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英雄伝説~光と闇の軌跡~(零篇)

作者:sorano
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第41話

~IBC~



「IBCビルか………何度見てもすげぇビルだな。」

「こうしてみると………余裕で10階以上あるみたいだな。」

IBCのビル前に仲間達と共に到着したランディとロイドはビルを見上げて呟き

「たしか16階建てのはずよ。そのうち、5階から10階までは外部の会社が入っているみたいね。」

エリィがロイドの疑問に答えた。

「そうなのか………」

「クロスベル市の税収に相当、貢献していそうですね。」

「銀行なのですから、相当の収入があるでしょうし、恐らくそうでしょうね……」

ティオが呟いた言葉にセティは頷き

「創るのにどれだけのお金や時間がかかったんだろうね~?」

「……想像もできませんね………」

シャマーラとエリナはビルを見上げて考え込んだ。

「それで、どうするんだ?アポイントもなしに来ちゃったけど……」

「そうね、まずは中の受付で聞いてみましょう。」

ロイドの疑問にエリィが答えたその時

「エリィ………?」

聞き覚えのある声が聞こえて来た後、IBCのビルからアーネストが出てきて、ロイド達に近づいてきた。

「アーネストさん………」

「奇遇だな……こんな所で会うなんて。みんな一緒ということは警察の用事で来たのかい?」

「ええ………少し調べる事がありまして。アーネストさんはおじいさまの御用ですか?」

「ああ、事務所の運営資金の管理についての相談をね。来月から特に忙しくなるし色々やりくりが大変なんだよ。」

「……そうですか。」

アーネストの話を聞いたエリィは複雑そうな表情で頷いた。

「それで、エリィ………少しは考えてくれたかい?」

そしてアーネストは真剣な表情でエリィに尋ね

「…………はい。やはり、今警察を辞めるわけにはいきません。私はまだ何も掴めていない……少なくとも、その何かが掴めるまでは半人前だと思いますから。却っておじいさまの足を引っ張ってしまうと思います。」

尋ねられたエリィは真剣な表情で答えた。

「だが………君が求めているものは本当にその道の先にあるのかい?ひょっとしたらそれはただの蜃気楼かもしれないぞ?」

「そうかもしれません。でも、この2ヵ月………色々見えてきたことがあります。一つ一つの問題を解決することで少しずつ成長できた実感もあります。多分、あのまま事務所に入っておじいさまの秘書の一人になっていたら手に入らなかった貴重な経験です。」

「…………………………」

迷いのない微笑みを浮かべて語るエリィをアーネストは呆けた表情で見つめた。

「………ですから、ごめんなさい。少なくとも一人前になるまで………今の立場で頑張りたいと思います。」

「……ふう。どうやら迷いが消えたようだね。」

「え………」

「わかった、もう何も言わないよ。やれやれ、せっかく事務所に有能な後輩が入ると思ったんだが。当てが外れてしまったようだ………」

「アーネストさん………」

残念そうな表情で語るアーネストをエリィは見つめ

(!?どういう事だ、あの人間………言っている事と奴から感じる感情の気配があまりにも違いすぎるぞ………!)

(嫉妬………憎しみ……執着心………そういうものが感じられてきたわね…………)

(……ティオ達の目は誤魔化せても、天使である我等の目は誤魔化せんぞ………しかし………何故、目の前の人間からエルンスト達のような”魔”の気配も感じる?)

「「!!……………………」」

メヒーシャは驚いた後アーネストを睨み、ルファディエルは考え込んだ後目を細めてアーネストを睨み、ラグタスは警戒した表情になり、エリナとセティは驚いた後真剣な表情でアーネストを見つめていた。



「ただ、そうだな………来月の創立記念祭の時には式典にぜひ出席してほしい。本来なら、君のお姉様に出ていただきたかったんだが………さすがに、市長のご家族が一人も出席しないのは寂しいからね。」

「………わかりました。アーネストさん。色々とありがとうございます。」

「はは、いちおう君の先生だったこともあるしね。これくらいは気にかけさせてくれたまえ。……おっと、こんな場所で時間を取らせてしまったな。君達もお仕事、頑張ってくれ。それと……エリィお嬢さんを頼んだよ。」

