・ペティグリューの惨殺〟──と、変わりは無い。
……今もケースの中で眠りこけている〝鼠〟に扮している30をゆうに過ぎている男──ピーター・ペティグリューを“ザキ”や“デス”やらで〝突然死〟させてしまおうと思ったのも一度や二度ではない。……結果論になってしまうが、こいつ──ピーター・ペティグリューさえ居なければ、アニーの両親は死なずにすんだかもしれなかったから…。
「……それで、実を云うと〝円〟に受け取って欲しいものがあるんだ」
「それは何? 〝真人君〟」
〝円〟──と、アニーの前世の名前で呼んでみれば、アニーも俺が某かを切りだそうとしているのを察したらしく、アニーもまた俺の〝当初〟の名前で呼び直し佇まいを改める。
「これは──」
(あ、そういえば──)
そこまで言いかけたところで、アニーとヴォルデモートとの間に、〝繋がり〟みたいなものが有った事を思い出す。……アニーはいきなり黙りこくってしまた俺を不思議そうに見ていて、頭に疑問符(クエスチョン・マーク)が幻視出来る。
――コンコンコンコン
アニーに申し訳なく思いながら口に出そうとした言葉を意図的に喉の部分で留めていると、コンパートメントの扉からノックの音が聞こえた。アニーと目を合わせ──ほぼ同時に頷き、俺が返事をする。
「どうぞ」
「アナタ達、ネビルのヒキガエル見なかった?」
コンパートメントの扉が開かれ、栗色とも亜麻色ともつかない──ダスキンモップみたいにふわふわした髪の少女が俺達のコンパートメントに闖入してくる。
「「見てないよ」」
……開口一番から偉ばった話しぶりの少女だったが、言葉に迷っていた俺からしたらその少女の闖入は渡りに舟だった。……アニーと一瞬だけ目線を合わせ、そう異口同音に答える。シンクロしてしまったのはご愛敬。
「……あのっ!」
少女の背中から、おずおずとおっかなびっくりに──ぐすぐすと啜り泣きしながら出てきた丸顔の少年がいきなり声を荒げる。……さっきの少女の言葉から察するにその少年が〝ネビル〟なのだろう。
「トレバーって云うんだけど──もしヒキガエルが一匹だけで、その辺を散歩してたら捕まえておいてくれないかな…?」
「判ったよ。えーと…」
「僕ネビル。……ネビル・ロングボトム」
「俺はロン・ウィーズリー。……そしてこっちが…」
「ボクはアニー・ポッター」
「「アニー・ポッター!」」
少女と少年──ネビルは驚きの声を上げる。……差もありなん。〝アニー・ポッター〟の名前を知らない魔法使いはほぼ居ないと言ってもいい。いきなりそんなビッグネームが出てきたのだ──その驚愕さたるや、嘸やのものだろう。
「私、貴女の名前を色々な本で見掛けたわ【近代魔法史】【闇の魔術の興亡】【二十世紀の魔法大事件】──って、私の自己紹介がまだだったわね。……私はハーマイオニー・グレンジャー。〝あの〟アニー・ポッターに会えるなんて光栄だわ」
得意気に語っていた少女──ハーマイオニーは自己紹介をしていなかった事を思い出したが、アニーは恥じ入るハーマイオニーを気にした様子はない。……敢えて云うのなら、くすり、と微笑んだだけである。
「ボクはマグル育ちだから魔女としては知らない事だらけだけど──それでもよかったらよろしくね、ハーマイオニー」
「ええよろしくね、アニー──もちろんロンもね」
「俺はついでか。……まぁ、同じ寮になれなくてもよろしくな」
自己紹介を済ませていなかった3人で友誼を結ぶ。
「ええ──じゃあ私とネビルは次の所にヒキガエルを探しに行くから。……ホグワーツにまた会いましょう」
「またね。……あ、トレバーを見つけたらよろしくね」
「……ネビル、きっと見つかるよ」
去っていくネビルを聞こえているかは判らないが、そう励ましておく。……〝誰が持っているのか〟は、何となく判っていたりするが、俺に出来るのは早くネビルとトレバーが合流出来る様に祈ることだけだった。
「……で、ハーマイオニー達が来ちゃったから聞きそびれちゃったけど──〝真人君は何が言いたかったの?〟」
アニーと一緒に手を振り、ハーマイオニー、ネビルのコンビを見送り──数秒してアニーは直ぐに切り替える。……そのまま有耶無耶になってくれた方が俺としては良かったのだが、アニーは気になっているらしい。
「いや、〝結城 乃愛の記憶〟をアニーに譲渡しようと思ったんだが…」
「〝だが〟…?」
「ふと思ったんだが、今のアニーってあの──ヴォルデモートとの〝繋がり〟が出来るだろう?」
「……あー…」
今度の俺の口から出てきたのは俺の本心で、アニーもそれを思い出したのか、どうにも言えない表情をしている。……アニーが〝閉心術〟を覚えても、その相手が〝開心術〟のエキスパートである〝お辞儀さん(ヴォルデモート)〟なのだから、迂闊に伝えられない。
……故にアニーの〝原作知識〟も、〝PSI(トランス)〟でアニーの記憶に潜りつつ、〝忘却〟させる予定である。……もちろんの事ながら、アニーの了承を得てと云う事になるが…。
「……ジェームズ・ポッターとリリー・ポッター──ボクの両親が殺されているってことは、〝未来のアニー・ポッター〟は絶対にヴォルデモートに対して〝なにか〟をやらかしてるんだよね…」
「〝卵が先か鶏が先か〟議論になるな、そこまでいくと…」
ヴォルデモートの手によってジェームズ・ポッターとリリー・ポッター──アニーの両親が殺されていると云う事は、アニーに対して〝≪闇の帝王≫を打倒する御子になるであろう〟──みたいな予言が下されている可能性が高い。
今でこそ先ほど諧謔混じりに言った〝卵が先か鶏が先か〟と云う状況になっているが、それも確定されているわけでもない。
「……下手に干渉したら未来が変わる能性があるからな。下手を打ちたくない」
「……つまりある程度は原作に沿わせるんだね?」
「ある程度は干渉するけどな」
「……判ったよ。……ところで〝開心術〟で思い出したんだけど、〝組分け〟の時ってどうする?」
「封印系のスキルがある。……あ、アニーもいっその事──ヴォルデモートを斃すまでの間だけ〝原作知識〟を封印しておくか?」
「そんな事も出来る様になっていたんだ…。……だったら、それ採用だね。じゃあロンは〝知識〟を使いつつ、ボクを──ボクが出来るだけ目立つ様に誘導してくれる?」
「心得た」
その後は封印のスキル…“寝室胎動”でアニーと俺の〝原作知識〟を暫定的に封印した。……期間の長さは違うが。
……それから、コンパートメントにマルフォイ家の坊っちゃんが来て──俺が絡まれ、アニーが適当に振り撒いていた笑顔を見たマルフォイの顔が赤くなったのを微笑ましく見ていたりしたが、色々と蛇足なので割愛。
SIDE END
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