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遊戯王ARC-V 千変万化

作者:ユキアン
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第1話


「父さんは逃げてなんかいない。だけど、この場にいないのは事実だ。だから不戦敗でも仕方ない。だから、このオレ、ランキング4位、『千変万化』榊遊矢が新チャンピオン、ストロング石島にデュエルを申し込むぜ!!」

「ほう、榊遊勝の息子か。最年少プロとは聞いていたが、すでに4位だったか」

「昨日11位から上がったばっかでね。それで、オレからの挑戦は受けてくれるのかい?」

「ただのガキなら断る所だが、4位ならチャンピオンへの挑戦権が存在する。良いだろう、来い!!親父が逃げたんじゃないと証明してみせろ!!」

「そうこなくっちゃ。戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が、モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い、フィールド内を駆け巡る。見よ!!これぞデュエルの最終進化系!!」

「アクション!!」

「デュエル!!」

「俺の先行だ。クリバンデッドを召喚。カードを一枚セットしてターンエンド。エンドフェイズ、クリバンデッドをリリースして効果を発動。デッキを5枚めくり、その中に魔法・罠カードがあれば1枚を手札に加え、残りを墓地に送る。俺は蛮族の狂宴LV5を手札に加える」


ストロング石島 LP4000 手札4枚

セットカード1枚


「オレのターン、ドロー!!まずは召喚師セームベルを召喚。そして効果を発動。セームベルと同じレベルのモンスターを手札から特殊召喚できる。オレは手札から白魔導士ピケルを特殊召喚」

セームベルの効果でピケルが呼び出され、仲が良さそうに二人ではしゃいでいる。

「カードを3枚伏せてターンエンド」

遊矢 LP4000 手札1枚

召喚師セームベル ATK800
白魔導士ピケル ATK1200
セットカード3枚

「なんだ、そのデッキは?」

「見て分かんない?」

「いや、まさかな。俺のターン、ドロー。魔法カード蛮族の狂宴LV5を発動、墓地からバーバリアン2号、手札から1号を効果を無効にして特殊召喚。そして2体をリリースし、現れろ、バーバリアンキング!!」

バーバリアン・キング(アニメ版) ATK3000

「バーバリアン・キングはバーバリアンをリリースして召喚した時、2回攻撃ができる。やれ、バーバリアン・キング!!小娘共を粉砕せよ!!」

「幼女に襲い掛かるなんてまさに蛮族!!この人でなし!!」

「デュエルにそんなものは関係ない!!」

「確かに。だけど、忘れちゃいけないな。彼女達はこんな見た目でも魔法使い。決して蛮族には手に入れることのできない力の持ち主達だ。そしてオレだって魔法使いだ。1・2・3!!」

バーバリアン・キングの棍棒がセームベル達を薙ぎはらう直前、オレを含めて煙に飲まれて姿を消す。

「どこに消えた!?」

「こっちだよ」

塔の上から声をかける。

「アクションマジック、大脱出を発動したのさ。バトルフェイズは終了させてもらったぜ」

両隣にいるセームベルとピケルが観客に手を振る。歓声があがり、二人が嬉しそうにする。

「くっ、ターンエンドだ」

「エンドフェイズ、伏せてあった偽りの種を発動。手札からアロマージ-ジャスミンを守備表示で特殊召喚」

アロマージ-ジャスミン DEF1900

「まさか、貴様、アイドルデッキか!!」

「ノンノン、こいつは確かにアイドルデッキに見えるだろうが、その正体はアロマージ軸の幼女デッキだ!!」

「大して変わらんだろうが!!」

「かわいいは正義だぜ、チャンピオン。見た目で侮ってると痛い目を見るぜ。お楽しみはこれからだ。リバースカードオープン、永続罠、潤いの風、乾きの風。まずは潤いの風でライフを1000払い、アロマージ-ローズマリーを手札に加える。さらにもう一つの効果、相手よりライフが少ない時500LP回復する」

