英雄伝説~菫の軌跡~(零篇)
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第47話
~月の僧院~
「みんな、一気に行くぞ!!」
「分析を開始します―――――情報を入手しました。弱点属性は空属性!水属性は無効化し、地・火・風属性は50%を下回っています!空以外にまともに効く属性は時と幻です!さらに状態異常は能力減少効果も含めて全て無効化します!」
戦闘を開始したロイドはクラフト―――鼓舞で仲間達の闘志を高め、クラフト―――アナライザーで敵を分析したティオは仲間達に助言した。
「うふふ、だったら弱点属性で攻めて一気にカタを付けましょう♪アークス駆動…………」
ティオの助言を聞いたレンはオーブメントを駆動させ始め
「隙あり―――シュート!!」
「行きますよ……!ファイアー!!」
エリィとノエルはそれぞれ遠距離から集中攻撃をした。
「行くぜ……!オラアッ!!」
その時二人の背後からランディが跳躍して現れ、そのまま炎を宿したスタンハルバードを敵に叩き込んだ。
「――――――!」
ランディが放ったクラフト―――バーンディバイドを受けた敵だったが一切怯まず腕を振るってランディに攻撃し
「グッ!?なんて威力だ……!まともに喰らわないように注意しろ!」
攻撃をスタンハルバードで防御したランディだったが、敵の攻撃の威力は凄まじく、大柄な身体をしているランディが防御されてもふっ飛ばされた。
「えいっ!エクス―――――クルセイド!!降り注げ、聖なる光―――レイ!!」
「援護します!」
そしてオーブメントの駆動を終えたレンは敵の足元から十字架の光を発生させるアーツを発動した後更に光の雨を降り注がせる特殊魔法―――レイを発動し、レンと戦術リンクを結んでいるティオはリンクを結んでいる相手のアーツの威力を高めるリンクアーツ―――”ブーストアーツ”を発動してレンが放ったアーツの威力を高めた。
「!?」
弱点属性を受けた敵は怯み
「おぉぉぉぉぉぉ………!!」
「ハァァァァ……!ライオットバスター!!」
その隙を逃さないロイドはクラフト―――フラッシュ・チャリオットで攻撃し、ランディは力を溜める事によって強烈な一撃を放つクラフトで追撃した。
「私も続くわ!!」
「電磁ネット、発射します!!」
ロイドと戦術リンクを結んでいるエリィはロイドに続くように銃撃で追撃し、ノエルは敵の動きを制限する為に電磁ネットを放った。
「―――――!!」
「キャアッ!?」
電磁ネットをその身に受けた敵だったが強引に突き破って突撃してノエルをふっ飛ばし
「――――!」
「………っ!」
「させるか――――グッ!?」
近くにいたエリィに腕を振るって攻撃し、それを見たエリィは防御態勢が間に合わなかった為目をつむったその時エリィと戦術リンクを結んでいるロイドがすぐに反応して防御態勢で敵の攻撃を受けてダメージを受けると共にふっ飛ばされた。
「今回復するわ!」
ダメージを受けたロイドだったがリンクを結んでいるエリィが発動したリンクアーツ――――クイックティアによって受けた傷が回復した。
「秘技――――裏疾風!斬!!」
「!?」
そしてレンは正面から電光石火の速さで魔導杖の仕込み刀で斬撃を叩き込んだ後背後から斬撃波を放って敵の態勢を崩し
「続きます!イノセントエッジ、射出!!」
敵の態勢が崩れるとレンとリンクを結んでいるティオも続くように中空に出現させた数本の光り輝く封魔の剣を解き放って追撃した。
「………………」
ロイド達の攻撃によってダメージを受け続けた敵は何と自己再生を始め
「チッ、化物が……!させるかよ!バーストランサー!!」
「うぉぉぉぉ……!ブレイブスマッシュ!!」
敵が自己再生を始めている事に気づいたランディは突撃の突きで自己再生によってふさがり始めている傷口を攻撃して再び広げ、ランディに続くようにロイドも一撃離脱技で攻撃し
「火炎放射、始めます!」
ノエルは火炎放射器で敵を焼き尽くすクラフト―――フレイムランチャーを敵の側面から放って追撃した。
「「エニグマ並びにアークス駆動―――」」
「時の結界よ、砕け散れ!!」
