暗闇を照らす白き日差し【影に身を委ねた一夏】
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プロローグ
プロローグ Ⅱ
前書き
亡国企業へと殴り込み、マドカと出会う
ANOTHERSIDE
大臣暗殺を阻止すべく出撃した織斑 千冬率いる特殊部隊だったが、隊長のラウラ・ボーデヴィッヒの負傷と大臣が暗殺された事で作戦目的が失われた〈シュヴァルツェ・ハーゼ(黒ウサギ部隊)〉は作戦を中止して基地へと帰還せざるを得なくなった。
ラウラ以外に死傷者は居なかったものの、作戦失敗の上に隊長の負傷は決して小さくない損害だった。
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ラウラ「う……きょ…教官……私は…一体……」
千冬「取り敢えずじっとしてろ。あの戦闘で腹部をヤられたそうだからな。暫くは安静にしてろ」
ラウラ「そう…でしたか……すみません教官…私が…不甲斐ないばかりに撤退に……」
千冬「自分を責めるなボーデヴィッヒ、今回の失敗の非は私にもある」
作戦失敗を悔やむラウラだったが、それは千冬も同じだった。
実は作戦決行の前に千冬は“私も殺し屋捕獲に協力する、全員私の足を引っ張るなよ。”っと言ってたのだが、結果は白夜の素顔を見て固まり、協力するどころか己自身が足を引っ張る始末だったのだ。
ラウラ「ところで教官、あの白夜をよく知っておられるような発言をしてましたが、彼とは何かあったのですか?」
千冬「ん?ああ……私に弟が居る…いや、居たって話はお前にはしたか?」
ラウラ「はい……幾度が聞いた事があります。確か2連覇がかかった第2回モンド・グロッソ開催時に誘拐されて以来行方知れずだとか__」
千冬「その弟があいつ、白夜自身だ」
ラウラ「⁉︎」
途端ラウラは千冬と白夜との会話を思い出してその件を本人に聞くと、その正体は以前に何度も聞いた織斑 千冬の実の弟、織斑 一夏だと知りラウラは驚いた。
ラウラ「奴が、白夜が教官の弟⁉︎」
千冬「奴の本名は織斑 一夏、私と血が繋がっている唯一の家族で姉弟だ」
ラウラ「ですが、教官の弟は例の誘拐事件でずっと行方が解っていない筈ですが__」
千冬「確かにな、だがあいつは間違い無く一夏だ。だが、あの事件以来奴に何があったんだ?
前は私を凄く尊敬していたのに、今は軽蔑くらいしか感じられなかった」
ラウラ「あの誘拐が原因なのでしょうか?
ですが、幾ら助けて貰えなかったとはいえ、あそこまで険悪を抱くとはとてもに考えられません」
千冬「普通に考えればな、だが政府の馬鹿どもは一夏が誘拐されてた事を準決勝前から知っていた」
ラウラ「準決勝前、そんな前からですか⁉︎なら何故決勝後になるまで教官に伝えなかったのですか⁉︎」
千冬「簡単だ、私を棄権させない為に決勝後まで伝えなかったのだ。
お陰で監禁場所に辿り着いた頃には全てが遅かった。現場はお前が知ってる通り、蛻(もぬけ)のカラだった」
ラウラ「そんな…教官を優勝させる為にそんな……幾らなんでも横暴過ぎます!」
千冬「私もそれを始めて聞いたはそうだった。だが国のイメージダウンを阻止する為なら仕方ないだろう」
ラウラ「……」
教官の千冬に話を聞く間、ラウラは驚いたり政府の対応にショックを受けたり怒ったりもしたが、最後に放たれた言葉に沈黙してしまった。
千冬「あれ以来私は心に誓った。どこかであいつと再会した時は、必ずその事を謝り、そして私の下に帰らせて二度とあいつの側から離れないと。
だが……今回それは叶わなかったがな……」
ラウラ「……教官、私もお手伝いします。」
千冬「お前の気持ちはありがたい、だがお前は代表候補生で隊長だ。オマケにあいつに惨敗してしまっている。そんなお前が私の手伝いをするなぞ100年早いぞ」
ラウラ「それは同感です。ですが、このまま負けたままで終わりたくないのです。
お願いします教官、私を一から鍛え直して下さい」
千冬「……解った、お前がそう言うなら鍛えてやろう。だが私はもうじき日本に帰らなければならない。特訓の時間はかなり限られてる、ハイペースで進めるからついて来れるか?」
ラウラ「無論です、教官」
己の敗北を認めきれてないラウラは白夜とのリベンジに備え、教官の千冬から一から鍛え直してもらうことになり、訓練はより激しいものなった。
そのお陰で何人もの士官がヴァルハラへ旅立ったというのは言うまでも無い。
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白夜SIDE
ドイツでの一件から暫くした雪が降り積もる12月23日、俺はアメリカの街を歩いていた。今度の依頼はISの強奪やテロ活動をやってる〈ファントムタスク〉って企業を攻撃、これを壊滅することだ。
たく…IS強奪なんざやるとは随分物好きな連中だな。まあいいや、どっちにしても叩き潰すことに変わりは無いしな……
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白夜「ここか…奴らの根城は……」
情報を頼りに目的地に着いたはいいけど、そこは高層ビルとかじゃなくてゴミ溜めみたいなスラム街の一角にある古ぼけたアパートだった。
たく…ここが連中の本拠地とはな……まっ、それは俺も同じだから人のことを言える立場でもないな……
まあどっちでもいいけど、サッサと始めっとすっか!