遊矢 LP4000→3000→3500 手札1→0→1

「ライフが回復したことで乾きの風とジャスミンの効果が発動する。ジャスミンは1ターンに1度ライフが回復した時に1枚ドローする。そして乾きの風は1ターンに1度ライフが回復した時に相手の場の表側表示のモンスターを破壊する。オレはバーバリアン・キングを選択して破壊でターンエンドだ」

「なんだと!?なぜ、バトルフェイズにこれらを使わなかった!?」

「その方がエンターテイメントだからさ。大脱出以外を拾っていたらこいつらを発動したさ。舐めているわけじゃない。だけど、観客をもっと楽しませる演出ができたからやる。勝ち負け以前に楽しませるのがオレのエンタメデュエルさ」

ストロング石島 LP4000 手札3枚

セットカード1枚

「オレのターンだ。スタンバイフェイズ、ピケルの効果を発動。オレの場にいるモンスターの数かける400のライフを回復する」

遊矢 LP3500→4700

「そしてジャスミンの効果でドロー。いいカードだ。黒魔道師クランを通常召喚。ジャスミンのもう一つの効果、自分のライフが相手よりも多いとき、通常召喚とは別に、ジャスミン以外の植物族を召喚できる。来い、アロマージ-ローズマリー」

黒魔道師クラン ATK1200
アロマージ-ローズマリー ATK1800

「う~ん、セットカードが恐いな。潤いの風のサーチ効果でカナンガを手札に加えてカードをセット。ターンエンドだ」

遊矢 LP3700 手札2

召喚師セームベル ATK800
白魔導士ピケル ATK1200
アロマージ-ジャスミン DEF1900
アロマージ-ローズマリー ATK1800
黒魔道師クラン ATK1200
乾きの風
潤いの風
セットカード1枚

「俺のターン、ドロー!!くっ、カードを1枚伏せてターンエンドだ」

「エンドフェイズに潤いの風のサーチと回復、そしてジャスミンの効果を発動。2枚目のジャスミンをサーチしてドロー」

ストロング石島 LP4000 手札3枚

セットカード2枚

「オレのターン、ドロー。スタンバイフェイズにピケルの効果で回復。ジャスミンでドロー」

遊矢 LP3200→5200

「手札を1枚捨ててツインツイスターを発動。魔法・罠を2枚まで選択して破壊する。オレはそっちの伏せカード2枚を選択」

「ミラーフォースと攻撃の無力化が!?」

「さあ、これで怖いものはなくなった。バトル、セームベル、ピケル、クラン、ジャスミンの順で攻撃だ!!」

「まだだ、まだ終わらん。ジャスミンのダイレクトアタック時、アクションマジック、回避を発動!!これで俺のライフは残る」

ストロング石島 LP4000→800

「それはどうかな?」

「なにっ!?」

「速攻魔法、ダブルアップチャンス。攻撃が無効にされた時、無効にされたモンスターの攻撃力を2倍にして再度攻撃できる。みんな、ストロング石島に抱きついて動きを封じるんだ」

ジャスミン以外の幼女たちがストロング石島の巨体に抱きついて動きを封じる。

「くそっ、離せ!!アクションマジックが」

「アクションマジックは拾わせないさ、ストロリコン石島!!」

「勝手に名前を改変するな!!」

「さあ、お楽しみはこれまでだ!!ジャスミンでダイレクトアタック」

ジャスミンの攻撃が当たる直前、抱きついていたみんながストロリコン石島を盾にするように背後に逃げる。

「くそおおおおお!!」

ストロング石島 LP800→0

「チャンピオンの座GET!!父さん、帰ってくるまではなんとか死守してみせるから、だから早く帰ってきて!!」








チャンピオンになって2年半、未だに父さんは帰ってこない。遊勝塾は父さんのファンだった人たちが辞めて、規模は小さくなった。オレはオレでラジオやインターネットの動画サイトでリクエストがあったカードをメインにしたデッキを紹介したり、遊勝塾の講師をしたり、チャンピオンの防衛戦をこなしながら過ごしている。

