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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
  Air ~没死、必死、決死~


「鎌鼬切演武、四季早々・花吹雪」

蒔風の剣技が「奴」に襲いかかる。

「くっ、お」

「終わらせるぜ!」

蒔風がさらに夏、秋と続けようとする!



「フンッ!!!!!」

ドッ、ズガ!!!

「奴」が魔導八天を地面に叩きつけ、爆発したかのように砂塵が舞う。



「おぉ!?ッブ!!砂口入ったぁってうお!?」


蒔風の切演武が掻き消され、さらに地面が陥没してそこに向かって蒔風がズルズルと引きこまれる。
まるで蟻地獄だ。

足首まで沈んだところで、蒔風が空中に飛びそこから脱する。

しかし


「蒔風さんいらっしゃ~~い♪」

「な、ん!?」

ガゴッ!!!


蒔風を待ちうけていたのは「奴」の振るう魔導八天だった。
タイミングばっちりで蒔風の頭部をとらえたそれは防がれはしたが、その衝撃は殺されることなく叩きつけられる。

上昇してた蒔風の体がそのままの軌道で戻され、蟻地獄のど真ん中にのめり込む。



「主!!!」

「地獄に堕ちろや」


蟻地獄の中に沈んでいく蒔風をそのまま放置し、「奴」が着地。
観鈴達の居るバリアに向かって歩いてくる。

「おのれ貴様ぁ!!!」

蒔風の姿が砂の中に消える。

それを見て、玄武が飛び出し「奴」に向かった。
その手に玄武盾を出現させ、砂浜の上とは思えないスピードを出す。

ドゴン!!!


「奴」のケンカキックと玄武盾が真っ向からぶつかり合う。
玄武も「奴」も一歩も引かず、凄まじい衝撃をまき散らしその場で止まった。

「儂の防御力は十五天帝随一の物!!!そう簡単には破れまいて!!」


玄武が「奴」に余裕気に言った。
蒔風がいつもやるように、自信満々に

だが

「そうだな。だがそれは蒔風が使用しての事。お前ひとりじゃ・・・なぁ?」

ピ・・・キ・・・

「!?バ、そんなバカなことが・・・・・!!!!」

ピキキキギギギ!!!

「引っ込めよ。本来前菜程度の奴が、今更戦場に出てくるな」

バガア!!!!

玄武盾が砕け、「奴」の蹴りが玄武の腹部をとらえる。
鳩尾に命中したそれは玄武の意識を彼方へ飛ばし、海にまで身体を吹き飛ばした。


「単体じゃ思ったほど堅くねえな、あの亀。さぁ~~てと、オレに生かされた命、オレのために消えてもらおうか」


「奴」の手が観鈴に伸びる。
晴子が「奴」の手を払おうとするが、簡単に投げ出されてしまう。

「いや・・・いやぁ・・・・助けて・・・」

「今だけだ。新たな世界で、お前も、お前の愛しい人も、蘇る」

「奴」の言葉には本気の想いがこもっていた。
殺意でもなく、悪意でもなく、純粋に世界を造り変えたい。
そして皆が笑えるような新しい世界に。

その想いだけ
それしかなかった

それしかないから他の犠牲など気にも留めない。
新たな世界しか見ない。

その過程で流される涙、悲しい想い、怨嗟の叫び。
そのすべてなど、どうでもいい。
ましてや主要人物のなど


「奴」の手が観鈴の目に触れようとするまで、あと三ミリ。


ドッブア!!!!


「スーパーライダァーー、月面キィック!!!!!」

ドゴオ!!!!

その背後で蟻地獄の中心部が噴水のように噴き上がり、そこから銀色のライダーが飛び出した。
仮面ライダースーパー1に変身した蒔風が、そのまま「奴」に向かってキックを仕掛ける。

「奴」が振り返り、その腕がキックを受け止め、後ろに流す。
蒔風はそのまま観鈴の元に着地し、彼女を抱えて晴子の元に届けた。


「お母さん!!!」

「う・・・観鈴?」

「大丈夫ですか!?」

蒔風が晴子に呼び掛ける。

「あんた・・・蒔風って言ったっけ?あんたなん?」

外見がスーパー1なので、晴子が恐る恐る聞く。
それに蒔風が答えた。

「そうです。玄武は?」

蒔風の声がしたので安心し、晴子は言った。


「「奴」に吹き飛ばされて・・・海に」

蒔風が海のほうに視線を向ける。

「・・・・大丈夫でしょう、あいつなら」

そう言いながら変身を解く。

「引き続きここにいてください、絶対に」



蒔風が「奴」に向かう。

「んん?なんで出てこれた?・・・ああ、そういや、スーパー1は・・・」

「そういうこと、だ!!!」

蒔風が「奴」に向かって駆けだす。


蒔風があの蟻地獄を抜け出せたのはひとえにスーパー1の能力のおかげだ。

仮面ライダースーパー1は本来宇宙開発用のサイボーグだ。
ゆえに、無重力までは無理だとしても、重力操作はお手の物である。

それによって重力を軽減させ、蟻地獄を一気に抜け出せたのだ。


バッキ!!