「………はい。」

ロイド達を見つめて言ったアーネストはロイドの返事を聞いた後、去って行った。

「…………………………」

「随分、エリィのことを考えてくれている人みたいだな。先生をしてたとか言ってたけど……」

アーネストが去った後黙っているエリィにロイドは尋ねた。

「ええ………私が小さい頃に家庭教師をしてくれていたの。留学してからはちょっと疎遠になってしまっていたけど。」

「……やっぱり政治家志望なんですか?」

「ええ、来年の議員選挙では新人として出馬するみたいね。帝国派と共和国派のどちらにも属さないつもりらしいからとても苦労すると思うけれど………」

「政治家の卵ってわけか。しかし、政治家の秘書にしちゃ結構いいガタイしてたよな。なんか武術でもやってんのか?」

「たしか剣術の経験があるはずよ。結構な腕前みたいだからおじいさまの護衛も兼ねてるって聞いたことがあるけど……」

「なるほど……体格がいいのも納得だな。」

ランディの質問に答えたエリィの話を聞いたロイドは頷いた。するとその時

「おやおや~?うふふん、また会ったわね。」

グレイスがIBCのビルから出てきて、ロイド達に近づいてきた。

「グレイスさん……」

「なに、IBCに用事?一緒に来てるってことは捜査にでも来たのかしらん?」

「い、いや別に………大したことじゃないですよ。」

「ええ、ちょっとした問い合わせに来ただけです。」

グレイスに尋ねられたロイドとエリィはそれぞれ話を誤魔化そうとした。

「ふーん………ま、そっか。あたしも忙しいからこの場は見逃してあげる。それじゃあ、まったね~!」

ロイド達の話を聞いたグレイスは頷いた後、去って行った。



「やれやれ、相変わらずマイペースな姉さんだな。」

「でも、グレイスさんにしては喰い付きが悪かったですね………そんなに忙しいんでしょうか?」

「まあ、記念祭の前ともなると取材する事も多いんでしょうね。」

「うーん、できればこっちの記事も諦めてくれるといいんだけど………」

ティオやエリィの話にロイドは考え込みながら頷いたその時

(ロイド。)

ルファディエルがロイドに念話を送った。

(ルファ姉?どうしたの?)

(………あの、アーネストという秘書……気を付けておきなさい。巧妙に隠してはいたけど”負”の感情をさらけ出していたわよ。)

(え?ちょ、ちょっと待ってくれ。その前に何でそんな事がわかるんだ?)

(それは私が”天使”だからよ。天使は人の感情をある程度、感じ取れるわ。恐らくラグタス将軍やメヒーシャも感じ取っているし……天使の血を引くエリナや動物の意思がわかるセティにも聞いてごらんなさい。きっと同じ答えが返ってくるわよ。)

((あ、ああ……。)セティ、エリナ。ちょっといいかな?)

ルファディエルの念話を聞いたロイドは戸惑いながら頷いた後、セティとエリナに小声で話しかけた。

(ロイドさん?)

(どうしたんですか?)

小声で話しかけられた2人はそれぞれ不思議そうな表情で尋ねた。

(さっきルファ姉が言っていたんだけど………アーネストさんから”負”の感情を感じ取ったって言ったけど……それで、ルファ姉が君達なら感じ取ったのかもしれないって言ってたけど………本当なのか?)

(はい…………やはり、ルファディエルさんも感じ取っていたのですね。)

(……それどころか”魔”の気配も感じ取りました。)

(”魔”の気配?)

エリナの言葉を聞いたロイドは首を傾げ

(俗に言う”魔人”………悪魔等闇の陣営の力を借りて”人”を捨てた者から感じる気配の事です。……先程あの人から感じた感情を考えると、警戒しておいた方がいいかもしれません。)

(……ちなみにどんな感情を感じ取ったんだ?)

エリナの説明を聞いたロイドは真剣な表情で尋ねた。

(嫉妬………憎しみ……執着心……そう言ったものをさらけ出していました。)

(それと私を見た瞬間、すざましい嫌悪感を出していましたね。最初に出会った時、感じたのは気のせいだと思ったのですが……今日出会って、確信しました。あれは天使の姿をした私を嫌っていたんだと思います。異世界にいる悪魔達も私の姿を目にしたら、嫌悪感をさらけ出したりしていましたから……それと同じ感覚です。)

「(そうか…………………(まてよ?何故、アーネストさんが去ったすぐ後にグレイスさんが現れたんだ?………仮にグレイスさんがアーネストさんを何らかの理由で探っていたとして………………IBCに運営資金の相談…………脅迫状………囮の可能性………ルファ姉が頭の隅に留めておくように忠告してくれた市長の暗殺の可能性…………そしてエリナ達がアーネストさんから感じたという”負”の感情…………――――!!))…………………」

(………先程の秘書がさらけ出している感情からして、あの秘書はかなり怪しいわね。さて……ロイドは気付いているかしらね?先程の秘書と新聞記者がIBCから現れた理由に秘められているかもしれない可能性を………)

そしてセティとエリナの答えを聞いたロイドは目を閉じて考え込んだ後、目を見開き、アーネストやグレイスが去った場所を真剣な表情で黙って見つめ、ルファディエルは興味ありげな様子でいた。

「おい、ロイド。何、コソコソとセティちゃん達と相談しているんだ?」

するとその時、ロイド達の様子に気付いたランディは尋ねたが

「(………プレ公演の際、念の為に市長を暗殺から守る何らかの対策をたてておいた方がよさそうだな………)……ちょっとね。それよりそろそろビルに入ろう。総裁に面会できないか受付で問い合わせてみないとな。」

ロイドは答えず、話を誤魔化した。

「あ、ああ……」

話を誤魔化されたランディは不思議そうな表情で頷き

「ええ、行きましょう。」

エリィは頷いた後、ロイド達と共にビルの中に入った。



その後ビルに入ったロイド達はエリィに受付との応対を任せた。するとエリィは、クロスベル銀行の総裁との面会を取り付け、エレベーターを動かすセキュリティーカードを貰った後、セキュリティーカードを使って、最上階まで上がり、総裁がいる部屋にノックをして入室の許可をもらった後入った………


 
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