この2年半でいつまでチャンピオンの座を守ればいいのかと何度も自問してきた。正直言って疲れ切っていた。その姿に母さんや親しい皆が心配してくれるのだが、それが逆に辛いと感じてしまうほどに疲れ切ってしまった。最近では、柚子すら避けるぐらいに。作った笑顔で周りを楽しませるピエロ。それが今のオレだった。

オレは自分の笑顔を取り戻したい。父さんが心配するだろうから。だから、オレのことを知らない場所に行きたかった。半年の休暇を貰い、オレは旅に出た。そして、オレは戦場にたどり着いた。どうやってここまで来たのかははっきりと覚えていない。

だが、目の前で巨大な機械族モンスターが街を破壊している。そして、逃げ惑う人々をカードに変えていく奴ら。

「デュエルモンスターを侵略に使うなんて。許さない!!」

あの巨大な機械族モンスターの攻撃力は分からないが、とりあえず5000と仮定して攻撃力で倒せるデッキ。あれだ!!

「罠カードを3枚セットしてリリース、ウリア!!さらにディープ・ダイバーを召喚してモンスターゲートを発動。ディープ・ダイバーをリリースして通常召喚可能なモンスターを引くまでカードを引き、それ以外を墓地に送る。引いた闇の仮面を守備表示で特殊召喚。そして、墓地に送られたのは21枚の罠カード。これによってウリアの攻撃力は24000!!行け、ウリア!!彼奴らを止めろ!!」

ウリアの頭の上に立ち指示を飛ばす。目に見える範囲で10体のモンスターが見えるが、それらはウリアの一撃で破壊されていく。だが、その間にも逃げまどう人たちが次々とカード化されていく。そんな中、父さんと父さんのEMが一瞬だけ見えた気がした。だけど、それも見失ってしまう。気にはなるが、今はこの町を襲う奴らの相手が優先だ。

「ウリア、目に付くでかいのを破壊していけ!!」

ウリアの背中を滑り降り、近くにいたカード化を行っている仮面の男を殴り飛ばしてデュエルディスクを奪う。デッキを抜き取り、オレのデッキに入れ替えて戦場を走る。

「ゴブリンドバーグを召喚、効果でゴゴゴゴーレムを特殊召喚。2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築。希望と可能性の光を身に纏い、未来を切り開け!!No.39 希望皇ホープ!!可能性の先にある奇跡の雷光、SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング!!そして手札のZW-阿修羅副腕と雷神猛虎剣を装備。全てを薙ぎ払え、ホープ剣ライトニングスラッシュ!!」

カード化を行っている奴らは色違いの制服を着ているので判別はしやすく、デッキもアンティークギアで統一されている。それらをライトニングの全体攻撃で打ち倒していく。ライフが0になった奴らは姿が消える。理由はわからないが、再び倒すことを考えれば楽でいい。あらかた片付けたところでこんな所に居るはずのない女の子を見つける。

「柚子!?」

柚子が誰かに追い詰められている。カード化なんてさせるか!!

「ライトニング!!」

オレの指示で、ライトニングが柚子と追い詰めている男の間に割り込み、雷神猛虎剣を振るう。男が後ろに跳躍し、その間にオレも柚子の前に立つ。そこで初めて相手の顔を見る。