「一気にあんだけのライダーと出会っといてよかったぜ!!」

「能力だけかよ。たいした事ねえな」

バゴゴン!!!

ズッシャァ!!!

蒔風が地面スレスレに右で回し蹴り、「奴」の左足を払いにかかる。
それを「奴」が足をあげてかわし、踏みつけようとする。

それをさせる蒔風ではない。
両手を地面につき、逆立ちするような勢いで左足で蹴りあげる。

そのまま逆立ちしたまま足を広げ、カポエイラのように蹴り攻める。

ガガッ、ガッガッガッ、ゴガガガガガ!!!


蒔風の額に汗がたまっていく。
それに対して「奴」は涼しげな顔だ。

迫る攻撃を受け止めるだけで、弾きもしない。
まるで攻撃の来たところにうまく腕や足を当てはめていくゲームをしてるようだ。

「どうした蒔風、きつそうだな?そんなに汗かいちまってよ」

「ハッハッハッ・・・出来の悪い砂風呂に使っちまったからな!!!」

「だったら体冷やせやぁ!!」

ガシッ!!

蒔風の脛を脇に挟み込み、「奴」がブン回し始める。
そして蒔風を海のほうに投げ放った。

ドッパン!!!

そんなに浅い入射角でもないにも拘らず、蒔風の体が水面ではねた。



「水」とは恐ろしいものだということを知ってるだろうか?

あれほど滑らかで、スラスラと流る水は、実はとても硬くなることがある。
いや、実際に水か硬く固まるわけではない。
しかしその硬度は銃弾をも砕く時がある。

ハンドガンならば銃弾は容易に水の中に入ってくる。
しかしなん十ミリもの機関銃で水面を撃った場合、銃弾そのものの力によって、砕け散るのだ。

水が、ではなく、銃弾がだ。
突入してくる物の力によって水はそれ相応の牙をむいてくる。

石を浅く投げてはねさせる「水切り」も同じだ。

あれは「低い」角度で投げ、「回転」させるという二つの力があってこそ水の上を撥ねるものだ。
しかし今回蒔風の体は「高い」角度でほぼ「無回転」で投げつけられてそれで跳ね上がったのだ。

その威力が想像できるだろうか。
それによって蒔風の体に残されたダメージが想像できるだろうか。



「ぁ主!!!」

ドッバア!!!

海中から玄武が獣神体で海上に飛び出す。
その口から水流が放たれる。

クァ!!!

「玄武!!!!」

蒔風の眼が見開かれ、くるりと空中で回転して体勢を立て直す。
それだけでもボキゴキとアバラが悲鳴を上げる。

そこに玄武の放った水流が届く。
蒔風がそれの先端に足の裏を合わせ、勢いに乗って飛び出していく!!

途中で水流はなくなり、玄武も剣の状態に戻ってしまう。
それでも蒔風の勢いは止まらず、「奴」に向かって突っ込んでいく。


「おおおおおおおおお!!!!!」

蒔風が腕を「奴」に向かって伸ばし、殴りかかろうと鬼神のような表情をして迫る。

そんな蒔風を「奴」は呆れたように見、体を返す。
スッ、と「奴」が蒔風をかわし、通り過ぎていく蒔風の後頭部に回転蹴りを上から下に真っ直ぐ叩き落とした。


「ご・・・げ・・・」

「沈みなさい。そしてそのまま死ぬのです」

「お・・・断りですのことよ!!!」

蒔風が叩きつけられながら身を回転させ、「奴」に蹴りかまそうとする。
だが「奴」はそんなこと気にも留めず、反対の足でちょうどむき出しになった蒔風の腹を突き破る勢いで踏みつけた。



「バッボガ・・・ぎいいいいいいいいいいいい!!!!!!」

「あらあらあらあらあらあら!?蒔風君の楽々勝利タイムはどうしたよ?お前の力はこんなもんじゃねえだろ!?」

しかし蒔風がそれに答えることはない。
目は虚ろ、口からは血を吐き、全身の骨の内、四肢と頭蓋を除いた骨が、すべてと言っていいほど折れているのだ。


「・・を・・・れ・・・・こ・・」

「はぁ?なんだって?ま、殺すか」

なんとも気楽そうに「奴」が踏みつけている足を持ち上げ、ふたたび振り下ろそうとスタンばった。
蒔風が静かに目を閉じる。
諦めたわけではない。

しかし、もはや開けておくだけの力もないのだ。
そうして蒔風の視界が暗くなる。
「奴」の笑い声が響いた。



to be continued
 
 

 
後書き

アリス
「次回、今度こそ!!純白、翼、開翼」

ではまた次回






観鈴ちん、ぴんち 
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