エリィはそれぞれ二つの戦術オーブメントの駆動を始めたティオとレンに時間法則を司る結界を具現化して破壊し、行動を”加速”させるクラフト―――ストライクベルを放ち
「「ダブルダークマター!!」」
「――――!?」
エリィのクラフトによって戦術オーブメントの駆動をすぐに終えた二人は同じ属性かつ同じアーツを4つ放ち、弱点属性である空属性のアーツを一斉に受けた敵は大ダメージを受けると共に怯んだ。
「今だ!ランディ、行くぞ!」
「合点承知だぁっ!」
敵が怯んだ瞬間ロイドとランディは敵を左右から挟み込んで猛連撃を放ち続け
「「バーニング――――レイジ!!」」
「目標を撃破します!それっ!!ハァァァァ……!」
「気高き女神の息吹よ………力となりて、我が銃に集え………」
最後に同時に突撃して大爆発を起こし、二人の協力技が終了すると間髪入れずにノエルが電磁ネットで敵を拘束した後サブマシンガンで集中攻撃を始め、エリィは銃に周囲のエネルギーを収束し始めた。
「これで……終わりですっ!ブラストストーム!!」
「エアリアル――――カノン!!」
そして集中攻撃を終えたノエルは止めにミサイルポッドからミサイルを次々と発射させ、エリィは収束し終えたエネルギーを解き放った。
「――――!?…………」
ノエルのSクラフト―――ブラストストームとエリィのSクラフト―――エアリアルカノンを受けた事によって瀕死の状態になった敵は傷を回復させる為に自己再生を始めた。
「合わせられるかしら、ティオ!」
「はい、お任せください!」
その時レンと視線を交わして同時に頷いたティオはレンと共にその場でそれぞれが持つ魔導杖に集中して、協力技を発動した!
「天光満つる処に我はあり!」
「黄泉の門開く処に汝あり!」
二人が詠唱をし終えると敵は雷の檻に閉じ込められると同時に敵の頭上に電撃が迸る異空間が発生し
「「出でよ神の雷!これで最後よ(です)!インディグネイション――――――ッ!!」」
二人がそれぞれ魔導杖を天へと掲げて叫ぶと異空間から巨大な雷が敵目がけて落ちた!
「――――――!!??」
二人で協力して神の怒りに等しい裁きの雷を呼び寄せるティオとレンの協力技―――――インディグネイションを受けた敵は断末魔を上げながら消滅した!
「はあはあ………」
「な、何とか追い払えた………」
敵の消滅を確認したロイドは息を切らせ、ノエルは安堵の溜息を吐いた。
「い、今の………何だったの?教会の聖典に伝えられている”悪魔”みたいだったけど………」
「本物かどうかはともかく……かなりの霊圧を持ってましたね……」
「さっきの”悪魔”も”影の国”でも見かけたわ。――――最も迷宮に徘徊している雑魚レベルだったからさっきの”悪魔”程の強さじゃなかったけど。」
「亡霊、骸骨、化物ときて、最後には悪魔まで出やがったか………一体どうなってんだ、この遺跡は………?」
エリィ達がそれぞれ自分達が戦った”悪魔”について考え込んでいる中ロイドは目の前にある屋上に続く階段に気付いた。
「………多分、位置的にあの上が鐘楼になるはずだ。とにかく調べてみよう。」
「ええ………!」
階段に気付いたロイドの提案にノエルは頷き、仲間達と共に屋上に上がって、不気味な音を出し続ける鐘楼に近づいた。
「この音は………」
「鐘が共鳴している………?」
「………ひょっとして………この共鳴音が”場”を作っていた原因かもしれません。」
「なに………?」
「ど、どういうこと?」
「詳しい原理はわかりませんが………この鐘を中心に何らかの”場”が遺跡全体を包み込んでいるのが感じられます。ですからこの共鳴を止めればあるいは………」
「………”何か”が治まるかもしれねぇってか。」
「その”何か”が治まればこの遺跡に起こっている”異変”も治まる可能性はあるでしょうね。」
ティオの説明を聞いたランディとレンはそれぞれ鐘の共鳴を止めた後の状況を推測した。
「どうする、曹長?鐘の共鳴を止めてみるか?」
「………ええ、やってみましょう。ロイドさん、ランディ先輩。手を貸してください。同時に鐘を押さえてみましょう。」
「よしきた。」
「合点承知だ。」
そしてロイドとランディ、ノエルは協力して鐘を押さえ込んだ。
「あ………」