≪ドカーンッ!≫
まずは大胆に錆びれたドアを蹴破って中へと侵入。
本当に中も古ぼけて趣味が悪いと思うぜ……
「誰だ貴様、いきなり入って来やがって!」
おやおや、早速お出迎えか。しかもIS纏っての登場とは滑稽なサプライズだな……
ん?待てよ、よく見りゃあのIS……
白夜「お前、もしや俺を…いや、織斑 一夏を誘拐した輩の1人だな?
確かあの時、ISで挑んでおきながら無様に退けられたあの女」
「何、って事はテメェは織斑 一夏か⁉︎」
白夜「正確に言うなら、以前はその名だった者。そして今は白夜と名乗る者、って言ったとこだな」
「ハッ!テメェがあん時のクソガキとは驚いたな。まさかこんなとこで再会しちまうとは、神様は理不尽な運命を押し付けたもんだな」
白夜「確かにな。まあそんな事はどうても良いから、サッサと消えてもらおうか〈ファントムタスク〉!」
「ぬかせクソガキ!消えるのはテメェの方だ‼︎」
たく…まさかあん時の女に鉢会うとはな。まっ、どの道叩き潰すから別に問題は無いしな!
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≪ズガーンッ!≫
「ぐえっ!」
たくな……あの時と全く太刀筋が変わってねぇ…てか進歩してねぇ……そんなんで粋がるとは随分と世間知らずみてえだな……
白夜「どうしたどうした?さっきまでの余裕は何処えやらだな、そんなんじゃどの道グサリと身体貫いて終わらせちまうぞ」
「チッ!舐めんなクソガキ‼︎」≪ガチャッ!≫
ほう、今度は機関銃か。けど残念だが、武器のチョイスを間違えたみてえだな……
白夜「"白夜-雨夜(あまよ)"!」
≪ポタポタッポタッ……≫
「何っ?ここは雨漏りなんか一度も無かったってのに何で雨が……?」
そう……これが“雨夜”の特徴さ……
≪ポタポタポタ……ザザ〜〜〜……≫
白夜「この技は時と場所関係無く、場に雨を降らせる技だ。しかもこれはただの雨じゃねぇ、その水滴だけでも触れただけで機器を使えなくさせる性質があんだよ。無論こいつはISにも通じんでな」
「何だと⁉︎」
白夜「さあどうする?これでテメェは銃火器等は使えなくなった。ISは暫くは稼動出来るが、本降りになった以上は何れ使いもんにならなくなるぜ」
「チッ、なんてこった!」
喚け喚け、何れにしてもISが使える時間が削れるだけだ。
さあ……そろそろ決めてやるとすっか__
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『オータム!オータム聞こえる⁉︎』
「その声はスコール!どうしたんだ一体!こっちは取り込み中だから邪魔すん__」
スコール『そんな事を言ってる場合じゃ無いのよ!上から流れこんだ変な水のせいで地下の機器がどんどん壊れてるのよ‼︎』
オータム「なんだと⁉︎じゃあ奴が創り出した雨で__!」
スコール『警備の奴らは水に触れて麻痺を起こしてて大変なのよ!このままじゃ危険よ!闘うのはいいから早く脱出しなさい!私もすぐにここから出るから‼︎』
オータム「しゃあねぇ!解った、すぐ脱出する‼︎」
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≪ザザ〜〜〜……≫
オータム「今回はここら辺で勘弁してやろう。だが覚えてろよクソガキ!次に会う時こそテメェの最後だ‼︎」
そう言ってオータムって野郎は壁を突き破って夜空へと逃げて行きやがった。
たく、解ってねぇな。進歩のねぇ限り俺は倒せねえ事を……
ーーーーーーーーーー
奴が消えたのを確認した俺は“雨夜”を解除して、その場は入った時と同じ状態に戻った。
「お前は……」
白夜「ん?」
逃がしはしたけど一応目的を達成した俺はサッサと退散しようとしたけど、それはある女の声で止められた。
「兄さん…兄さんなのか⁉︎私だ!私を覚えて無いのか⁉︎織斑 千冬の妹の織斑 マドカを!」
白夜「⁉︎」
マドカ、何でマドカがここに居んだよ!確か昔の俺と織斑 千冬を捨てた親父達が連れてったマドカが‼︎
……けど何れにしても…正体を知られたとはいえ、殺すわけにもいかんな……
白夜「悪いがマドカ、俺は過去を捨てたんだ。俺とお前は今や他人でしか無い」
マドカ「そ…そんな__」
白夜「けど代わりに、お前を姉の…織斑 千冬のところへ案内してやる。ここにいたら大変だ」
マドカ「解った。けど出来れば、出来れば“兄さん”とだけ呼ばせてくれ!お願い!」
兄さんか……まあそんなら別にいいだろな……
白夜「解った、呼ぶだけなら構わねぇよ。とにかく行くぞ」
マドカ「ああ……だがチョット待ってくれ、身支度がしたい」
白夜「解ったよ」
それから数分後、支度を済ませたマドカを連れてその場から離れた。
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翌日。メディアでは“白夜の奇襲で〈ファントムタスク〉が事実上の壊滅”と報じられ、マドカは俺に対して尊敬の言葉を呟いていたけど、俺は構わず偽造ビザと偽造パスを駆使して飛行機に乗ってアメリカを後にした。
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飛行機に乗って半日くらいで日本の空港に到着。それから電車とタクシーを乗り継いで、俺の…いや昔の我が家に到着したのは夜の7時過ぎだった。しかも家の明かりが点いていて織斑 千冬が帰っているのは明白だった。
家のインターホンを鳴らしてマドカの帰りを伝え、千冬は玄関のドアから勢い良く外に出て来たけど、俺は還るつもりは無いから千冬が出て来たと同時に闇に紛れてその場から離れた。
その後聞こえたのは、また消えた事を悲しむ千冬とマドカの泣き叫ぶ声だけだった。
後書き
次回は白夜、ISを起動させる?そしてIS学園入学へ
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