「「何っ!?」」

男とオレが同時に驚く。そこにいたのは、オレと同じ顔をした男だった。

「オレと同じ顔だって?」

「貴方も、ユートじゃないの?」

背後に庇っている柚子がそんなことを言う。じゃあ、この娘は柚子じゃないのか。まあ、守るのに変わりない。

「分が悪そうだ。今日の所は引かせてもらおう。魔法カード、ヴァイオレットフラッシュ」

オレと同じ顔をした男が魔法カードを発動させると紫色の閃光が発せられ、収まった頃には男の姿は消えていた。

「瑠璃ーー!!何処にいるんだ!!」

「お兄ちゃん!?」

「そっちか!!っ、ユート?だがそのデュエルディスクは奴らの、両手にデュエルディスク?」

柚子に似ている女の子がお兄ちゃんと呼んだ相手が混乱している。

「とりあえず、オレには君達と敵対する気はないよ。それより、あの制服を着た連中はどうなってる?」

「あ、ああ、でかい機械族モンスターは全部あの赤い竜みたいなモンスターが倒した。今は大人しくしているがいつ動き出すかわからない」

「ああ、ウリアはオレが召喚したモンスターだ。放っておいても大丈夫だけど、あまり近づかないように」

「そうか。あのウリアとかいうモンスターのおかげで被害が格段に減った。制服組だが、ほとんどが撤退したようだ。今は救助活動中だ」

「そうか。なら、オレは避難所には行かない方が良さそうだから救助に回るよ。ああ、できればデュエルディスクを貸してくれないかな?あいつらから奪ったやつだと判別しにくいでしょ?」

「いいだろう。予備のディスクだ」

投げ渡されたディスクと奪ったディスクを交換して、再度同じ布陣を整える。

「あの、あなたの名前は?」

「オレかい?オレは、榊遊矢。世界一のエンタメデュエリストを目指してる男さ!!まずはこの街のみんなを笑顔にしてみせるさ!!」

「ふざけるな!!笑顔だと?この惨状を見ろ!!故郷を滅ぼされて、笑顔になどなれるわけがないだろうが!!」

「いいや、笑顔にしてみせるね。デュエルは侵略や復讐の道具なんかじゃない。最高の娯楽なんだから。昨日までの君だってそう思っていたはずさ」

「それは、だが、現実を見ろ!!今の俺たちに必要なのは笑顔なんてものじゃない!!奴らを滅せる力だ!!貴様もその力を俺たちに貸せ!!」

「確かに戦士である、あろうとする君はそうだろう。だけど、戦えない者達だっている!!そんな人たちが心折られ、生きる希望を失わないように笑顔が必要なんだ!!だから、オレはオレの戦い、みんなを笑顔にするエンタメデュエルをやめるつもりはないさ」

「エンタメデュエル、それに榊って、もしかして遊勝先生の?」

オレとそっくりな男に狙われていた瑠璃と呼ばれた女の子が父さんのことを知っていた。つまり、あの時見えたのは父さんなんだ。

「父さんのことを知っているの!?」

「えっと、榊遊勝先生、遊勝塾っていうのを開いていて、デッキはEM、マジシャンみたいな格好をしているけど」

「父さんだ。やっと見つけた。父さんもいるなら、みんなを笑顔にするなんて簡単さ。超一流と一流のエンタメデュエリストが揃ってるんだから」

「遊勝先生がよく話していた遊矢君なのね」

「どんなことを話したのか気になるんだけど」

「みんなを笑顔にするのを頑張ってるけど、それ以上にカードを愛しているって。捨てられているカードでデッキを作って、それでデュエルに勝利する。使われるモンスター達も、喜んでいるって」

「あ~、うん、確実に父さんだ。捨てられたカードでデッキを組んだのを知ってるの父さんだけだし」

はじめは、EMが使いにくくて使えるカードを探して捨てられているカードを拾い集めていただけなんだけどね。だけど、どんなカードにだって輝ける方法があることを知って、EMを輝かせる方法を見つけた。見つけたけど、そのおかげでオレのEM達を使うわけにはいかなくなった。誰も持っていないカード、ペンデュラム。オレが書き換えてしまったカード達。誰にも見せるわけにはいかなく、父さんとのデュエルとしか使えないカード達。だけど、あれ以上に見ている人たちを笑顔にできるカードはない。

「まずは救助作業だな。それから治療を行って、みんなを笑顔にするのは最後だ」

「待って、私も行くわ」

「瑠璃!?」

「ごめんね、お兄ちゃん。お兄ちゃんの考えもわかるけど、彼の考えの方が私には合ってるの」

そう言って瑠璃と呼ばれた少女は鳥獣族のエクシーズモンスターを特殊召喚して、その背に乗り、オレの首元を掴ませて空を飛ぶ。

「ちょっ!?」

「それじゃあ、お兄ちゃん後でね」

「瑠璃ぃ!?くっ、榊遊矢!!瑠璃に傷をつけたら許さんぞ!!」

首がしまって言い返せないどころか、窒息しそうになっているので先に体勢を整えるところから始める。鳥獣族エクシーズモンスターの足首を掴んで、逆上がりの要領で勢いをつけて飛び上がり、瑠璃と呼ばれた少女の隣に捕まる。