するとやがて共鳴は止み、それに気づいたエリィが呆けた声を出したその時周囲には清浄な空気が流れ始め、モヤはなくなり、空は青空になり、太陽の光が遺跡を照らしていた。
「モ、モヤが消えた………」
「おお………青空が戻ってきやがったぜ。」
「遺跡全体を包み込んでいた”力場”も消えたようです。ひょっとしたら内部も……」
「何か変化が起こっている可能性は高いわね。」
「よし―――中に戻って、確かめてみよう。」
「ええ………!」
その後ロイド達は礼拝堂まで戻った。
「時・空・幻の属性が働いている気配もなくなりました。どうやら”普通の空間”に戻ったみたいですね。」
「そうか………しかし一体、どういうカラクリなんだ?あの鐘の共鳴に何か原因がありそうだけど………」
ティオの話を聞いたロイドは頷いた後真剣な表情で考え込みながら呟き
「そこまではわたしも……ただ、あの鐘が何らかの”古代遺跡”である可能性は高いかもしれませんね。」
「”古代遺跡”……!」
「まあ状況を考えたらその可能性の方が高いわね。」
ティオの推測を聞いたロイドは目を見開き、レンは静かな表情で同意した。
「1200年前に存在していた”古代ゼムリア文明”の遺物のことね。不思議な力を持っているらしくて教会が管理しているそうだけど………」
「ああ、たまに噂で聞いたりしているぜ。どこぞの貴族が隠し持ってたやばい力を持っている遺物を教会が調べて没収したりとかな。」
「そんなものがあるなんて今まで知りませんでした……」
「…………………(と言う事は今回の件はケビン神父達の方が適任だったんだろうな……)」
エリィとランディの話を聞いたノエルは疲れた表情で溜息を吐き、ロイドは考え込んでいた。
「何しろ現代の技術では一切解析が不可能だそうで………そういう意味でも、一般の人には殆んど知られていないようですね。」
「う、うーん………(どうしよう……?”星杯騎士団”の存在は極秘らしいから本人たちの許可もなく公にできないしな……)」
(あの様子だと”星杯騎士団”に調べてもらうかどうか迷っているみたいね。ま、”星杯騎士団”に調べてもらおうと思ってもエラルダ大司教は許可を出さないだろうから無理でしょうけど。)
ティオの説明を聞いたロイドはこれからの方針を考え込み、その様子をレンは静かな表情で見守っていた。
「………―――いずれにしても、この遺跡についての手掛かりは十分すぎるほど掴めた気がします。これ以上は報告書をまとめて専門家に調査を依頼した方がいいかもしれません。」
「そうだな………」
「まあ、それが妥当かと。」
そして考え込んだ後提案したノエルの言葉にロイドとティオは頷き
「そんじゃ、遺跡の調査はこれで切り上げるとするか?」
ランディはノエルを見つめて尋ねた。
「ええ………――――皆さん。ご協力、ありがとうございました!これにて遺跡調査の任務を完了したいと思います!」
その後ロイド達は遺跡の入口まで戻って来た。
「はあ……ちゃんと出られたわね。正直、生きた心地がしなかったわ。」
入口まで戻って来たエリィは安堵の溜息を吐いて呟いた。
「ふふ、お疲れ様でした。それにしても………あの鐘、一体何なんでしょうね。それにあの化物たちも一体………」
「”塔”も不思議な場所だったけどこの”僧院”はそれ以上だったな。それと礼拝堂の裏にあったあの不気味な”儀式の間”か………」
「ええ………正直、教会の遺跡にしてはあまりにも禍々しすぎると思う。500年前、一体何があったのかしら?」
「「……………………………」」
ノエルとロイド、エリィが話し合っている中、ティオとレンはそれぞれ黙って考え込んでいた。
「ま、そのあたりは専門家に任せて俺達はとっとと帰ろうぜ。テーマパークにあるホラーハウスを10回くらいハシゴした気分だぜ。」
「ふふ、そうですね。それじゃあ停車している車両の所まで戻りましょうか?」
「ああ、そうしよう。」
こうして”月の僧院”の”異変”を解決したロイド達はクロスベル市に戻る為に山道のトンネル内に駐車している装甲車の場所へ向かった―――――
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