「ブハァ、窒息するところだった」

「へぇ、すごいね。あの状態から飛び上がるなんて」

「これでもアクションデュエルのチャンピオンだからね。あれぐらい出来て当然さ。オレの住んでいるところの遊勝塾はオレがデッキ構築なんかの座学を、父さんの友人の塾長がアクションデュエルの立ち回り方を実技で教える形だからね」

「すごいのね。あれ、でも私と同じぐらいの年齢だよね?」

「この前15になったばかりだよ。10歳からプロとして活躍して、12でチャンピオン。そこから2年半、チャンピオンと塾の講師と中学生を掛け持ちで活動してたんだけどね。だけど、無理をしすぎて心をね、病んじゃった」

「大丈夫だったの?」

「いいや。全然大丈夫じゃなかった。家族や幼馴染がオレのことを心配してくれているって頭では分かっているのに、それがチャンピオンだからって思うようになっちゃってね。このままじゃ、何を言ってしまうか怖くなった。だから、半年ほど休暇をもらって世界を旅してきた。オレのことを誰も知らない場所を求めて。そしてたどり着いたのがこの街だ。街が壊されているのを見て、オレは思い出した。デュエルは侵略や復讐の道具なんかじゃない。最高の娯楽なんだってことを。それをまずはこの街のみんなに思い出してもらいたい」

父さんだってそうだ。チャンピオンなんて物よりも榊遊勝という一人のデュエリストとしてみんなを笑顔にしていたんだ。

「チャンピオンなんて肩書きの前に、オレは榊遊矢って名前の一人のデュエリストなんだって思い出させてくれたこの街に、オレがとっておきの笑顔にしてみせる。それがオレが今一番やりたいことだ」

忘れていたワクワクをオレは取り戻した。このワクワクをみんなに届けるのがエンタメだ。さあ、どうやって届けようか。

「ねぇ、私にも手伝わせてくれる?」

「もちろんさ。オレが笑顔にできない人も、君になら笑顔にできるかもしれない。最終的にみんなが笑顔になればいいんだから」

「黒崎瑠璃、瑠璃って呼んで」

「じゃあ、オレも遊矢でいいよ。プロでの二つ名は『千変万化』多数のデッキを使うデュエリストさ。座右の銘は『誰にでも輝ける瞬間はある』稀にどう使っていいのかわからないカードはあるけどね。新しく製造されるカードに期待する」

「例えば?」

「同じレベル、同じ種族、同じ属性、攻撃力1901以上、通常モンスター、ステータスが両方低いカードかな」

「攻撃力1900?そんなラインあったかしら?」

「条件が攻撃力1500以下のリクルーターと地獄の暴走召喚が使えず、1900以上のモンスターとの戦闘で破壊されない翻弄するエルフの剣士やロードランナーを破壊できないラインだ。ステータスが高い方はいざ知らず、低い方はどうすればいいのかわからないや。まあ、持っていないからって理由か、デザインで気に入っているからとしか言いようがないかな。ああ、いや、禁止令や夜霧のスナイパーなんかの対象名を指定するタイプのカードを回避するためもあるか」

「すごい知識量ね」

「これぐらいは覚えてないとモンスター達を輝かせれないからね。あと、輝かせても負けるのは悔しい」

そんなオレの言葉を聞いて瑠璃が笑う。彼女は瑠璃なのに、柚子のことを思い出して胸が苦しくなる。

「うん、負けるのは悔しいよね」

「そうだよな」

オレの記憶にある柚子は笑顔じゃない。泣きそうな、苦しそうな、そんな顔しか思い出せない。エンタメデュエリスト失格だな。まあ、それがわかっただけでも意味はある。帰ったら、一番最初に笑顔にしてみせる。 
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